「はーい、みんな。それじゃホームルームを始めるわよー」
「先生! 転校生はどこですか!」
「こらっ! ちゃんと紹介しますから、落ち着いて先生の話を聞きなさい」
クラス担任がやって来てHRが始まっても、1-Bの生徒は騒いでいた。
「5月に転校してくるとか、絶対ワケありじゃん」
「しかも美少女? なんかドラマみたい!」
「うおおお、ついにオレの運命の物語が始まっちまうのかぁ!?」
「いやボクの!」
「いいえ私の!」
「このタイミングでクラス転生とかしたら面白くね?」
「やめろぉ!」
わいわいがやがや。
いつまでも治まらない大騒ぎに、担任の女教師はため息をつく。
「はぁ、もう。埒が明かないわね。だったらさっさと済ませちゃいましょう。入ってきて!」
「「!?」」
色々をすっ飛ばしての突然の呼び出しに、騒いでいたクラスの視線が一点に集中する。
(転校生、か……)
それは窓際最後尾の席に座る
ガラララ!
横開きのドアが開かれ、一人の少女が教室へと入ってくる。
「「……!」」
「はい。
「わかりました」
少女は照也たちに背を向け、黒板にチョークを走らせていく。
黒板に記された文字は三文字。
「初めまして。
その名の示す通り。
振り返り照也たちと向かい合う少女の短めの髪は、黒く艶やかな烏の濡れ羽色。
潤いのある白い肌と、磨き上げられたスレンダーでスタイリッシュなボディライン。
髪と同じで黒く、それでいて星が散りばめられたかのような輝きを持つ瞳。
鋭く、冷たく、美しい。
刃のような絶世の美少女が、そこにいた。
「………」
「………」
(!? 目が、合った……?)
それは一瞬のやり取り。
今はもう案内に従い自分の席へと向かう哀が、
彼女から、明確な意思を持って見つめられたことを察知する。
(
それに何の意味があったのかはわからない。
が、
※ ※ ※
キーンコーンカーンコーン……。
「……よし」
一限目の休み時間。
照也は先ほど向けられた視線の意味を知りたくて、
だが。
「
「
「
「好きな本は? そ、その……薔薇の花咲く奴とか興味ある?」
「遊びに行くならどこ行きたい? アタシはボーリング!」
「
「
1-Bは特にノリがいいクラス。
一斉にグイグイと迫る姿を見て、彼は声をかけるタイミングを見失う。
自分もそれに交じって勢いよく尋ねてもいいのだが、聞きたい内容が内容だけに、変に勘繰られてしまうのはよろしくない。
「………、……」
四方八方から流れこむ、質問という名の喧噪の渦の中。
哀は戸惑いつつも、意外にそれぞれの問いへ誠実に答えているようで。
「……さすがにありゃ、割って入れないな」
そう焦ることもないだろうと、
そして。
キーンコーンカーンコーン……。
「……ぐぬぬ」
見事、
※ ※ ※
お昼になっても
「……仕方ない。ひとまずお昼を食べてから、またタイミングを計ろう」
攻めあぐねてしまった気持ちをリセットするべく、
(朝の視線もたまたま、だった可能性もあるしな)
考え事をしつつ、ゆっくりとドアへと向かう……そこへ。
ドドドドドド。
教室の外から聞こえてくる、大きな存在感を伴った足音。
「……ぅーん」
聞こえてくる、とても聞き覚えのある、親しい人物の声。
「わっ、なんだなんだ!?」
「あっ、あれは!」
廊下を行く生徒たちが口々に驚きの声を向ける……その人は。
ガラララ! バンッ!
「お姉ちゃんが来たよ! おっとうっとくぅ~~~~ん!!」
ズドーーーーンッ! ドンガラガッシャーンッ!!
「ぐっはぁーーーーーーっっ!!」
扉を開けるや否や、弾丸のごとき素早さと誘導弾のような正確さで、
「あれって……生徒会長、だよね?」
「だな。何度見ても、目を疑う光景だ」
「まぁでも、小学中学と見慣れてる身としては、もはやだな……」
「ああっ! あの豊満ボディに体当たりされる幸せ者に正義の鉄槌を!!」
多数の生徒に見つめられ、床を転がる
「……
「そうだよ! お姉ちゃんだよ! 弟くん!」
長くふわふわなクリーム色の髪を振り乱し、ライトブラウンの瞳を爛々と輝かせ、満面の笑みを浮かべ興奮した様子でまくし立てる。
その間に全身を押しつけるようにして密着する彼女の名は――
「聞いて聞いて! やっっっっっと、完成したんだよ、弟くん!」
「えっ! 本当か
「うんうん、本当に!」
たまな学園高校の3年生で現生徒会長にして、とある同好会の部長。
「えへへ。弟くぅ~ん! ほめてほめて~~!」
そして……この道13年になる、