魔法勇者ダイデンダー ーDDDー   作:夏目八尋

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第03話 Aパート② ー時期外れの転校生ー

 

「はーい、みんな。それじゃホームルームを始めるわよー」

「先生! 転校生はどこですか!」

「こらっ! ちゃんと紹介しますから、落ち着いて先生の話を聞きなさい」

 

 クラス担任がやって来てHRが始まっても、1-Bの生徒は騒いでいた。

 

「5月に転校してくるとか、絶対ワケありじゃん」

「しかも美少女? なんかドラマみたい!」

「うおおお、ついにオレの運命の物語が始まっちまうのかぁ!?」

「いやボクの!」

「いいえ私の!」

「このタイミングでクラス転生とかしたら面白くね?」

「やめろぉ!」

 

 わいわいがやがや。

 

 いつまでも治まらない大騒ぎに、担任の女教師はため息をつく。

 

 

「はぁ、もう。埒が明かないわね。だったらさっさと済ませちゃいましょう。入ってきて!」

「「!?」」

 

 色々をすっ飛ばしての突然の呼び出しに、騒いでいたクラスの視線が一点に集中する。

 

(転校生、か……)

 

 それは窓際最後尾の席に座る照也(でるや)もまた、同じだった。

 

 

 ガラララ!

 

 横開きのドアが開かれ、一人の少女が教室へと入ってくる。

 

「「……!」」

 

 照也(でるや)を含むクラスの生徒、そのすべてが息を吞んだ。

 

 

「はい。黒羽(くろばね)さん、自己紹介をお願い」

「わかりました」

 

 少女は照也たちに背を向け、黒板にチョークを走らせていく。

 黒板に記された文字は三文字。

 

「初めまして。黒羽哀(くろばねあい)です。……よろしく」

 

 その名の示す通り。

 振り返り照也たちと向かい合う少女の短めの髪は、黒く艶やかな烏の濡れ羽色。

 潤いのある白い肌と、磨き上げられたスレンダーでスタイリッシュなボディライン。

 髪と同じで黒く、それでいて星が散りばめられたかのような輝きを持つ瞳。

 

 鋭く、冷たく、美しい。

 

 刃のような絶世の美少女が、そこにいた。

 

「………」

 

 照也(でるや)が出会う、3人目の超級美少女だった。

 

 

「………」

(!? 目が、合った……?)

 

 それは一瞬のやり取り。

 今はもう案内に従い自分の席へと向かう哀が、照也(でるや)を一瞥したのに彼は確かに気づく。

 

 彼女から、明確な意思を持って見つめられたことを察知する。

 

黒羽(くろばね)(あい)……か)

 

 それに何の意味があったのかはわからない。

 が、照也(でるや)は自分に向けられた鋭い視線に、底知れぬ何かを感じ取るのだった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 キーンコーンカーンコーン……。

 

「……よし」

 

 一限目の休み時間。

 照也は先ほど向けられた視線の意味を知りたくて、(あい)に声をかけようと思った。

 だが。

 

黒羽(くろばね)さーん! 質問いーい?」

黒羽(くろばね)さんってどこから来たの?」

黒羽(くろばね)さん黒羽(くろばね)さん。今日の朝って何食べたー?」

「好きな本は? そ、その……薔薇の花咲く奴とか興味ある?」

「遊びに行くならどこ行きたい? アタシはボーリング!」

 

 照也(でるや)が動くよりも先に、クラスメイトによる質問攻めが始まってしまった。

 

黒羽(くろばね)さん! 黒羽(くろばね)さん!」

(あい)ちゃんって呼んでいい!? ね、いいよね!」

 

 1-Bは特にノリがいいクラス。

 一斉にグイグイと迫る姿を見て、彼は声をかけるタイミングを見失う。

 自分もそれに交じって勢いよく尋ねてもいいのだが、聞きたい内容が内容だけに、変に勘繰られてしまうのはよろしくない。

 

 

「………、……」

 

 四方八方から流れこむ、質問という名の喧噪の渦の中。

 哀は戸惑いつつも、意外にそれぞれの問いへ誠実に答えているようで。

 

「……さすがにありゃ、割って入れないな」

 

 そう焦ることもないだろうと、照也(でるや)はしばらく様子を見ることにした。

 

 そして。

 

 キーンコーンカーンコーン……。

 

「……ぐぬぬ」

 

 見事、照也(でるや)は昼休みに至るまで、(あい)とコンタクトを取れずに終わったのだった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 お昼になっても(あい)は取り囲まれたまま、話好きの女子たちに教室から連れ出されてしまった。

 

「……仕方ない。ひとまずお昼を食べてから、またタイミングを計ろう」

 

 攻めあぐねてしまった気持ちをリセットするべく、照也(でるや)も愛妹お手製の弁当を手に席を立つ。

 

(朝の視線もたまたま、だった可能性もあるしな)

 

 考え事をしつつ、ゆっくりとドアへと向かう……そこへ。

 

 

 ドドドドドド。

 

 教室の外から聞こえてくる、大きな存在感を伴った足音。

 

「……ぅーん」

 

 聞こえてくる、とても聞き覚えのある、親しい人物の声。

 

「わっ、なんだなんだ!?」

「あっ、あれは!」

 

 廊下を行く生徒たちが口々に驚きの声を向ける……その人は。

 

 

 ガラララ! バンッ!

 

 

「お姉ちゃんが来たよ! おっとうっとくぅ~~~~ん!!」

 

 

 ズドーーーーンッ! ドンガラガッシャーンッ!!

 

「ぐっはぁーーーーーーっっ!!」

 

 扉を開けるや否や、弾丸のごとき素早さと誘導弾のような正確さで、照也(でるや)のボディに体当たりを決めた。

 照也(でるや)は自分の体よりも愛妹の弁当を守ることに全力を尽くし、吹き飛ばされた。

 

 

「あれって……生徒会長、だよね?」

「だな。何度見ても、目を疑う光景だ」

「まぁでも、小学中学と見慣れてる身としては、もはやだな……」

「ああっ! あの豊満ボディに体当たりされる幸せ者に正義の鉄槌を!!」

 

 多数の生徒に見つめられ、床を転がる照也(でるや)と、その上に覆いかぶさるパワフルな少女。

 照也(でるや)にとって、最初に見た超級の美少女にして敬愛する姉のような存在の……幼馴染。

 

「……(まどか)姉ぇ」

「そうだよ! お姉ちゃんだよ! 弟くん!」

 

 長くふわふわなクリーム色の髪を振り乱し、ライトブラウンの瞳を爛々と輝かせ、満面の笑みを浮かべ興奮した様子でまくし立てる。

 その間に全身を押しつけるようにして密着する彼女の名は――樫木円(かしぎまどか)

 

「聞いて聞いて! やっっっっっと、完成したんだよ、弟くん!」

「えっ! 本当か(まどか)姉ぇ?!」

「うんうん、本当に!」

 

 たまな学園高校の3年生で現生徒会長にして、とある同好会の部長。

 

「えへへ。弟くぅ~ん! ほめてほめて~~!」

 

 そして……この道13年になる、照也(でるや)()()()()()()()であった。

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