「うわあああああーーーーー!!」
情けなく声を張り上げて。
無様に体のバランスを崩しながら、
「……それでいいのよ。
その声を背に、
(俺はバカだ! どうして一瞬でも、あの子の力になるだなんて、
また近づいて囮になるか?
その身を挺して盾にでもなるか?
(バカか! さっきの戦いを見ただろう! あんなパワーとスピード、普通の人間が追いつけるもんじゃない! そこにいるだけで、邪魔にしかならないだろうが!)
悔しかった。
恥ずかしかった。
(今の俺が何をしても、彼女の邪魔にしか……ならない!)
それでも、せめて一秒でも早くこの場を脱することこそが自分にできる唯一の支援だと信じるしか、
だがそんな、年若い少年が見せた最後の意地ですら。
「「「ドレドレドレドレ……!」」」
「なっ!?」
絶望は摘み取りに来る。
※ ※ ※
「ドレドレ?」
「ドレドレ!」
「な、なんだこいつら、ウジャウジャと……!」
行く先を塞ぐように、それらは現れた。
幼児ほどの大きさで、額に角を生やす小鬼めいた異形。生白いその肌艶は鉱物のようで……。
「まさか、こいつらもソウルイーター!?」
「ドレドレー!!」
「伏兵っ?!」
「う、うわっ! 離れろ!」
「ド~レ~……イーンッ!」
「!? あああああっ!!!」
刹那。
立っていられず地面に倒れ、仰向けに押さえ込まれてしまう。
(あ、え? なん、だ……これ……?)
さっきまで胸の中でぐるぐると燃え盛っていた感情が、必死に回していた思考が、緩やかに停滞していく。
(なん、だ……なん、か。なにもかも、どうでも、よくなって……)
サイズ差を考えれば簡単に振り払えるはずの相手に抵抗できず。
ただ、されるがままになりながら瞼が落ち――。
「弟くん! 今助けるよ!」
「……え?」
――瞬間。
空を見上げる
空を飛ぶ、木のホウキ。
それにまたがる、ツバ広の帽子とローブをまとった見知った女の子。
「ハジけて!
そのローブの内側から、赤い液体が入ったフラスコに似た
チュドドドドーンッ!!
「「ドレレァーーー!!」」
さらに。
「お義兄ちゃんから! 離れなさいっ!!」
霞む視界に、きらびやかな色彩のドレスをまとった少女が鮮烈に映り込む。
髪型や髪の色こそ違ったが、その顔もまた、彼のよく見知った人物と同じだった。
「弟くん!」
「お義兄ちゃん!」
「あ、え?」
ぼう然とする
「……
※ ※ ※
片や。
古来より伝わりし、魔女のごときローブをまとった
片や。
華やかで軽やかな仕立ての、姫のごときドレスをまとった
その姿が、さっき間近で見た
気だるさに染まっていた
「弟くん! これ飲んで!」
「もごっ!?」
倒れた
流し込まれる乳白色の液体。普段の力関係のまま、
(ぼやけてた意識が、ハッキリしてきた……?)
奪われたはずの活力が、再び
どうやら飲まされた薬には、奪われた力を取り戻す効果があるようだった。
「怖かったよね、弟くん。でももう大丈夫! お姉ちゃんが来たからね!」
薬を飲ませた
力強い笑顔から一転、怒り心頭といった表情でそれを睨みつける。
「……弟くんをこんな目に遭わせて。ぜっっったいに、許さないんだから!」
大池にそびえ立つ、倒すべき異形の巨体を。
(今、
「ドーレーイーーーンッ!!」
「……くっ! はぁぁっ!」
大池の上では、未だに
彼女の斬撃は何度も異形の触手を断ち切り、その体を切り裂いていたが、切った先から際限なく再生されてしまい、きりがない。
だが、彼女が苦戦しているワケは、それだけではない。
(こいつ……ただの大型個体じゃない?)
これまで戦ってきた敵と何かが違う。
「
「うん! 行こう!」
「待っ、
「お義兄ちゃん。ワタシ、ずっとお義兄ちゃんに守ってもらってきたから……今度はワタシが、お義兄ちゃんを守る!」
「待ってくれ!
駆け出す
が、度重なる消耗に足がもつれ、動き出そうとしたところで派手に転んでしまった。
カツンッ、ガシャッ。
彼の胸元からネックレスが飛び出し、紫の宝石が石畳に小さく跳ねる。
地を突いた手の首で、ガジェットの時計が揺れた。
「っ!」
遠ざかっていく二人を、なすすべなく見送るしかない。
「俺は……」
理解する。
この場所は、常識が通じる世界ではないのだ、と。
改めて自覚する。
今この場において、自分は彼女たちに守ってもらう存在なのだ、と。
「俺、は……!」
そう、頭では理解し、自覚していても。
「ち、くしょう……!」
……――。
そんな
彼の
大誕の時は……近いっ!
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