魔法勇者ダイデンダー ーDDDー   作:夏目八尋

8 / 9
第07話 Bパート③ ー目覚めの刻ー

 

「さぁーて。弟くんを傷つけた悪い子には、とっとと退場してもらおう!」

「はい! お義兄ちゃんをいじめるなんて許せません!」

 

 (まどか)絵瑠(える)が気合十分に大池へ到着。

 戦闘継続中の(あい)へと声をかける。

 

「そこの魔法戦士(まほうせんし)さん!」

「っ!」

「これより支援行動に入ります!」

 

 そう大声で告げた(まどか)が胸元に手を突っ込み、一枚の琥珀色のメダルを取り出す。

 

 

DDD(ディーディーディー)たまな市支部所属! 技術の魔女、樫木円(かしぎまどか)!」

「同じく、DDDたまな市支部所属の嘱託魔女、エルリーゼ・キラキラ・ジュエルネーヴァ!」

 

 

 続けて絵瑠(える)も取り出したそれは、魔法金属オリハルコンで作られた、特別な証。

 

 

「みんなの平和な日常を守るため!」

「おいたが過ぎる悪い子は、全身全霊でやっつけます!」

 

 

 二人の覚悟に呼応して、夕闇にメダルが煌めく。

 

 

「行くよ、絵瑠(える)ちゃん!」

「はい!」

 

 (まどか)がホウキにまたがり飛び上がり、絵瑠(える)はその場で踏み込んで急加速。

 それぞれが異形へと向かい、果敢に飛び込んでいった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「ドレッ?!」

「はぁぁぁぁ!」

 

 背中のリボンをヒュルルと揺らし、絵瑠(える)が跳ぶ。

 こぶしの一撃。真正面から異形の胴をぶん殴り、宝石(ジュエル)が砕けるような音と共に、その体を大きく“くの字”に押し曲げる。

 

「今度はわたしだよ! ハジけて! 爆ぜる薬(エクリクティコス)!」

 

 空飛ぶホウキの高機動で背後に回った(まどか)が、先ほども使った薬瓶(ガジェット)を放り、追撃。

 

 チュドドドドーンッ!!

 

「ドレァァァッ!!??」

 

 爆撃を受けた異形が炎上し、炎の中で巨体を揺らした。

 

 

「ドレレレレレ!!」

 

 反撃の触手が伸びる。

 鞭のようにしならせた数多の害意が二人を襲う! ……が!

 

「効っかないよーだ!」

 

 (まどか)はホウキを上向かせ、瞬く間にそれを振り切り。

 

「ロイヤルジュエル! ガードダイヤモンド!」

 

 ガキンッ!

 

 絵瑠(える)はティアラに戴く秘石を輝かせ、ダイヤの盾を作り出し攻撃を受け止めた。

 

 

「「魔法戦士さん!」」

「まかせて」

 

 (まどか)絵瑠(える)の呼びかけに、(あい)の冷静な声が応じる。

 二人の役目は時間稼ぎ、その隙に(あい)が大技の準備を完了する!

 

「……ナーサリーライム、起動!」

 

 正面に立てた大鎌の刃に、ゆっくりと光が満ちていく。

 

「我が前に真の姿を示せ……大鎌“ブラックスワン”!」

 

 光は黒い輝きを放ち、(あい)の周囲にもまた光の帯を幾筋も走らせ圧を増す。

 真の力を発揮した彼女の武器が、眼前の敵を倒すべく振り上げられた。

 

 

「ドレッ!?」

「常闇へ還れ! シャドウ・クロス!」

 

 シュ、ズバァァァ!!

 

「ドレアァァァァァァ!!!」

 

 裂帛の気合とともに振り下ろされた刃が、燃え盛る異形の巨体を切り裂く!

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

 続けて放つ真一文字の黒の一閃が加われば、異形の体に十字の斬撃傷が浮かび上がる!

 

「……――ッッ!」

 

 闇が、溢れる!

 切り倒される大木のように、巨体がゆっくりと倒れ、崩壊しながら沈み、水飛沫を上げた。

 

 

(す、すごい……!)

 

 その輝きは、その力強さは。

 遠巻きに戦場を見守っていた照也(でるや)の目に、余りにも鮮烈に映った。

 絶望を打ち払う少女たちの煌めく姿に、彼は我知らず見惚れていた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「「いぇーい、勝利ー!」」

「………」

 

 大池のそばに降り立ち、ハイタッチする(まどか)絵瑠(える)

 大技で乱れた呼吸を整える(あい)

 張り詰めていた空気は解け、爆ぜた飛沫も落ち着いていく。

 

 誰しもが、危機は去ったと思った――その時。

 

 シュルルルルッ! バシッ!

 

「「「!?」」」

 

 水面から突如として伸びた触手が、(あい)(まどか)絵瑠(える)の足首に絡みついた。

 

 

「「「きゃあああ!!」」」

 

 一瞬にして宙へと釣り上げられる3人。

 彼女たちの眼下、大池の中から、先ほどよりもさらに巨大化した異形が姿を現す。

 

「まさか、技を受ける前に自分を切り離して……?!」

「ド~~~レ~~~イ~~~~~~~~~ン!!」

「「「いやあああ!!」」」

 

 命の力……プラーナを吸い取られる。

 背筋をピンと仰け反らせ、衝撃に少女たちから悲鳴が上がった。

 

 

絵瑠(える)! (まどか)姉ぇ! 黒羽(くろばね)!!」

 

 彼女たちに想定外が起こった。

 それを即座に理解した照也(でるや)は、迷うことなく彼女たちに向かって駆け出す。

 

 なりふり構わず、ただただ必死に助けに向かって最短距離を駆け寄って。

 だが……。

 

「ドレッ!」

「ぐあっ!!」

 

 現実はただ、冷徹に。

 食事の邪魔だと振るわれた横薙ぎの一撃が、照也(でるや)をあっさりと石畳の上へ跳ね転がした。

 

 

「お義兄ちゃん!」

「弟くん!!」

「ぐ、ぉぉ……!」

 

 痛みを堪え、なんとか立ち上がろうとして、失敗する。

 これまでとは違った、違和感。

 

「が、な……にが? ……ぅぐっ?!」

 

 今の一撃で照也(でるや)の左足は骨折していた。

 

 

「ち、くしょう……まだ……俺、は……!!」

 

 それでも、照也(でるや)は立ち上がろうとする。

 気づけば彼の心の中は、彼女たちを助けること以外のすべてが抜け落ちていた。

 

(動け、動け……!)

 

 手に力を込め、右足でバランスを取る。

 ボロボロになっても諦めず、何ができるかわからなくてもひたすらに。

 

 それでも、起き上がれなくて。

 心を、燃えるような怒りが支配した。

 

 

「だ、め……逃げ、て…………」

「おとうと、く、ん……」

「お、にい……ちゃん……」

 

 囚われの少女たちの声も届かない。

 ただ彼女たちを助けたい。助けなければならないという心が彼を突き動かす。

 

「ド~レ~イ~~~~~~~ン!!」

「「「きゃあああ!!」」」

「やめろぉぉぉーーーー!!」

 

 人の心を喰い尽くし、今なお大切な人たちを傷つけようとする奴らが、許せない。

 あれは……倒すべき敵なんだと、魂で理解する。

 

「うああああーーーーーーーっっ!!」

 

 自然に、咆哮を上げていた。

 

 

(動け! 動け! 動け動け動け! 俺が、俺がみんなを守るんだろっ?! お前はそう決めて生きてきただろう! 大殿照也(だいでんでるや)!!)

 

 体が重い。

 どれだけ心が叫んでも、それだけでは動けない。

 

(足りない、足りない! 俺には何もかもが足りない!!)

 

 何が足りないのかさえ分からない。

 目の前に立ち塞がる存在には、今日まで自分が生きてきたすべてが通じない。

 

(俺は、俺は絶対に認めない! こんな現実! こんな絶望!)

 

 それでも、諦めたくはない。

 目の前の理不尽を跳ね除ける……絶対的な何かが欲しい!!

 

 

(力だ! 力が……欲しい!!)

 

 どんな攻撃も跳ね除ける、鋼の肉体が欲しい。

 何度だって立ち上がる、強い足が欲しい。

 襲い来る敵を打ちのめす、硬いこぶしが欲しい。

 諦めない限りどんな困難だって乗り越えられる、立ち向かうための力が欲しい。

 

 そして何よりも――。

 

 

(――目の前の絶望を打ち祓い、平和な日常を取り戻す……力が欲しい!!!)

 

 そう、心の底から求めた瞬間。

 

「……!」

 

 照也は自分が何をするべきなのか理解する。

 

 

「お、おお……おおおおお!!!」

 

 呼び水となるのは、魂の叫び。

 腹の底から力を溜めて、内側にあるすべての熱を吐き出すように……世界へ吼える!

 

 

「俺が! みんなの日常を、守るんだぁあああーーーーーーーっっ!!」

 

 

 それに応えたのは、宝石(ジュエル)腕時計(ガジェット)だった。

 

 

 ピワァーーーーーーーーオッ!!

 

 

「!?」

 

 瞬間。

 照也(でるや)は感じ取る。

 

(この、力は……!?)

 

 火山が噴火するように激しく、強い何かが沸き上がってくる感覚を。

 それと同時、全身を紫の光が包み込み、目も開けていられないほどの閃光に貫かれた。




次回、変身!

感想、ここ好き、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!
ぜひぜひ応援よろしくお願いします!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。