遊戯王DMT―転生したら城之内だった件― 作:Laginera
―決闘王国・海フィールド
「行くぜ梶木! 〈岩石の巨兵〉で月を攻撃する!!」
「何じゃと!?」
「月の引力を失い、潮は引いてお前の魚族モンスターは海岸に残されるぜ!そして〈カース・オブ・ドラゴン〉と〈燃え盛る大地〉のコンボでフィールド全体を攻撃する!」
「ぬわあああああー!!」
梶木漁太。
日本全国大会第3位の成績を収めるデュエリストである。決闘王国では自分の得意とする海フィールドにて待ち伏せしてデュエリストを倒していたが、遊戯は海フィールドの特性を逆手に取りデュエルを制していた。
「だーはっはっは! オレの負けじゃあ! 遊戯、お前はとんだ大物デュエリストじゃったわ! 次はオレが勝たせてもらうぜよ!」
「オレも負けないぜ! この大会にはオレと同じく、戦っている友がいるからな!」
「なんじゃ? そいつは強いんか?」
「城之内君はまだデュエリストとしては未熟だが、成長すればお前の相手になるだろうな」
「ほーう。お前さんがそこまで言うなら楽しみにしているぜよ!」
健闘を称え、遊戯はスターチップを受け取る。
その時。
『貴様らもっと気合を入れてこげー!』
開眼から離れた沖で大型の船をこぐ複数のデュエリストと、船上で指揮をする黒服がいた。
「なんなのアレ?」
「あれはスターチップを全部失ったやつらじゃ。負けたデュエリストは自力で帰らなきゃならんぜよ」
「良く見たらインセクター羽蛾君もいるね」
獏良は遠目で船を漕ぐインセクター羽蛾を見た。
(あれが王国で敗れたモノの末路か…。だがオレは勝ちぬくぜ! じいちゃんの為にも)
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額の汗をぬぐい、インセクター羽蛾はふと脳内に浮かべていた。
『火炎地獄を発動!』
『ぎょえええええええー!!』
城之内とのデュエル。負けはしたが、なぜか彼に対する憎しみは湧いてこなかった。
守り続けた日本チャンプとしての誇りも、無くなると案外スッキリするモノだった。
(いつからだったんだ。オレがプライドに固執し続けたのは)
かつて、インセクター羽蛾は学校でいじめられていた。
『弱虫』
『お前ほんと弱いなー!』
『意気地なしの弱虫め!』
弱いと貶され続け、体も小さく体力のないオレはガキ大将とその取り巻きの標的にされていた。
だけどそんなオレも人に負けないことがあった。
昆虫に対する知識と、デュエルの腕だった。強力なカードをもっていないオレはステータスの低い昆虫族モンスターを強化して戦うことが基本戦術となり、いつの間にか全国大会に行くようになった。日本チャンピオンになった時、周囲が俺を王様の様に扱ってくれた。
強くなると周囲はオレを褒めたたえ、次第にオレを『弱い』と罵る奴も消えた。
実力が全てのデュエルの世界こそオレの居場所だと思った。
周囲はオレをヒーロー扱いし、サインを描いた報酬でレアカードを貰ったこともあった。
だけど…オレは本当に欲しかったのは何だったんだろうな
『お前は強い』
城之内とかいう碌にレアカードも無いくせにオレに勝った男。オレはただ、『強い』って誰かに褒めてもらいたかっただけなのかもな。
「ふ…」
「どんたんだよ羽蛾さん」
「負けておかしくなったんじゃねえのか?」
周囲がインセクター羽蛾を嘲笑するがインセクター羽蛾にはもうどうでもいい事だった。
(ここからもう一度始めるか。成り上がりってのも悪くねえ。城之内、またデュエルしようじゃねえか…!)
過去と固執したプライドを振り払ったインセクター羽蛾の心は頭上の空の様に晴れやかだった。