遊戯王DMT―転生したら城之内だった件― 作:Laginera
時は城之内と御伽がデュエルしている最中にまでさかのぼる。
「遊戯―! どこなのー!?」
杏子は遊戯の行方を捜していた。モクバから『遊戯の行方が分からない』事を告げられ、最悪の事態を考えていた。
(まさかグールズに捕まったんじゃ? いくら遊戯が強くても、何されるかわかったもんじゃないわ)
冷静さを失い、遊戯に関する情報が欲しい杏子はグールズの構成員を探そうとする。
「アレ? 杏子じゃないか」
「デニス! いい所に来たわね!! 遊戯が行方不明になったのよ!」
「ホワッツ!? それは大変じゃないか!」
「グールズって連中に連れ去られたのかもしれなくて。奴らを見ていない?」
「待って待って! グールズってカード専門の窃盗グループでしょ!? 女の子1人じゃデンジャラスだよ!」
「甘く見ないでよ! これでもダンスで鍛えてるんだから!」
「んー…! そう言えば、さっき黒装飾の連中がたむろっているのを見たよ」
「ホント!? すぐに案内して!」
「先にポリスを呼んだ方が…」
「早くしないと遊戯がどんなひどい目にあうか…!」
「わかったわかったよ! ボクも付いていくから!」
杏子はデニスと共に、怪しい人物を見つけたという路地裏に行く。
「ここで見たの?」
「ああ、だけどもうどっかにいったのかなあ?」
2人が探索していると
「ぐわあ!?」
デニスが頭を殴られて倒れる。
「デニス!」
「女! こんな所で何をしている!」
「連れていけ!!」
「離しなさいよ!!」
杏子は抵抗するも多勢に無勢。3人のグールズ組員によって捕まった。彼女が見えなくなるともう1人の区民がデニスに声をかける。
「マックさん、大丈夫ですか」
「痛たた…。演技とは言えやりすぎだよ」
デニスはやれやれと言った表情で立ち上る。
「しかしあんな女捕まえてどうするつもりですか? マックさんの命令で、数人で監視していましたが」
杏子とデニスが出会ったのは偶然ではなかった。彼がグールズのメンバーに指令を下して居場所を常にわかるようにし、偶然を装い拉致したのだ。
「まあ、プランツと君たちのリーダーが良い作戦を思いついたらしくてね」
(ほとんどプランツの案だけど。あのマリクって人、威勢はいいけど役立たずなんだよね)
「まあ、これから面白いショーが始まるらしいから楽しみにしていればいいんじゃない?」
「は、はあ…」
デニスは不敵な笑みを浮かべながらその場から去っていった。
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―童実野埠頭
「遊戯はここに…!」
「早く探さないと!」
海馬コーポレーションのヘリによって城之内達は童実野埠頭に訪れていた。そこにグールズに連れられた遊戯を発見する。
「歩け!」
「くっ…」
グールズの構成員によって遊戯は外へ連れ出された。
「遊戯!」
「!? 城之内君!」
「ほお。良い感じにギャラリーが揃ったじゃないか」
声がする方を見ると、木造の作業場に杏子がいるのがわかった。
「杏子!」
「フフフ、よく来たね遊戯」
声こそ杏子だが、その口調は明らかに別人だった。
「まさかマリク! 杏子を洗脳したのか!?」
「君には特別な死に場所を用意してあげるよ。愛する者によって処刑されるというとっておきの方法でな!」
遊戯の足首に鉄の枷がはめられる。杏子にもはめられており、それは鎖で特殊な爆破装置のついた錨に繋がられていた。
「海上デスマッチデュエル! 遊戯、助かりたければその女を倒せ! 倒せば足元の小箱が開き鍵が手に入る。だが女を助けたければお前自身が犠牲になるしかない!」
「マリク! 杏子はこの戦いに何も関係ない! 解放しろ!!」
「そうはいかない。君から受けた苦しみは、君に関係するすべての人間に償ってもらう! お前が戦いを否定するというのなら、ボクは千年ロッドのちからで彼女を自殺に追いやるまでだ」
「貴様…!」
「さあ、デュエルを受けろ! 出なければお前もこの女も死ぬことになる!」
「マリク! 杏子を助けたら次は貴様の番だ!」
「くくく…なら早速始めようじゃないか!」
(遊戯と真崎杏子のデスマッチ! マリクはここまで残酷な行いができるのか!? これでは死をもってしかその結果を出すことが出来ぬではないか!!)
常識離れした倫理観をもつ海馬でもその異常事態を理解していた。
「救出するしかあるまい!」
海馬はこの異常なデュエルを阻止しようとしたが
「兄サマー!」
「!? モクバ!!」
いつの間にかモクバが捕まり
「動くな!」
「少しでも動けばこのガキをぶち殺す!」
「豚どもめ…! 卑劣な真似を…!!」
「アンタらどこまで根性腐っているのよ!!」
モクバを人質に囚われ、手出しが出来なくなっていた。
「遊戯! マリク様の為にもアンタをぶったおすつもりだから覚悟しなさいね!」
「杏子…!」
【もう1人のボク…!】
洗脳されて言うとは言え、杏子の言葉に遊戯は動揺する。
「今は…デュエルするしかない…!」
「デュエル!!」
遊戯と杏子のデュエルが始まる。
「私のターン、ドロー! 手札から〈サンダー・ドラゴン〉を墓地に送り効果を発動! デッキから2枚の〈サンダー・ドラゴン〉を手札に加えるわ!」
【あのカードは杏子がデッキに入れていないカードだ】
(マリクめ、杏子に他のデッキを渡したのか…!)
「更に手札から魔法カード〈融合賢者〉を発動し、デッキから〈融合〉カードを手札に加えるわ! そして〈融合〉を発動! 手札の〈サンダー・ドラゴン〉2体を融合し、〈双頭の雷龍〉を融合召喚!」
〈双頭の雷龍〉☆7 攻撃力2800 守備力2100
「〈双頭の雷龍〉!」
まだ融合モンスターが発展途上だった初代に置いて、素材の揃いやすさと攻撃力の高さから有用だった融合モンスター、現代だと遊戯王の有名なクソゲー〈封印されし記憶〉におけるプレイヤーの切り札として有名である。
「融合モンスターは召喚されたターンは攻撃できねえ。だから元々攻撃できない1ターン目に召喚しておくってわけか…!」
「次のターンに攻撃出来れば遊戯に大ダメージを与えれる…!」
「遊戯! まさか1ターン目だからって安心してないわよね!」
「何!?」
「手札から魔法カード〈ファイヤー・ボール〉を発動! 相手に500ポイントのダメージを与えるわ!」
「バーンカード!?」
(プレイヤー及びモンスターに直接攻撃するカードの使用は禁止のはず! グールズめ、奴のデッキに仕込んだか!!)
「うわああああー!!」
武藤遊戯 LP:4000-500=3500
「私はカードを2枚セット! モンスターを1体セットしてターンエンド!!」
真崎杏子 LP:4000
手札:0
デッキ:31
墓地:5
除外:0
融合デッキ:0
モンスターゾーン:
〈双頭の雷龍〉攻撃力2800
セットモンスター1体
魔法・罠カード
セットカード2枚
「オレのターン、ドロー!」
(駄目だ…! 〈双頭の雷龍〉を倒せるカードは無い…! ここはしのぐしか…!!)
「オレはモンスターをセット! カードを2枚伏せてターンエンドだ!」
武藤遊戯 LP:3500
手札:3
デッキ:34
墓地:0
除外:0
融合デッキ:2
モンスターゾーン:
セットモンスター1体
魔法・罠カード
セットカード2枚
「あきれるわねえ。そんなつまらない一手でお終い?」
「くっ…」
「そんなんだから決闘王国でコロっと城之内なんかに負けるのよ! もう1人の遊戯が出て少しはマシになったと思ったけどアンタは私がいないとダメなままの様ね!」
「杏子…!」
「マリクの奴…、杏子を使って遊戯を精神的にも追い詰める気か…!」
「私のターンドロー! カードを1枚伏せて、場のセットモンスターを表にする! 〈メタモルポット〉を反転召喚!」
〈メタモルポット〉☆2 攻撃力700 守備力600
「〈メタモルポット〉!?」
「このカードが反転した時互いに全ての手札を捨てて新たにカードを5枚ドローする! 私は手札が0枚だから5枚ドローするわ!」
「オレは手札を3枚捨てて、5枚カードをドローする‥‥!」
「更に伏せカード〈融合解除〉を発動! 〈双頭の雷龍〉の融合を解除し、素材となった〈サンダー・ドラゴン〉を2体特殊召喚するわ!」
〈サンダー・ドラゴン〉☆5 攻撃力1600 守備力1500 ×2
「融合を解いた…!?」
舞は攻撃力2800ものモンスターの融合を解いた理由に疑問を持ったが、海馬は場を見てはっとした。
「マリクの奴…! まさか神のカードを…!!」
「私は〈メタモルポット〉と2体の〈サンダー・ドラゴン〉を生け贄に…!」
「3体の生け贄…!」
「ふふ、遊戯! マリク様かいただいた神のカードを見せてあげるわ!」
「神のカードだと!?」
「天を引き裂き現れよ! 〈オシリスの天空竜〉!!」
晴天だった空に雷雲が集まり、周囲に雷を落としていく。
「くっ…! マリクめ! 遊戯を倒すためとはいえ、女に神のカードを渡したのか!?」
「何なのこのプレッシャー!? ソリッドビジョンじゃないの!?」
「雲から何か出てくるぜ…!」
雷雲から真紅の肉体と巨大で長い胴体を持った神のカードの一角〈オシリスの天空竜〉が現れる。
〈オシリスの天空竜〉☆12 攻撃力??? 守備力???
「これが…神のカード…! オシリスの天空竜!!」
そのスケールと迫力に遊戯は圧倒される。
「〈オシリスの天空竜〉の攻撃力決まっていない…。私の手札1枚につき1000ポイントとなるわ。私の手札は4枚! よって攻撃力は4000ポイントになるわよ!」
〈オシリスの天空竜〉 攻撃力???→4000
「攻撃力4000…!!」
「バトルよ! 遊戯のセットモンスターを攻撃! 超伝導波サンダーフォース!!」
〈オシリス〉の一撃で遊戯のモンスターは破壊される。
「くっ…〈幻獣王ガゼル〉…!」
「つまらない雑魚モンスターね。だけど攻撃を防いだところで変わりないわ! メイン2に伏せていた〈ファイヤー・ボール〉を発動!」
「2枚目のカード!?」
「遊戯! 500ポイントのダメージを受けなさい…!」
「うわあああー!!」
武藤遊戯 LP:3500-500=3000
「くっ…」
「遊戯…! 杏子…っ! アンタ、自分が何しているのかわかっているの!? 大切な仲間を、遊戯を痛めつけて何とも思わないの!?」
目の前に広がる惨状に舞は思わず叫ぶ。
「ふん、むしろ清々するわ! こんな弱っちい奴にずっと憧れていた自分にムカッ腹が来ていた所よ! 男はマリク様の様に強くなきゃいけないのよ!」
「…!」
洗脳されているとはいえ、杏子の言葉は周囲に、そして遊戯の胸に突き刺さる。
「杏子…! もうやめてくれ! オレはお前とは戦えない…! こんなどちらかが命を失うデュエルなんて馬鹿げている‥!」
「だったらサレンダーしてよ? 私とは戦えないんでしょ?」
「!!」
『そうだ遊戯、サレンダーしろ! そうすればお前のライフは0になり彼女を救うことが出来る。それともお前は神を、そして失われた記憶のためにこの女を犠牲にするのか!?』
「ぐっ…っ!!」
ここぞとばかりにマリクが畳みかける。
杏子との命を懸けたデュエル、圧倒的神のカードの存在。遊戯の心が折れるのは時間の問題だった。
「ふざけるな遊戯! このオレの目の前でサレンダーなど断じて認めん!!」
そこに海馬が割って声を上げる。
「貴様はオレが認めたデュエリストだ! このオレの前で無様に負け犬姿をさらすなど許さん! どの道デュエルを終わらせなければその女を救う事すら出来んのだぞ! たかが女1人の為に、デュエルとも言えない戦いで貴様はデュエリストの誇りを捨てるというのか!!?」
「海馬…、オレに、いや相棒にとって杏子は大切な存在なんだ…! それをオレの、オレの戦いの都合で犠牲には出来ない…!!」
「遊戯…!」
遊戯はデッキの上に手を置こうと動き出す。これ以上進めても意味が見いだせなかった。
(オレのプライド1つの犠牲で杏子の命を救えるのなら…!)
『まって! もう1人のボク!!』
(…相棒!!)
『そうだ、サレンダーをしろ遊戯! お前は二度とデュエリストの道に戻れない! そして海の藻屑となれ!!』
マリクは自身の悲願が叶う瞬間を見れると笑みを浮かべる。
その習慣、遊戯の千年パズルが光だし、もう1人の遊戯と入れ変わる。
「…杏子、いやマリク! 今度はボクが相手だ!!」
「遊戯…!?」
「人格が入れ替わった!?」
「遊戯…覚悟を決めたのか…」
城之内は表遊戯の覚悟を見守るしかなかった。
『貴様は…器の遊戯! 早くひっこめ! 器の貴様を倒した所で悲願は達成されない…!』
「ここまでずっともう1人のボクに頼りっぱなしだった。だけどボクは君と戦う!」
「アンタに何が出来るのと! いつももう1人の遊戯に任せてばかりのアンタに!」
「杏子。そうだよね、ボクはいつも弱虫で臆病で、いつも杏子に助けられてばかりだった…!」
遊戯は杏子を見て覚悟の表情を浮かべる。
「だけど今度はボクが杏子を救う番だ! 杏子を救い、〈オシリスの天空竜〉を倒す!! ボクのターン、ドロー!」
沈黙を破り、大切なものを守るため、彼は歩み出す。