フリーザ、ヒーローになる ~宇宙の帝王がワンパンマン世界に墜ちた結果~ 作:&劉
フリーザは悪人である。世間がどれほど彼をヒーローとして持ち上げ、フリーザ・コーポレーションの活動によって救われた人間が増えようとも、その本質まで善人へ変わったわけではない。
怪人を討伐し、犯罪組織を潰し、災害が起これば救助部隊を派遣する。宇宙航路を整備し、異星文明との交易を始め、最近では別宇宙との技術交流まで進めているため、過去を知らない人間だけを集めれば、「少々性格に難はあるが、圧倒的に頼れるヒーロー兼経営者」という評価さえ珍しくなくなっていた。
しかし、宇宙の頂点に立ちたいという欲望は消えていない。第七宇宙だけでなく、機会があるなら第六宇宙、その先に存在する宇宙まで自分の影響下へ置きたいと考えており、変わったのは目的ではなく、そこへ至るために選ぶ手段だった。
地球で会社を経営する以上、この星のことを知らないままでは損をする。その程度の理由から、フリーザは法律、商習慣、経済制度、企業経営について一通り頭へ叩き込んでいたが、その中で思いのほか興味を引かれた分野が一つあった。
歴史である。
地球の歴史には、フリーザにとって見慣れた言葉がいくつも登場した。支配、植民地、戦争、資源、領土といったものは、かつて惑星を売買していた彼からすれば特に珍しくもなかったが、その過程を調べているうちに面白い共通点へ気づいた。
最初から軍隊だけで全てを奪った例ばかりではない。まず交易から入り、相手へ商品を売り、逆に資源を買い、やがて経済や政治へ影響力を持つようになる。そして最終的には、こちらとの関係を切れば相手の側が困るところまで依存関係を作り上げる。
フリーザは、その方法を非常に気に入った。
昔なら欲しい惑星があれば征服し、抵抗する者は殺し、必要なら住民そのものを入れ替えていた。それでも支配は成立するが、壊したものを一から作り直すには金も人材も時間も必要になる。
会社という形を使えば、もっと効率よく同じ場所へ到達できる。交易から入り、支部を建て、雇用と技術を与え、治安まで改善し、その星の人間レベルそのものを引き上げればいい。
それを第七宇宙で繰り返し、第六宇宙でも繰り返し、やがて他の宇宙でも続ける。各宇宙の文明がフリーザ・コーポレーションなしでは困るほど発展してしまえば、フリーザを消すという行為そのものが宇宙全体へ損害を与えるようになる。
そうなれば破壊神ですら、簡単には自分を排除できない。少なくとも、「気に入らないから消す」という程度の判断では済まなくなる。
新ナメック星との交易は、その構想の中ではまだ小さな一歩にすぎない。それでもフリーザにとっては、自分の新しい支配の形がどこまで通用するのかを試す、実に興味深い最初の一歩だった。
◇
フリーザ・コーポレーションの宇宙船が新ナメック星へ着陸してから、まだ数分しか経っていなかった。それでもピッコロたちは、船内から見た映像以上に深刻な事態が起きていることをすぐに理解した。
「これは……」
かつて穏やかな草原が広がっていたはずの大地へ、銀色の構造物が深々と食い込んでいる。巨大な金属管が地面を這い、建物とも工場とも判別しづらい施設が遠くの山まで連なっており、まるで星そのものへ機械が根を下ろしているようだった。
さらに、その機械群の間を何百体ものロボット兵が動き回っている。どれもほぼ同じ外見をしており、銀色の身体と無機質な顔を持ち、腕や胸部には明らかに戦闘用と思われる武装が組み込まれていた。
村では、すでに何人ものナメック星人が捕らえられていた。両腕を掴まれて機械施設へ連行される者もいれば、必死に逃げる子供や老人を守るため、若いナメック星人たちがロボット兵へ立ち向かっている場所もある。
「村から出ていけ!」
一人の若者が拳を振り抜いた。
拳はロボット兵の腹部へ確かに直撃したものの、返ってきたのは重い金属音だけだった。ロボット兵の身体はほとんど揺れず、逆に振るわれた腕で若者の身体が簡単に弾き飛ばされる。
「ぐあっ!」
地面を転がった若者へ、別のロボット兵が歩み寄った。右腕が変形し、内部から現れた砲口が倒れているナメック星人へ向けられる。
「やめろ!」
青白い光が放たれたが、その砲撃が若者へ届くことはなかった。いつの間にか間へ割り込んでいた黄色いスーツの男が、胸でその光線を受け止めていたからだ。
「お」
サイタマは自分の胸元を見た。服には多少煤が付いたものの、本人には傷一つない。
ロボット兵の機械眼が一度だけ明滅した。
『TARGET UNKNOWN』
「これ、機械だよな?」
サイタマは目の前のロボット兵を見上げた。
「だったら手加減いらないよな」
返事を待つ必要もなかった。普通のパンチが胸部へ触れた瞬間、ロボット兵の上半身が吹き飛び、残った破片だけが数十メートル後方の機械施設へ突き刺さった。
「うわ、思ったより壊れた」
「先生、その判断で問題ありません」
ジェノスの両掌が発光し、その照準が複数のロボット兵を捉えた。
「敵性機械である以上、人質を巻き込まない範囲で完全破壊します」
「私もそれでいいわ。こんなの一体ずつ丁寧に相手してられないし」
タツマキの身体を緑色の光が包み、近くにいたロボット兵が何体もまとめて宙へ浮かび上がった。
『同意する。敵性機械群の殲滅を開始する』
メタルナイトの無人機も前へ出た。
ピッコロは一瞬だけ仲間たちを確認すると、すぐに周囲のナメック星人へ意識を戻した。戦う者は十分にいる以上、自分はまず住民を安全な場所へ逃がすべきだと判断した。
「俺たちは助けに来た! 動ける奴は子供と怪我人を村の中心へ集めろ。ロボット兵は俺たちが引き受ける!」
一人のナメック星人がその声を聞き、ピッコロを振り返った。最初は信じられないものを見たような顔をしていたが、やがてその表情に喜びが広がっていく。
「あなたは……ピッコロ!」
「ピッコロさんだ!」
「地球から来てくれたのか!」
周囲にいた者たちにも声が広がり、張り詰めていた空気が少しだけ緩んだ。ピッコロもそれを見て僅かに表情を和らげたものの、すぐに言わなければならないことを思い出す。
「ああ。ただし、ここまで来られたのは、こいつがいたからだ」
「こいつ?」
ピッコロが横へ視線を向けると、ナメック星人たちもつられるようにそちらを見た。
白と紫の身体、細い尾、赤い目、そして口元に浮かぶ余裕の笑み。三十年以上経とうと、ナメック星人という種族が忘れられるはずのない姿がそこに立っていた。
「……フリーザ?」
誰かが名前を口にした瞬間、周囲の空気が変わった。老人も若者も、そして事情を直接知らない子供たちまで、大人たちの反応からただならぬ相手だと察して身を固くする。
当然の反応だった。旧ナメック星で何があったのかを直接知る者もいるし、その時代を知らない者であっても、自分たちの故郷を滅ぼした者の名くらいは聞いている。
「ほっほっほっ。お久しぶり、と申し上げるべきでしょうか」
「お前……!」
一人のナメック星人が拳を握った。
しかし、その背後から別のロボット兵が飛びかかっていた。ピッコロが動こうとした時には、フリーザの腕がすでに無造作に後ろへ振られている。
ただの裏拳だった。
フリーザは振り返りすらしなかったが、直撃したロボット兵は砲弾のような速度で吹き飛んだ。その先にいた別の兵を一体、二体と巻き込み、最後には十体以上をまとめて機械施設へ叩き込み、大きな爆発を起こす。
炎と金属片が空へ噴き上がる中で、フリーザはようやく振り返った。
「どうやら、ご挨拶は後にした方がよさそうですね」
そう言ってから、警戒するナメック星人たちへ改めて笑顔を向ける。
「助けに来ましたよ」
誰もすぐには信じなかった。
「本当に……?」
年老いたナメック星人が恐る恐る問いかけた。
「フリーザが、我々を?」
「本当だぞ」
最初に答えたのはサイタマだった。襲ってきたロボット兵の頭部を殴り飛ばしながら、いつも通りの平坦な声で続ける。
「こいつ性格悪いけど」
「余計な一言ですね、サイタマさん」
「今回は助けに来た」
少し離れた場所では、タツマキが数体のロボット兵を念動力でまとめて持ち上げていた。空中で一気に圧力を掛けると銀色の装甲が軋み、そのまま何体かが押し潰される。
「一応、そこは本当よ。まあ、理由はかなり金絡みだけど」
タツマキは潰した機体を地面へ落とそうとして、僅かに眉を寄せた。
「……何こいつら。思ったより硬いじゃない」
「同感だ」
ジェノスの焼却砲が三体をまとめて飲み込んだ。爆炎が晴れると二体は動かなくなっていたが、残った一体は片腕を失いながらも立ち上がろうとしている。
「通常の機械兵としては耐久力が異常に高い。単純な量産兵と仮定するなら、材質か内部構造のどちらかに特殊な技術が使われている」
『構造材を解析中だが、既知の地球製合金とは一致しない』
メタルナイトの無人機が両腕から小型弾を連射し、傷ついたロボット兵を完全に破壊した。
「それでも壊せるんだろ?」
サイタマが聞く。
『問題ない』
「ならいいや」
サイタマはもう一体を普通に殴り、今度は残骸すらほとんど残さなかった。
ピッコロも戦場全体を確認しながら、ナメック星人たちへ向き直った。
「少なくとも、助けに来たという点では嘘じゃない。俺も一緒にいるから、今だけはそれで信用してくれ」
ナメック星人たちの警戒はまだ消えていなかった。それでも、目の前でロボット兵を破壊し、自分たちを守っていることもまた否定できない事実だった。
「なあ」
サイタマが、近くにいたナメック星人へ声をかけた。
「色々あったのは分かる。フリーザを許せとか、そういうことを言う気はないけど」
背後から迫ったロボット兵へ振り返りもせず裏拳を当て、頭部を吹き飛ばしてから続ける。
「助けに来たのは本当だから」
その言葉を聞いていた一人の老人が、ゆっくり前へ出た。他の者よりやや大柄で、手には杖を持っており、周囲のナメック星人たちが自然に道を開ける様子からも、この集落でどのような立場にいる者なのかは分かった。
現在の長老はしばらくサイタマではなく、遠くでロボット兵を尾だけで吹き飛ばしているフリーザを見ていた。やがて視線を戻し、落ち着いた声で言う。
「恩に着る。ありがとう」
「……いいのか?」
むしろサイタマの方が驚いた。
「何がだ?」
「いや、昔あいつに色々されたんだろ?」
「ああ」
長老は否定しなかった。むしろ、その言葉を誤魔化さないように一度だけ強く頷いた。
「恨みはある。怒りもあるし、起きたことを忘れたわけでもない」
サイタマは何も言わず、続きを待った。
「だが、その恨みをいつまでも抱き続け、子へ渡し、さらにその子へ渡して、未来にまで新しい争いを残すことが正しいとは思わない」
周囲の若いナメック星人たちも、静かに長老の言葉を聞いている。
「我々は、そんな愚かな種族ではない」
長老は胸を張り、迷いのない声で言い切った。
サイタマは僅かに目を見開いた。少し離れた場所で戦っていたタツマキとジェノスにも、その言葉は聞こえている。
「……そっか」
それだけ答えたサイタマだったが、長老を見る目は明らかに変わっていた。タツマキも何も口にはしなかったものの、素直に格好いいと思ったらしく、僅かに口元を緩める。
「極めて理性的な判断だ」
ジェノスも簡潔に感想を述べた。
ピッコロは何も言わず、静かに頷いた。同族として誇らしく思う気持ちはあったが、それをわざわざ口へ出す必要はないと思った。
その瞬間、少し離れた場所で巨大な爆発が起こった。十数体のロボット兵がまとめて吹き飛ばされ、その中心に立っていたフリーザが煙の向こうからゆっくりこちらを振り返る。
そして。
実に嫌らしい笑みを浮かべた。
「ね?」
サイタマの顔が引きつった。
「だから言ったでしょう?」
ピッコロは目を閉じた。
タツマキは額へ手を当て、ジェノスも何とも言えない表情でフリーザを見ている。事情を知らない長老だけが、少し首を傾げた。
「何の話だ?」
「聞かなくていい」
ピッコロが即答した。
「本当に聞かなくていいぞ」
サイタマも続ける。
「こいつ昨日、ほぼ同じこと言ってたんだよ」
「何を?」
「『ナメック星人は過去を引きずって争うような愚かな種族じゃない』って」
タツマキの説明を聞き、長老はゆっくりフリーザを見た。
当の本人は満面の笑みを浮かべている。
「ほっほっほっ」
長老の表情が初めて微妙なものへ変わった。
「ね? だから言ったでしょう?」
「うっざ……」
タツマキの声が露骨に低くなった。
「ほんと性格悪いな」
サイタマも少し引いている。
「先生、同感です」
ジェノスまでためらいなく頷いた。
ピッコロは拳を握った。
「俺は昨日の時点で一発殴っておくべきだったかもしれん」
「皆さん、なぜ怒っているのです?」
「自分で考えろ!」
◇
『戦闘中に悪いが、指示を出す』
メタルナイトの無人機からボフォイの声が響いた。
周囲ではまだ大量のロボット兵が動き続けている。最初に地上へいた数百体の大半を破壊したはずなのに、銀色の施設から新たな兵が次々と吐き出されており、このまま一体ずつ倒し続けるのは効率が悪い。
『数が多い。可能な限り一か所へ集めろ』
「何で私があんたの指示を聞かなきゃいけないのよ!」
タツマキがロボット兵を十体まとめて地面へ叩きつけながら反発した。
『効率がいい』
「だったら自分でやりなさいよ」
「待て」
ジェノスが割って入った。
「何らかの広域攻撃を使うつもりか?」
『ある』
返事は即答だった。
「どの程度の出力だ?」
『見れば分かる』
「その言い方ムカつく」
タツマキが無人機を睨む。
少し離れた場所でロボット兵を地面へ叩きつけていたフリーザは、そのやり取りを聞いて楽しそうに笑った。
「言う通りにしてください」
「何でよ!」
「効率がいいからですよ」
「まさか、あんた知ってるの?」
「ええ」
「何を?」
「見れば分かります」
「二人して同じこと言うな!」
怒鳴りながらも、タツマキは結局指示に従った。緑色の光が一気に広がり、数十体のロボット兵がまとめて宙へ持ち上げられる。
「ほら!」
そのまま一か所へ投げ込む。
サイタマも意図を理解すると、近くにいるロボット兵の前へ出た。
「ここでいいの?」
『そこだ』
「じゃあ、こっち来い」
数十体のロボット兵が一斉にサイタマへ向かってくる。普段なら一発で片づけるところだが、今回は適当に攻撃をかわしながら後退し、敵を指定された場所へ誘導していった。
「こんな感じ?」
『十分だ』
ジェノスも焼却砲の出力を抑え、敵を倒すのではなく進路を限定する。ピッコロも左右へ気弾を撃ち込み、ロボット兵が別方向へ逃げられないように追い立てていった。
フリーザだけは妙に楽しそうだった。尾で一体を弾き飛ばして別の一体へぶつけ、敵が自分を標的にするようわざと目立つ位置へ立つ。
「皆さん、こちらですよ」
挑発に反応したロボット兵が次々と集まり、やがて数は百を越え、さらに二百近くまで膨れ上がった。
『十分だ』
その一言と同時に、メタルナイトの無人機が一気に上空へ飛び上がった。
「何する気だ?」
サイタマが空を見上げる。
直後、ジェノスのセンサーが異常なエネルギー上昇を検知した。
「高エネルギー反応!」
無人機の内部で、さきほどまでとは比較にならない出力が急速に増大していく。ジェノスの目が見開かれた。
「これは……先ほどまで使用していた兵装とは出力が違う」
「皆さん、一応防御姿勢を」
フリーザがそう言った本人は、まったく構える様子を見せなかった。
「お前はしないのか!」
ピッコロが怒鳴る。
「必要ありませんので」
「腹立つな!」
タツマキは文句を言いながらも、周囲にいるナメック星人たち全員を包む巨大なバリアを展開した。ジェノスとピッコロも身構え、サイタマだけは特に警戒する様子もなく空を見上げている。
上空ではメタルナイトの無人機の両腕が変形していた。外装が左右へ展開し、その内部から巨大な砲口が姿を現す。
その形を見た瞬間、ピッコロの表情が変わった。
「……まさか」
昔、一度だけ見たことがある。
完全な機械の身体。
緑色の服。
無口で穏やかな人造人間。
メタルナイトの無人機は両腕を一度上方向へ大きく開き、そのまま砲口を眼下へ集められたロボット兵へ向けた。
『ヘルズフラッシュ』
視界が白く染まった。
直後、凄まじい轟音とともに二条の巨大なエネルギーが上空から地上へ降り注いだ。集められた百体以上のロボット兵が一瞬で光に飲まれ、大地そのものが大規模に爆発する。
巨大な火柱が空へ伸び、衝撃波が周囲の山々まで揺らした。タツマキのバリアにも強烈な圧力が叩きつけられ、彼女の表情に初めて明確な驚きが浮かぶ。
「ちょっと! 何よ、この威力!」
ジェノスもセンサーに表示される数値を見て目を見開いていた。
「出力が予測値を大幅に上回っている……」
サイタマも珍しく少しだけ目を大きくした。
「おー。結構すごいな」
ピッコロも一瞬だけ懐かしいと思った。姿も使用者も違うが、あの構えと攻撃だけは間違えようがなかった。
しかし次の瞬間、もっと重要なことを思い出した。
「待てぇぇぇ!!」
ピッコロの叫びに全員が振り返る。
「ナメック星の水は!? 野菜は!? 木も土も、お前ら第一次産業が欲しいんじゃなかったのか!!」
巨大な爆炎が上がっている場所を指差しながら叫ぶピッコロに対し、メタルナイトは驚くほど冷静だった。
『問題ない』
「何が問題ないんだ!」
『攻撃範囲は事前に計算している。農地、水源、居住区、森林に対する直接被害はない』
「……何?」
やがて煙が薄くなり、攻撃跡が見えてきた。
地面には巨大な穴が空いている。
しかし、周囲の農地は無傷だった。
水源も。
近くの村も。
森林も。
破壊されたのは、集められていたロボット兵と、その真下にあった機械構造物だけである。
「……」
ピッコロはしばらく何も言えなかった。
「すご」
サイタマが巨大な穴を覗き込む。
タツマキもさすがに感心したようだった。
「あんな出力で、そこまで範囲を絞ったの?」
『当然だ』
ジェノスは無人機を見る目をさらに真剣なものへ変えた。
「単純な威力だけではない。エネルギー制御も以前より大幅に向上している」
『永久エネルギー炉の解析過程で得た制御技術を、一部転用した』
「なるほど」
フリーザは満足そうに笑った。
「素晴らしい成果ですね」
その時だった。
「やはり、貴様らか」
背後から聞こえた低い声に、フリーザの笑みが止まった。
聞き覚えがある。
あまりにもよく知っている声だった。
フリーザはすぐには振り向かなかった。ほんの僅かな時間だけ動きを止めた後、ゆっくりと背後へ視線を向ける。
ピッコロも、サイタマも、ジェノスも、タツマキも、そしてメタルナイトの無人機も同じ方向を見た。
そこに、一人の男が立っていた。
銀色の身体。
赤い瞳。
顔の輪郭も。
体格も。
間違えようがない。
「まさか……」
フリーザの目が大きく開いた。
その男は、金属の足でゆっくり一歩前へ出た。
「どうした、弟よ」
赤い瞳がフリーザだけを捉える。
「まるで死人でも見たような顔だな?」
フリーザは笑っていなかった。
三か月前。
確かに倒した。
自分自身の手で、クウラの放ったスーパーノヴァを押し返し、その身体ごと宇宙の彼方へ吹き飛ばした。
生きているはずがない。
少なくとも。
あのままなら。
「兄さん……?」
銀色の男の口元が、ゆっくりと吊り上がった。
クウラ。
いや。
かつてのクウラとは違う。
肉体の大半を金属へ変え、死んだはずの最凶の兄が、まるで何事もなかったかのように弟の前へ立っていた。
メタルクウラは、驚愕するフリーザを眺めながら楽しそうに笑った。
「久しぶりだな、フリーザ」