フリーザ、ヒーローになる ~宇宙の帝王がワンパンマン世界に墜ちた結果~ 作:&劉
新ナメック星の大地に立つ銀色の男を前にして、フリーザは珍しく言葉を失っていた。三か月前、自分は確かにクウラを倒した。兄が放った巨大なスーパーノヴァを真正面から押し返し、その身体ごと宇宙の彼方へ吹き飛ばした以上、少なくともこうして五体満足で再会する可能性など考えていなかった。
ところが、目の前にいるクウラには三か月前の傷一つ残っていない。それどころか、生身だった肉体そのものが光沢を帯びた金属へ置き換わり、以前とは明らかに異質な力が全身から静かに漏れ出していた。
「兄さん……?」
「どうした、フリーザ。まるで死人でも見たような顔だな?」
クウラは弟の反応を楽しむように笑った。ピッコロたちも周囲に残っていたロボット兵への警戒を続けながら、突然現れた銀色の男へ意識を向けている。
「こいつがクウラか?」
サイタマだけは以前の姿を直接知らないため、銀色の身体を興味深そうに眺めながら首を傾げた。ジェノスとメタルナイトの無人機は会話より先に、すでにその機械化された肉体の解析を開始している。
「ええ。三か月前に、わたくしが宇宙へ捨てたはずの兄さんですよ」
「人をゴミのように言うな、弟よ」
「事実でしょう?」
クウラは気分を害した様子もなく、自分の銀色の腕をゆっくり持ち上げた。その金属製の指を開閉しながら、三か月前に何が起きたのかを語り始める。
「あの時のお前の攻撃は見事だった。全身の大半を失い、意識も消えかけたまま宇宙を漂っていたからな」
「それで?」
「あのままなら死んでいただろう。だが、オレは見つけられた」
クウラは背後に広がる銀色の構造物へ視線を向けた。新ナメック星の大地へ根を張った巨大な機械群は、今この瞬間にも地中へ管を伸ばしながら領域を拡大している。
「ビッグゲテスターにな」
『ビッグゲテスター?』
メタルナイトの無人機が僅かに動いた。聞き慣れない名称だったが、目の前の機械群との関係は容易に想像できる。
「宇宙を漂流しながら、機械や資源を取り込み、自らを拡張し続ける巨大な機械惑星だ。いつ生まれ、誰が最初に造ったのかは、今となってはオレにも分からん」
クウラは自分の胸へ手を当てた。
「オレを拾ったのは、そこから送り出された一つの端末だった。死にかけていたオレへ取りつき、残っていた肉体と脳、記憶を読み取り、ビッグゲテスターへ接続した」
フリーザは三か月前の戦いの最後を思い返した。スーパーノヴァに飲み込まれた兄が宇宙の彼方へ消えたことまでは確認したが、その後に何が起きたのかまでは見届けていない。
「なるほど。つまり、その身体はビッグゲテスターとやらに作っていただいたというわけですか」
「その通りだ。失った肉体は機械によって再構築され、ビッグゲテスターの演算能力、自己修復機能、戦闘データ、そしてオレ自身の能力、その全てを組み合わせて生まれた身体がこれだ」
フリーザは兄を上から下まで眺め、それから小さく鼻で笑った。事情を理解したことで驚きは消え、その代わりにいつもの嫌味な笑みが戻ってくる。
「性懲りもなく戻ってきたうえに、今度は機械の力ですか。兄さんもずいぶん落ちたものですね」
「何?」
「プライドまで捨てましたか、と申し上げているのですよ。四か月もの修行であれだけ立派になったと思いましたのに、今度は他人の科学力へ縋って復讐とは、ずいぶん見苦しいことをなさる」
タツマキは少し離れた場所でその言葉を聞き、露骨に呆れた顔をした。ピッコロも同じような表情をしている。
「死にかけるまで追い込んだ本人が言う台詞?」
「フリーザだからな」
クウラは弟の挑発へ怒鳴り返すことなく、むしろ愉快そうに笑った。以前なら反応していたであろう言葉を受け流せる程度には、今回の力へ自信を持っているらしい。
「好きに言え。だが、オレはお前を超えた」
銀色の拳が強く握られる。
「このビッグゲテスターの科学力でな」
フリーザの笑みが消えた。次の瞬間には黄金の気が新ナメック星の大気を震わせ、白と紫だった身体が眩い金色へ変化していく。
「そういうのを――」
ゴールデンフリーザの全身から激しいオーラが噴き上がった。
「見苦しいって言うんですよ!」
地面が大きく抉れ、フリーザの姿が一瞬で消えた。加速を乗せた右拳はクウラの顔面を正確に狙っており、並の相手なら動いたことすら認識できない速度だった。
しかし、その拳は届かなかった。
「……何?」
クウラは左手だけで受け止めていた。腕も身体もほとんど動かず、ゴールデンフリーザの拳を掌へ収めたまま、何事もなかったように弟を見ている。
「そうかな? オレはそう思わんが」
「チッ!」
銀色の指が拳を締めつけてくる前に、フリーザは強引に腕を振り切った。そのまま後方へ距離を取ろうとした瞬間、視界からクウラの姿が消える。
「遅いぞ」
「!」
声が聞こえたのは真横だった。
クウラの拳が頬へ叩き込まれ、黄金の身体が横方向へ弾き飛ばされる。フリーザは空中で姿勢を立て直そうとしたが、その前にクウラが追いつき、腹へ深く拳を突き刺した。
「ぐっ!」
身体が折れたところへ肘が背中へ落とされ、フリーザは地上へ向かって弾かれた。ところがクウラは落下する弟より先にその軌道の先へ回り込み、下から顎を蹴り上げて再び上空へ吹き飛ばす。
「がっ!」
「まだ終わらんぞ!」
上空へ飛ばされた先にもクウラが待ち構えていた。回し蹴りが脇腹へめり込み、フリーザは岩山を一つ貫通した後、地面を削りながら数百メートル先まで吹き飛ばされた。
岩と土が盛大に噴き上がり、ようやく停止した場所には長い溝が刻まれている。その光景を見ていたサイタマが、少しだけ眉を上げた。
「かなり強いな、あいつ」
「戦闘速度、攻撃力ともに以前の記録を大幅に超過している。単なる機械化による耐久力の上昇ではない」
ジェノスの視界には大量の解析数値が流れ続けていた。
『身体能力そのものが増幅されている。反応速度も異常だ』
メタルナイトも淡々と分析を続ける。ピッコロは煙の向こうを見ながら、額に浮いた汗を拭おうともしなかった。
「冗談じゃないな。三か月前のクウラですら、とんでもない強さだったんだぞ」
煙の中で黄金の光が膨れ上がり、フリーザがゆっくり立ち上がった。口元を拭った指には少量の血が付いていたが、それを見ても表情に焦りは浮かばない。
「なるほど。遊んでいる場合ではなさそうですね」
その言葉と同時に、フリーザの身体が大きく膨れ上がった。肩、腕、胸を中心に全身の筋肉が密度を増し、莫大な黄金の気が肉体の内側へ押し込まれる。
フルパワーゴールデンフリーザ。通常のゴールデンを完全に上回りながら、かつてのような激しい消耗を起こさないよう制御された現在の全力だった。
「今度はこちらから行きますよ、兄さん」
「来い!」
二人の姿が同時に消えた。
◇
新ナメック星の空では、黄金と銀色の光が何度も交差していた。フリーザの拳をクウラが腕で受け、そのまま返された拳をフリーザが首を捻ってかわし、至近距離から膝を腹へ叩き込む。
クウラも身体を僅かに後方へ引いて衝撃を逃がし、すぐに両者が離れたかと思えば次の瞬間にはまた激突する。拳と拳、蹴りと腕がぶつかるたびに空気が破裂し、地上へ落ちる衝撃だけで岩盤へ亀裂が走った。
通常のゴールデンでは、一方的に押された。しかしフルパワーへ上げた今なら、少なくとも速さと力の両方でクウラと正面から渡り合えている。
「キィエエエエ!!」
フリーザが空中で身体を回転させ、尾を鞭のように振るった。クウラが腕を立てて受けた瞬間、その防御へ生じた僅かな硬直を利用し、フリーザは一気に懐へ潜り込む。
「ぐっ!」
右肘がクウラの胸へ入り、その身体が初めて大きく揺れた。フリーザは隙を逃さず腹、胸、顎へ連続で拳を叩き込み、最後の蹴りで兄を上空へ吹き飛ばす。
「まだですよ!」
フリーザがすぐに追撃する。クウラも空中で姿勢を立て直し、迎撃するのではなく自分から弟へ向かって突っ込んだ。
互いの額が真正面から激突し、二人とも僅かに後退する。直後にはクウラが再び加速し、戦場から両者の姿が消えた。
悟空ならまだ完全に追跡できる速度だっただろうが、この場にいるピッコロには点々と空中で衝撃波が生まれていることしか分からない。タツマキは気配を追いながら眉を寄せ、ジェノスのセンサーも何度か対象を見失っていた。
「今のフリーザと互角……?」
「少なくとも現段階では、そう見える。以前のクウラとは完全に別物だ」
ジェノスがそう答える横で、サイタマだけはかなり楽しそうに空を見上げている。
「結構いい勝負だな」
その瞬間、戦況が僅かに動いた。
クウラの蹴りをフリーザが左腕で受け止め、衝撃によって身体が一瞬だけ沈む。それでも後方へ逃げることなく、フリーザは右手の人差し指をクウラの肩へ向けた。
指先へ黄金の気が集中する。全身へ広げていた力の一部を極端に細い一点へ集約し、クウラが反応するより早く撃ち抜く。
「そこです!」
「!」
赤と黄金が混ざった細い光が右肩を貫通し、そのままクウラの右腕を根元から吹き飛ばした。
「やった!」
タツマキが思わず声を上げ、ジェノスのセンサーも破壊を確認する。
「右腕を完全破壊。再戦闘能力の低下を確認」
「さすが社長だ」
少し離れた場所で見ていたアマイマスクも僅かに笑った。
フリーザは距離を取り、右腕を失った兄へ人差し指を向けたまま笑う。
「いくら頑丈でも、壊れてしまえば終わりでしょう?」
クウラも笑っていた。
それを見たメタルナイトだけが、他の者より早く異変へ気づいた。
『いや。無意味だ』
「何?」
クウラの右肩に残った断面から、銀色の液体に似た物質が動き始めた。細い線が絡み合いながら骨格に相当する構造を作り、その外側へ筋肉を思わせる機構と装甲が形成されていく。
数秒後には、破壊したはずの右腕が完全に元へ戻っていた。クウラは再生した手を一度握って動作を確認すると、弟へ見せつけるように拳を構える。
「これは……厄介ですね」
「違う、フリーザ。厄介なのではない」
クウラの赤い瞳が細くなる。
「お前では、もう勝てないということだ」
フリーザの額へ僅かに青筋が浮いた。
「くだらないジョークは嫌いですよ、兄さん!」
両手の指先から、一斉に赤い光が放たれた。デスビームは十発、二十発と数を増しながらクウラを包囲し、回避する空間そのものを潰していく。
ところが、クウラは避けなかった。
先ほど再生したばかりの右手を前へ出し、最初のデスビームを掌で弾く。続く一撃も指先で払い、その後に殺到した光線まで次々と受け流していった。
「なっ……!」
フリーザの目が見開かれた。つい先ほど同じ攻撃で右腕を破壊したはずなのに、今度はその右手だけで全て処理されている。
「学習したのだ」
その言葉と同時にクウラの姿が消えた。フリーザが反応した時には真横へ回り込まれており、強烈な裏拳が頬へ叩き込まれる。
「ぐぁっ!」
黄金の身体が地上へ向かって吹き飛び、何度も大地を跳ねた。クウラは追撃せずにゆっくり降り立ち、再生した右手を弟へ見せる。
「オレはやられるたびに学習する。破壊された箇所を再生するだけではなく、同じ攻撃へ対応できるよう身体そのものを作り変える」
メタルナイトの無人機は沈黙したまま解析を続けている。
「これがビッグゲテスターの科学力だ。戦えば戦うほど、お前の攻撃はオレへ効かなくなる」
フリーザがゆっくりと立ち上がる。
「分かったか、弟よ。お前にもう勝ち目はない」
フリーザは口元の血を拭いながら、不機嫌そうに兄を見上げた。
「ずいぶん借り物の力で偉そうになりましたね」
「借り物?」
「ビッグゲテスターがなければ、あなたは今頃宇宙の塵でしょう?」
「否定はせん」
「でしたら――」
「だが、全てが全て借り物ではないぞ」
クウラの声とともに、銀色の身体から漏れ出していた気の性質が変わった。金属の装甲そのものが震え始め、その内部で莫大な力が急速に膨れ上がっていく。
「何?」
「こんなことだってできる!」
次の瞬間、クウラの全身から凄まじいエネルギーが爆発した。
◇
新ナメック星全体が大きく震えた。大地だけではなく、遠くの山々まで揺れ、湖には巨大な波が生まれ、大気そのものが低く唸り始める。
「なっ!?」
ピッコロが足を踏ん張り、タツマキも反射的に宙へ浮かび直した。ジェノスの視界では複数の警告表示が一斉に点灯している。
「超高エネルギー反応! 先ほどまでのクウラとは出力がまるで違う!」
「何よ……これ」
タツマキの髪が強烈な気圧によって逆立っている。サイタマもさすがに少し目を見開き、その変化を黙って見ていた。
銀色だったクウラの身体へ、内側から黄金の輝きが広がっていく。肩、胸、腕、脚と順番に色が変わり、最後には光沢のある金属の全身が眩い黄金へ染め上げられた。
それは三か月前、クウラが四か月の修行によって自ら掴んだゴールデンクウラと同じ変化だった。違うのは、その力を宿している器が、自己修復と戦闘学習能力まで備えた機械の肉体になっていることだけである。
「兄さん……」
フリーザも思わず目を見開いた。
「どうだ、フリーザ。これなら借り物だけとは言えんだろう?」
黄金の機械となったクウラが拳を握る。その姿を見た一同の間に、珍しく同じ種類の沈黙が流れた。
「……金色増えたな」
最初に口を開いたのはサイタマだった。
「そこ!?」
タツマキが反射的に突っ込んだ瞬間、ゴールデンメタルクウラの姿が消えた。
「!」
フリーザの顔が横へ弾けた。
「がっ!」
攻撃されたと気づいた時には、すでに次の拳が正面から迫っていた。フリーザは両腕を上げて防御したが、腕ごと顔面へ押し込まれるほどの衝撃を受ける。
続いて腹へ膝が入り、身体が折れたところへ肘が背中へ落とされる。フリーザは地上へ向かって吹き飛ばされたが、そこへ到達するより早くクウラが追いつき、今度は蹴りで再び空へ弾き上げた。
「くっ!」
フリーザは空中で拳を振るったものの、完全な空振りに終わった。背後へ回り込んだクウラの蹴りがそのまま背中へ入り、黄金の身体が地面へ叩きつけられる。
フルパワーゴールデンでさえ、防戦一方だった。
「差が広がりすぎている……」
ピッコロが冷たい汗を流す。
「速度上昇率が異常だ。フリーザが完全に後手へ回っている」
ジェノスも戦闘データを追い続けていた。
ゴールデンメタルクウラが地面へ突っ込み、倒れているフリーザへ拳を叩き込もうとした時、その横から黄色い影が割り込んだ。
「普通のパンチ」
「!」
サイタマの拳が、ゴールデンメタルクウラの頬へ直撃した。
今度はクウラの身体が猛烈な速度で吹き飛んだ。一つ目の山を貫通し、そのまま二つ、三つと岩山を突き抜け、遥か遠方で巨大な爆発を起こす。
サイタマは拳を握ったまま、その方向をじっと見ていた。
「結構ちゃんと殴ったけど……」
爆煙の中から黄金の人影が浮かび上がる。
「意味ないか」
ゴールデンメタルクウラは、ほとんど傷ついていなかった。頬の装甲が僅かに歪んでいたものの、それも歩いてくる間に銀色の物質が広がって元の形へ戻っていく。
「貴様……弟の仲間か」
クウラが初めてサイタマへ強い興味を向けた。
「まあ、そんな感じ」
「面白い。なら貴様も――」
クウラが言い終える前に、新たな機械音が周囲から響き始めた。
銀色の施設から大量のロボット兵が現れている。先ほどメタルナイトがまとめて吹き飛ばした数を補うかのように、地上だけでなく空からも増援が押し寄せてきた。
「ちょっと! まだ出てくんの!?」
タツマキが振り返り、念動力で数十体をまとめて吹き飛ばす。しかしその後ろから、ほとんど間を置かず次の集団が現れた。
ジェノスの焼却砲が横一列を薙ぎ払い、ピッコロも気弾を連射して進路を塞いでいく。それでも広範囲から次々と現れるロボット兵の数は減らず、戦闘に集中すればナメック星人を狙う個体が出てくる。
「多すぎる! サイタマ、そいつは任せる。こっちは住民を守るぞ!」
「分かった」
サイタマがゴールデンメタルクウラの前へ立ち直る一方で、メタルナイトの無人機だけは積極的にロボット兵の迎撃へ加わらなかった。クウラと周囲の機械構造物へ視線を向け、再生速度、戦闘適応、エネルギー量、そしてビッグゲテスターとの接続状況を解析し続けている。
地面へ叩きつけられていたフリーザも立ち上がり、その様子に気づいた。
「メタルナイトさん」
『時間を稼げ』
「何?」
『まだ解析が終わっていない。奴は単独で完結した存在ではない』
フリーザはゴールデンメタルクウラへ視線を戻した。
「ビッグゲテスターとの接続ですか」
『そうだ。再生も戦闘学習も、本体側の演算能力と無関係ではないはずだ』
「弱点を探している、と?」
『そうだ』
「どのくらいかかります?」
『分からん』
「役に立ちませんね」
『なら死ぬな』
フリーザの口元へ、少しだけ笑みが戻った。
「誰に言っているのです?」
そこでメタルナイトは僅かな間を置き、さらにもう一つ指示を出した。
『それと、まだアレを使うな』
フリーザの表情が一瞬だけ止まった。すぐ近くにいたサイタマも横目でフリーザを見ているため、その「あれ」が何を意味するのかは理解していた。
ブラックフリーザ。
クウラはまだ、その姿を知らない。
「……ほう。なぜです?」
『奴は戦闘中に学習している。今アレを見せれば、その戦闘データまでビッグゲテスターへ渡る可能性がある』
フリーザはしばらく何も言わず、目の前の兄を見た。
『切り札を使うのは、相手の仕組みを把握してからにしろ』
「なるほど。それは一理ありますね」
フリーザは再び身体へ力を入れ、フルパワーゴールデンの出力を維持したまま立ち上がった。
「いいでしょう」
ゴールデンメタルクウラも、サイタマ越しに弟へ視線を向けた。
「相談は終わったか?」
「ええ」
「なら来い。二人まとめて相手をしてやる」
フリーザは返事をせず、隣に立つサイタマへ顔を向けた。その表情には、先ほどまでとは違う種類の笑みが浮かんでいる。
「サイタマさん!」
「何?」
「わたくしを投げ飛ばしなさい!」
サイタマは少しだけ眉を寄せた。
「どこに?」
フリーザは迷うことなく、真正面に立っている兄を指差した。
「兄さんに決まっているでしょう!」
サイタマはフリーザとクウラを交互に見てから、もう一つだけ確認した。
「全力?」
フリーザの笑みが、さらに深くなる。
「もちろん」
その答えを聞いたゴールデンメタルクウラが、僅かに眉を動かした。
そしてサイタマは、何をするつもりなのか理解した様子もないままフリーザの足を掴んだ。対するフリーザは全身へ黄金の気を集中させ、兄へ叩きつけられる瞬間を待つように身体を一直線に伸ばしていた。