フリーザ、ヒーローになる ~宇宙の帝王がワンパンマン世界に墜ちた結果~ 作:&劉
メタルクウラとの戦いから数か月が過ぎた頃、フリーザ・コーポレーションの活動範囲は、すでに一つの宇宙だけで収まらなくなっていた。第七宇宙で始まった事業は第六宇宙との交易へ広がり、宇宙間を往来する巨大宇宙船の建造計画も進み、フリーザ自身も「別宇宙へ会社を置く」という構想を、もはや夢物語ではなく現実的な経営計画として扱い始めている。
次にフリーザが目を付けたのは、第九宇宙だった。力の大会以前から決して豊かな宇宙とは言えず、文明水準も人間レベルも低いが、未開発の惑星が多いぶん地中資源には手つかずのものが多く、第六宇宙や第七宇宙では入手しづらい鉱石まで確認されている。
それだけでも、フリーザにとっては十分だった。しかも今回に限って言えば、単なる商談以上に便利な材料が、すでに向こうの側から揃えられている。
◇
第九宇宙、破壊神の星。普段なら部外者が気軽に訪ねられる場所ではないが、その日は中央に長いテーブルが用意され、第九宇宙側には破壊神シドラ、界王神ロウ、天使モヒイトが座り、その向かいにはフリーザ、第六宇宙の破壊神シャンパ、そして天使ヴァドスが並んでいた。
同じテーブルへついているからといって、全員が同じ気分でこの場へ臨んでいるわけではない。フリーザは最初から上機嫌で、シャンパも何か面白いものを見物しに来たような嫌な笑みを浮かべている一方、ヴァドスとモヒイトはいつもと変わらない穏やかな表情を崩していなかった。
問題は残る二人だった。シドラは落ち着いているように見せながら先ほどから何度も指を組み直し、ロウも背筋だけは真っ直ぐに伸ばしているものの、額へ浮かんだ汗の量は隠しようがない。
「ふ、フリーザ……今日は交渉ということで、よいのだな?」
「もちろんです」
フリーザは実ににこやかに答えた。その笑顔が余計に不安を煽っていることなど、本人は分かった上でやっている。
「わたくしとしても、昔の些細な行き違いなど、いつまでも引きずるつもりはありません。過去のことはお互い水に流し、今後のために、より実りあるお話ができればと思っております」
「些細な行き違いだと!?」
ロウが思わず身を乗り出した。
「そもそも貴様の方から、こちらへ取引を持ちかけてきたではないか!」
「おい」
横から低い声が飛び、ロウの動きが止まった。シャンパは椅子へ深く腰掛けたまま、いかにも待っていましたとばかりに口の端を吊り上げる。
「証拠あんのかよ?」
「な、何?」
「だからさ。フリーザがそんなこと言ったっていう証拠、あんのかよ。ああん?」
「あるに決まっているだろう!」
ロウは完全に売り言葉に買い言葉となって立ち上がった。
「お前は自分を引き抜きこちらへ――」
「言ってませんよ」
「なっ……!」
フリーザは穏やかな口調のまま、ロウの言葉を遮った。
「わたくしは、そのようなことは一言も申し上げておりません」
「貴様!」
「ですが、今のお話には非常に興味深い部分がありますね」
その言葉と同時に、フリーザの笑みが僅かに深くなった。ロウもそこで初めて、自分が何を口走ったのかに気づいたらしい。
「……何のことだ」
「当時、わたくしと通信したことですよ」
テーブルの周囲が静かになった。シドラがロウを見て、ロウがシドラを見返す中、シャンパだけはますます楽しそうに二人を眺めている。
「シドラ様。通信そのものがあったことは、お認めになりますね?」
「あ……ああ」
シドラは一瞬迷ったものの、ここで否定しても仕方がないと判断したらしい。
「通信そのものは、確かにあった」
「ありがとうございます」
フリーザは満足そうに頷いた。
「でしたら、少々妙な話がありましてね」
「何がだ?」
「その通信の直後、あなたの通信機を持った何者かが、破壊神の『破壊』のエネルギーを所持した状態で地球へ現れました」
シドラの頬が引きつった。フリーザはその変化を眺めながらも、一切口調を変えず続ける。
「わたくしと孫悟空さんは、そのエネルギーによって危うく死にかけています」
「そ、それは……」
「ちなみに、この件はビルス様とウィスさんもご存じです」
今度はシドラだけでなく、ロウの表情まで完全に固まった。そこへヴァドスが、普段通りの柔らかな笑顔を浮かべたまま口を挟む。
「ええ。わたくしもウィスさんから伺っていますよ」
「ヴァドスまで……」
「破壊のエネルギーを持った刺客が地球へ向かったこと、それによって悟空さんとフリーザさんが危険な状態になったことまでは、わたくしも確認しております」
モヒイトはシドラの方を見たものの、特に助け舟を出そうとはしなかった。天使が何も言わないという事実が、かえってシドラとロウの不安を大きくしている。
「困るのですよねえ」
フリーザは椅子へ深く腰掛け直した。
「何がだ」
「考えてみてください。あの時、わたくしと孫悟空さんが本当に死んでいたら、どうなっていたでしょう?」
誰も答えなかったため、フリーザはそのまま先を続ける。
「全王様がわざわざ開催された力の大会へ、第七宇宙の代表選手が二人も出場できなくなるところでした。しかも孫悟空さんは全王様のお気に入りです」
シドラとロウは沈黙したままだった。反論しようにも、それが事実である以上どうしようもない。
「その原因はシドラさん。あなたから流出した『破壊』のエネルギーでしたね。
さらに言うなら、あなたはその場で認めた」
「待て!」
ロウが慌てて口を開く。
「仮に流出したものだとしても!そ、そいつらと我々は何の関係もない…!」
「ええ。その可能性もあります。ですから、わたくしもあなたがたが何かをした、などと決めつけてなどいませんよ」
「そ、そうだろう!」
ロウは露骨に安堵したが、フリーザはそこで話を終わらせなかった。
「この件は全王様には、『まだ』お話ししていません」
シドラの肩が目に見えて跳ねた。ロウも今度こそ完全に黙り込み、フリーザが強調した一語の意味を考えている。
「……まだ?」
「ええ。まだ、です。以前はチクらないと言いましたが気が変わりそうでして。今の私の話ならば全王様もむげにはなさらないかもしれません」
フリーザは笑顔のまま頷いた。
「そしてビルス様にも、あなた方と通信を行ったことまではお話ししておりません」
その横で、シャンパが待っていましたとばかりに身を乗り出した。
「なあ、シドラ」
「な、何だ」
「オレから兄貴に話してやってもいいんだぜ?」
「何をだ!」
「全部に決まってんだろ」
シャンパは本当に楽しそうだった。弟が兄の名前を持ち出すだけで、シドラの顔色がさらに悪くなっていく。
「最近の兄貴、前より多少は丸くなったけどよ。こういう話を聞いた時にどうなるかは、オレも知らねえなあ」
「シャンパ様」
ヴァドスが微笑みながら声をかける。
「楽しんでいらっしゃいますね?」
「別に?」
「お顔には、かなり出ていますけれど」
「細けえこと言うなよ」
シャンパは気にする様子もなく、さらに胸を張った。
「それによ、最近はオレも全王様と結構仲いいんだからな!」
ヴァドスの笑顔がほんの少しだけ微妙なものへ変わった。
「そこまで親密かどうかは、わたくしからは何とも申し上げられませんけれど」
「いいんだよ!」
「はいはい」
シドラは何も言わなくなった。ロウも同様で、最初から自分たちにとって不利な交渉だとは分かっていたものの、想像していた以上に逃げ道がないらしい。
「……何が望みだ?」
ロウがようやく絞り出すように尋ねる。
フリーザは、そこで初めて本当に満足そうな笑みを浮かべた。
「ようやく本題ですね」
◇
「まずはこちらをご覧ください」
フリーザは懐から小さなホイポイカプセルを取り出した。上部を押し込み、テーブルから少し離れた場所へ軽く投げると、白い煙が勢いよく広がる。
「何だ!?」
シドラが思わず椅子から腰を浮かせた。煙が晴れた場所には、先ほどまで何もなかったとは思えないほど巨大な冷蔵・冷凍庫が置かれている。
「……箱?」
「冷凍・冷蔵保存庫です」
フリーザが扉を開けると、中には透明な容器へ詰められた水、色鮮やかな野菜、新鮮な魚、さらに瓶詰めされた飲み物が隙間なく収められていた。
「こちらは新鮮な水です。そして、その水を使ったサイダー。こちらの棚には野菜、その下には魚が入っています」
ロウが興味を抑えきれず、冷蔵庫の中を覗き込む。
「……何だ、この透明度は」
シドラもいつの間にか席を離れ、隣から水の容器を見つめていた。
「これが本当に水なのか?」
「ええ」
「第九宇宙のものと、全然違うぞ……」
「当然です」
フリーザは少し得意げに胸を張った。
「これらは全て、第七宇宙のナメック星で生産されたものです」
シドラとロウは顔を見合わせた。第九宇宙にも水は存在するし、野菜も魚に似た生物もいるが、目の前に並べられた品々とは見た目からして質が違っている。
「の、飲んでもいいのか?」
シドラがすぐに尋ねた。
「お待ちください」
「なぜだ!」
「順番というものがあります。食材そのものだけをお見せしても、価値は十分には伝わらないでしょう」
フリーザは二つ目のホイポイカプセルを取り出し、同じように床へ投げた。再び白煙が広がり、それが晴れると今度は大量の料理が並んだテーブルと、地球製の電子レンジまで姿を現す。
「おお……」
思わず声を漏らしたのはロウだった。焼き魚、野菜を煮込んだスープ、彩り豊かな炒め物、肉と野菜を組み合わせた料理、米料理、麺料理、さらにはデザートまで用意されている。
「こちらは?」
モヒイトが初めて少しだけ興味を示した。
「先ほどの食材を中心に、第七宇宙で調理したものです。一部は地球のチチさん、こちらはレモさん、それ以外はカプセルコーポレーション所属の料理人にお願いしました」
「ほう。いい香りですね」
モヒイトの目が僅かに細くなる。
シドラとロウは、すでに会話へまともに参加していなかった。目の前から漂ってくる匂いへ意識の大半を奪われ、二人とも無意識に何度も喉を鳴らしている。
しかも、それだけではなかった。普段なら食欲などほとんど表情へ出さないモヒイトまで、ほんの僅かに唾を飲み込んだのをヴァドスは見逃さなかった。
「あらあら」
「何でしょう?」
「いえ、何でもありません」
フリーザはそれ以上追及せず、シャンパとヴァドスの前へ食器を置いた。
「毒見…というと聞こえが悪いですが安全性は保証いたします。
その証拠としてシャンパ様、ヴァドス様。どうぞお召し上がりください」
「待ってたぞ!」
「では、いただきます」
シャンパは即座に野菜料理へ手を伸ばした。一口食べた瞬間に目を大きく見開き、続けざまに焼き魚、スープ、サイダーへと手を伸ばしていく。
「うっま! これもすげえ! おおっ、この飲み物シュワシュワするぞ!」
ヴァドスも対照的に優雅な手つきで魚を口へ運び、ゆっくり味わった後で僅かに目を開いた。
「まあ。これはおいしいですね。魚特有の臭みがほとんどありません」
「だろ!」
「なぜシャンパ様が自慢なさるのです?」
「第六宇宙の会社の商品だからだよ!」
「調理は第七宇宙ですけれど」
「細けえこと言うな!」
向かい側に座るシドラとロウは、完全に料理へ釘付けになっていた。モヒイトも表面上はいつも通りだったが、先ほどより明らかに皿を見る回数が増えている。
フリーザは三人の様子をしばらく楽しんでから、ようやく声をかけた。
「どうぞ」
「何!?」
シドラが勢いよく身を乗り出した。
「食べていいのか!?」
「もちろんです」
「本当に?」
「ええ。ただし、お気に召しましたら」
フリーザは一度言葉を切り、営業用の笑顔を浮かべた。
「次回からは、きちんと買っていただきたい」
「そんなことか!」
ロウが即答した。
「食べるぞ!」
「言われなくても!」
シドラは最初に焼き魚へ手を伸ばし、一口食べた瞬間に表情を一変させた。
「うまい!」
続いて野菜を口へ運び、さらに目を大きくする。
「甘いぞ!」
最後にスープを飲み、一気に顔を上げた。
「何だこれ! 水までうまいぞ!」
「だから水が違うと申し上げたでしょう」
フリーザは嬉しそうに笑った。
ロウも負けてはいなかった。緑色の葉物野菜を口へ運び、すぐに次の皿へ手を伸ばしている。
「この野菜は何だ!」
「ナメック星産の葉物ですね」
「うまい!」
「こちらもどうぞ」
「おお!」
モヒイトは二人ほど露骨ではなかったが、普通に食べていた。しかも一皿で終わらず、サイダーまで手に取っている。
「なるほど。これは面白い飲み物ですね」
「でしょう?」
「第九宇宙では、あまり見かけません」
「でしたら、ちょうどいい。市場になりますね」
フリーザがそう言ったところで、シドラは料理を口いっぱいに頬張ったまま勢いよく手を上げた。
「買う!」
「はい?」
「これ、買うぞ!」
ロウも即座に頷いた。
「私も異論はない!」
「かしこまりました」
フリーザは深々と頭を下げた。その姿だけを見れば、つい先ほどまで全王や破壊神、暗殺未遂といった物騒な話をしていた男とは到底思えない。
「それでは、具体的な取引のお話へ移りましょう」
◇
「しかし、買うと言っても、どうやって支払えばいい?」
ロウが口元を拭きながら尋ねる。
「そこなのですよ」
フリーザは待っていましたとばかりに頷いた。
「第六、第七、第九宇宙では、当然ながら通貨制度が異なります。最初から貨幣取引を始めようとすると、少々面倒でしょう」
「では、どうする?」
「まずは物々交換にしましょう」
シドラが眉を上げた。
「物々交換?」
「ええ」
フリーザが小型端末を開くと、第九宇宙に存在する複数の惑星が表示された。さらに地下資源の分布らしき情報まで重ねられており、ロウの表情が変わる。
「これをどこで調べた?」
「企業秘密です」
「……」
「特に、この惑星とこちらの惑星には、第七宇宙ではあまりない金属資源が相当量埋蔵されています」
フリーザが複数の地点を拡大表示する。
「それが欲しいのか?」
「ええ。このあたりを私どもがちょっと採掘させていただけることができればそれで」
ロウとシドラは顔を見合わせた。
「それだけか?」
「ええ。もちろん量によって交換比率は決めますが、そちらが現在ほとんど利用していない資源と、こちらの食料、水、加工品を交換するという形です」
シドラは少し考えた。第九宇宙で十分活用されていない…おそらく今後も使われにくいだろう地下資源を渡すだけで。今まで手に入らなかった、今後も第9宇宙では入手が限りなく難しい品質の食料や水が継続的に入ってくるのだ。少なくとも目先の条件だけを見れば悪くない。
「いいんじゃないか?」
「私もそう思う。その条件なら問題ない」
ロウもあっさりと頷いた。
「ありがとうございます」
フリーザはにこやかに頭を下げた。
その横では、モヒイトだけが小さく笑っていた。彼だけは、フリーザが提示した条件の先に何が続くのか、ある程度理解しているらしい。
ヴァドスもそれに気づき、ほんの一瞬だけモヒイトと視線を合わせた。二人の天使は何も言わず、それぞれ小さな笑みを浮かべただけだった。
「もちろん、いつまでも物々交換というわけには参りません」
「何?」
「将来的には貨幣取引へ移行します」
ロウは困ったように眉を寄せる。
「だから、通貨が違うと言っているだろう」
「ええ。ですから、交換すればいいのですよ」
「交換?」
「第九宇宙の通貨と、わたくしたちが利用している通貨をです」
シドラも首を傾げた。
「どうやって?」
「レートを決めます。それぞれの宇宙における物価、資源価値、平均所得、流通量などを基準として、交換比率を作るのです」
「……面倒そうだな」
「非常に面倒です」
フリーザは即答した。
「ですから、その面倒事は全てわたくしにお任せください」
「おお!」
ロウの顔が明るくなる。
「やってくれるのか!」
「もちろんです」
「それは助かる!」
シドラもすっかり満足したようだった。
「フリーザ、お前、思ったより話が分かる奴だな!」
「ほっほっほっ。よく言われます」
料理を食べ続けていたシャンパが、そこでようやく顔を上げた。
「言われねえだろ」
「シャンパ様」
「何だよ」
「お食事中は静かになさってください」
「お前が言うな!」
ヴァドスが楽しそうに微笑み、モヒイトも僅かに口元を緩めた。シドラとロウはそのやり取りを笑って見ているが、その間にもフリーザの頭の中では、すでに次の段階まで計算が進んでいた。
第九宇宙で鉱石を採掘するには、まず作業員と設備が必要になる。採掘した資源を運ぶには輸送網が必要となり、それを保管するための倉庫も必要になる。
それらを効率よく運営するためには、当然ながら現地支部が必要になる。支部を作れば第九宇宙の住民を雇用でき、給与が発生し、その給与によってフリーザ・コーポレーションの商品を買う者も増える。
食料と水を輸入する量が増えれば、第九宇宙の生活は次第にその供給網へ依存する。さらに通貨交換まで自社で管理するようになれば、単なる輸入業者ではなく、宇宙間取引そのものを支える存在へ変わっていく。
やがて、フリーザ・コーポレーションを排除すれば困る者が増える。住民も、企業も、界王神も、そして宇宙全体を管理する破壊神でさえ、無視できなくなる。
それが目的だった。
昔なら惑星を奪った。
今は違う。
相手が自分から門を開ける。
そして、気づいた時には切れなくなっている。
フリーザが地球の歴史を調べた時に面白いと思ったやり方は、宇宙が変わっても十分に使えそうだった。
「では」
フリーザは席を立ち、シドラへ右手を差し出した。
「シドラ様」
「うむ!」
シドラも何の疑いもなくその手を握った。
「ロウ様も、今後ともよろしくお願いいたします」
「こちらこそ頼む!」
ロウとも握手を交わし、フリーザは満面の笑みを浮かべる。
「フリーザ・コーポレーションを、今後ともよろしくお願いいたします」
交渉の始まりは、水と食料とサイダーだった。交換するものも、今のところは鉱石と採掘権に過ぎない。
だが、そこへ流通が生まれる。
物流が生まれる。
支部ができる。
雇用が生まれる。
通貨交換が始まる。
そして生活へ入り込む。
その一つ一つは、単独で見れば何の変哲もない商売だった。だからこそ止めにくく、だからこそ長く続く。
「ほっほっほっ」
フリーザの笑い声が、破壊神の星へ静かに響いた。
シドラとロウも満足そうに笑っている。シャンパは相変わらず料理を食べ続け、ヴァドスはそれを眺めながら飲み物を口へ運んでいた。
モヒイトだけが、少し離れたところからフリーザを見ていた。その表情には警戒も非難もなく、ただ何かを見抜いた者だけが浮かべる、静かな笑みがある。
どうやら今日、第九宇宙で何かが始まった。
それが単なる交易なのか。
経済圏の誕生なのか。
あるいは。
宇宙の帝王が見つけた、新しい支配の第一歩なのか。
その意味を本当に理解しているのは、今のところ天使たちとフリーザ本人だけだった。