TS成り代わり殴りヒーラー家入硝子さん~幽遊白書好きが呪術廻戦の世界に転生して仙水忍の『霊光裂蹴拳』を極めたら~   作:a-ru

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※補足と頂いた感想返信いろいろ※
少々書き方悪かったですが夏油のタップ云々はただの観客としての野次です。基本はデスマッチ空間で、解除は『本人の解除』『維持による継続呪力消費での解除』『本人または相手の死亡』『外部からの破壊』など。

観客席に飛ばされても解除後は元居た場所に戻ります。陀艮の領域みたいに実際の領域の広さと中の空間の広さは別で実際はほとんど動いていないという解釈。

特殊ルール強制型といっても領域は領域なので、フィジギフおじさんは領域の結界内に閉じ込めること自体が不可能だと思うので効かないという事にします。ただ、宿儺みたいに閉じない領域に出来るなら効きそう?

気鋼闘衣は覚醒五条みたいにTS硝子さんが再度覚醒する際に習得予定。仙水みたいに性格は変わりませんが、今のTS硝子さんの強さはわかりやすく言うと仙水ミノル。覚醒後の強さは仙水忍。


※今話の捏造設定※
庵歌姫先輩は京都校の教師になっていましたが、高専時代の在籍校は不明らしいです。が、アニメ懐玉編のOPで東京校の教室で五条を追いかけまわしていた事と、連絡が途絶えた冥さんと歌姫先輩を救助に行ったのが五条と夏油だったので東京校出身という事にしています。五条が嫌いだったからあえて京都校に行ったんですかね?


第9話:『春喧・絶望』

 東京都立呪術高等専門学校の敷地内を、一人の女生徒が教員の夜蛾正道と共に歩いていた。

 

 袴姿に紅白の巫女服を模した装束を纏い、あどけないながらも凛とした美しさを持つ東京校4年の庵歌姫である。数日に及ぶ地方での任務を終え、ようやく高専へと帰還した彼女は、所用で外に出ていて偶然戻ってきた夜蛾と共に、労いの言葉を交わしながら敷地内に入ったところだった。

 

「――っ!?」

 

 唐突に、全身の産毛が逆立つような、暴力的なまでの呪力のうねりが空気を震わせた。歌姫は息を呑み、夜蛾は鋭い眼光で高専の奥――グラウンドの方角を睨みつける。

 

「夜蛾先生、今の呪力の高まり……!」

 

「ああ。急いで向かうぞ、歌姫!」

 

 ただ事ではない気配に、二人は全速力でグラウンドへと駆け出した。

 

 木々を抜け、視界が開けたグラウンドの中心。そこに鎮座していたものを見て、夜蛾の足がピタリと止まり、歌姫の顔から一気に血の気が引いた。

 

「領域展開、だと……!?」

 

 夜蛾の低い声が震える。

 

 夕暮れのグラウンドのど真ん中に、巨大な『ドス黒い半球状のドーム』が形成されていた。放たれるプレッシャーは尋常ではなく、高専の結界をすり抜けて侵入した未知のバケモノの存在を雄弁に物語っている。

 

(まさか、特級クラスの呪霊が高専内に侵入したというのか……!?)

 

 夜蛾の脳裏に、最悪のシミュレーションが駆け巡る。

 

 もし特級クラスの領域だとしたら、うかつに手は出せない。だが、中に誰が取り込まれているか分からない以上、一刻も早い救出が必要だ。万が一、残っていた1年の生徒たち――硝子や傑、あるいは悟が巻き込まれていて、今まさに生命の危機に陥っているとしたら。

 

(まずは応援を呼ぶべきか。いや、それでは間に合わない可能性が高い。俺が外から結界を破壊してこじ開けるか……!?)

 

 生徒を護るため、夜蛾が死を覚悟して呪骸に呪力を注ぎ込もうとした、まさにその時だった。

 

 パチンッ。

 

 乾いた指鳴りの音と共に、ドス黒い領域の外殻がガラスのように砕け散り、フワリと消滅した。

 

 領域が破られた。中にいた者が勝ったのか、それとも無惨に殺されたのか。強風が土煙を吹き飛ばしていく中、夜蛾と歌姫は身構えながらその中心を凝視した。

 

「あー、スッキリした。やっぱりストレス発散にはサンドバッグを殴るに限るね」

 

「ははっ。見事なラッシュだったよ。最後なんて本当に容赦なかったね」

 

 現れたのは、悍ましい呪霊などではない。白いオープンフィンガーグローブを外し、汗を拭いながら爽やかな笑顔を浮かべている家入硝子と、空の紙コップをゴミ袋に片付けながら微笑む夏油傑だった。

 

 そして、二人の足元には。

 

「…………」

 

 顔面をボコボコに腫らし、衣服を泥だらけにして、白目を剥きかけながらピクピクと痙攣している五条悟が転がっていた。

 

「……は?」

 

 緊迫した死地の空気が、一瞬にして間の抜けたものへと変わる。状況が理解できずフリーズする夜蛾の横で、事態をいち早く察知した歌姫の顔が、パァァッ!と歓喜に輝いた。

 

「えっ……ウソ!? あの生意気な五条が、ボコボコにされて死んでる!? やったぁぁぁ!!」

 

「死んでねーよ……ッ! 歌姫、泣かすぞ……!」

 

「貴様らァァァァァッッ!!!」

 

 五条の呻き声を掻き消すほどの、夜蛾の特大の雷がグラウンドに響き渡った。

 

「高専の結界内で未登録の領域が発生すれば、天元様や上層部に報告が上がるだろうが! どれだけ騒ぎになると思っている!」

 

 夜蛾の怒声により、五条(ボコボコのまま)、夏油、硝子の三人は、夕暮れのグラウンドで横一列に正座させられることになった。ちなみに歌姫先輩は長くなりそうな気配を察したらしく、「私は任務帰りで疲れてるのでお先に失礼しますねー」と夜蛾先生に言いつつ去って行った。

 

◇ ◇ ◇ 

 

 とりあえず五条の怪我を反転で治癒した後。

 

「……で、この呪具は忌庫にあった物に見えるが、これを持ち出したのは?」

 

 バッと、私と夏油が無言で同時に五条を指差した。

 

「おいッ! お前らさっきまであんなに楽しそうに検証に付き合わせてたくせに、売んの早すぎだろ!」

 

「私と傑はちゃんと止めたぞ。お前が勝手に持ち出したんだろうが」

 

「そうだよ悟。私たちは君の暴走を止めきれなかった被害者だ」

 

 完璧な連携で罪をなすりつける私たちに、五条が青筋を立てて抗議する。夜蛾先生は深く、本当に深いため息をつき、五条の頭に容赦のない拳骨を落とした。

 

「イテッ!?」

 

「悟、お前は後で始末書だ。硝子、傑、お前らもだ。今回は大目に見るが、次はないぞ」

 

 頭を抱えてうずくまる五条を横目に、私と夏油は「「はい」」と素直に頷いた。

 

 ひとしきり説教が終わり、夜蛾先生が忌庫への呪具の返却手続きのためにその場を離れた直後。姿が見えなくなったことを確認した私たちは正座を崩してグラウンドに座りつつ、何が悪かったのか反省会を始める。

 

「夜蛾センセーが出かけてたのは知ってたけど、帰りの予定時間を確かめるべきだったな」

 

「だよねー。というか『帳(とばり)』張っとけばよかったんじゃない?」

 

「硝子、君は未だに帳が張れないじゃないか。どちらにしても、高専内で帳を張ったら逆に目立って調べられるだろう」

 

「「たしかに」」

 

 夜蛾先生の説教の趣旨を全員とも理解しているにも関わらず、『次はどうやればバレずに済むか』という完全に悪ガキと化している三人。こうして、1年の終わりに領域展開を基に起きたドタバタ騒動は幕を閉じたのだった。

 

◇ ◇ ◇ 

 

【Side:七海 建人】

 

 桜が舞い散る2006年の春。

 

 東京都立呪術高等専門学校に入学したばかりの私、七海建人と同級生の灰原雄は、入学早々、不良のような見た目の先輩二人に絡まれるという問題に直面していた。

 

「おらおら1年。高専のルール、分かってんだろうな?」

 

「とりあえず、購買で焼きそばパン買ってきてよ。ダッシュでね」

 

 校舎の廊下。私たちを壁際に追い詰め、チンピラのように凄んできたのは、揃って黒い詰め襟を着た2年生の先輩二人だった。丸いサングラスをかけて不遜に見下ろしてくる白髪の先輩と、ニコニコと胡散臭い笑みを浮かべながら退路を塞いでいる黒髪の先輩。

 

 術師からは非術師と呼ばれているらしい一般家庭で育ち、常識人としての感性を持ち合わせている私にとって、目の前にいる二人の先輩は『絶対に関わってはいけないタイプの人種』の頂点だった。灰原は「焼きそばパンですね! 分かりました!」と素直に頷いているが、彼は少し純粋すぎる。

 

「ああ、そうだ。パンの前にちょっとツラ貸せよ。こっちの教室な」

 

 丸いサングラスをかけたほうの先輩が私と灰原の肩を強引に抱き、近くの教室の扉をガラッ! と乱暴に開け放った。私は、シメられる覚悟をして教室へ入る。

 

 パンッ! パパパンッ!!

 

「「「サプライズ! ようこそ呪術高専へー!!」」」

 

「…………はい?」

 

 飛び交うクラッカーの紙テープ。

 

 教室の中に入った私の目に飛び込んできたのは、予想外すぎる光景だった。

 

 黒板にはチョークでデカデカと『超・新入生歓迎会』と書かれ、輪っか飾りが壁中に吊るされている。サングラスをかけた先輩はどこから出したのか、ふざけたパーティー帽子を頭に乗せ、マイクを片手に妙に高いテンションでポーズを決めている。胡散臭い先輩も満足げに拍手をしている。

 

 さらに、教室の後ろの方では、強面の教師である夜蛾正道が、なぜか紙コップにコーラを注ぎ、お菓子の袋を開けるという裏方作業を黙々とこなしていた。

 

(……情報が多い。どういう状況なんだ。そしてなぜ隣の灰原はすぐに順応しているんだ)

 

 横目で「ありがとうございまーす!」と言いつつ、サングラスをかけた先輩から『本日の主役』と書かれたタスキを受け取り、笑顔で自らに掛けている灰原。こいつ実は事情を知っていて、私だけが知らない状態なんじゃないだろうかという疑念が浮かぶ。

 

 私の胃がキリキリと音を立てて痛み始めた、その時だった。 

 

「全く、五条君と夏油君は本当に悪ふざけが好きね。ごめんなさいね、七海君、灰原君」

 

 凛とした、鈴を転がすような美しい声が教室に響いた。声の方を振り向くと、そこには高専の黒い制服とプリーツスカートに身を包み、肩口で切りそろえられたボブヘアを揺らす絶世の美少女の先輩が、慈愛に満ちた笑みを浮かべて立っていた。

 

「ぷっ、くくくっ……ごほっ」

 

「んンッ……! ゲホッ、ゴホッ!」

 

 よくわからないが、マイクを持った先輩と胡散臭い笑みの先輩が激しくむせ返っている。五条と呼ばれていたサングラスの先輩が息を整えて何か言葉を吐き出そうと口を開きかけた、その瞬間だった。

 

 美少女の先輩が、私と灰原からは見えない角度で、チラリと五条先輩たちの方へ視線を向けた。何を伝えたのかは分からない。だが、五条先輩と夏油先輩は、ピクッと肩を震わせると、何度か頷き、口をつぐんだ。

 

 彼女はスッと私の前に歩み寄ると、その綺麗な手で、私の肩に『本日の主役』と書かれたタスキを丁寧に掛けてくれた。至近距離から、微かにふわりと良い香りが漂う。

 

「はじめまして。驚かせてしまってごめんなさい。歓迎会をしようと言い出したのは彼らなのだけど、少しやり方が乱暴だったわね。私は家入硝子よ。何か困ったことがあったら、遠慮なく私に言ってちょうだいね」

 

 家入先輩の慈愛に満ちた完璧な対応に、私は心底安堵したように息を吐いた。

 

(なんて清楚で気品のある先輩だ……。黒板の飾り付けも、このタスキも、きっと彼女が用意してくれたのだろう。この狂った状況にも、まだまともな良心が残っていたのか……っ!)

 

 私が一人で勝手に救われていると、気を取り直した五条先輩が、やたらと高いテンションで灰原にマイクを突きつけた。

 

「さぁさぁ! そんじゃ『本日の主役』のお二人に、マイクを回しまーす! 自己紹介どうぞ!」

 

「はいっ! はじめまして、灰原雄です! 特技は大食い、術式は蒸気呪法! これ使うとお腹が減るのでそれで大食いが特技になりました! よろしくお願いしまーす!」

 

「はいっ、ありがとうございまーす! それじゃあ次っ!」

 

 五条先輩にズイッとマイクを突きつけられ、私は深いため息をこぼした。この狂った空気に迎合する気はない。私は極めて事務的な、低いトーンで口を開いた。

 

「……七海建人です。よろしくお願いします」

 

「えー、テンション低っ! まぁいっか! で、灰原のその蒸気呪法って、具体的にどうやって戦うの?」

 

 五条先輩が面白半分に尋ねると、灰原は元気よく答えた。

 

「武器は使わず、格闘で戦うんです! 呪力で身体能力を上げて接近戦するんですけど……さっきも言った通り出力が高すぎて、ちょっと動くとすぐガス欠になっちゃって」

 

「あら、格闘するのね。私と夏油君も格闘を嗜んでいるのよ。あとで良ければ、少し組手でもしない?」

 

 家入先輩が目を細め、優しく提案する。その後ろで、なぜか夏油先輩が「夏油君」と呼ばれるたびにピクッと肩を震わせ、笑いを堪えるような不思議な笑みを浮かべていた。

 

(……? なぜ夏油先輩は呼ばれる度に不思議な反応をするのだろう。家入先輩も格闘技を嗜むと言っていたが、女性の護身術程度のもので、灰原の相手になるのだろうか)

 

 少しの疑問は浮かんだが、私はすぐに思考から追いやった。きっと、優しい家入先輩が新入生との交流を図るために、あえて相手の得意分野に合わせて誘ってくれているのだろう。なんて気配りのできる人なんだ。

 

「本当ですか!? ぜひお願いします、家入先輩!」

 

「ええ。ふふっ、楽しみね」

 

 尻尾を振る犬のように喜ぶ灰原に対し、家入先輩は淑やかに微笑み返した。

 

 五条先輩と夏油先輩は、なぜか「南無」「アーメン」と呟きながら天を仰いでいるが、あの不良二人の奇行などもうどうでもよかった。

 

 私は、教室の後ろでコーラを飲みながら見守っている夜蛾先生と、目の前で優しく後輩の面倒を見る家入先輩を交互に見比べ、心底安堵したように息を吐いた。

 

(……ああ、よかった。一部におかしな人間はいるが、この学校にもまともで優しい先輩は居るんだな)

 

 ――しかし。

 

 私が一人で勝手に救われ、このささやかなオアシスに心を満たされていたのは、ほんの数時間のことだった。

 

 この日の午後。

 

 歓迎会を終え、グラウンドでの組手に向かった私と灰原は、そこで『真実』を知ることになる。

 

 『まともな先輩など、この学校には一人もいなかったのだ』と、私が人生で一番の深い絶望を抱え、早すぎる胃薬のお世話になるのは……もう少しだけ、後の話である。




段々投稿時刻が遅れていますがなんとか毎日投稿継続中。
土日で少し書き溜めを溜めたい所存。
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