TS成り代わり殴りヒーラー家入硝子さん~幽遊白書好きが呪術廻戦の世界に転生して仙水忍の『霊光裂蹴拳』を極めたら~   作:a-ru

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※今話の捏造要素※
・『Q』メンバーを1名追加


第12話『墜星』

 場所を移し、高専の一室。

 

 灰原と七海は体育館に残り、引き続き1on1でバスケを楽しむらしい。私たちは、夜蛾先生のパソコンに表示された任務資料を見るため、空き教室へと移動してきていた。

 

「正直荷が重いと思うが、天元様が三人をご指名だ」

 

 教卓に立つ夜蛾先生が、深刻な顔で私たちを見渡す。

 

「依頼は二つ。『星漿体(せいしょうたい)』、天元様との適合者、その少女の――護衛と抹消、だ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、私は眉間に深い皺を寄せた。

 

「……あの、先生。護衛した対象を抹消するんですか? 日本語がおかしくなってますよ」

 

 私が至極真っ当なツッコミを入れると、パイプ椅子でふんぞり返りながら五条が口を開く。

 

「ガキんちょの護衛と抹消!? ……ついにボケたか」

 

「春だしねぇ。次期学長ってんで、浮かれているのさ。……冗談はさておき、天元様の術式の初期化ですか?」

 

「「なにそれ?」」

 

 私と五条の声が、見事なまでに重なった。

 

(私が呪術界の裏の常識を知らないのは当然……いや、夏油が知っているなら私の単なる勉強不足か……? まあそれは置いといて、由緒正しき御三家出身のお前も知らないのかよ)

 

 話の内容が理解できない私と五条が顔を見合わせていると、夏油がやれやれと深い溜め息をついて解説を始めた。

 

「天元様は『不死』の術式を持っているが、『不老』ではない。老い続けるとやがて肉体が限界を迎え、術式が肉体を作り変えようとする……より高次の存在への『進化』だ」

 

「進化すればいいじゃん」

 

「進化すると人間ではなくなり、意思を持たない存在に成り果てる。最悪の場合、高専の結界が機能しなくなり、人類の敵になる可能性すらあるんだ。だからそうなる前に、適合者である『星漿体(せいしょうたい)』と同化して肉体の情報を初期化する必要がある」

 

 夏油の説明を聞き、夜蛾先生が重々しく頷く。

 

 パソコンのモニターに映し出されたのは、私たちより明らかに年下に見える、あどけない中学生の少女の写真だった。名前は天内理子。

 

 私は、その写真と『同化』という言葉の意味を脳内で噛み砕き――眉間に深いシワを寄せた。

 

「……つまり。世界の平和と呪術界の結界の維持のためという名目で、まだ中学生の少女を生け贄として差し出せ、ということですか?」

 

 私のドスの効いた低い声に、教室の空気がスッと冷えた。

 

 前世で大人だった私からすれば、未成年の女の子を世界の犠牲にするなど、およそ正気の沙汰とは思えない。

 

「……硝子、言い方には気をつけてくれ」

 

 夏油が、咎めるような、しかしどこか苦しげな声で口を挟んだ。

 

「非術師の世界を守るためには、誰かが尊い犠牲にならなければいけない……という事だ」

 

 夏油は自らの膝の上で、ギュッと拳を握り込んでいた。

 

 その声はいつもの彼らしくなく、どこか自分自身に言い聞かせているように聞こえた。きっとこいつも、私と同じように心の奥底では『人としての倫理観』と『呪術師としての使命』の間で板挟みになり、必死に折り合いをつけようとしているのだろう。

 

 私は小さく息を吐き、これ以上この場で言うのをやめた。

 

「……言葉を選ばずに言えば、そうなる」

 

 夜蛾先生が苦渋に満ちた表情で肯定する。

 

「……話を続けるが、その星漿体の少女の所在が漏れてしまった。同化のタイムリミットは明後日の満月。それまでにこの少女を狙う呪詛師集団『Q』と、天元様を神と崇める宗教団体『盤星教』から護り抜け。……これは命令だ」

 

 重い沈黙。

 

 だが、それをぶち破ったのは、パイプ椅子から立ち上がった五条 の極めて軽い声だった。

 

「ま、最強の俺ら三人に任せとけって。サクッと護って、サクッと終わらせようぜ」

 

「生け贄になるまでの僅かな時間なら、せめて最後まで私ら三人が守ればいいんでしょう? 天元様からの任務ですし」

 

「ああ。では夜蛾先生、私たちは任務へ向かいます」

 

 内心の苛立ちを隠すように令嬢の微笑みを貼り付けた私と、余裕の笑みを浮かべる五条と、内心を隠しているのか無表情な夏油。こうして私たちは、指定された護衛対象のいる高層マンションへと向かうことになったのだった。

 

◇ ◇ ◇ 

 

 東京都内、某所の高級高層マンション。その最上階が、星漿体・天内理子の現在位置だった。

 

「俺は下で待機してるわ。所在がバレてるって話だし今にも『Q』の連中が来るかもしれないしな」

 

「分かった。護衛対象の合流は私と硝子で行こう」

 

 私たちは五条を地上に残し、中へ入ろうとした。その、まさに足を踏み入れようとした瞬間だった。

 

 ――ドゴォォォォンッ!!

 

 最上階の部屋が、突如として激しい爆炎と共に吹き飛んだ。

 

「なっ……!」

 

「爆発……!? もう敵が来ているのか!」

 

 夏油が声を張り上げた直後。爆発で吹き飛んだ窓ガラスの雨に混じって、気を失った小柄な少女――天内理子が、最上階の部屋から真っ逆さまに落下していくのが見えた。

 

「硝子、周囲の警戒を! 私は護衛対象を助けに行く!」

 

 夏油が即座に飛行可能なエイ型の呪霊を呼び出して空中へと飛び上がる。同時に私も万が一を考え周囲を警戒しつつ落下地点へと駆け出した。夏油の呪霊は凄まじい速度で空を切り裂き、落下する天内理子の身体を見事に空中でキャッチした。

 

(よし、流石は夏油だ。これで救出は――)

 

 私が安堵しかけた、その時。

 

 ――ズギュゥゥンッ!!!

 

 空気を焼くような異音と共に、マンションから少し離れた地上から、『呪力砲』が夏油のエイ呪霊めがけて放たれた。

 

「――ッ!?」

 

 強烈な閃光と衝撃が空中で炸裂する。不意を突かれた遠距離からの狙撃により、夏油の乗っていたエイ呪霊が吹き飛ばされ、抱きかかえられていた天内理子が再び空中に放り出されてしまった。

 

「しまっ……!」

 

 空中で体勢を崩した夏油が焦りの声を上げる。彼は別の飛行呪霊を呼び出し、ギリギリで空中に留まったが、落下していく天内にはもう手が届かない。

 

 そこに更に、最上階の部屋を爆破した元凶がいると思われる窓際から、追加で何かが無数にばらまかれた。

 

 夏油が咄嗟に小型の呪霊を突進させると、空中で連鎖的に激しい爆発が起きた。どうやら手榴弾か何かを投げ落としてきているらしい。

 

「チッ……! 狙撃手と上の爆弾魔の同時攻撃か!」

 

 爆煙に視界を遮られ、夏油が足止めを食らう。

 

 地上では、マンション付近にいた五条に向かって、別の男――特徴的な服を着ているためあれも『Q』の戦闘員だろう――が奇襲を仕掛けているのが見える。

 

 上空の夏油も、地上の五条も、動きを封じられた。五条は放っといても大丈夫だろう。ならば、落下していく天内理子を助けられるのは、今この位置にいる私しかいない。

 

「硝子、下を頼むッ! 私は上の爆弾魔を叩く!」

 

 空中の爆煙の中から、夏油が私に声をかけそのまま上空に上がって行った。

 

「任せろ!!」

 

 私は呪力で両足の筋肉を極限まで強化し、落下地点へと全速力で駆け込んだ。だが、地上で呪力砲を撃った狙撃手は、厄介なことにまだ追撃の構えをとっていた。

 

 ――ズギュゥゥゥンッ!!

 

 今度は、無防備に落下していく天内理子の華奢な身体を直接狙い、二発目の『呪力砲』が放たれる。直撃すれば、中学生の身体など木端微塵だ。

 

「させるかッ!」

 

 私はアスファルトが陥没するほど地面を大きく蹴り、弾丸のように空へ跳躍した。落下する天内理子と、迫り来る呪力砲の射線。その間に、自らの身体を強引にねじ込ませ、迫り来る呪力砲に向かって右脚を振り抜いた。

 

 ドゴォォッ!!!

 

 呪力砲の莫大なエネルギーと私の蹴りが空中で衝突し、凄まじい衝撃波が弾け飛ぶ。

 

 呪力砲を相殺した右脚の肉が焼け、骨に響くような激しい痛みが脳を支配する。だが、私はそんな痛みを完全に無視し、体勢を捻って落下中の天内理子を優しく抱きとめた。

 

 私は痛覚を気合でねじ伏せ、無事な左脚を軸にしてアスファルトへ降り立ち、一切の衝撃を殺してふわりとスマートに着地した。

 

「ふぅ、無事に着地、と」

 

「……う、ん……」

 

 その直後。土煙の中で、私の腕の中にいる天内理子がゆっくりと目を覚ました。

 

 彼女の目に最初に映ったのは、自分をお姫様抱っこし、何事もなかったかのように優しく微笑みかけてくる美少女(私)の姿。そして――。

 

「な、なんじゃ……!? 妾は落ちて……お主、その脚の痛々しい火傷は……!!」

 

 状況を理解しきれないながらも、私の右脚――黒タイツが焼け焦げて破れ、その下の白い肌が真っ黒に炭化して白煙を上げている惨状――を見て、パニックになりかける天内。

 

 私は彼女に向けて安心させるような笑顔を浮かべると、安全な着地をするために我慢していた『反転術式』を発動させた。

 

「ああ、すぐ治すから平気ですよ」

 

 シュウゥゥと音を立てて、私の右脚に正のエネルギーが巡る。真っ黒に焼け焦げていた皮膚や筋肉が、天内理子の目の前で一瞬にして傷一つない滑らかな白い肌へと再生していった。

 

 私は痛みで出た冷や汗を拭い、彼女に向けて笑顔を浮かべてみせた。

 

「無事で良かった。どこも痛くないですか?」

 

「えっ、あっ、はい。大丈夫、です……」

 

「へぇ……やるじゃねぇか、高専のガキ。反転術式、というやつか、初めて見たぜ」

 

 その時、私たちが着地した中庭の奥から、下品な声が聞こえてきた。

 

 先ほど呪力砲を放ってきた、呪詛師集団『Q』の戦闘員。顔の上半分を覆う不気味なマスクを被った男が、手のひらに再び呪力を集束させながら歩み寄ってくる。

 

「妾たちに……近づくでない!!」

 

 男の姿を見た瞬間、天内理子はハッと我に返り、私にお姫様抱っこをされたままの体勢で上半身を捻り、呪詛師をビシッと指差した。

 

「この美しくて強いおなごは、妾が守るのじゃ!」

 

「……いや、貴女は私が護衛する対象なんですけど。お気持ちは嬉しいですが、危ないので少し見える範囲内で下がっていてください。あいつを片付けてきますから」

 

 年下だろうけど一応護衛対象なので敬語で喋りつつ、私はお姫様抱っこ状態から彼女をそっと地面に降ろした。

 

 不安そうに私の服の裾を掴む天内に、「大丈夫ですよ」と安心させるようにニコリと微笑みかける。すると、天内は憧れのお姉さまを見るような顔でコクコクと激しく頷きながら後ろへと下がっていった。

 

 彼女が安全圏に下がったのを確認し、私はゆっくりと呪詛師に向き直る。令嬢の微笑みはスッと消え失せ、代わりに浮かんだのは、格闘家としての獰猛で好戦的な笑みだ。

 

「さて。私の脚を焼いてくれた代金、きっちり払ってもらうぞ、三流スナイパー」

 

 私が両手の拳を握り込み、バキバキと首の骨を鳴らすと、『Q』のメンバーであろう男は鼻で笑って両手にどす黒い呪力を集束させた。

 

「ハッ、威勢のいい高専の小娘だ。木端微塵に粉砕してやるよ!」

 

「やってみろ、一瞬で終わらせてやる」

 

 私が深く軸足を沈め、臨戦態勢の構えをとったところで。空気をビリビリと震わせる、私たち二人の呪力が激突した。




・『Q』メンバー:エッセン
術式は『呪力の放出』。縛りとして、溜める事で威力と速度が上がり、速度は最大で狙撃銃みたいな速度になる。代わりに連射が出来ない。

簡単に言うと近接が苦手で一回りか二回り弱い石流。なんで目の前に来たんですか?
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