TS成り代わり殴りヒーラー家入硝子さん~幽遊白書好きが呪術廻戦の世界に転生して仙水忍の『霊光裂蹴拳』を極めたら~ 作:MMOだと殴りヒーラーが好き
夏油の出力している映像の向こう。巨大呪霊の胃袋の奥底で、深緑の髪を血に染めた真希が、乙骨の胸ぐらを掴んだまま叫んでいた。
『何がしたい……! 何が欲しい……! 何を叶えるために、ここへ来た……ッ!!』
『ぼ、僕は……っ! 僕は、もう誰も傷つけたくなくて……!』
『だったらそのまま閉じこもってろよ!! 覚悟もねぇのにノコノコ出てきて、他人に守られて……死ぬのが怖いなら、最初から来るんじゃねぇよバカヤローがッ!!』
魂を削り合うような二人のやり取りを見つめながら、五条が感心したように口笛を吹いた。
「これ便利だね。傑、いつからこんな外部モニター出力みたいな事が出来るようになったの?」
「そういえば、高専の時は『視覚共有すらも出来ていない』って言ってたよな」
私が腕を組みながら問いかけると、夏油は少しだけ自嘲気味に笑った。
「ああ。硝子のあのアホみたいな縛りを見習って、私も自身の術式に少し縛りを組み込んでみたんだよね」
「どんなの?」
「アホみたいってなんだよ」
五条が硝子の言葉を無視して缶コーヒーを揺らしながら聞く。
「昔、高専に在籍していた頃、医務室で呪霊玉の味をどうにかしようと激辛にしたり色々しただろう? ……あれを思い出してね」
夏油は、さも当然のことのように涼しい顔で言い放った。
「『ただでさえ吐瀉物と雑巾の味がする呪霊玉に、さらに激辛・激甘・激苦の不快感を意図的に呪力で再現・増幅して取り込む』。……その苦行を縛りにすることで、その手順を踏んだ呪霊のみ、こうして視覚を外部に投影できるようになったんだ。更に、この手順で取り込んだ呪霊なら複数の呪霊を個別に動かすこともできる」
「「…………えぇ」」
私と五条の顔が、同時に引きつった。
ただでさえゲロマズいものを、わざわざ自分から超絶マズくして飲み込むという変態的なドM縛り。特級術師の強さへの執念は、根本的にどこかネジが飛んでいるとしか思えない。
私たちが本気でドン引きしている間にも、映像の向こうの事態は進行していた。
真希の口から、ゴフッと生々しい血が零れ落ちる。夏油の呪霊が放つ瘴気と毒気。足元の肉壁が蠢き、二人を完全に消化しようと締め上げていく。
『……じゃあ、祓え……っ! 呪いを、祓いまくれ!! 自信も、他人も、その後からついてくんだよ!
吐き捨てるように言い放ち、真希の腕から力が抜けた。ドサッ、と重い音を立てて、彼女の華奢な身体が毒液の広がる肉壁へと崩れ落ちる。
『真希さん……? 真希さんッ!?』
慌てて真希の身体を抱き起す乙骨。その映像を見て、私は吸っていた煙草の灰を落とし、スッと目を細めた。
「おい、おふざけはここまでだ。これはちょっとマズいか? 夏油、そろそろ呪霊を戻した方がいいんじゃないか」
「そうだな。殺してしまっては元も子もない。何しろ、これは私たちが仕組んだマッチポンプのようなものだからね」
夏油が術式を解こうと指先を動かしかけた、その時だった。
「いや、待ってよ二人とも。……憂太が、動くみたいだよ」
五条が、ニヤリと凶悪な笑みを深めて画面を指差した。
映像の中。
荒い息を吐き、ピクリとも動かなくなった同級生。立ち尽くす乙骨の手がカタカタと震え、足元に転がっていた真希の薙刀に、彼女の赤い血が伝っていた。
地下牢で、あの白衣の女医に頭を小突かれた時の痛みが、乙骨の脳裏を過る。痛いのは、生きている証拠だ。
誰とも関わらず、一人で死ぬのが怖くて逃げていた。でも――。
『……変わりたいんだ』
乙骨は、首から提げていた細い銀の鎖を――強く引きちぎった。握りしめた掌の中にあるのは、かつて幼い『里香』から貰った、婚約指輪。
『誰かと、関わりたい……。誰かに、必要とされて……生きてていいんだって、自信が欲しいんだ……ッ!!』
魂の底から絞り出された慟哭。彼は、自らの左手の薬指にその指輪を深く嵌め込み、祈るように、そして命ずるように呼びかけた。
『――里香ちゃん、力を貸して』
その言葉の直後、夏油の小型呪霊が映し出していた映像が消える。視界を映し出していた呪霊が祓われたためだろう。
「私の呪霊が、内側から消滅したね。……硝子、来るよ」
「ああ。……ガキの初陣の尻拭いといきますか」
夏油が告げた瞬間。私が白衣を脱ぎ捨てて地面を蹴るのと、校舎全体を揺るがす凄まじい地響きが轟いたのは同時だった。
巨大な呪霊の腹を内側から引き裂き、純白の異形――完全顕現を果たした特級過呪怨霊・祈本里香が、瓦礫の雨と共に校庭へと姿を現す。呪霊の残骸から抜け出した乙骨も、土煙を上げて地面に降り立った。その腕の中には、意識を失った真希が必死に抱きかかえられている。
「ありがとう、里香ちゃん……っ。真希さんを、安全な所へ――」
だが。
乙骨の言葉は、里香から放たれた氷点下の殺気によって遮られた。
『…………だぁれ?』
ギリ、と。異様な筋肉の軋み音を漏らしながら、里香の巨大な単眼が乙骨の腕の中にいる真希を捉えた。憂太が、必死な顔で抱きしめている。憂太の服に、その女の血がついている。憂太の視界が、自分ではなく、その女で満たされている。
『だぁれ……? 憂太、その女……だぁれぇぇぇぇッッ!?』
鼓膜を破るような、嫉妬と憤怒の咆哮。里香の巨大な腕が、異様な筋肉の隆起と共に振り上げられた。狙いは呪霊ではない。乙骨の腕の中にいる、瀕死の禪院真希の頭部だ。
『憂太は……里香のッ! 里香だけのものぉぉぉッ!! 死んじゃえぇぇぇぇッ!!』
「やめろ、里香ちゃん! 違うんだ、里香ちゃんッ!!」
乙骨の悲痛な制止など、嫉妬狂いとなった怨霊の耳には届かない。逃げ場のないゼロ距離。大気を叩き潰すような速度で、特級過呪怨霊の剛腕が真希めがけて振り下ろされる――その、刹那だった。
特大の爆薬でも直撃したかのような、重鈍な爆音が校庭を揺るがした。振り下ろされる寸前だった里香の巨大な腕が、いや、何トンあるかも分からない里香の巨体そのものが、横殴りの衝撃波を受けて校庭の端まで真横に吹き飛ばされたのだ。
「……テメェの男が命を懸けて守ろうとした女だぞ」
ドス黒い呪気の嵐を真っ向から切り裂き、舞い上がる土煙の中。真希を庇うようにうずくまる乙骨の眼前に、音もなく着地した長身の女――家入硝子が立っていた。
脱ぎ捨てた白衣の代わりに、全身を青黒い超高密度の呪力装束へと変貌させた彼女は、振り抜いた右脚をゆっくりと下ろしながら、土煙の向こうで体勢を立て直す巨大な怨霊を睨みつけた。
「少しは男の顔を立ててやるのが、良い嫁なんじゃないのか?」
乙骨は、目の前に立つ硝子の姿を見て、息を呑んで目を丸くした。
「家入、先生……? その服は……」
「ああ、これ? 私の本気状態の服だ。……まぁ、見た目がエロコスプレみてぇで絶望的に趣味じゃねぇんだが、
硝子が忌々しそうに舌打ちをする。
「外で待ってたが、異様な呪力の膨張を感じたからすっ飛んできた。間一髪だったみたいだな」
「僕もいるよー?」
ふわり、と。空間を『蒼』で引き寄せ、五条が乙骨の真横へ音もなく降り立った。
「五条先生!」
「じゃ、僕たちは少し離れて見てようか。憂太、よく見ておきなよ。あれが最強の僕の次に強いって言われてる、僕の親友の一人だ。凄く勉強になるよ」
五条がサングラスの奥で楽しげに笑う。そして、怯える乙骨の肩をポンと叩いた。
「あ、それと。真希を守りつつ、里香ちゃんを大人しくさせるために必死に声をかけてね」
『アァァァッ! 憂太! 憂太ァァァッ!!』
吹き飛ばされたことで完全に激怒した里香が、凄まじい呪力の塊となって再び突進してくる。硝子は、青黒い炎のようなオーラを揺らしながら、深く腰を落とした。
「行くぞ」
足元のコンクリートが蜘蛛の巣状に爆砕した瞬間、硝子の姿が掻き消える。
「えっ……!?」
乙骨の動体視力では、何が起きたのか全く捉えきれなかった。爆発音の直後、次の瞬間には、突進してくる里香の巨大な背後に、彼女が音もなく回り込んでいたのだ。
だが、里香も特級の化け物だ。背後の気配に即座に反応し、巨大な丸太のような腕を、振り返りざまに裏拳で薙ぎ払う。建造物など容易く粉砕するであろう、純粋な質量と呪力の暴力。
しかし硝子は、逃げも防ぎもしなかった。彼女は、純白のオープンフィンガーグローブ――『廻生白手』と名付けたソレを、その巨大な裏拳の側面にそっと添え、円を描くように滑らせた。
鋭い呼気と共に、硝子の手が特級過呪怨霊の膂力を完璧に受け流す。里香の巨体が、自らの勢いを利用されて大きく体勢を崩した。そのガラ空きになった巨大な胴体へ向け、硝子の神速の回し蹴りが叩き込まれる。
再び凄まじい衝撃波が広がり、里香の巨体が宙に浮く。しかし、里香は空中で体勢を強引に立て直すと、その巨大な口の奥に、空間が歪むほどの超高密度の呪力を集束させ始めた。広範囲を消し飛ばす、特級の呪力砲だ。
「だ、ダメだ里香ちゃんッ!!」
乙骨が絶叫する。放たれた極太の呪力砲が、硝子へと向けて一直線に射出された。
硝子は逃げなかった。彼女は逃げるどころか、左手の『廻生白手』のグローブを、迫り来る極太の呪力レーザーの先端へ向けて真っ直ぐに突き出した。
「嘘、だろ……」
乙骨は、自分の目を疑った。特級の呪力砲が、硝子の『白い左手』に触れた瞬間。莫大な破壊エネルギーは爆発することなく、呪力の構成式そのものを根本から強制解除され、無害な光の砂となって夜風の中にサラサラと霧散していったのだ。
三分ほど経過する頃には、硝子の猛攻と絶対防御の前に、さしもの特級過呪怨霊も息を上げ、動きがピタリと止まった。暴走の熱が冷め、ほんの少しだけ里香の意識に『冷静さ』が戻った瞬間。
「里香ちゃん……っ!」
乙骨が、真希を背に庇ったまま、一歩前に出た。
「もういいよ……! 助けてくれて、ありがとう……っ。だから……もう、やめて!」
乙骨の、涙を浮かべた必死の叫び。その声が、静寂の校庭に響き渡った。里香の巨大な眼が、ゆっくりと乙骨を見る。自分を叱るのではなく、泣きそうな顔で『ありがとう』と言ってくれた、大好きな人。
『……憂太が、そういうならぁ……』
ズルリ、と。
凄まじいプレッシャーを放っていた巨体が、溶けるように空間へと吸い込まれ、乙骨の足元の影へと消えていった。
「……ふぅ。どうやら間に合ったみたいだな」
硝子は安堵の息を吐き出すと、青黒い炎を揺らめかせた装束のまま、背後へ振り返った。
「おい乙骨。真希をこっちへ連れてこい。反転で傷を治す」
乙骨が慌てて真希を抱え、硝子の前へと運んでくる。硝子は『廻生白手』のグローブを解き、呪鋼闘衣を維持したままの腕を伸ばして、真希の身体に反転術式の光を流し込んだ。
「……ん、ぁ……」
数秒後、真希がうめき声を上げてゆっくりと目を覚ました。
「真希さんッ! よかった……!」
「……あ? アタシ、生きて……」
真希は自分の傷が完全に治っていることに気づき、そして硝子の姿を見て、全てを察したように舌打ちをした。
「……チッ。硝子先生に助けられたのか。ダッセェ」
「慣れてない乙骨を守ったんだろ? ただ、呪具があっちに落ちてたぞ。アレ意外と高いんだから無くすなよ?」
硝子が冗談めかして言うと、乙骨がボロボロと涙をこぼしながら、真希の無事に安堵して泣き崩れた。二人の安全を完全に確認した硝子は、「……さて、時間か」と呟き、パチンと指を鳴らした。
その瞬間、『呪鋼闘衣』が霧散して元のジャージ姿へと戻る。と同時に、蓄積していた莫大な疲労と反動が一気に彼女の全身を襲った。
「っ、ぐ……」
膝から崩れ落ちそうになるのを必死に堪え、硝子はその場にドカッと胡坐をかいて座り込んだ。
そんな一部始終を、夏油は帳の外のビルの屋上から見下ろしていた。彼は投影していた小型呪霊の映像を消すと、眼下の校舎に向けて静かに目を細める。
「憂太くんが呪力の扱いにもっと慣れて実力を伸ばさないといけないか、それとも……あの怨霊の成り立ちに『別の要因』があるのか」
特級呪霊に魅入られた少年の謎。その理由に思考を巡らせながら、夏油はフッと息を吐いた。
「悟と硝子を呼んで、もう少し対策を練らないと駄目かな」
そう独りごちた夏油の顔は、かつての絶望に囚われた学生の顔ではなく、問題を抱えた生徒の行く末を案じる教師としての顔だった。
以下は、呪術廻戦のシステムに合わせた「術式の詳細スペック・縛りの条文」になります。
※本編の進行には直接影響しない設定資料ですので、気になる方のみお楽しみください。
また、末尾に呪鋼闘衣のイメージビジュアル(AI生成イラスト)を掲載しています。苦手な方はご注意ください。
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【術式・戦闘技能詳細解説】
■ 技能名:呪鋼闘衣(じゅこうとうい)
・概要:反転術式の閉鎖循環と極限の「縛り」によって成立する、完全近接特化の自壊・新生戦闘形態。
【課された三つの縛り】
1. 両腕における「生命への直接加害」の恒久封印
・生涯にわたり、人間・動物等への直接攻撃(打撃・投擲等)を完全に禁ずる。
・許容用途は「防御・受け流し・掌印」および「反転術式のアウトプット(解呪・他者治癒)」のみ。
※呪霊への反転流し込みは「生命への加害」ではなく「解呪・浄化」のため抵触しない。
2. 生体リミッターの完全放棄と反転術式の全外注
・筋力・骨格・脳の知覚処理リミッターを完全遮断。
・本来なら即死・自壊する負荷を、体内を巡る反転術式のフルオート循環によりマイクロ秒単位で再生し続ける。
3. 総合格闘技公式戦規定の縛り(5分×最大3ラウンド)
・稼働限界時間は1回につき厳密に「5分間」。1日の最大使用可能時間は「15分(計3回)」。
・解除後、最低「1分間」のインターバル(呪力運用が著しく制限される無防備時間)が発生。
・規定時間を超過した場合、ペナルティとして「24時間の呪力完全喪失」が執行される。
【恩恵・副次機能】
・脚部への瞬間最大出力の集中(打撃破壊規模の極大化)。
・足裏での呪力弾自爆の衝撃による三次元立体機動。
・高密度呪力と反転エネルギーの凝固に伴う「衣(青黒い装束)」の実体化による防御能力と攻撃能力の強化。
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■ 技能名:廻生白手(かいせいはくしゅ)
・概要:領域展開『廻生鉄条閣』の「術式・呪力無効化」ルールを手元のみに局所展開した技。
・外見:両手に装着された純白のオープンフィンガーグローブ。
・機能:グローブの外側表面に触れた呪力・術式の構成式を強制解除・霧散させる。射程が手元に限定された「天逆鉾」と同等の効果を発揮する。
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▼ 呪鋼闘衣 イメージビジュアル
(※AI生成画像を含みます。苦手な方は閲覧をご遠慮ください)
【挿絵表示】
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