TS成り代わり殴りヒーラー家入硝子さん~幽遊白書好きが呪術廻戦の世界に転生して仙水忍の『霊光裂蹴拳』を極めたら~ 作:MMOだと殴りヒーラーが好き
『男との恋愛無し』『原作死亡キャラ 一部 生存』
「『
まばゆい光が収まった直後。
特級呪霊の領域は内側から一瞬で押し合いに負け、ドス黒い土の壁から蛍光灯に照らされた『ケージ』へと強制的に書き換えられていた。
群れを成していたはずの無数の蟻は、領域の強制力によってドロドロと溶け合い、硝子と同じくらいの背丈の『一匹の巨大な蟻』へと変化していた。
「……さてと。使えるようになったばかりでまだ具体的な原理はよくわかってないんだが」
金網の対角線。
両手に白いオープンフィンガーグローブを嵌めた硝子が、首の骨を鳴らし、獰猛に嗤いながら告げる。
「始めようか」
その言葉と同時。
彼女と特級呪霊の脳(あるいはそれに代わる器官)に、この領域の絶対のルールが情報として強制的に開示された。すなわち、【この領域内では呪力、術式の使用不可。肉体での戦闘のみ許可される】という内容だ。
――【領域展開 廻生鉄条閣《かいせいてつじょうかく》】。*1
それは、転生者である家入硝子の魂が在った、『呪術が存在しない
この領域には通常の領域に存在する必中必殺の効果は存在しない。
だが、呪力による身体強化および一切の術式は『硝子の前世のルール』によって使用を禁じられる。
呪霊は呪力による回復やこの軍隊蟻の呪霊の特性である『群れの補充』が使用不可にされ、ただの『人間大の蟻のバケモノ』へと成り下がる。
対して、領域の主である家入硝子の肉体のみ――『前世のヘビー級プロ格闘家(男)だった時の身体スペック』が完全に還元される。女子のしなやかな肉体を持ちながら、その内包する質量と筋力は歴戦の成人男性(ヘビー級)のそれとなるのだ。尚、見た目は変わらない。
すなわち、この金網の中で行われるのは。
一切の呪術的要素が存在しない、純粋な身体能力と技術のみで殺し合う『完全なデスマッチ』である――。
「ふむ。ちょっと私に有利な空間でズルイかもしれないが……これで完全に『タイマン』だ」
『ギ……、ギジィィッ!?』
己から無限の群れが失われ、呪力という牙を抜かれたことを理解した特級呪霊が、本能的な恐怖に一歩後ずさる。対する硝子の怒りは、完全に臨界点を突破していた。
「反転術式で肉体は治っても……服は治らねぇんだよ!」
現在、彼女の肉体を覆っている制服は、無数の蟻に食い破られたせいでほとんど原型を留めていなかった。スパッツもブラウスもボロボロの布切れと化し、豊満な胸や太もも、辛うじて無事だったショーツが剥き出しの、文字通り『半裸』に近い状態である。
「お気に入りのカスタム制服と、買ったばかりの下着類を喰い破りやがって……!!」
羞恥心もあるが、中でも多いのは純粋な損害への怒り。言い終えると同時、半裸の美少女の皮を被ったヘビー級ファイターが、圧倒的な速度で獲物の懐へと襲いかかった。
『ギャァァァッ!』
ヤケクソ気味に繰り出された巨大蟻の鋭い大顎の噛みつき。
だが、硝子は漫画を参考にして自己が作り上げた『裂蹴拳』の基本に則り、両腕で噛みつきを受け流す。迫る大顎の側面に白いオープンフィンガーグローブを添え、女性特有のしなやかな体捌きと合わせて、最小限の動きで軌道を外側へと逸らした。
「遅ぇよ」
がら空きになった胴体へ、ヘビー級の筋力が乗った左の
空気を叩き潰すような重鈍な打撃音が、ケージの中で響き渡る。
『ギ、ゲェッ……!?』
「まずは制服代!」
強固な甲殻が嫌な音と共にひしゃげ、巨大蟻の身体が「く」の字に折れ曲がる。硝子は腕を攻撃には使わない。だが、相手を『固定』するためには使う。沈み込んだ巨大蟻の首辺りを両腕でガッチリとロックし、逃げ場を奪った状態から、無慈悲な膝蹴りの連打を顔面へ叩き込んだ。
「これがブラジャー代! これはスパッツ代! ついでにクリーニング代!!」
生々しい破砕音が連続して響く。
呪力による防御を失った特級呪霊の頭部は、重機でプレスされたかのようにひび割れ、砕け散っていく。
最後は豪快にマットへと叩きつけ、仰向けに倒れた巨大蟻の頭部へ向け、高く振り上げた右の踵を無慈悲に振り下ろした。
「最後にこれが、お前にやられた私の痛みとお前に喰われた犠牲者の分! これでお終いだ、クソ虫ィ!」
完全に抵抗を失った呪霊の頭部を踵が粉砕する。紫色の血と呪霊の肉体が辺りに飛び散ると同時に段々と消滅していく身体。
特級呪霊が完全に破壊され、役割を終えた領域『廻生鉄条閣』の外殻が、ガラスのように砕けた。
――ヒュゥゥゥゥ……。
領域が解除され、視界が元の薄暗い廃鉱山の坑道へと戻る。
先ほどまで壁一面を埋め尽くしていた無数の蟻たちは、本体が祓われたことでチリとなって完全に消滅していた。元の静寂を取り戻した坑道に、冬の冷たい山風が吹き込んでくる。
「……っ。い、っつ!?」
特級呪霊を完膚なきまでにタコ殴り――もとい、タコ蹴りにした直後。戦闘のアドレナリンが急速に引いていったことで、私はある事実に気がついた。
「あ、あー……テンション上がりすぎて気付いてなかったけど。私の領域、呪力が使えなくなるから『反転術式』も発動できてなかったんじゃん……」
全身の傷が痛み、ドクッ、と血が身体を流れる。領域を展開する直前、無数の蟻に皮膚を噛みちぎられ、肉を削り取られた傷跡。そこから流れた夥しい量の血が、私自身の身体と、辛うじて残っていた下着の残骸を真っ赤に染め上げている。
「いてて……。文字通りの血まみれ、おまけに服もほぼ無しの半裸状態とか酷い有様だ。とりあえず傷は反転で治して、と……」
私はガクッとその場にうずくまり、寒さと痛みに震えながら、自身の身体に反転術式の光を巡らせ始めた。
――ズドォォォォォンッ!!!
その時。廃鉱山の入り口付近で、爆薬でも破裂したかのような轟音が響き渡り、坑道全体が激しく揺れた。
「な、なんだ!?」
私が咄嗟に振り返った直後。土煙を突き破り、恐ろしい速度で二つの影が坑道の奥へと飛び込んできた。
「「硝子ッ!」」
息を切らし、平時ではあり得ないほど焦燥に駆られた表情を浮かべていたのは、私を見送って高専に残っていたはずの五条と夏油だった。
おそらく、外で待機していた補助監督が先程の呪霊の領域を見て、『特級事案発生』として高専に連絡をしたのだろう。そのSOSを受け、五条と夏油があり得ないほどの速度で駆けつけてきたのだと思われる。
二人は、坑道の奥の惨状を見てピタリと足を止めた。
彼らの視界に映ったのは、完全に粉砕されてチリになりかけている特級呪霊の残骸。そして、その中央で『全身を赤黒い血で染め上げ、ボロ布のような姿でうずくまっている私の姿』だった。
数秒の、完全な沈黙。
血まみれで倒れ伏す私を見た五条の顔から、普段の余裕と笑みが完全に消え去った。その蒼い瞳が見開かれ、声が微かに震える。
「……ウソ、だろ。おい、硝子……!」
「硝子! 大丈夫か!? すぐに高専の医務室へ連れて……ッ!」
完全に『私が死に掛けている』と勘違いし、血相を変えて駆け寄ろうとしてくる同期の二人。だが、現在絶賛セルフ治療中で、豊満な胸元や太もも、ショーツまで丸出しの半裸状態である私からすれば、それは完全に乙女の危機に他ならない。
「……ストーーップ!」
反転術式の光を放ち傷を治しながら、私は血まみれの顔を思い切り上げて叫んだ。
「来んな! 見んな! ちょっと全身喰われて血だらけだから今治してる最中なの! というか今ほぼ半裸だから、どっちも見ないで後ろ向いてっ!」
中身は男だとはいえ、十六年近くも女子として生きてきたのだ。そのせいで、同期の男二人に半裸状態を見られたことに顔から火が出るほどの羞恥心を覚え、その辺に落ちていた石ころに呪力を込め、五条と夏油の顔面めがけて全力で投げつけた。
「おっと」
「あぶなっ」
石は当然『無下限』に阻まれて止まり、夏油はヒョイと首を振ってそれを避けた。そして私の言葉でようやく、『私が死にかけているのではなく、ただ服がなくてキレているだけ』だと理解したらしい。
真っ先に反応したのは、一般家庭出身の健全な思春期男子である夏油だった。
彼は私のボロボロの制服からほぼこぼれ落ちている胸元と、丸出しの太ももを数秒間ガン見してしまった後、顔を真っ赤にして、慌ててバッと後ろを向いた。
「す、すまない硝子! あまりにも血まみれだったから、その、決して邪な気持ちで見たわけじゃ……っ!」
背中越しにもわかるほど動揺し、早口で弁解する夏油。対して、御三家出身でその手の羞恥心やデリカシーが壊滅している五条は、後ろを向くどころか、六眼の機能も相まって私の半裸をジッと観察しやがった。
「は? 傑、お前なに顔真っ赤にしてんの。脳筋ゴリラ女の裸なんて見ても特に何とも思わないだろ。……つーかお前、意外と着痩せするタイプだったんだな」
「五条お前、それ以上喋ったら治した直後にその顔面蹴り飛ばすぞ!」
私が青筋を立てて怒鳴ると、五条は周囲に散乱する特級呪霊の残骸と私を交互に見比べ……状況を完全に理解したのか、フッといつもの余裕を取り戻したように笑った。
「……ま、無事で良かったよ。1級案件で領域展開なんて、さすがの俺もちょーっとだけ焦ったっつーの」
普段の憎まれ口の裏に、確かな安堵を滲ませる五条。そして、顔を赤くしたまま自分の学ランを脱ぎ、「ほら、早くこれを羽織りなさい……ッ」と後ろ手で差し出してくれる夏油。
――こうして。
予想外な事態が起きた私の単独任務だったが、特級呪霊を単独で祓った事によりめでたく五条や夏油と同じ1級術師となったのだった。
頂いた感想はあまり返せてませんが全部読ませて頂いています。いつもありがとうございます。
※以下、感想を読んだ作者の感想とTS硝子さんの領域展開についての構想、読まなくても問題無し※
感想の中でエネルギー吸収アリーナ?というのがあったので調べてみたら呪術のミーム系の事だったんですね。
作者は呪術アニメ勢+ストーリー展開だけ見てる感じなので実は知りませんでした。
『生得領域』は『魂(精神)の中に広がる風景」⇒ 領域展開はこの『魂(精神)の中に広がる風景』を、結界術と呪力を使って現実世界に押し出して具現化する技術 ⇒ なら転生者の領域展開って『前世の現代日本を具現化するんじゃ?』と言う連想で考え付きました。
なので効果は『現代日本=術式も呪力も無い=呪力強化や術式の存在が無いから出来ない』という考えです。
つらつらと書き殴ってしまいましたが、何処かおかしい部分や気になる部分があったら遠慮無く感想で指摘お願いします。