□??? 無国優聖
ベストを着た二足歩行の猫がてちてちと足音をたてながら俺の元へと近づいてくる。
かわいい…
「僕は君の担当をさせてもらう管理AIのチェシャだよー。よろしくねー」
「よろしくお願いします」
管理AI…話には聞いていたが、ここまでスムーズな会話が成立するなんて、目の前に本物がいる今でも正直信じられない。
実は中身が人だったりしないかな…
「それじゃあ始めに、名前はどうするー?」
「ノーランド・バーノルンで」
「はーい」
ノーランドは苗字を英語読みにした感じ。
バーノルンは好きなキャラクターの名前をイジったものだ。
「はいこれーアイテムボックスねー」
「ありがとう」
渡されたのは小さなバッグ。
だが話を聞けば、中は異空間となっているらしく、教室一つ分ほどの物が収納できるらしい。ファンタジーだ…
「アバターはどうするー?」
「リアルをデフォルトにしてイジったりは?」
「できるよー。そりゃー」
俺が現れる。
なんだこれ凄いな。
とりあえず、細かい所をちょこちょこっと変えて、無難に金髪なんかにしてみる。
意外と悪くない。
どんどん決めていこう。
「次は初期装備だねー。どれにするー?」
「じゃあ…これで」
選んだのは、白を基準としたローブ風の服に灰色のズボン、どちらもゆったりめの装いとなっている。
雰囲気的には、聖職者と旅人を足して割った感覚である。
「武器はー?」
「メイスで」
「オッケー」
そして…
「それじゃあ<エンブリオ>を移植するねー」
「おぉ…」
左手に卵のような形の宝石が埋め込まれる。
これが、この世界での俺の相棒、〈エンブリオ〉。
見た目と同じくまだ孵化していない状態らしく、俺と共に成長していくようだ。
正直ワクワクする。
「最後に、所属する国はどこにするー?」
「アルター王国で」
「りょーかーい。ちなみに軽いアンケートなんだけど、即決した理由はー?」
「先にプレイしてる友達が待ってるんだ」
「なるほどねー。あ、後で所属国を変えられるイベントとかもあるから、そこらへんは大丈夫だよー」
「わかった」
「…さて!」
いよいよか…!
「これから始まるのは無限の可能性!」
チェシャの喋り方が、間延びしたものではなく、語り口調になる。
それだけで、武者震いのような感覚になり震える。
「<Infinite Dendrogram>へようこそ!“僕ら”は君の来訪を歓迎する!」
その宣言と共に、周囲の景色が消える。
先ほどチェシャに見せてもらった地図の大地が眼下に広がり、近づいてくる。
否、俺が近づいている。
一瞬すぎる出来事。
もう、笑うしかない。
俺はまさに今、この世界へと落ちていったのであった。
これだけ簡略化すればセーフ説