聖者ノーランドのキセキ   作:灼熱の黄金ポテト

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どっかでエンブリオ大量に出したいな〜とストーリー練り練り中


第四話 ある日、森の中、迷子に、出会った

□〈旧レーヴ果樹園〉 ノーランド・バーノルン

 

 走る、走る…。

 ひたすらに、後ろを向かずに。

 たまに潜み……すぐにバレ、また逃げる。

 腕の中には“十歳前後の金髪の少女”を抱え、飛び回る蜂型モンスターから、逃げ続ける。

 

 が、さすがに引き連れすぎた。

 少女を茂みに隠し、少しずつ、デカ蜂を倒していく。

 否、倒すと言うより、羽なんかを集中的に攻撃して、一時的に追えなくさせているだけだ。

 真の意味では倒せていないため、気休め程度でしかない。

 

「きゃあ!」

 

 そして蜂どもに気を取られている内に、デカい蟻型のモンスターが顎をギチギチと鳴らし、少女の側へと近づいていく。

 

「こっちを見ろ…!」

 

 道中買っておいた投げナイフを当ててみるが、刺さりはしない。

 その代わりヘイトは俺の方に向いてくれたのでヨシとする。

 

 一体なぜこうなってしまったのか…

 

 話は、数分前から始まる。

 

 

 ◇

 

 

 遡ること数分前。

 〈旧レーヴ果樹園〉へと足を踏み入れた俺は、すぐさまこのダンジョンの異常さに気づく。

 

「敵…強すぎん?」

 

 いくら何でも強すぎる、それに初心者が対応できる量ではない。

 南門の近くに位置して初心者用な顔をしながら、蓋を開けてみれば完全に上級者用の森林ダンジョン。

 印象詐欺もいいところだ。

 

 アイツ、それでここに誘いやがったな?

 少し不満を漏らすが、そんなことをしていても仕方がないため、息を殺して森を探索していく。

 

「…アレ殺れそうだなぁ」

 

 発見したのは、見るからに弱った蟲型のモンスター。

 姿はカブトムシのような…分からないが、何か争いに負けて逃げてきたった感じだ。

 様子を見てみるが、近くにも、他に敵がいる感じはしない。

 おとりか何かか?……その線も考えたが、それにしては弱りすぎている。

 

「…っりゃ!」

 

 崩れかけた右側の羽めがけて後ろから襲いかかる。

 疲労で油断していたのか、蟲モンスターは対応できずに、無抵抗のまま羽を壊される。

 そして壊された羽の方向に傾きながら落ちていき、飛べなくなる。

 

「もうっ…いっちょ」

 

 硬い羽が壊れて晒された、柔らかい内側の肉に向けてメイスを思いっきり振り下ろす。

 

「…!」

 

 モンスターは声にならない悲鳴を上げ、その後数回の打撃をもろに食らってしまい、そのまま絶命した。

 そしてそれと同時にレベルが上がり、スキルを取得したという電子的な通知が頭に響いてきた。

 

「《鎚技能》と《鎚強化》か…」

 

 なんてドンピシャなスキルだろう。

 正直、今のステータスじゃ焼け石に水程度の効果でしかないが、今後役に立つだろうし有り難く使っていこう。

 …レベルも上がった、スキルも取得して、そこそこの素材も手に入った。

 だが、肝心のエンブリオは目を覚まさない。

 

 何か、何か必要なのだろう。

 経験か、意志か、それとも……ん?

 

 おかしい、モンスターがいない。

 さっきまでなら、そろそろ視界の先に一匹ぐらい見えてもいい頃だが、見渡してもいる感じも音もしない。

 いや違う。

 何かは感じる、なんだこの匂い……この先か?

 

「…ん?」

「あっ…」

 

 不思議な匂いを辿っていくと、そこには、この場所に似つかわしくない容姿の整った少女が、お香のようなものを持って草むらの陰で身を縮めていた。

 …これはなんか厄介事か…?

 

「あ〜……お嬢ちゃん?こんなところで何をしてるんだい?」

 

 しまった。

 あまりに予想外の出来事に気が動転しすぎた。

 なんだよ、お嬢ちゃん?って。

 胡散臭いったらありゃしない。

 

「…その…レムの実を、とりにきたの」

 

 余程追い詰められた状況だったのだろう。

 そんな怪しさ満載な俺に対し、そうして少女、もといミリアーヌちゃんはポツポツと経緯を説明してくれた。

 

 レムの実。この辺りの特産品である高級果物だ。

 ミリアーヌちゃんは、そんなレムの実を使ったケーキを、今日が誕生日だという姉に作ってあげようとしていたそうだ。

 しかしなぜか市場に行ってもレムの実はなく、落胆していたところを“メガネをかけたお兄さん”に、〈果樹園〉に行けばレムの実がある。などと唆されてここまで来てしまったらしい。

 そして【虫除けのお香】を持って来たはいいが、道に迷い、挙句【お香】の効果も薄れてきて絶賛大ピンチだったというわけだ。

 

 そして話している間にも【お香】が効果が切れ、その反動かのように虫たちが大量に襲いかかってきたのだった…

 そのまま、あれよあれよと逃げ出したわけで…

 

 

 ◇

 

 

 (間に合わない…!)

 

 そう思考が浮かんだと同時に、左から右へ強風が吹いた。

 一瞬、幻覚でも見たのかと思ったその一瞬で、蟻どもは誰かの手により瞬時にして切り刻まれたのだった。

 呆気に取られた俺は、ゆっくりと風が吹いていった右側へと視線を移す。

 

 そこにいたのは、姫騎士…とでも表現できそうな美しい女性であった。

 そして彼女は左腕にミリアーヌを抱え、右手に握りしめた剣には、蟻の血か体液であろう液体で汚れていたのだった。

 休まず走ってきたのだろう。

 額には大粒の汗で濡れており、こんな時に言ってはなんだが、抱えられたミリアーヌと騎士の立ち姿は、まるで物語の一枚絵のようであった。

 

「…はっ!」

 

 そこでやっと我に返る。

 多分。いやほぼ確定だろうが、この姫騎士さんこそがミリアーヌちゃんが言っていたお姉さんなのだろう。

 十中八九、ミリアーヌを探しに来たのだろう。

 

「あの…一応聞きますが、貴方は味方、で良いのでしょうか?」

「あっはい!味方です!プレイヤー…じゃなくて〈マスター〉の、ノーランドと言います」

「…とのことですがミリア、この人の言ってることは本当?」

「うん。さっき森で会って…たすけてくれたの」

「そう…ありがとうございます。本当なら、ゆっくりとお礼がしたいところなのですが…ッ!」

 

 言い終わる前に、また森の奥から虫が這い出てくる。

 お姉さんがミリアーヌを守りながら近づいてくる虫をどんどん斬り刻んでいき、俺も彼女の死角で盾になるように虫を吹き飛ばして凌いでいく。

 しかし、妹を守りながら戦っているため、素人の俺から見ても動きが先ほどの剣戟よりも鈍くなっていた。

 

「…あの!ミリアーヌのお姉さん?!」

「リリアーナです!」

「リリアーナさん!このままじゃジリ貧だ!貴方が許可してくれるなら、俺が妹さんを抱えて走る!そしたら貴方は戦いに集中できる!」

「…!」

 

 これは賭けだ。

 ミリアーヌが俺を味方だと弁明してくれてはいても、今日さっき会ったばかりの男に妹を抱きかかえさせるのは、さすがに無理があるだろう。

 

 だが俺は初心者、十分な戦力とは到底言えない。

 リリアーナさんも妹を側に置いて守りながらでは、妹を押し倒したりしないように意識を割かれながら戦うため、十分な実力を発揮できない。

 ならどうするか。

 彼女が十全に戦える方が生存率は上がる。

 

「…分かりました。では、そのようにお願いします…」

「…はい、任せて下さい」

 

 これは、妹には手を出さないで下さい。って意味も少なからずあるだろう。

 まぁこんな状況じゃ何もできないし、する気もない。

 

【クエスト【救助 ー ミリアーヌ・グランドリア 難易度:五】が発生しました】

【クエスト詳細はクエスト画面をご確認ください】

 

【NPCがパーティに参加します】

【リリアーナ・グランドリアが加入しました】

【ミリアーヌ・グランドリアが加入しました】

 

 あとは出口へ向かって走るのみだ。




どこまで主人公を強くするか悩みどころ
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