聖者ノーランドのキセキ   作:灼熱の黄金ポテト

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ちなみに序盤でカットしてるけど、ノーランドくんは趣味全開のキャラデザにガッツリしているため、下手すると女に間違えられます
性別を変えるかどうかはギリギリまで葛藤してたっぽいです(裏話)




第五話 野生のクマ(重火器装備)があらわれた!

 虫、虫、虫、虫。

 行くところ全部に虫がいる。

 リリアーナさんも出会うそばから滅多斬りにしてはいるが、それでも数が多すぎる。

 さっきチラリと見たリリアーナさんのレベルは210……そんな彼女が苦戦しているのだ、どんな状況かは嫌でも分かってしまう。

 ガンガン上がっていくレベルに驚愕しながら、ひたすらに、ミリアーヌちゃんを抱えてひたすらに走る。

 

 その瞬間、リリアーナさんの頭上の木からモンスターの強襲がくる。

 目の前の敵に奮闘しているせいで、彼女は気づいていない。

 

「上です!リリアーナさんッ!」

 

 半分も聞き終わる前に、彼女は反応するが……予想外。

 数が多すぎる。

 見れば周りは蟻系モンスターしかいない。

 

 (誘い込まれた…!)

 

 罠だ、と気づいたがもう遅い。

 後悔に頭が染められるその瞬間、蟻が……跡形もなく粉砕されていった。

 轟音と共に、辺り一面に弾幕で覆われる。

 

『YEAAAAAAAAAAAHHHHHHHHHHH!!!』

 

 そんな叫び声と共に現れるは、ガトリング砲をぶっ放しながら走るクマ……の着ぐるみ姿の不審者であった。

 

「誰ですか!? あ、貴方は……!」

 

 リリアーナさん、その口ぶりだとこのヤバそうな人とお知り合いなんですか?

 さいですか…。

 なんてことを考えている内に、虫どもがみるみる減っていく。

 スッゴぉい……けどファンタジーゲームにガトリング砲とはこれ如何に。

 

「よし、間に合った!」

『騎兵隊参上クマー!』

 

 そして後ろから金髪の爽やかイケメンも現れた。

 どんな組み合わせだよ…

 

「大丈夫ですか?」

 

 イケメンくんは俺たち三人に近づき、声をかけてくる。

 

「貴方はあのときの……どうしてここに?」

 

 なんと彼とも知り合いだったらしい。

 マジか!肩身狭いね!

 なんてしてると、モンスターを殲滅し終えたのか、クマの着ぐるみさんもこちらへ合流してくる。

 

「それに、貴方まで……本当に、どうして」

『助けに来たクマー。うちの弟が「放ってなんておけない! 何があろうと俺は彼女を救いに行く!」って言うから、俺も手助けしに来たんだクマー』

 

 言ってねぇ⁉

 という弁明の叫び声が聞こえるが、クマさんは聞こえてないかのように流して話の進めている。

 なるほど、リアルで兄弟なわけか。

 であるならこの慣れているかのようなスルー技術にも納得がいく。

 

「弟……それでですか」

 

 リリアーナさんも納得したかのように呟いていた。

 だとしても、この組み合わせで「兄弟です」なんて言われても、初見じゃ絶対納得できない自信がある。

 

「それと、どうも。レイ・スターリングって言います。貴方はどういう経緯で?」

「あどうも、ノーランド・バーノルンです。僕はなりゆきと言いますか……森でミリアーヌちゃんに出会って、そのまま助けたってところです」

 

 まぁ実際は俺とくに活躍できてないんだけどね。

 リリアーナさんにキャリーしてもらいっぱなしだったし。

 

 レイくんに握手を求められ、お互い自己紹介をしながら握手を交わす。

 

『その装備……【ライオット】シリーズってことは、初心者さんクマか』

「そうですね。まぁ色々とあって、この森を探索してたら……たまたま。って感じですね」

『なるほどなー。あっ!忘れるとこだったクマ!俺はシュウ・スターリングだクマ。よろしくクマ』

 

 クマのお兄さん……クマ兄さん?とも握手を交わす。ふわふわだぁ…。

 スターリング……ムクドリか?

 2人とも、そんな身バレド直球な名前で大丈夫なのか……?とも思ってしまうが、あえて何も指摘しないでおく。

 さすがにそこは百も承知だろうし、赤の他人である俺が気にしても仕方がないだろう。

 

 と、勝手に俺が納得していると、リリアーナさんがミリアーヌを連れてこちらへと近づいてくる。

 

「お三方……本当にありがとうございます。貴方達が来てくれなければ、妹を……ミリアを失うところでした」

「いえ……俺なんて後ろから見ていただけですから……」

「……俺もほぼ役に立ってなかったですし……」

「だとしても、御礼を言わせてください。ミリアを救ってもらったこの御恩、絶対に忘れません」

 

 リリアーナさんの言葉に照れはすれど、思うところもある。

 だって逃げ回って、最後はずっと守られてただけだしなぁ……。

 

 と考えていると、レイくんも思うところがあるのか、少し暗い顔をし、ミリアーヌちゃんを直視していた。

 え?どしたレイくん。

 

『ロリ? ロリコンクマ?』

 

 なに言ってんだこのクマさんは。

 見なさい、レイくんが一瞬にして睨み返しているではないか。

 

「ひっく、ひっく……」

 

 すると、緊張が解けたのか、ミリアーヌちゃんが泣いてしまった。

 まぁ、それはそうだろう。

 ただでさえ大量のモンスターに囲まれ、さっきまで死ぬ寸前かもしれなかったのだから、泣いてしまうの無理はない。

 俺がこの子の年齢で、こんな状況に巻き込まれていたら、泣いて見るに堪えないことになってしまっていただろう。

 けれどこの子は、その手に持つレムの実入りの籠を、今もしっかりと持っている。すごい子だなぁ……。

 

「兎に角、ここを出ましょう。またモンスターが集まってきては大変です」

「わかりました」

「了解です」

『……』

 

 すると、クマ兄さんが黙り、顔が……なんとなく険しい表情をしているように感じる。

 そして、どことなく周囲を警戒するような立ち回りをし出した。

 

『ノーランドくん。君は今回のこれについてのクエストを受注したか?』

「はい、しましたよ。それと、お兄さん年上っぽいんで、呼び捨てでいいですよ」

『あぁ分かった。それで、二人とも……クエストはまだ達成されてない(・・・・・・・・・・・・・・)な?』

「!?」

 

 気づいてしまう。

 レイくんはまだ察せてないらしいが、これは相当に不味い……。

 

 このクエストの難易度は5だ。

 アルノーから聞いたが、この難易度は相当高いものだ。

 リリアーナと合流した、モンスターもすべて倒した、ミリアーヌも救えた(・・・)。

 俺のクエストの名は【救助 ー ミリアーヌ・グランドリア】。

 救えたはずなのに、終わらない。

 ということは……。

 

 と、クマ兄さんがレイくんへ説明を行っている。

 

『つまり、このクエストは“合計レベル210のリリアーナと合流した上で難易度:五”のクエストって訳だ』

 

 その直後、地面が爆裂し、大穴から巨大な何か……ムカデが顔を出す。

 

『ちぃ!』

「【亜竜甲蟲(デミドラグワーム)】ッ!?」

 

 リリアーナさんの驚愕の声と共に、デミドラグワームはさらに増え、容赦なく襲い掛かってくる。

 不味い!

 

『亜竜クラスのモンスターか……。なるほど、そいつらを複数体相手にこの子を護るなら助っ人付きでこの難易度も納得だ。だがなぁ!俺相手にその程度じゃまるで足りねぇ!』

 

 その宣言と共に、クマ兄さんは両腕を天へと掲げる。

 

『叩いて潰してやってもいいが折角だ! バルドル第四形態起ど――な!?』

 

『GUGIIIEEEAAAAA!!!!!!』

『GYUIIIEEEEEEAAAAHHHHH!!!!!』

『GIGUGYYYEEEEEAAAAAA!!!!』

 

『ちょ、ちょっと待つクマ!? 今は硬直中で動けな――クマァァ!!』

 

 直後、クマ兄さんは囲むように出てきたムカデたちに捕まり、地中へと消えていってしまった。

 この間、実に5秒半ほどの出来事である。

 

「………………え?」

「ッ!」

「うっそだぁ……」

 

 レイは思考が止まり、リリアーナは絶句、ノーランドは無様に口をポカンと開けて現状の理解から逃れようとしていた。

 

「兄貴……フラグ回収が早すぎるだろ……」

 

 それはそう。本当にそう。

 そして余ったデミドラグワームたちが一斉にこちらを向いてくる。

 

「お二人とも、お願いしたいことがあります」

「「な、何でしょう?」」

 

 戦々恐々な俺たちに対し、リリアーナが話しかける。

 

「私が一体、可能ならば二体ほど抑えます。その間に、どうか妹を安全なところへ連れて行ってはもらえないでしょうか」

 

 目が、据わっていた。

 覚悟を決めたのだろう。

 それが、言葉で、その目で分かってしまった。

 

「……分かった。そうと決まれば、行こう」

 

 そう言うと、レイくんは俺に声をかけ、ミリアーヌちゃんの手を引いて、駆け出した。

 それに続いて、俺も走り出し……一瞬だけ後ろを振り返った。

 

「気を付けてくださいね」

「えぇ、貴方達も」

 

 そうして、また走り出してすぐに、背後でリリアーナさんと【デミドラグワーム】の戦闘が始まったのだった。

 

 

 ◇

 

 

 走る。

 虫に続いてまた走る。が、さっきとは違って足取りが重い。

 なんせあんな山みたいデカいムカデが襲ってきたんだ。

 俺やレイくんよりも、ミリアーヌちゃんの方が怖いに決まっている。

 

 ミリアーヌはレイに手を引かれ、ノーランドが殿を引き受け、三名は出口へと一心不乱に走っていった。

 

「そういえば、レイくんってレベルいくつ?」

「あっ、すいません……俺、まだジョブについてなくて……」

 

 てことは、ジョブなしでここまでついてきたと?

 凄い胆力だな……。

 

 勇気と捉えるか、蛮勇と捉えるかは、人によるだろう。

 少なくとも俺は勇気……正義だと感じた。

 だいぶお人好しそうだなぁ…

 

「それと、くんって付けなくても、呼び捨てでいいですよ」

「りょーかい、レイ。とにかく、もし【デミドラ】(あいつ)が追ってきたら、俺が壁になるから。その隙にミリアーヌちゃんを連れて走ってくれ」

「分かった、ノーラン……ドッ!?」

 

 直後、地割れ、爆散。

 現れるは一体の【デミドラグワーム】。

 

「逃げろ!」

 

 ノーランドがメイスを構え、レイたちが木を縫うように逃げる。

 その後、来たるは微々たる痛み、そして背中への衝撃。

 ノーランドが叫び、レイたちの方向へ振り向いた瞬間に、真正面からのタックルを食らったのだ。

 そして崩れる【竜鱗】が1枚。

 

「ってぇ……ッ!?」

 

 直後、レイの方にも、もう一体の【デミドラグワーム】が現れる。

 

「そりゃないでしょ……って邪魔すんな!クソ!」

 

 道を塞ぐかのように、ノーランドの目の前へ先回りをしてくる【デミドラ】(クソムカデ)。

 悪態をつきながらも、退かすことができないことは分かりきっているため、今はレイに任せるしかない。

 

 ミリアーヌを救うためにも、まずこいつを倒さなければ先へは行けない、が。

 圧倒的ステータス不足。

 この差を覆すことは不可能に近い……が。

 

 (エンブリオ…)

 

 ここだろう。

 目覚めろよ、今しかない。

 

「“今”を変えるには……“お前”しかいないッ!」

 

 主の覚悟に応えるかのように。

 もしくは、仕方がない。とやっと腰を上げるかのように。

 

 卵が孵る。

 紋章が、浮かび上がる。

 

 玉座に座する女神(・・・・・・・・)、の形へと変貌する……




裏話という名目で作者の癖バレしたところで五話目終了。
ノーランドくん、短時間で色々起こりすぎてテンションが最高にハイッ!になっちゃってます。

ノーランドのイメージ図
レイくんとは逆な感じ。女々しすぎかな…?

【挿絵表示】

腰に装備した純白のメイスは…?

次回、主人公のエンブリオ解禁。
そろそろ冒険始まりそうかな?
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