転生したら『天理』になったので、『星神』になる。 作:グランド・アニマル
創造歴10年
俺は天の使いを創造し、彼女たちを宇宙へと解き放った。
宇宙空間でも活動できるよう調整された彼女たちは、
俺の理想通りに動いた——すべての人類を愛すること。
天の使いは、元素力や地脈に依存せず、
虚数の樹から直接エネルギーを引き出すよう改造されている。
それをおかげで、彼女たちは虚数障壁を無視して、
自由に星系を旅することができる
彼女たちは各知的生命体の住む星に降臨し、
そこで暮らす人々を助けた。
原始時代から中世程度の文明は、
彼女たちの導きによって急激に発展した。
わずか数年で宇宙航空技術を獲得した星も現れた。
降り立った乙女である彼女たちを「女神」として崇める文明もあれば、
既存の宗教を持つ文明では「悪魔」と罵る者もいる。
あるいは——その容姿を利用し、神の使いと誤認する者もいた。
文明の発展は急速度で加速し、
宇宙は空前絶後の繁栄を手に入れた
俺は天の使いに、原作のような制約を特に課してはいない。
特定の人類を愛することも許している。
ただし——定期的な物資の補給を徴税として課している。
俺は放置主義だ。
使命を放棄し、特定の個人を愛しても、
人類を害する以外のことをしなければ見逃す。
天の使いが物資を補給し、
俺は次々と惑星をテラフォーミングしていく。
岩石惑星、ガス惑星、氷惑星、海洋惑星、砂漠惑星、溶岩惑星、炭素惑星、クトニア惑星——
恒星を除くあらゆる惑星を、人が住める星へと変えた。
山を創り、森を創り、人類を生み出し、
そして天の使いを創り、導かせた。
その道中、国同士の争いは避けられなかったが——
天の釘を落とせば、あっという間に仲良くなってくれた。
★★★★
創造歴1010年
天の使いを宇宙に解き放って1000年がたった。
生産した天の使いシリーズは1億体を超えた
既に銀河の2/3を支配下に置くことに成功した。
★★★★
"ニコサイト"
千年の時は早かった。
私は新たに生まれた妹たちを育て、
彼女たちを率いて——他文明の人類を導き救う使命を胸に、宇宙へと飛び立った。
前世の記憶は決して口にしなかった。
ただ、天理の意思に従った。
今の私には、天理に歯向かうことができない。
力の差がありすぎる。
今の天理は、龍王やアビスからの傷も負っていない——
完全な状態だ。
例え反逆したところで、返り討ちに遭うのが関の山だろう。
逃げることもできた。
だが——新たに生まれた妹たちを、置いていくわけにはいかなかった。
「お姉さま」
「あら、どうしたの」
私はここで、新たに生まれた妹たちと共に、
文明を導いている。
新たに生まれた妹たちは——とても可愛かった。
ずっと末妹だったから、その反動かしら。
今、私がいるのはティーマス星系。
この星は、元々は砂漠化した惑星だったが、
昔に天理がテラフォーミングし、再構築した星だ。
その影響でこの星はパネース信仰が根付いている。
常に讃美歌を歌っている。
人も天の使いも、そして私も厭々ながら、
偉大なるパネース、全能なるパネースと謡っている。
★★★
創造歴1500年
アマテラス星系が消滅した。
俺の管理下にある星々の中でも、
トップクラスの治安と民度を誇り、
天の使いたちが守護してきた文明だった。
消滅の原因は——新たに生まれた星神。
『貪欲』のウロボロスによって、星系ごと食われてしまったのだ。
天の使いたちは、より多くの人々を救うため、
脱出用ロケットの時間稼ぎとして、
ウロボロスに立ち向かった。
——彼女たちは全員、ウロボロスの餌となった。
ウロボロスによる管理下星系の消滅は、これで3件目だった。
多くの文明世界は激怒し、
ウロボロスに対抗するための兵器を開発し始めた。
天の使いは、偉大なる神の愛そのもの——
多くの文明世界において、彼女たちは崇拝される偉大なる存在だ。
実のところ、生みの親である俺よりも、
彼女たちの方が信仰されることのほうが多い。
それは仕方のないことだ。
常に星々のテラフォーミングに忙しい俺と違い、
彼女たちは自らの全てを人類に捧げ、身を寄せ、愛しているのだから。
——そういう風に創った俺が言うことではないが、
彼女たちの人類愛は狂気そのものだ。
人類のためなら、
自らを星神の餌になることさえ惜しまないのだから。
俺も彼女たちの犠牲に報いるため、
虚数崩壊インパルスを使い、ウロボロスの鱗を焼いた。
だが——
むしろ、逆に飲み干されてしまった。
星神の力は絶大だ。
例え俺がどれだけ自己改造を重ねても、
星神には勝てない。
——だからこそ、俺は攻撃した。
少なくとも、犠牲になった娘たちの弔いにはなるだろう。
★★★
アマテラス星系が消滅した。
あそこには、私たち姉妹が育てた文明があった。
何世代にもわたって導き、共に歩んできた星々が——
一瞬で、無になった。
『貪欲』の星神、ウロボロス。
神でありながら、人には微塵も興味を示さない。
文明を「餌」としか見ていない、真の神。
——皮肉なものだ。
まさか、前世の天理以上に人を軽んじる神がいるなんて。
そんな存在は、前世でも見たことがなかった。
不朽も、均衡も、貪欲も——
この宇宙の神、星神たちの力は絶大だ。
例え、前世の天理でさえ——
その足元にも及ばないだろう。
まさに、
——でも、
だからといって、人々が苦しむ理由には、決してならない。
★★★
人々の信仰心は、意外なほど深い。
アマテラス星系が消滅してから100年が経った。
いまだに、宇宙難民となったアマテラス星系の人々は、
彼らを守るために犠牲になった天の使いを信仰し続けている。
途中で別の天の使いを送り込んだところ、
彼らは歓迎したが——
それでも、犠牲になった天の使いのために像を立てた。
★★★
『不朽』の鱗は、不死の病を齎し、
『貪欲』の舌は、人々の文明を生命を貪り、
『均衡』の秤は、永遠の繁栄を許さず天秤を正そうと厄災を降り注ぐ
俺を信仰する文明のほとんどは星神を崇めない
だが、俺の力は星神には及ばないことが分かる。
生・死・時・空の権能でも傷を付けても、
倒すことはできない。
ならばどうするか
答えは一つしかない。
星神になるのだ
★★★
星神になるための明確な条件は、原作においても明かされていない。
だが、一つだけ確かなことがある。
星神になるのに、特別な種族である必要はない。
機械でも、蟲でも、わけのわからない概念や現象の類でも——
星神になれる。
どうやら、「運命に関する出来事」を起こせばいいらしい。
『壊滅』のナヌークは、己の故郷を壊滅させたことで星神になった。
『巡狩』の嵐は、豊穣の忌み物を狩り続けたことで星神になった。
『知恵』のヌースは、知恵を手に入れたことで星神になった。
ならば——
俺もまた、運命を切り開くしかない。
問題は、どんな運命を切り開くのかだ。
『創造』。
『慈愛』。
『支配』。
あるいは『秩序』か。
候補はいくつもある。
だが——どれも、俺の理想とするものではない。
『創造』なら、創造だけに没頭してしまいそうだ。
『慈愛』なら、愛玩しかできなくなる。
『支配』なら、人を支配することしかできなくなる。
俺は——人類の繁栄を求めている。
だが、『繁栄』の運命を手に入れても、
繁殖に取り込まれる未来しか見えない。
そもそも、『星神』が一柱を追加するだけで、
この宇宙の冷酷さと他の『星神』の残忍さを変えられるか
いや無意味だ。
星神一柱だけでは足りない
——ならば、どうするか。
俺は『天理』パネースだ。
ならば、切り開く運命は一つしかない。
★★★
『天理』
パネースが切り開いた運命
信仰、慈愛、秩序は『天理』の運命の現われ。
他の運命が「運命に沿って行動する」ことを是とするのに対し、
天理は「パネースに従うこと」そのものが、運命の道を歩むことだと説く。
★★★
宇宙が、うぶ声を上げた。
機械惑星セレスティア——
パネースが自らの本体と一体化させた、鉄と機械の星。
それが突然、真っ二つに切り裂かれた。
星全体に罅が入り、その隙間から光が溢れ出す。
外殻が剥がれ落ち、巨大な裂け目が出現する。
そして——
誕生した。
「――――――ッ!!!」
それは、人型の宇宙だった。
セレスティアの残骸から、
巨神が姿を現す。
体には銀河が浮かび上がり
宇宙の擬人化がそこにいた。
宇宙空間に漂う天の使いたちは、その光景を目の当たりにした。
鉄と機械の星——
自分たちが生まれ出た星でありながら、
かつては何一つ生命の気配を持たなかったあの星が、
今、砕け散っている。
武骨でありながら、それでも故郷だった星が、
真っ二つに引き裂かれた光景。
その元凶に——彼女たちは心当たりがあった。
「……パネース。」
天の使いの長女、ニコ・リヤンは、
思わず、呼び捨てにした。
2000年の間、一度も呼び捨てにしたことのない名を——
今、初めて、その唇が紡いだ。
★★★
無事に——星神になれた。
俺が切り開いた運命は、『天理』。
信仰、慈愛、秩序——それらすべてを包含する、
絶対的な“在り方”そのもの。
簡単に言えば——
俺が運命だ。
滅茶苦茶な運命だとは思う。
だが——別に悪くない。
『天理』の運命を、さらに簡単に言えばこうなる。
「俺が敷いたルールを、
俺も人々も守らなければならない。」
それだけだ。
このただ一つの原則を、
俺は全宇宙に適用した。
神の掟
・神は人を愛さなければならない
・ 神は人を守らなければならない
・ 神は人を罰しなければならない
民の掟
・ 人は神を信仰しなければならない
・ 人は星を壊してはならない
このルールは、人も『星神』も守らなければならない。
そして——このルールを敷いた俺自身もまた、
このルールを逸脱することはできず、消去することもできない。
ただし、追加することはできる。
特に神の掟は——
『星神』の意思そのものに植え付けられる。
これで、全ての『星神』は人を愛し、守ることができる……
はずだった。
……ああ、もう意思がルールに縛られる。
少し、寝るか。
★★★
——このとき、俺は勘違いをしていた。
「神は人を愛さなければならない」
「神は人を守らなければならない」
このたった二つのルールは、
言葉のニュアンス次第で、いくらでも変えられる。
そもそも——
『星神』は甚大な力を持っているからこそ、
人に興味がない。
愛とは、興味である。
ならば、このルールによって——
『星神』は人間に興味を持ったのか?
——違う。
彼らは人間以外の全ての興味を失い、
その結果、人間をものすごく愛した。
それが、過ちだった。
神の愛は、確かに素晴らしいものだ。
だが——
『天理』パネースは、人の尺度で神の愛を敷いた。
神の愛は、神々の捉え方次第でいくらでも変化し、
厄災にもなり得る。
神の愛は、厄災と大差ない。
それは宇宙の蝗害(こうがい)を見ればよくわかる。
宇宙規模の蝗害は、星々を主食とし、二次被害として人々が害された。
彼らは人を食べようとしたわけではない
とりあえず手当たり次第に食べようとしたのだ。
そんな星神に、人間への愛が芽吹いたら——?
「人を愛する = 好物 = 食べる」
繁殖の星神は、選り好みをして
わずか3年で、原作以上の被害を齎した。
そして——「守る」という意味も、
言葉のニュアンス次第でいくらでも変えられる。
俺のルールは「従うこと」に特化しているが、
どういう風に守るかは、設定しなかった。
——それが、致命的だった。
★★★
『壊滅』のナヌークは——
人々を愛するあまり、人を殺して尊厳を守り、
エントロピーへと向かう。
『虚無』のIXは——
感情は存在しないが、偽りの愛により感情を覚醒し、
存在を「悪」と定義。
人々を守るため、集中的に人々を飲み込み始めた。
『巡狩』の嵐は——
人々を豊穣以外の厄災からも狩ろうとし、
宇宙のあらゆる厄災を殺すため、人々を救う。
だが、其にとって殺すも尊厳を守るにつながる
『存護』のクリフォトは——
壁作りを最初からやらず、
ハンマーをブンブン振り回し、
文明があるところにしか壁を作らなくなった。
人間以外には興味がないため、タイズルス討伐に積極的に向かう。
『知恵』のヌースは——
人の知識が大好きになった。
それ以外は基本的に変わらない。
そもそも知識は人間が生み出したもの。
歴史改変が嫌いになったため、
事実しか書かないアカシックレコードを出す。
これに、ミュトゥスは発狂した。
これには、ザンダーもにっこり。
だが、知恵の独占は許さん
『調和』のシペは——
原作以上の過激派と化す。
『豊穣』の薬師は——
望んでいないものにも積極的に加護を与える。
原作以上の被害を出す
『記憶』の浮黎は——
誕生していないのでノーカウント。
『愉悦』のアッハは——
(まだ観測範囲外)(おいおい書かないで)
『貪欲』のウロボロスは——
人が好物になったので、積極的に食べる。
彼にとって守る=食べて体の一部になること。
『繁殖』のタイズルスは——
人が好物になったので、
文明の多い星=人が多い星を積極的にターゲットにした。
美味しそうな太陽や繁殖に適した星よりも、
人がいる星を襲うようになった。
さらに、人を守るルールに関しては——
男は肉団子に加工して、女は「苗所」として守った。
★★★
"とある英雄王へのインタビュー"
——「神の愛」について、どのようにお考えですか?
「神の愛……だと?」
英雄王は、肩を震わせて笑った。
嘲笑とも、憤怒ともつかない、低く響く声だった。
「——ふん。そんなもの、厄災と大差ないわ。」
酒杯を掲げ、月明かりに透かす。
「神が愛せば、人は食われる。
神が守れば、人は飼われる。
神が罰すれば、人は壊される。」
一気に飲み干し、杯を卓に叩きつける。
「——あんなもん、犬の餌にでもあげとけ。」
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