キヴォトス?に転生しました。ネコでした。   作:折部肋

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転生したんですか!やったー!ネコじゃないですか!やだー!

 やあやあどうもこんにちは。私はいま、バカデカいビルの真ん前にぽつんと置かれた段ボール箱の中にいます。

 

 いやぁ焦ったよね。あんまり覚えてないんだけどさ、車道に飛び出たネコを助けようと不用意に飛び出したらすっげえ衝撃と痛みがあってさ、これは死んだかもなぁなんて自分の身体見てみたら傷一つないどころかなんかモフってんの。

 お腹モフモフ。手には肉球。

 そう、ネコちゃんになってました。ご尊顔を確認するために近くの窓ガラスに反射した姿を見ると、あらとってもかわいい。てか助けようとしたネコちゃんだなこれ。黒毛のアメショ、美人さんである。あとなんか頭に輪っかついてる。いやなんで? やっぱ死んだ? ここ天国? 

 

 たぶん転生? ってやつだな。うんうん。なんか流行ってるらしいね。そっちの方面はあまり詳しくないんだけど、オタクの友達が熱心に語ってた気がする。転生するならブル……ブル……、ブルスカ? の世界がいいとか? なんかそんな感じのこと言ってたわ。てかあいつの名前なんだっけ。あれ、私の名前もなんだっけ。前世のことを思い出そうとしてもなんだか頭痛がして思考が働かない。ここはどこ私は誰? あなたはどうしてロミオなの? 帝京平成大学って知ってるか? 帝京平成大学ってなんだっけ? トナカイが通う学校? まあいいか。

 

 ていうか本当にここどこなんだろう。現代日本ではない気がする。通行人を見るとみんなロボとか犬とか猫だし。ん? あの犬猫たち二足歩行してない? パパママニーナどういうこと? なんかデケえし。怖っ。

 

「あら何かしらこの段ボール。……ネコ?」

 

 この奇妙な世界について思いを馳せていたところ、女の子がこちらを覗き込んでいることに気づく。綺麗な青髪をツーサイドアップにしており、髪色と同じ色の眼が輝いている。女子高生かな? スーツっぽい制服にジャケットを羽織っていて、短いスカートからやたら健康的な太ももがまろび出ている。うん、いいね。そういうの大好き。

 

 ……これはチャンスなのでは? かわいいネコちゃんとしてかわいいJKに飼われる絶好の機会なのでは? おいおい、人間の身体を失って絶望してたが神様も粋なことするじゃん。神様がいるのかどうか知らんけど。まあ、転生してる時点でなんかそういうのいるんだろうな。どうでもいいけど。

 そうと決まれば精一杯アピールせねば。媚びろ、私。つぶらな瞳で射殺すんだ! 甘ったるく鳴け! ネコが嫌いなJKなんかいないはず。*1なぁん、なぁぁん。うん、かわいい。目の前の少女も心なしか口角が上がっている。

 

「シャーレの前に捨てるなんて……。とりあえず先生に相談してみようかしら」

 

 若干頬を赤らめた彼女は段ボールごと私を抱えてビルの中へ入る。勝ったッ! 第3部完! これで美少女とのイチャイチャ生活の始まりだ! 昼間は彼女の健康的な太ももの上で寝て、夜は同じベットで彼女の健康的な太ももに挟まれて寝る。最高じゃん! なんかシャーレとか先生とか言ってたけどまあいいでしょ。いやぁどうなるかと思ったがなかなか転生ってのもいいな。

 

 ん? この子なんか銃持ってね? 二丁。え? なんで? 怖っ。てかこの子も頭に輪っか付いてんだけど。え? どゆこと? てかビルの中ですれ違う女の子みんな銃持ってね? あの子はハンドガン、あの子はサブマシンガン、あ、あの子でっけえライフル持ってる。すっげえ。……いや何だこの世界! 銃刀法はどうした! みんな銃持ってるってことは銃を携帯してるってことですよ。小泉ぼーえーだいじん、仕事してくれ! あ、日本じゃないんだった。

 

「おはようございます、先生」

 

「おはよう、ユウカ。……その子どうしたの?」

 

「シャーレの前に捨てられてたんです。とりあえず連れてきちゃったんですけど……」

 

 ふむ、この子はユウカちゃんって名前らしい。で、このなんだか疲れてそうな……男性? 女性? ……中性的な人が先生らしい。身長はユウカちゃんよりは高いかな。ネコ視点だとみんな私より大きいから具体的な身長とか分かんねえな。てか私を見つめる視線がなんかこう、ちょっと危ない気がする。

 

「それは……、うん。一旦渡してもらってもいい?」

 

「はあ」

 

 ユウカちゃんから先生へと箱ごと受け渡される私。顔はいいなこの人。でもなんか好きになれない、好きになれないというか嫌な予感がするというか……。箱をデスクの上に起き、彼? 彼女? は私を抱き抱えて……。

 

「スゥゥゥゥゥ!! アァァァネコチャンカワイイネェ!!」

 

「先生!?」

 

 うわぁ! こいつ私のお腹吸ってやがる! やめろ! 乙女の柔肌に何しやがる! 嫁入り前だぞ! あ、生物学的には私メスっぽいです。前世がどうだったかは思い出せないけどね。精一杯の抵抗で身を捩りながら鳴く。なぁん! なぁぁ! ふしゃぁぁ! ダメだこいつ! 離そうともしない! しまいにゃ引っ掻くぞ! 

 なんて実力行使が頭をよぎりながらも理性で抑え込むこと五分。たっぷり五分間私のお腹を堪能したこいつはようやくその顔を私の身体から離した。

 

「ふぅ。とりあえずこの子はシャーレで保護するよ。ありがとうユウカ」

 

「大丈夫ですか? めちゃくちゃ嫌がってましたけど……」

 

「大丈夫。彼女も段々身を任せてくれてたしね」

 

「全てを諦めた遠い目してましたよ……。あ、というかその子メスだったんですね」

 

「うん、そういう匂いがしたから」

 

 キモっ! なんで匂いで性別分かるんだよ。こっちはてめえがオスかメスか分かんねえんだけど!? ……ん? いまこいつが保護するとか言ってたか? え? シャーレってここのことだよな。ユウカちゃんとのラブラブ同衾生活は? ユウカちゃんの自宅という名の愛の巣でLOVEを育む一大計画は? 嘘だッ! ナタ持って追いかけるぞ! なんでこの変態と暮らさなきゃいけないんだよ! とりあえずとか言ってるけど私のこと手放す気ないだろ。私を見つめる目がそういってるもん。いや目こわっ。下着泥棒のクマを糾弾する時みたいな目してる。

 

「まあ先生が保護してくれるなら安心ですね」

 

「うん。責任持ってこの子を引き取るよ。とりあえず環境を整えなきゃね。お金とリスト渡すからユウカはペットショップで色々買ってきてもらっていい? はいこれ」

 

「え? いいですけどこのリストいつ作ったんですか?」

 

「今だけど」

 

「この一瞬で!? 普段からその能力お仕事に活かしてください!」

 

「じゃあよろしくね。私はこの子シャワーに入れるから」

 

 ユウカちゃんが出ていく。シャワーねえ。まあ捨てられていたわけじゃないけど外で拾われたしそうなるわな。ん? シャワーってことはこいつの性別が分かるんじゃないか? いや、どうでもいいっちゃいいが気にならないといわれると嘘になるって言うか、まあ不服ではあるがこれから世話になるみたいだし? 知っておいても損じゃないっていうか? うん、いっちょ確かめてやろうじゃないの。

 先生に抱えられてシャワー室まで向かう。隙あらば吸ってこようとするので肉球パンチを食らわす。なんか喜んでるなこいつ。無敵か? 

 

 シャワー室に着くと先生は上着を脱ぎ、シャツの袖とスラックスの裾を捲る。あ、全部は脱がないのね。まあそうか。……女性だったら役得だなとか考えてないですよ? まじで。野郎は臭いから嫌とか考えてないですよ? まじで。

 でもまあ胸の辺り触っちまえば分かるでしょ。こちとらネコだからね。多少のセクハラは大目に見られるってもんよ。げへへ。おっと汚い笑いが出てしまいました。失礼。かわいくあらねば。ネコなんでね。

 

 先生がシャワーのレバーを下げ、シャワーヘッドから勢いよくお湯が飛び出す。その瞬間、全身に鳥肌が立った。*2にゃっ!? やだ! 水きらい! めっちゃやだ! 理由は分かんないけどすっげえやだ! これが生物的本能? とにかく身体を濡らしたくない私はシャワー室の中を逃げ回る。

 

「こら、ダメだよー。きれいきれいしましょうねぇ」

 

 にんまり笑いながら私を捕まえたそいつは容赦なく私にお湯を浴びせる。あぶぶぶ。やめろ! 離せ! 一旦話し合おう! なぁん、なぁーん。だめだ、かわいい鳴き声しか出ねえ! ニャウリンガル持ってこい! この世界にタカラトミーあるか知らんけど! ん? タカラトミーってなんだっけ? 据え置き機が爆死して合併したゲーム会社? それセガサミーか。なんか前世に関連することの記憶があやふやなんだよな。思い出そうとすると頭痛くなるし。

 

「お疲れさま、よくがんばったねぇ。ぶふっ」

 

 なんて遠い記憶に思いを馳せているうちにシャワーが終わったようで、びしょ濡れの私に抱きつこうとする変態の顔面に必殺肉球パンチを食らわす。喜んでないで早く身体拭いて。濡れた感触がすっごい不快。

 

 ふわふわのバスタオルに包まれながら、そういえばこの変態の性別確認できなかったな、なんて思ったりする。今度ユウカちゃんに聞いてみよう。ユウカちゃんネコ語分かるかな? 分かるよね、ユウカちゃんだし。にゃあ。

 

「戻りました。リストの通り買いましたけどこんなに沢山……。シャーレの予算大丈夫なんですか?」

 

「あ、おかえりユウカ。ありがとね。大丈夫、渡したの私のポケットマネーだし」

 

「もっと不安です!」

 

 そんなこんなでやたら撫でてこようとする変態をいなしつつ窓際で日向ぼっこをしていると、両手いっぱいに買い物袋をぶら下げたユウカちゃんが帰ってきた。いやあお日様はいいね。この窓際は私のもの。占有させていただきます。許してね、ネコだし。かわいいからいいよね。

 せっかくだしユウカちゃんの元へ向かう。何買ってきたの? 足元にすりすりしているとユウカちゃんが頭を撫でてくれた。なぁん。ふむ、中々のテクニシャン、ユウカちゃんなら撫でられても嫌じゃないにゃあ。なんか変態が不服そうな目でこちらを見ている。知るか。こっち見んな。

 

「猫用ベットにトイレ、猫砂、爪研ぎマット、キャリー、あと食器とキャットフード、猫缶にちゅーる……」

 

「バッチリだね。ケージとキャットタワーは通販で注文したから後で届くよ」

 

「キャットタワーまで買ったんですか? ……先生、こないだ今月厳しいとか言ってませんでしたか?」

 

「ネコちゃんより優先される生活などないよ」

 

「真面目な顔で何言ってるんですか! あとで領収書渡してください!」

 

 私のために色々用意してくれたみたいだ。先生とやら、中々いい所もあるではないか。くるしゅうない。良きにはからえ。ただ、キャットフードかぁ。あのカリカリでしょ? 正直あんま美味しそうではないよなぁ。肉とか食べたい。この身体なら生肉食べれるんじゃない? 食べたいね、生肉。前世でユッケとか好きだった気がするし。たぶん。

 

「ほら、ご飯でちゅよー。お腹すいてるかな? いっぱいおたべ」

 

 皿に盛られたキャットフードを前にするもあまり気乗りしない。いや、この身体だからか、あのカリカリすごいいい匂いしてるんだけどね? ビジュアルがどうにもね? あと、そばで這いつくばってこっちを見ている変態を見るとどうにも食欲が失せるっていうか、いや何見てんだよ。あっち行け。不満を顕にしっぽで奴の顔をペチペチする。喜んでるな。無敵か。

 変態がちょっと離れたので物は試しに一粒頬張ってみる。うん、まあこんなもんか。食べれないほどじゃない。味覚もネコになってるんだろうな。とりあえずもう一粒。うん、不味いわけじゃない。もう数粒。ちょっと癖になる味。もう一口。これはこれで美味しいかもな。うん。

 

「うんうん、いっぱい食べれてえらいでちゅねー」

 

 ……気がついたら皿に盛られていた分を完食してしまっていた。これが本能? あと頭を撫でるな。こいつの撫で方はガサツだ。わしゃわしゃするな! うにゃあ! ユウカちゃんを見習え! 

 

「ご褒美にちゅーるもあげましゅからねぇ」

 

 ちゅーる? ちゅーるってあれか? なんかやたらネコががっつくやつ。ふっ、あんな物のなにがいいんだか分からないね。私を喜ばせようってんなら高級肉か大間のマグロでも持って来いってんだ。それかユウカちゃん。ちゅーる程度でなびく私じゃないわ! 甘く見られたものね! 

 

「……すっごい食いついてますね」

 

「ちゅーるおいちいですかぁ? おいちいねぇ。かわいいねぇ」

 

「……先生、私もあげてみたいです」

 

「いいよ、変わろうか」

 

 ……ちゅーるには勝てなかったよ。だってしょうがないじゃん、美味しすぎるんだもん! 何この旨味、うまっ! 海だわこれ。旨味の海、うみみ。サメジマ・ウミ美。は? あ、ユウカちゃんがちゅーる食べさせながら撫でてくれる。やばい、これ堕ちる。これ以上の快楽はない。うにゃあ。声漏れちゃう、だめだこれ。ここが天国か。エデンはここにあったんだ……。

 

 いつの間にか食べきっていたみたいで、気がついたら私はユウカちゃんの膝の上で撫でられていた。いやあ素晴らしい座り心地。ビーズクッションが人をダメにするソファならユウカちゃんの太ももはネコをダメにするソファだね。一生ここに居たい。てか住む。ここに住むわ私! 転入届はどこに出せばいいの? 太もも区役所?*3

 

「そういえば先生、この子の名前決めないんですか?」

 

「そうだね、どうしようか」

 

 名前か。思い出せないんだよな、前世の名前。結局名前どころか顔も性別もなんも覚えてない。てか轢かれそうになったネコちゃんの身体と一緒に転生したんだよね? たぶん。あの子は飼われてたのかな。名前あったのかな。無事だったんだろうか。……まあ考えても分かんないからどうでもいいか。

 折角だからセンスの良い名前がいいな。横文字ガッツリのナントカカントカ3世とか、由緒ある感じ? 私の高貴な見た目に似合う高貴な名前を希望します。

 

「黒猫だしクロとか?」

 

「いいんじゃないですか? 分かりやすいですし」

 

 安直! 抗議の声をあげるぞ! なぁん! もっといい名前あるだろ! なあぁん! 

 

「お、クロも喜んでる」

 

「ふふ、クロちゃんよろしくね」

 

 悲報、ユウカちゃんはネコ語分かりませんでした。結局私は満月大根切りでWボールをスタンドまでかっ飛ばしてそうな名前に決まり、不満を込めて仕事に取り掛かった先生のキーボードの上でふて寝してやりました。なんか嬉しそうだな。なんでにゃ。

*1
偏見である。

*2
ネコなのに

*3
太もも区。中野区と杉並区の間。高円寺の辺り。




書き溜めはありません。プロットは頭の中にぼんやりあります。衝動書きってやつです。
長編を書くのは初めてです。週1ペースくらいで更新できたらいいな。
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