計画性?知らない子ですね……。
シャーレは女の子の膝の上からこんにちは。クロです。超プリティなネコちゃんです。
無事に転生を果たすもネコになってしまった私は、シャーレとやらで働く先生(本名年齢性別不詳)に飼われ始めて数日経った。最初はどうなることやら不安だったが、やたら吸おうとしてくる変態を適度にいなしつつ、存分に甘やかされながら食っちゃ寝食っちゃ寝の生活を満喫しております。ネコ最高や! 人間の生活なんて最初からいらんかったんや!
そして数日過ごすうちになんとなくこの世界のことを把握できてきた。
まず、この世界のヒトは、謎の存在先生を除いてみんな女の子である。あとはロボか二足歩行する動物たち。女の子たちはみんな頭に輪っかを浮かべており、銃火器を携帯している。そして銃で撃たれてもちょっと痛いくらいで済む。耐久が異常。
日向ぼっこがてら窓から下界を見下ろしていたときにシャーレの前で銃撃戦が執り行われていたのを目撃したが、撃たれてもピンピンしていたどころか爆弾で吹っ飛ばされても立ち上がってた子もいた。怖っ。この世界に銃の悪魔がいてもバカ弱いだろうな。たぶんトマトの方が強い。
んで、この世界はキヴォトス? とかいう名前らしい。言いづらっ。沢山の学校から構成される学園都市で、女の子たちはJKばかり。素晴らしいね。ここシャーレは彼女らの手助けをする組織らしい。なんか業務内容ふわふわしてない? 正式な名前や厳格な立場もあるらしいけど難しいこと分かんない。ネコだし。にゃあ。
そしてこのうだつの上がらないネコ吸い魔、先生がシャーレのボスで、なぜかやたらと女の子たちに慕われている。当番とかいう名目で毎日違う女の子が奴の書類仕事を手伝っている。シャーレに訪れる女の子みんな、程度の差はあれど奴に好意を持っているのが見え見えである。取っかえ引っ変えのハーレムだ。ぐぬぬ。あんな変態のどこがいいのやら。まあ、当番で来た女の子はみんな私の魅力には逆らえずに、私が近くへ行ってちょっと媚びた声で鳴けば撫でてくれるんだけどね。ふふん。女の子の手は柔らかくて好き。ほら、もっと撫でていいのよ? ごろにゃん。お腹見せてあげる。かわいいでしょ。むふふ。
そんなこんなで今日も私はシャーレへ訪れた女の子に撫でられているのであった。名前は、ミネちゃんだっけ? ナース服と制服が混ざったような服を着ている美人さんだ。真面目な子なのか、ソファに座っている彼女の膝上に上がり込んだ私を、ちょっと強ばった顔で控えめに撫でている。だが、私には分かるぞ。キミかわいいもの好きでしょ。口角が上がってるの隠しきれてないぞ。ほら、アゴも撫でなさい。おっ、この子も中々のテクを持っているな。気持ちよくて喉が勝手に鳴ってしまう。ごろごろ。
「お待たせ、ミネ。じゃ行こうか」
「はい。クロさん、こちらへ入ってください」
ちっ。先生の邪魔が入りやがった。もっと撫でられたかったのに。そしてあわよくば私の魅力で籠絡してミネちゃんのおうちで飼われようという素晴らしい計画があったのに。
ミネちゃんがちょっと名残惜しそうに私の身体を持ち上げ、ケージの中に入れる。ん? なんで? ここ狭いからあんま好きくないんだけど。にゃあん。抗議抗議。にゃあ。しまいにゃデモするぞ。*1なぁん。
「クロ、今から一緒におでかけしようねぇ」
お出かけ? どこに? なんだかんだ拾われてからシャーレの外には出ていない。だって外は世紀末だし。拳法メインで戦ってるだけモヒカンバギーの彼らの世界の方が治安いいかもしれない。まあ、あんなむさ苦しい世界ごめんだけどね。私に劇画は似合わない。作画はこっちの方が合ってる。
「いい所に行くからね。ちょっとだけがまんしてね。ごめんねぇ」
いい所ってなんだよ? はごろもフーズの工場? ……ん? ミネちゃんがこっち見て微笑んでる。
……もしや、ミネちゃんのおうち!? この短時間で私の溢れんばかりの魅力を十二分に浴びた彼女は、我慢できずに私を引き取ることにしたの!? そういうことだよね! やったあ! これでノンセックス変態ネコ吸い魔ともおさらばだぜ! これから私はミネちゃんの豊満なお胸の上でお昼寝する楽園へといざなわれるのだ! うっひょー! 着席時、お膝の上がとても気持ちよかったので大きな声で鳴いたら、ミネちゃんからの誠意で飼ってもらうことになりました!*2
そうと決まれば大人しく運ばれてやろう。そういえば微笑んでるミネちゃん、ちょっと不安そうだったような気もする。これからの生活が心配なのかな? 大丈夫大丈夫。私手間のかからないネコだから。家出もしないしトイレもできるし。適度に撫でてくれればそれでいいから。あ、ちゅーるは一日二本、いや三本でお願いしますにゃあ。
電車に揺られ揺られ、なんだかすっごいところに着きました。なにここ? 宮殿? いや、制服着た女の子がいっぱいいる。あ、学校? まじで? すんごいお嬢様学校じゃん。え、ミネちゃんここに通ってるの? てことはミネちゃんもしかしてお嬢様? こいつはこれからの生活にも期待が持てるってもんですわ。ぬへへ。お嬢様と同じ屋根の下でむふふな同棲生活、いやあ、転生してよかった! ビバ! 転生! 南のカルナバルもサンバ踊り散らかしてるわ。てか南のカルナバルって何? まじで。*3
「では向かいましょうか。セリナが準備してくれています」
「うん。クロ、もうちょっとだけがまんしてねぇ。かわいいねぇ。んーまっ!」
「……先生は本当にネコがお好きなんですね」
「うん。クロになら飼われてもいいよ」
「……なるほど」
きっしょ! エアでキッスすんな! てか飼われてもいいってなんだよ。人権放棄すんな。ミネちゃんドン引いてるじゃん。本当になんで慕われてんのこいつ?
てかなんで学校に来たんだろう。……あ、ペット許可証的な? ミネちゃん寮住みだったり? うん、それはそれで。美少女に囲まれながらの寮生活、よいではないか。マスコットとしての責務は全うしますよ。私はデキるネコなんでね。ふふん。
なんて考えてたらいつの間にか着きましたは救護騎士団の部室。救護騎士団!? なにそれかっこいい。ミネちゃんお嬢様だったり騎士だったり、属性多いね。姫騎士ってやつ? そういうの嫌いじゃないよ。でもなんか病院みたいな内装してるね、ここ。診療台にベット、包帯、消毒液、注射器。うん、あんまり好きな匂いじゃないかな。
なんの用事でここに来たか分かんないけど早く済ませてもらいたいね。なんてったって私はこれからお嬢様たちに囲まれてハーレム生活を送るんだから。あー楽しみだなあ。ミネちゃんとだったら苦手なシャワーを浴びることもやぶさかではない。いや、ちょっと嫌かも。ん、だいぶ嫌だわ。シャワーきらい。純愛っぽい表紙のNTR同人誌くらいきらい。
「おかえりなさい、団長。準備できてますよ」
「お待ちしてました!」
「ありがとうございます、セリナ、ハナエ。ほらクロさん、こちらへどうぞ」
ミネちゃんに抱えられて降り立ちましたは診療台。え? なして? ボクちゃん元気よ? 病気ナイナイ。健康体ですよ? にゃあ。ミネちゃんに前腕を抱えられたまま仰向けになる。ちょっと恥ずかしいにゃあ。なに? お腹撫でるの? いいけど。あれ? セリナちゃんっていったっけ? その右手に持ってる注射器はなんですのん? ミネちゃんのお顔を仰ぎ見る。あ、目逸らされた。嘘でしょ!? それ打つの? 今から!?
「ちょっとチクッとしますよ。一瞬で終わりますからね」
「予防摂取の注射です。クロさん、我慢してください」
にゃっ!? 騙したな!*4 くそぅ! 精一杯身を捩って抵抗する。あっ、ダメだ。ミネちゃんビクともしない。なぁん、なぁぁん、助けてぇ。離してぇ。クリクリおめめでミネちゃんに媚びてみる。目逸らさないで! 良心の呵責に苛まれてミネちゃんが泣きそうになってる。やっぱいい子だわこの子。
でもそれとこれとは話が別! にゃぁ! ふしゃあ! 注射いや! 表紙はバッチリ仕上げてあるのに中身ほぼラフの同人誌くらいいや! ブォン! ブォン?
「あまり団長を困らせてはいけませんよ〜」
……ハナエちゃんがチェーンソーを起動してました。え、怖。ごめんなさい。大人しくします。真っ二つよりは注射のがマシです。てかなんで普段からチェーンソー持ってんの? ちょっと違くない? それ。あっ、注射針が皮膚に当たって、にゃぁぁあ!
まんまと注射を打たれた私は、シャーレに戻ってミネちゃんのお膝の上で不貞腐れてます。
「クロさんごめんなさい……。でも予防接種は必要な救護なので……」
つーんだ。いや、ミネちゃんもセリナちゃんも恨んでない。悪いのはいい所とかいって注射の手配してやがったあいつだけ。あ、ハナエちゃんはちょっと怖いかも。チェーンソーの起動音がまだ耳に残ってます。ぷるぷる。
ミネちゃんに大人しく撫でられておく。やっぱり心根の優しい子だ。撫でる手つきに表れている。問題は……
「アァ!! 拗ねてるクロもカワイイネェェ!!」
ジト目の私と私を撫でているミネちゃんをパシャパシャ撮影しているこのアホである。高速横ステップを刻みながら様々な角度で撮影している。もはや分身して見えるわ。キモっ。さすがのミネちゃんもドン引きでしょこんなん。ミネちゃんのお顔を覗いてみる。
「あの、あまり撮られると恥ずかしいのですが……」
頬を赤らめていた。なんでにゃ!
感想、評価いただけるととても励みになります。