筆が乗っているうちに沢山更新しておけって偉い人も言ってました。
キャットタワーの最上段からこんにちは。クロです。超絶ぎゃんかわネコちゃんです。
いやぁ、このキャットタワー、中々に居心地がいい。どうやら先生がかなり奮発したようで、とっても豪華な設備。ヒトの背丈を優に超える高さの柱が六本、個室のような空間やハンモックまである優れものだ。日当たりのいい場所に置いてくれたお陰でお昼寝が捗ります。にゃふん。
……まあ、届いた時に梱包されてたバカデカ段ボールが気になってしばらくはその中に籠ってたんだけどね。先生が悲しそうな顔で写真を撮ってたのが居た堪れなくなって、渋々段ボールから出てキャットタワーで遊ぶ姿をカメラに収めさせてあげました。しょうがないじゃん、なんか落ち着くんだもん、段ボール。本能ってやつよ。人間どもだって旅館の謎スペースとか好きじゃん。そういう感じ。
ちなみに現在の時刻は朝の七時。目の下に隈を作った可哀想な社畜は既に働いております。かわいそ。飼われ始めてからしばらく経つけど、あの社畜が家に帰ってるとこ見たことないんだよね。家とかあるのかな? こないだキャットタワー下段のベッドスペースに顔突っ込んで寝てたのはビビったなあ。起こすのも忍びないのでお腹の上で丸まって一緒に寝てたら、当番で訪れたユウカちゃんにちゃんとベッドで寝てくださいっ! って怒られてた。まあ当の本人は私がお腹の上で寝てたことが嬉しかったらしくてずっとニヤけてたけどね。より一層怒られてた。救いようねえなこいつ。
今日の当番は誰だろうなあ。まあ、まだ来るには早い時間だし? ポカポカの朝日を浴びながら朝寝とでもしゃれこもうかしら……
なんて思ってたらシャーレオフィスの自動ドアが開く。
「おはよう、先生」
「あ、おはようカヨコ。早いね」
「しょうがないでしょ、あんな写真、沢山送られてきたら居ても立ってもいられらくなるよ」
「そうだよね、ふふ……」
「ふふ……」
あら、今日の当番さんもう来たの? 早くない? カヨコちゃん? あなたカヨコちゃんって言うのね。ラフなパーカー姿にダウナーな感じの印象の見た目。とっても美人さんですね。
てか写真送られてきたから急いで来たみたいなこと言ってなかった?
……もしやあの変態、カヨコちゃんの弱みを握って脅迫でもしてるんじゃなかろうな? 許すまじ! このセクハラ野郎め! ネコ狂いを除けば生徒さん達には誠実な人間だと思ってたのに! 腹を切れ! 介錯しもす!*1
でも、カヨコちゃん、そんな雰囲気でもないような……? 先生と会話してるのを見るに、焦ってると言うよりもむしろ興奮してるみたいな感じ。
んでちょっと鋭い目元を差し置いてもなぜか怖い印象を受ける。……なんだろう、初めて先生と会ったときを思い出すような、なんだか嫌な予感がする。
「その子がクロちゃん?」
「そうだよ。かわいいでしょ」
「うん、とっても……。写真よりもずっとかわいい」
「クロいいよね」
「いい……」
……いや送ってたの私の写真かい! 肖像権侵害だ! 訴えるぞ!*2 心配して損した。
なんてぷりぷりしてたらカヨコちゃんと目が合う。うん、やっぱちょっと怖いかも。なんかこう、雰囲気がね。身の危険を感じるというか。
……いやカヨコちゃん目かっ開ぎすぎじゃない? 瞬きひとつしてない。ドライアイになっちゃうよ? うわ、こっち来た。うぇっ! 足音立ててないのに歩くのはやっ! 足裏にホバー着いてる?
あっという間にキャットタワーの前まで距離を詰めたカヨコちゃんが私の顔の前に右手を差し出す。正直ビビりまくってるけど、なんだか逆らうのも怖いので恐る恐る指を舐めてみる。うわっ! めちゃくちゃ笑顔になってる! かわいい笑顔のはずなのになんだかとっても怖い。美人さんの笑顔なんかなんぼあってもいいはずなのに。ミルクボーイの角刈りの人もこれには頭の真上にでっかいクエスチョンマーク浮かべっぱなし。
カヨコちゃんはそのままシームレスに私のアゴを撫でる。うおっすっごいテク。これにはさすがの私も脱帽。*3あふん。鳴きたくないのに勝手に声でちゃう。ごろごろにゃん。いったいその右手で何匹のネコを鳴かせてきたのやら。五本の指が的確に気持ちいいところを突いてくる。えげつないテク、そこまで磨くには眠れない夜もあっただろう。
「ふふ、にゃんにゃん〜♪」
カヨコちゃんはそのまま左手も動員し、滑らかな手つきで頭から首、背中、腰まで撫でに撫でまくっている。にゃあん。そこ、そこらめぇ。いやあこの子えぐいわ。ネコが喜ぶ撫で方を熟知している。クロちゃん溶けちゃいそう。気持ちよすぎる。ぷにぷに。肉球触られても嫌じゃないですわよ。カヨコちゃんのおてて気持ちよすぎだろ!
そのまま十分か一時間か、時間の感覚も分からなくなるくらい撫でられてしまった。びくんびくん。まるで感度三千倍。*4いやぁ、気持ちよすぎて疲れちゃった。まさかこんなテクニシャンがいたなんて。キヴォトス恐るべし。
ぐったりしているとカヨコちゃんが私の身体を持ち上げる。なにするの? 抱っこ? もう好きにしてぇ。私は抵抗する気力もないよ。
そのままカヨコちゃんは自分の顔の位置まで私を掲げて……
「スゥゥゥゥゥ!! アァァァ、クロチャンイイニオイダネェェ!!」
うにゃっ!? お腹吸ってる! こいつもか! なんで人間は私のお腹吸いたがるんだ! 吸われるのは全然気持ちくない! 掃除機かけられてるカーペットの気分になるからきらい! くそう、散々撫で回したのはこれをするための布石だったのか。ちくしょう、異様なテクを持ってるだけの善良なネコ好きだと思ったのに。結局こいつもネコ狂いじゃないか! こいつに感じてた嫌な予感はこれか! じたばたじたばた。抵抗してみるけど逃げられる気がしない。為す術なく吸われるしかないってのか? あ、先生がこっち見てる。助けてぇ、あなたの大好きなクロちゃんが困ってますよー。お、こっちきた。え? まじで助けてくれるの? いいとこあんじゃん。かわいくてよかった。ありがとう神様。
そのまま先生はカヨコちゃんの正面、私の背中側に回り……
「スゥゥゥゥゥ!! アァァァ、コマッテルクロモカワイイネェェ!!」
吸いやがった! 背中から吸いやがった! 何してんだこいつ! それでも聖職者か! にゃああ! 前門のネコ吸い、後門のネコ吸い。最悪のサンドイッチだ! やっぱり神様なんていなかったよ! ふしゃあ! 離して! このままじゃ前後から吸われて身体が薄くなっちゃう! 最近流行りのうすほそ? ってやつになっちゃう!
「ふほはん、ほんほひひひほひ。はんふーはひふはっへふほ?」*5
「へほほうほほふうはんふーはほ」*6
「はーへふほは、へんへひ」*7
「はんはほひはひ」*8
私を挟んで会話するな! 何言ってるのか分かんないわ! くすぐったいからやめて! 誰かー! たすけて! こいつら処してくれ! いえやすさん! お願い!
無情にもそのまま時間が過ぎ、いよいよお腹と背中がべっとりしてきたそんなころ。ようやくシャーレのドアが開いた。
「先生、カヨコ来てないかしら。今朝から連絡が付かなくて……、って何してるのよ!」
「ほはほふ、はふ」*9
「はほー、ほはほふ。ひひひはひへ。ははひはひはへんほふひひふほ。」*10
「何言ってるのか分かんないわよ!」
願いが天に通じたのか、この状況を異常と認識できる子が来てくれました! なぁん。そこのあなた、こいつら引っぺがして。とっても困った顔で見つめてみる。なんだかこの場にやたらアップテンポの曲が流れてる気がする。なんでだろ?*11 まあいいや。はやく助けてぇ。うみゃあ。
「とにかく離れなさい二人とも! この子嫌がってるわよ!」
「むうう……!」
「ふぬぬ……!」
訪れた救世主さんがふたりと格闘している。くんずほぐれつの二対一変則マッチだ。あ、カヨコちゃんを羽交い締めにしてそのまま後ろに……。決まったー! 見事なドラゴンスープレックスだ! 藤波辰爾もびっくり。
空中に放り出された私はそのまま一回転、見事な着地を決め、この場を制してくれた恩人の足元へ避難。ありがとね。お陰で貞操が保たれました。
「朝から何してるのよ。起きたらカヨコは事務所にいないし、当番に向かおうと先生にモモトーク送っても返信ないし。何かあったのかと思って焦ったわよ」
「ネコちゃんが待ってたから……」
「理由になってないわよ!」
「我々ネコちゃん吸引同盟にネコちゃんを吸うことより優先される事柄はないんだよ、アル」
「何よその同盟! 先生も様子おかしいわよ!?」
「社長、とりあえずクロちゃんもう一回吸ってもいい?」
「駄目に決まってるでしょ! 怯えてるじゃないこの子! ……二人とも正座。そこに直りなさい」
「えっ」
「お説教よ! 心配したんだから!」
「クロちゃん撫でながらでもいい?」
「課長?」
「ごめんなさい」
アルちゃんが二人を並べてお説教を始める。いやぁほんとに助かりました。にしてもアルちゃんめっちゃいい子だね。正座する二人の対面で自分も正座しながらお説教してる。せっかくだしアルちゃんの膝の上乗っちゃお。ふむ、中々の座り心地。あ、アルちゃんが撫でてくれた。とても上手いわけじゃないけど慈愛のこもった優しい手つき。なぁん。助けてくれてありがとね。あとその二人のおどろおどろしい同盟も解消させといてくれると助かります。いままで何匹のネコが犠牲になったんだろう。顔も知らぬ同士たちに黙祷。
翌日、カヨコちゃんを除いた便利屋68の三人が改めてシャーレに謝罪に来てくれました。シャーレというか私に。シャーレの主はしばらくなでなで禁止の刑を受けてます。ざまあ。てかアルちゃん社長さんだったのね。すごいじゃん。私桃鉄でしかなったことないよ、社長。
「クロ、うちの社員が迷惑かけたわね。ネコ用ケーキ持ってきたからあとで食べて」
「この子がクロちゃん? かわいい〜。くふふ、カヨコっちがおかしくなるはずだね」
「あ、あの、育ててたエノコログサを少し摘んできたので、もしよろしければ……」
これはこれはご丁寧にどうも。お礼に撫でさせてあげる。頭を差し出すとムツキちゃんが撫でてくれた。うにゃぁん。てか当の本人はどうしたの? 謝れば許してあげなくもないですよ? 心の強いネコなんで。
「カヨコっちは自分を抑えられる気がしないって言って事務所に残ってたよ」
「か、課長凄い顔してましたね……」
「ねー。ムツキちゃんリアルで血涙流す人初めて見た」
お、おう。まあそれだけ私が魅力的ってことで……。
その後はアルちゃんの膝の上でまったりしたり、ハルカちゃんの持ってきてくれた猫じゃらしで遊んだりしました。先生が羨ましそうな目でずっと見てきたけど自業自得である。ざまあねえにゃ。
カヨコ好きな方、申し訳ない。ネコ狂いが先生やってるからこその化学反応ってことで許して。
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