二日に一話ペースで更新できている自分が信じられない。相変わらずストックはありません。助けて。
恐怖のネコ吸いサンドイッチ事件から数日、無事なでなで禁止の刑罰から解放された先生の膝の上からこんにちは。クロです。魅力あふるるネコちゃんです。
相変わらずこの人の撫で方は微妙である。いや、私のことが好きなのは十二分に伝わってくるんだけどね。好きの気持ちが先行しすぎてるっていうか、なんだか初めての女性の前で緊張してるウブな男の子みたいな手つきなんだよね。ちょっとキモい。別にそういうシチュは嫌いじゃないが、当事者となると話は別。あらあらうふふなお姉さんのような包容力は持ち合わせていないのです。ネコは気まぐれだからね。
じゃあなんで大人しく撫でられてるのかって?
……この大人、どうやらお仕事が修羅場だったらしく、ここ二日まるで寝ていない。徹夜の甲斐あっていまはだいぶ落ち着いたらしいけど、パソコンに向かいながら「ネコが……ネコ成分が足りない……」とか虚ろな目で呟いて無意識の涙を流していたら、さすがに心配にもなる。
しょうがないにゃあ・・。いいよ。*1ってことで奴の膝の上に飛び乗り、にゃおん、となでなで禁止期間満了の合図がてら一言鳴いて頭を差し出したところ、それまでの疲れが吹き飛んだかのような満面の笑みで私を撫で回してる、というわけである。
そんな情けない大人と気遣いのできるプリティネコちゃんのことを不満気な表情で見つめている少女が一人。本日の当番、カズサちゃんである。
以前からスイーツを持参して遊びに来ては先生にアプローチを仕掛け、そのたびにこの朴念仁に袖にされている可哀想な子。まあこやつはネコにしか興味がないからね。カズサちゃんもかわいいネコ耳付いてるのにね。生徒との距離感がどうとかのたまってるけど、ネコ耳生徒は対象外なのだろうか。撫でてあげればいいのに。カズサちゃん、さっきのネコ成分発言のときもなんもない風を装ってお耳ピクピクさせてたし。
……うーむ、同じ黒猫さんだし、仲良くなりたいんだけどなぁ。カズサちゃんとは何回かシャーレで顔を合わせているが、未だに撫でてくれたことがない。ネコちゃん嫌いなのかなぁ? そんなJKいるはずないと思うんだけど。*2もしかして嫉妬してたり? いやぁ、人間同士ならともかくまさかネコちゃん相手に嫉妬するわけないか。*3なんでだろ。
しかし、現にいまも若干恨みのこもった目線を向けられている。なぜにゃ。うーん、どうしたものか。私かて撫でられたくてこいつに撫でられているというわけでもない。どうにか先生の興味を私からカズサちゃんに持っていけないものだろうか。
……はっ! いいこと思いついた!
とりあえず先生の膝から飛び降りる。とたんに先生が八話のさやかちゃんみたいな表情になるも無視無視。*4そのまま先生の向かい側に座っているカズサちゃんの元へ。ちょっとお膝失礼しますよ〜。あら、いい弾力の太もも。ユウカちゃん程じゃないにしてもかなり寝心地良さそう。このまま丸まってごろにゃんしたい気持ちを泣く泣く抑え、器用にカズサちゃんの身体を登って肩の上へ。
「わっ! ちょっ……、なに!?」
「クロ……、クロぉ……」
先生が立ち上がる。やったね、見事に釣れました。激務上がりの二徹明け、ようやく訪れたご褒美なでなでタイムが終わりを告げた悲しきネコちゃん大好きモンスターに正常な判断などできまい。
カズサちゃんの頭に前脚をかけ、私の頭をカズサちゃんの耳の辺りにセット。思考能力を失ったモンスターがそのまま私の頭を目掛けて右手を伸ばす。頭に右手が触れるギリギリの距離まで近づいたところで……。
離脱! カズサちゃんから飛び降りる。振り下ろされた右手はそのままカズサちゃんのお耳へ!
「えっ!? せ、先生!?」
「……クロぉ。ん? ちょっと大きい? でもネコちゃんだ……。ネコちゃぁん、ああネコちゃんだぁ」
「うわっ、急に撫で……、んっ……」
作戦大成功! 先生はそのままカズサちゃんの頭をなでりこなでりこ。ネコ耳を撫でているという事実だけで満足げな表情を浮かべている。判断力の低下が著しいね。大丈夫か? はよ寝ろ。カズサちゃんも恥ずかしがりつつも喜びが隠せていない。いやぁ、よかったね。私は先生から逃れ、先生はネコちゃん成分を補給し、カズサちゃんは先生に構ってもらえる。最高の結果である。うむ、我ながら完璧。
カズサちゃんと目が合う。右手で小さくグッドサインを送ってくれた。ドヤ顔をお返しします。むふん。私はデキるネコちゃんなのだ。
「先生、撫でてるの私の頭だよ? ふふっ」
「ネコちゃ……ネコちゃ……」
言語捨てたんかお前。人間としての誇りを持て。
カズサちゃんは窘めるような言動とは裏腹にニヤケ顔を隠せていない。うんうん、いかにも恋する乙女って感じでいいね。その対象がこいつなのはいささか不安だけど。いい雰囲気? だし、あとはお二人でご自由にどうぞ。スピードにゃゴンはクールに去るぜ。
「先生? ちょっと鼻息荒くない? ……先生?」
「ネコちゃ……! ネコちゃ……!」
……なんてその場を後にしようとしたのだが、ちょっと不穏な雰囲気。先生の目の焦点が合ってない。禁ネコ明け一発目の撫で撫でチャンスがその手からこぼれ落ちかけた反動からか、いつもよりネコちゃんへの執着がすごい。ネコちゃってなんだよ。んを付けろよデコ助野郎。*5
あの感じ、身に覚えがある。思考回路がネコのみで埋まっている危険状態。暴走モード突入! おめでとう、確変です。
あ、やばい。カズサちゃんの耳を撫でながら顔近づけて……。
「スゥゥゥゥゥ!! ネコチャン、ネコチャンイイニオイダネェ!!」
「うえぇ!? やめっ! ちょっ、何してんの!?」
吸いやがった……。まじか……。両耳の間に顔突っ込んで吸ってる。いや吸ってんの頭皮じゃない? ネコ要素ないよ? そりゃカズサちゃんのフローラルないい匂いするだろうけど。やべえなこいつ。てか生徒と先生の関係はどうした。辞めたんか、教師。他に人いなくてよかったね。有無を言わさず現行犯ですよこんなん。クロちゃんドン引き。
「先生、すっ、私のこと吸ってる!? やめっ、もっとムードとか考えて、じゃなくて!」
「スゥゥゥゥゥ……!!」
いやもっと嫌がれにゃ。満更でもないみたいな態度じゃねえか。それでいいのか女子高生。
別に当人同士で合意があるならどんなプレイしてようが構わないが、ここはシャーレ、色んな人が足を運ぶ場である。他の人に見られて、こんなことで先生がブタ箱にぶち込まれたら目も当てられない。あとネコちゃんと触れ合えなくて発狂すると思う。例えとかじゃなくて。それに、キヴォトス的にも困ったことになってしまう。これでも一応偉い人らしいのだ。一応。
「スゥゥゥゥゥ!!」
違ったかも。
とりあえず可及的速やかに変態行為を止めさせなければ。気は乗らないが二人のもとへ向かう。はいはい、ちょっと失礼しますね〜。再びカズサちゃんの肩へと登り、変態の顔面目掛けて猫パンチ。ぺちぺち。目ぇ覚ませ変態。お前が吸ってるのはネコじゃなくて人間ですよ。明日の三面記事になりたくなけりゃこっち向け。
「スゥゥゥゥゥ……、……この感触、肉球? あれ? クロ? え!? カズサ!? なんで!?」
「……あっ」
ようやく正気に戻った。自分で叩いといてなんだが、肉球で正気に戻るのなんなん? あとカズサちゃんは名残惜しそうにすんな。あっ、じゃないわ。吸われフェチに目覚めたらどうしよう。責任持てませんよ私。
「本当に申し訳ございませんでしたぁ!」
「ちょっ、先生やめて! 頭上げて! 気にしてないから! ……むしろちょっと良かったっていうか……」
そんなこんなで女子高生相手に爆裂土下座をかましてる大人の出来上がりってわけ。情けないったらありゃしないね。寝不足とネコ不足が重なるとここまで醜い姿を晒すのか。せっかくの土下座姿、デスクの上から鑑賞させてもらいます。ほらほら、頭が高いぞ。もっと床にめり込むくらい頭下げんかい。今回の醜態を教訓にして少しは真人間に近づいてくれないかなぁ。無理かなぁ。無理だろうなぁ。*6
「徹夜でテンションおかしくなっちゃったんだよね? ちょっと仮眠取ったら? ほら、クマすごいし」
「……うん、そうさせてもらおうかな」
そのまま先生はフラフラと仮眠室へ消えていった。この場にカズサちゃんと二人きりになる。ん? こっち近づいてきた。どうしたの?
「ふふ、ありがと」
……カズサちゃんが頭を撫でてくれました! にゃふん。そうそう、私は賢いネコちゃんなのですよ。恋の悩みの一つや二つ、ちょちょいと解決できちゃうんです。……まあ、あそこまで暴走するとは思わなかったけどね。本人が満足したならそれでヨシ! ご安全に!
無事カズサちゃんとも仲良くなれた。その後、残りの雑務を片付けるカズサちゃんの膝の上でお昼寝したり、カズサちゃん手ずからおやつにちゅーるを食べさせてくれたりしました。美少女に食べさせてもらうちゅーるは倍うめぇにゃ。
そんな私たちの仲睦まじい姿を、いつの間にか起きてきた変態が連写してた。いや反省しろにゃ。
応援してくださる皆様のおかげで赤評価をいただけました!
これからも無理しない程度に更新できればと思いますので、今後ともよろしくお願いします。