無口で可愛い女の子だと思ってナンパしてみたらメンヘラだった件 ~のじゃロリ妖狐の胃痛に満ちた現代生活~   作:パッタリ

7 / 7
7話 お出かけという名のデート、そして仕込まれる位置情報共有アプリ

 格安銭湯で朝風呂を済ませ、アパートで身支度を整えたわしは、待ち合わせ場所である駅前の時計台へと向かっていた。

 夕方が近づいており、行き交う人々は多い。

 その際、ショーウィンドウに映る自分の姿をそっと盗み見る。

 きらきらと輝く長い銀髪。白く透き通るような肌に、ぱっちりとした大きな瞳。

 

 (うむ……自分で言うのもなんじゃが、ナルシストというわけではなく客観的な事実として、わしって可愛すぎる。こりゃ道行く人間どもが振り返るのも無理はないのう)

 

 などと自画自賛しつつ、脳内で今日のプランを確認する。

 

 (まずは駅ビルで買い食いしつつ、わしのスマホを新調。いや、買うのが先でもいいか。そのあとはゲーセンで適当に遊んで、最後にクレープでも一緒に食べて機嫌を取る。うむ、完璧じゃ! 我ながら隙がない!)

 

 ……まあ、そのプランに致命的な大穴が空いていることなど、この時のわしは知る由もなかったのだが。

 

 「……シラギクちゃん」

 「おお、リンカ。待たせた……な……」

 

 駅前に到着するとリンカが駆け寄ってくるが、その姿を見てわしは思わず言葉を失った。

 わしは動きやすさ重視のオーバーサイズなパーカーにショートパンツという、普段とあまり変わらないカジュアルな服装。

 しかし、リンカは違った。

 長く艶やかな黒髪は丁寧に編み込まれ、清楚で可憐な純白のワンピースを身にまとっている。普段の大人しい雰囲気とは打って変わり、気合いの入りまくった本気のデート服であった。

 並んで立つと、こっちは近所のコンビニへ行くような格好なのに、向こうはお嬢様のお出かけといった格好。

 なんだか、少し気まずい。

 

 「……似合わない、かな?」

 

 上目遣いで不安そうに聞いてくるリンカ。

 

 「い、いや! すっごく似合っておるぞ! まさに可憐な美少女じゃ!」

 「……えへへ。シラギクちゃんのカジュアルな服も、すごく可愛い。好き」

 

 ぎゅっとリンカがわしの腕に抱きついてくる。どうやら機嫌はすこぶる良いらしい。

 

 ***

 

 まずは念願のスマホ購入から行う。

 家電量販店で、最新のスマホを十万円の予算から一括で購入した。

 もちろん、画面に貼るフィルムや本体を守るケースも忘れない。

 

 「よーし、これでわしも最新機種じゃ!」

 「……シラギクちゃん、初期設定とかデータの移行、私がやってあげる。得意だから」

 「おお、本当か? 助かるぞ! 機械は少し苦手でのう」

 

 わしはまったく疑うことなく、リンカに新しいスマホと古いスマホを預けた。

 今思えば、この時の己の迂闊さを殴り飛ばしてやりたい。

 そのあとは駅ビルの店を冷やかしがてら巡っていき、買い食いを楽しんだ。

 そしていよいよゲームセンターへ。

 

 「よしリンカ、あのUFOキャッチャーのぬいぐるみ、わしが取ってやろう!」

 「……うん、頑張って」

 

 百円玉を投入し、アームを操作する。

 くくく、妖怪の動体視力を舐めるでないぞ。

 

 ガシッ ポロッ

 

 「……な、なんじゃあのアームの弱さは! 撫でただけではないか! 詐欺じゃろ!」

 「……ふふっ。シラギクちゃん、ムキになってて可愛い。次は私がやるね」

 

 リンカが操作すると、なんと一発でぬいぐるみの重心を捉え、見事にゲットしてしまった。

 

 「……はい、シラギクちゃんにプレゼント」

 「おおお! お主、才能あるぞ!」

 

 他にも、一緒にプリクラを撮ったり、対戦ゲームで白熱したりもした。

 その間、リンカの瞳からあのドス黒いメンヘラオーラは完全に鳴りを潜めていた。

 純粋にゲームの勝ち負けに一喜一憂し、年相応の中学生らしい無邪気な笑顔を見せている。

 

 (ふふ……なんじゃ、普通にしていればただの可愛い娘ではないか)

 

 わしは内心、ひどくほっこりしていた。

 妖怪として長く生きていると、こういう人間の子どもの成長や笑顔を見るのは悪くないものだ、なんて親戚のおばちゃんのようなことを思ってしまう。

 ゲーセンを出たあとは、クレープを買って公園のベンチで一休み。

 

 「はい、あーんじゃ」

 「……あーん。……おいしい」

 

 わしのクレープを一口食べたリンカが、とろけるような笑顔を見せる。

 

 「……シラギクちゃんのクレープ、甘くて美味しい。シラギクちゃんみたい」

 「ば、馬鹿者、からかうでない」

 

 リンカはわしの肩にゆっくりと頭を乗せ、幸せそうに目を細めている。

 

 (うむ、今日のお出かけプランは大成功。これでわしの平穏な日常も安泰というものじゃ)

 

 ***

 

 夜、リンカを家まで見送り、わしはニヤニヤとしかがら安アパートへと帰還した。

 

 「さてさて、新調したスマホの使い心地はどうかの〜」

 

 布団に転がり、リンカが設定してくれたピカピカの最新スマホを起動する。

 画面をスワイプしていると、見慣れないアイコンがあることに気がついた。

 

 「ん? なんじゃこのアプリ……常時位置情報共有?」

 

 嫌な予感がしてアイコンをタップすると、画面にはわしのアパートの現在地と、リンカの家の現在地が、リアルタイムのマップでバッチリと表示されていた。

 

 「なっ……!?」

 

 慌ててアプリを削除しようと長押しするが、強固なパスワードロックがかけられており、アンインストールすらできない仕様になっている。

 

 ピコーン

 

 その瞬間、メッセージアプリからリンカからの通知が届いた。

 

 【リンカ:今日はすごく楽しかったよ、シラギクちゃん】

 【リンカ:アプリ入れたけど気づいたかな?】

 【リンカ:これで、いつでもシラギクちゃんの居場所がわかるね】

 【リンカ:もう絶対に、離れられないよ】

 【リンカ:(謎の端末を握りしめて微笑むウサギのスタンプ)】

 

 「なん……じゃと……」

 

 ショックのあまり新しいスマホを取り落としてしまった。幸い、ケースのおかげで傷はない。

 

 (わしは……身を粉にして、ハヤテに羽むしりの制裁まで加えて手に入れたお金で……自らストーカーツールを買ってしまったというのか!?)

 

 策士。あやつ、中学生の皮を被った恐るべき策士じゃ!

 ゲーセンで見せたあの無邪気な笑顔は? 

 ほっこりしたわしの親心は!?

 絶望に打ちひしがれる中、わしの脳裏にとある重大な事実がフラッシュバックした。

 

 (待て……位置情報が常に共有されているということは……)

 

 十代半ばの銀髪美少女の姿では、現代社会で働くことは難しい。

 それゆえに、わざわざ大人の女性に変化して、シラカワという偽名を使ってファミレスで働いている。

 リンカは前回、匂いでファミレスまで来たが、姿が違うため確証を持てずに帰っていった。

 だが、しかし。

 もしも、わしのスマホの位置情報が、ずっとファミレスにあるとリンカに知られたら……。

 シラカワ=シラギクであることが完全にバレてしまうではないか!

 

 「ば、バイト……どうしよう……」

 

 スマホを家に置いていけば怪しまれるし、持っていけば職場がバレる。詰んでいる。

 完璧だったはずのプランは、木っ端微塵に粉砕された。

 真っ暗な六畳一間で、わしは新たなる問題に直面した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

妖狐の私、人間の社会で稼ぐためVtuberとして百合営業をしていたら相方の化け狸がガチだった件(作者:パッタリ)(オリジナル現代/日常)

 信仰が薄れ、妖怪も自力で稼がねば生きられない現代社会。妖狐のシズクは生き残るため、化け狸のコノハと組んでVtuberとなり、百合営業で日銭を稼いでいた。▼ しかし、画面の向こうで可愛らしく甘える相方の感情は、営業などではなくガチだった。▼ 防犯設備を妖術で容易く突破し、数百年の執念がこもった極上の手料理で胃袋ごと支配しにくる化け狸。▼ これは、平穏な生活を…


総合評価:951/評価:8.64/完結:30話/更新日時:2026年06月21日(日) 12:15 小説情報

添い寝してもらわないと眠れない女の子in百合猛獣だらけの女子寮 〜案の定美味しく食べられてしまうと思いきや、女たらしの才能に目覚めてしまいます!?〜(作者:鐘楼)(オリジナル現代/恋愛)

毎日姉に添い寝をしてもらっている少女、花平希沙音は高校一年の夏、ついに「一人で眠れるようになりなさい」と姉の家を追い出されてしまう。▼一人で眠れる気がしなかった希沙音は、なんとか添い寝を頼めないかと転居先の女子寮で出会った親切な少女、伊咲深白にお願いをする。▼しかし、深白は何人もの少女を手篭めにしてきた悪女だった。▼案の定、希沙音も深白に美味しく頂かれるのか…


総合評価:2781/評価:8.91/連載:31話/更新日時:2026年07月14日(火) 12:05 小説情報

TS転生おっさん物語(作者:すすぺっと)(オリジナル現代/日常)

▼社会に疲れた元おっさんは、死後、丸い蛍光灯のような神様によって、現代日本によく似たパラレルワールドへ女の子として転生する。▼赤ちゃんから成長し、高校生になった彼女――**高遠透花**は、180cm前後の高身長と整った容姿を持つ無気力系JK。▼本人はただ平穏に過ごしたいだけだが、前世の社会経験から来る落ち着きや距離感が、周囲には妙に大人びた魅力として映ってし…


総合評価:2255/評価:7.9/連載:20話/更新日時:2026年06月20日(土) 12:00 小説情報

ヤンデレに監禁されるわけwww(作者:ヤンデレエアプ)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

ヤンデレから逃げようと思ってる。▼ヤンデレのみんなには悪いけど抜け駆けで▼ヤンデレは逃走とかされたことないから、びっくりするかもしれないけど、もう逃げたい気持ちを我慢できないから▼


総合評価:503/評価:8.45/連載:3話/更新日時:2026年08月30日(日) 22:07 小説情報

アプリみたいな魔法使ってる後輩の魔法少女に懐かれた、先輩の私(作者:いくらシック)(オリジナル現代/冒険・バトル)

「私の魔法は、"メモ帳"を召喚することです!」▼「なんて?」▼・まじめなあらすじ▼あら、転生しちゃったなと呑気に考えていた私こと椎名アリサ。▼なんと、ここは魔法少女がいる世界で。私も当然魔法少女になってしまった。▼でも、魔法少女ってなんか不安だし、主人公みたいな子とかいるなら、その子の仲間になったら楽になったりしない?▼そう楽観的に考えて…


総合評価:192/評価:7.75/連載:10話/更新日時:2026年08月15日(土) 20:03 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>