ドパガキダンジョン   作:匿名

2 / 2
第二話 あなたは完璧! 相方がずれました!

 

「今朝も首飾りくれたのよ。もう売ったけど」

「じゃあ、今日はそれで買い物だな」

 

 首飾りを売った金で、彼氏に新しい剣帯を買ってやった。残りは私の財布に入っている。

 あの男には、なくすと怖いから家に飾ってあると言えばいい。

 

 彼氏と笑いながら、ダンジョンへ向かう。

 

「あいつ、お前と付き合ってるつもりだぞ」

「そう思わせてるの。その方が便利でしょ?」

「次の依頼もあいつにやらせようぜ」

「戦うのはあいつ、報酬は全部いただきね」

 

 依頼を選んで、「できないから助けて❤️」とあいつに媚びて、報酬は彼氏と山分け。

 ちゃんと役割分担している。

 

 そのためにも、さっさと連れ戻さなければ。

 

 ダンジョンへ入ると、噂の男が奥から走ってきた。

 

「ちょっと! 迎えに来てあげたわよ!」

「あと一周!」

 

 私の横を素通りして、そのまま入口へ戻っていく。

 目は真っ赤で、鎧は汗に濡れていた。私が手を伸ばしても、見向きもしない。

 

「ねえ、私より大事な用事なの?」

 

 振り返りもしなかった。

 いつもなら、これで慌てて戻ってくるのに。

 失礼なやつ。帰ったら少し焦らしてやろう。

 

 最初の部屋には、スライムが二匹いた。私たちの正面に一匹ずつ。

 壁が眩しく光る。

 

二人同時に斬れば大当たり!

 

二人の絆を証明しろ!!

 

「簡単じゃない」

「俺たちで当てちまおうぜ。あいつと分けなくて済む」

 

 二人で一匹ずつなら、あいつの出番はない。

 

「せーのでいくぞ」

 

 剣を構える。

 

「せーの!」

 

 二つの刃が、スライムを両断した。

 私と彼氏の間に石壁がせり上がり、目の前に文字が浮かぶ。

 

あなたは完璧!

 

相方が〇・三秒遅れました!

 

「今のはそっちがずれた!」

「はあ? 俺の壁には、お前が遅れたって出てるぞ!」

 

 壁が沈む。

 彼氏は、自分の表示を見せろと言う。だが文字はもう消えていた。

 

「ほらな。何も出てないだろ」

「さっきまでは出てたの!」

 

 私の前には、はっきり『あなたは完璧』と出ていた。

 こいつは自分が失敗したくせに、同じ表示だったと嘘をついている。

 絶対に認めさせてやる。

 

「もう一回よ!」

 

 二度目は、私が合図を出した。〇・二秒差。

 三度目は、彼氏に合図を任せた。〇・一秒差。

 私の表示は、どちらも「あなたは完璧」。なのに彼氏は、私が遅いと言い張り続けた。

 

「次は私の剣を見て振って」

「お前が俺に合わせろよ」

 

 四度目。私が剣を上げても、彼氏は構えたままだった。

 合図を待っているのかと思ったら、こっちを睨んでいる。

 

「振れよ」

「そっちこそ」

 

 私が先に振った。慌てた彼氏の刃が遅れて落ちる。

 また壁が上がった。

 

あなたは完璧!

 

「ほら! やっぱり私が正しいじゃない!」

「こっちも完璧だっつってんだろ!」

 

 壁が沈むと、彼氏は出口へ向き直った。

 

「もういい。帰るぞ」

「自分のせいで当たらないからって逃げるの?」

 

 足が止まった。

 

「お前が下手だって証明してから帰ってやるよ」

 

 どちらが正しいかを証明するまで、帰るわけにはいかない。

 最初に探していた男が、また背後を走り抜けた。

 

「あいつのために来たくせに、俺には合わせられないんだな」

「あいつなら私に合わせられたわよ!」

 

 彼氏が剣を鞘へ叩き込んだ。

 

「だったら、あいつと組めよ!」

「あんたなんか、こっちから願い下げよ!」

 

 彼氏が手のひらを出した。

 

「残りの金、半分よこせ」

「私がもらった首飾りでしょ!」

「俺があいつとのこと黙っててやったからだろ」

 

 財布を胸へ押さえた。

 何もしていないくせに、半分も取るつもりなのか。

 

「その剣帯も返してよ!」

「これはもらった物だろ!」

 

 左右に二つの入口が開く。

 

一人で実力を証明しろ!

 

「見てなさいよ。あんたがいなければ一発なんだから」

「当たっても分けてやらねえからな」

 

 先に大当たりを出して、目の前で全部使ってやる。

 泣いて謝ってきたって、銅貨一枚やるものか。

 私たちは、別々の入口へ駆け込んだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ホラー系の世界に転生したのにあまりにも怪異がカラっとしている(作者:ない因習村:ラーメンは魚介派が9割)(オリジナル現代/コメディ)

 ホラー系の世界に転生しました。夜道を歩くと大概出会いますが、妙に冷めていたり、カラっとしています。どうすればいいでしょう?


総合評価:7817/評価:8.7/連載:32話/更新日時:2026年09月13日(日) 07:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>