ドパガキダンジョン 作:匿名
「本日のKPI、すべて目標達成ドパ!」
俺は虹色のサングラスを押し上げた。
管理室の壁には、いくつもの水晶板が並んでいる。
五十周目の入口へ駆け込む男。別々の入口で競う、別れたばかりの男女。
その下では、三つの透明な水晶が紫色に染まりつつあった。
生き物が迷宮内で過ごした時間に応じて、ダンジョンコアから魔力水晶が生まれる。
「ニアミス効果に変動比率強化。二人とも『あなたは完璧』、苦情は相方へ。自己奉仕バイアスも有効活用ドパ!」
皿を机へ置き、秘書が客の映る水晶板を見上げた。
「マスター様が突然現れてから、準備続きでしたが。ようやくダンジョンも本格営業ですね」
「下積みは大事ドパねぇ!」
「ところで、どちらからいらしたのですか? 魔王様もご存じないそうですが」
探りを入れるのが下手くそだ。
「……急に押しかけてきたそっちこそ、何者ドパ?」
「失礼しました」
秘書は皿を持ち上げ、俺と水晶板の間へ置き直した。
「食事のお時間です」
「今はLTVを最大化する重要な局面ドパ」
「では、そのえるてぃーなんとかが冷めないうちにどうぞ」
皿を横へずらす。
秘書が元の位置へ戻す。
もう一度ずらす。
二本のツノが、わずかにこちらへ傾いた。
「……いただきますドパ」
秘書は満足そうに、黒い通信水晶を取り出した。
「マスター様のご活躍で、魔王様もお喜びでございます」
「もう報告したドパ?」
「定時報告は、魔王軍の規則ですので」
黒い水晶へ、滞在時間と獲得魔力が読み上げられていく。
「冒険者ギルドより魔王軍の方が報連相がちゃんとしているドパねぇ」
「ホウレンソウ……?」
「報告、連絡、相談ドパ」
秘書は帳簿へ三文字を書き足した。
「では、三食続けて冷めるまで放置されたことも、魔王様へ報告いたします」
「それは報告しなくていいドパ!」
水晶の一つが、紫色に染まりきった。
「そろそろ魔力も溜まったし、新機能を追加するドパねぇ!」
「魔物の強化には使わないのですか?」
「一度殺すより、何度も通わせた方が魔力は稼げるドパよ!」
紫色に満ちた水晶を一つ取り、ダンジョンコアへ押し込む。
水晶板へ、攻略時間を測る数字が浮かんだ。
秘書は手を止め、俺の顔を見た。
「マスター様。一つだけ聞いていいでしょうか」
「好きな食べ物でも、好みの女性でも、なんでも聞いていいドパよ」
秘書の視線が、虹色のサングラスへ上がる。
「その言葉遣いは、演技なのですか?」
俺はシチューを一口飲んだ。
「それは秘密……ドパねぇ」