ドパガキダンジョン   作:匿名

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第五話 七日目ログインボーナス

 

「先生を探す仕事だ。今夜も遅くなる」

「わたし、あの先生嫌い。走るの教えてくれるのはいいけど……」

「そんなこと言うな! B級冒険者がわざわざ学校で教えてくれてるんだ。文句を言うなよ。先生は俺がちゃんと連れ帰るから」

 

 ああ、俺は理想的な父親だ。

 娘だって妻だって、愛人だってきちんと愛している。

 

 娘は口を閉じた。妻も、それ以上は何も言わなかった。

 わかってくれたらしい。

 

 妻に娘を任せ、愛人との待ち合わせへ向かった。

 その前に、ダンジョンを一周だけする。A級の俺ならすぐ終わる。嘘にならない程度には働いておくのが、家庭円満の秘訣だ。

 

初回ログインボーナス!

 

 金貨が一枚落ちた。

 

「こいつは、あっちの食事代だな」

 

 壁の向こうで足音がした。

 

「先生! いるなら返事をしてくれ!」

 

 返事はない。壁を叩いても開かない。

 仕方ない。待ち合わせに遅れてまで、同じ場所にいるわけにもいかない。

 帰宅したら、手がかりはあったと言っておこう。

 

 二日目は、子供の病を防ぐ護符だった。

 娘の首へ掛けてやる。

 

「お父さん、すごい!」

「お前たちのために働いてるんだぞ」

「先生は見つかったの?」

 

 妻は護符を見ていなかった。

 

「今から探しに行くんだろ。急かすなよ」

 

 娘が護符を握って手を振ったので、振り返してやる。

 わかってくれる家族が一人いれば、それでいい。

 また夜の街へ出た。

 愛人にも土産を買った。

 

「奥さん、怒らないの?」

「仕事だって言ってある」

 

 笑って肩へ寄りかかってきたので、もう一杯注文した。

 

 三日目。報酬を受け取るには二周。

 四日目は三周。五日目は五周。

 五周目の報酬は銀貨だった。愛人に頼まれた香水には少し足りない。

 あと一周で金貨が出れば、釣りまで来る。

 

 六周目は薬草。七周目も薬草。

 ここで帰ったら、余計に回った分が無駄になる。金貨一枚だけ取って終わろう。

 

 鐘が鳴るたびに、次で帰ると決めた。

 ようやく銀貨がもう一枚出て外へ出た時には、待ち合わせの店は閉まっていた。

 翌日は先に顔を出そうとしたが、入口の表示で足が止まった。

 

本日未受取! 連続記録が途切れます!

 

 昨日は店が閉まるまで回ったのだ。今日だけ休んで、あれを無駄にするのか。

 すぐ済ませるつもりで、また中へ入った。

 

「最近、本当に仕事ばっかりね」

 

 帰宅した俺へ、妻が冷めた夕食を出した。

 

「だから、そう言ってるだろ!」

 

 ようやく嘘をつかずに済んだのに、何が不満なのか。

 愛人からも、約束を破ったと手紙が来ていた。こっちは遊んでいるわけじゃない。

 

「明日は運動会だよ。ちゃんと来てね」

「当たり前だ。家族が一番だ」

「お母さんの隣、空けておくね」

 

 席まで取るのか。終わったらすぐ帰れと言われそうだ。

 まあ、顔を出して手を振れば十分だろう。

 

 娘の招待札を、愛人からの手紙と一緒に胸へ入れた。

 

 七日目。

 最奥の壁が、金色に輝いた。

 

七日連続ログインボーナス!

 

家族を災厄から守る結界石!

 

「家庭を守れるのか……!」

 

 最近、妻が夜の行き先を細かく聞いてくる。

 これを家に置けば、安心して出歩ける。

 護符の時も、土産を見た娘は喜んだ。結界石なら妻だって文句を言えない。

 ちゃんと成果を持って帰ればいいのだ。

 

獲得まで、あと一周!!

 

「一周だけだ」

 

 走って、斬って、戻る。

 

惜しい! あと一周!!

 

 運動会の鐘が鳴った。

 胸の紙を出す。『今夜も待ってる』。違う、そっちじゃない。

 もう一枚には、娘の字で『ぜったいみててね』。

 

 まだ最初の競走には間に合う。出口へ二歩進んだ。

 背後で、結界石を囲む金色の光が大きくなった。

 

あと一周で、ご家族に一生の安心を!

 

 運動会は来年もある。この石は、今日を逃したら最初からだ。

 

「後で何か買ってやればいい」

 

 左へ行けば、出口。

 右へ行けば、結界石。

 

「家族のためだ。仕方ないだろ!」

 

 二枚とも丸めて捨て、右へ走った。

 

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