魔法少女と魔女教と   作:メイプルアルパカ

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 はい、性懲りもなく戻ってきました。続く続くとかいいながら全然続いていません。多分これも何時かエタるんだろうなと弱気です。魔法少女ノ魔女裁判まじで面白かったので出来れば完結まで頑張りたい…


魔法少女と魔女教と

 

 ───レグルスが目を覚ましたとき、そこには何もなかった。

 

 ジメジメとした空気。背中に感じる冷たい石の感覚。久しく感じた感覚であるため、一瞬それが何か考えることさえできなかった。

 

 常に感じていた自らの妻の感触がない。そればかりか気付けば知らぬ場所へと連れ去られていた事実。これに怒りを持たないほうがおかしかった。

 

 「…なるほど」

 

 自分が横になっていた硬いベッドから立ち上がる。白く汚れのないはずの服は背中と裾から少しのホコリが落ちてきた。

 

 「なるほどね、そういうことか」

 

 何が分かったのかは自分でも分かってはいない。だが、レグルスは何かに納得したかのような表情を浮かべていた。

 

 「僕は閉じ込められてしまっているわけだ」

 

 鉄格子に手を伸ばす。冷たく、それでいて錆びているのかザラザラとした触感があった。約100年ぶりの感触。何故、自分はこんな不快な感触を得ているのか。そんな事を珍しく表には出さずに首を傾げる。

 

 「しかしおかしいな。僕はいつ、誰に、何処から、なんで、こんな狭く小汚い部屋に拘束されているのかな?」

 

 そんな言葉を誰に返されるでもなく、ただ何処かにいる誰かに喋り続けている。自らが何故このようなところに閉じ込められているのか、物音を聞いてみると、自分以外にも誰かがいるのがわかる。その物音を立てた彼、彼女かに向かってか、はたまた他の誰かに向かってか、レグルスは質疑を繰り返してると、部屋の壁に設置されていたモニターがひとりでに点き、映像と音声が流れ出した。

 

 [あ…もしもし…映像って見えてます…?なにせ古くて故障が多いいので…やれやれ]

 

 自らをゴクチョーと名乗るフクロウの化け物は、説明の為にラウンジに集合せよと言うだけで、モニターは再び真っ暗になった。監房の鍵が開いた。鉄格子の外に見えた看守は、その見た目だけで何か異様なものを感じ取れるらしい。

 

 「ぎゃぁあぁ!触んな化け物ぉ!キモいから!わかった、わかりました!行くから!」

 

 囚えられていた少女達は一部を除き、皆基本的に大人しくそのラウンジとやらに向かっていた。

 

 しかし、レグルスはそんな事よりも何故、自分がこんな場所に囚われているのかと言う疑問を投げかけていた。

 

 「僕はね、別に自分だけを特別扱いして欲しい訳じゃないんだよ。ただ、自分が何をされるか、何でここにいるのかを説明される権利くらいはあるだろう?まさか僕は何か罪を犯してここに幽閉されて「あのぉ…」しまっているのかな?僕は犯罪を犯すバカな奴らとは違って清く正しく生きてきた。だからそんな僕に対して罪にあたるものなんてないんだよ。それとも何かな?僕が知らない所で、僕には罪が「すみません…」あるってことになっているのかな?それは困るなぁ、本人の知らない所で罪を成立させられてしまったら、もう何でもありじゃないか。それって、僕の権利の侵害だよね」

 

 「だいたい─────」

 

 

 

─── ロビー ───

 

 「──つまり、今、この場所に僕が軟禁され、更にはその説明を聞く権利すら奪われている現状は、僕自身の権利の侵害に他ならないんだよ!分かったらさっさとこの手を離すんだ!!」

 

 結局、レグルスは看守に無理やり連れて行かれる事になった。連れて行かれる最中、先程話しかけてきた気弱そうな少女が心配そうに此方の様子を伺っていた。その様子は何処か怯えているように見えていた。

 

 「あぁ、それでいいんだよ。そう、君にもようやく話が通じたんだね。僕達人間には言葉があるんだ。それを使わずに実力行使に移ろうだなんて、そんなのは話が通じないか、自分の力を過信しているにすぎない。それって実に傲慢じゃない?相手を尊重することで自らもまた尊重される。そんな関係を築けるように努力する事こそが、他者との関係を築くのに必要な事だと僕は考えている。当たり前の配慮が住みやすい世界を作るんだよ」

 

 結局レグルスを拘束していた看守の手は離された。それが果たして、このラウンジに連れて行くという目的を果たしたから、はたまたレグルスの話の長さに呆れてか、その理由は看守のニコリと笑った表情で固定された仮面からは伺うことはできなかった。

 

 レグルス達が集められたラウンジでは、レグルスの他に13人の少女達と、看守がいた。皆それぞれが何かしら特徴を持っており、何が起こるのかと不安げな顔を浮かべているものもいれば、事件の予感だなんだと心底楽しそうに周囲を見渡すものもいた。そんなある意味能天気な探偵風水色髪の少女に、金髪ツインテールのお嬢様風少女が噛み付くのを横目に、他と比べると長身の少女が一歩前に出る。

 

 「─皆まだ初対面だと思うから、良かったら自己紹介をしていかないかい?」

 

 多数が不安げに周囲を見渡し、何をしたらいいのか分からない状況の中、彼女は皆をまとめ上げようとしていた。

 

 「先に名乗らせてもらうよ。私の名前は蓮見レイア」

 

 皆で自己紹介をする雰囲気になったからか、初対面にて自らの口調を笑ったレイアに対し若干苦手意識を持っていそうなツインテールの少女も渋々と言った表情でそっぽを向きながら名乗る。

 

 「…ふんっ、遠野ハンナですわ。お見知りおきあそばっ…お見知りおきあそばせせ?」

 

 「はいはーい!私は橘シェリーって言いますっ!事件あるところに私ありっ!この名探偵にお任せください!」

 

 「名探偵?貴方が?」 

 

 「そうですよ!えっへん!何せミステリマニアですからね!」

 

 「おや?では実際に事件を解決した事が何度かあるのかい?」

 

 「それはまだありませんね!」

 

 「…そ、そうかい、少し頭が痛くなってきたな…次に行こうか、キミの名前を教えてくれないかな?」

 

 そう促され、白髪の少女が何処か緊張した様子で名乗りを上げる。

 

 「ボ、ボクは桜羽エマっ!」

 

 そう言って桜羽エマが名乗り終えると、今度はレグルスと同室であった修道女のような少女がエマに駆け寄る。

 

 「わ、私の名前はひっ、ひっ、氷上、メルル、です…っ。あの…それで、エマさん、あの…」

 

 「?」

 

 「あ、足、怪我、しちゃってますっ」

 

 メルルによる指摘でエマは自身の膝を見下ろす。確かにそこを見れば膝に擦り傷ができ、血が滲んでいることに気づいた。さっきヒロちゃんに突き飛ばされた時にできちゃったのかな…なんて事を考えながら、これぐらいは大したことがないとメルルに伝える。

 

 「た、大したことありますっ!」

 

 そう言いながらメルルはエマの傍らで膝立ちになり、エマの膝に手を当てる。するとどうだろう?メルルの手先が光り、エマの傷口はまるで最初からなかったかのように綺麗に塞がってしまった。この場の全員が互いに探り合う中、メルルの不思議な力に注目が集まった。

 

 「…その不思議な力について詳しく聞きたいところだけれど、まだ他の子も残っているよね。お互いの自己紹介を優先しようか。」

 

 紆余曲折ありながら、レグルス以外の自己紹介は無事に終了した。各々が自身の名前を伝える中、最後にレグルスの番となった。

 

 「さて、では最後にキミ、キミの名前を教えてくれないかい?」

 

 「あぁ…そうだね。自分の名前を伝える事は何よりも重要だ。自分の名前を先に言わないんじゃ、相手を信用していないって事も考えられる。そんな態度じゃ、相手の名前を聞くなんてできっこないよね。それに関して、キミは実に素晴らしいね。よく周りが見えている。何をどうすればいいか分からない彼女達をキミは見事にまとめ上げた。そう、キミは皆の権利を守ったんだ」

 

 「そ、そうかな?ありがとう」

 

 「だからこそ、そんな君達に対して敬意を評して、僕も名を名乗るとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 「僕は魔女教大罪司教」

 

 

 

 「強欲担当」

 

 

 

 「レグルス・コルニアス」

 

 

 

 

 

 

 「魔女教…」

 

 「大罪司教…?」

 

 「ってなんですぅ?」

 

 

 レグルスによる自己紹介では、主に名前より前の部分に注目が集まっていた。皆一様に聞き慣れない言葉なのか、首を傾げてレグルスを見ていた。見る限りでは明らかに1人だけ性別が違うレグルス相手に、誰しもが少なからず興味を持つ。

 

 「魔女教…」

 

 そんな中で1人、レグルスの言葉に深く興味を持った少女もいた。小さく反響したその言葉はしかし、皆をまとめようとしている蓮見レイアによってかき消されていた。

 

 「ま、まぁとりあえず、全員の名前が知れて良かったよ…ここにいる意味は私にも分からない。けれど、冷静に行動すべきだと思っている。とにかく騒がず、落ち着いて説明を待とうじゃないか」

 

 レイアがそう皆に諭す。彼女はどうやら芸能人をやっていたようだ。その言葉に不思議と安心感を覚え、心を落ち着かせる者が増えてきた頃、天井付近の通気口から、先程モニターに映ったゴクチョーが姿を表した。

 

 「あ…人がいっぱい…えっと、改めまして…この屋敷の管理を任されている、かわいいフクロウ、ゴクチョーと申します…」

 

 「あっと…凄く申し上げにくいのですが…皆さんは【魔女】になる因子を持っています」

 

 「エラい人が決めた話では、【魔女】はこの国にとって最悪をもたらす悪者らしいんです」

 

 「──つまり皆さんは、この世界に害をなす悪人と言うことで…ご納得ください」

 

 ゴクチョーはそう淡々と告げる。この場に集められた全員が魔女と言う害をなす存在になる可能性があり、故にこの牢屋敷にて囚人として過ごしてもらうことになるということを告げられる。

 

 勿論、そんな事をいきなり言われても直ぐに納得できる訳もなく、各々が文句を言い始める。

 

 「はぁっ!?何なんお前キモっ!そんな検査「あのさぁっ!」ッ?!」

 

 「さっきから黙って聞いていればくどくどと…僕が悪?悪なのは僕の承認も得ずに黙ってココに連れてきた君達なんじゃないのかなぁっ!!僕は争いなんか嫌いなんだ!ただ、日々淡々とひたすらに穏やかで安寧とした日々を過ごせればそれ以上は望まない。そんな僕に対してこんな仕打ちはあんまりなんじゃないのかなぁ!!」

 

 「私に文句を言われても…私はただのかわいいフクロウですので…」

 

 「巫山戯るなよっ!だいたい、それならここは一体何処だって言うのかな?ルグニカ王国は一体何時からこんな馬鹿げた事を始めたのかなぁっ!!」 

 

 その言葉を何処か不思議に思ったのか、元々90度曲がった首を更に深く曲げ、ゴクチョーが話す。

 

 

 「ルグニカ王国…?はて?少々聞いたことのない国名ですね」

 

 「…は?」

 

 他の少女もまた聞いたことのない国名だったのだろう。皆一様に首を傾げていた。自分が想像していた反応とは別の角度で反応されたレグルスは思わず呆然としていた。

 

 「間違いです。私は悪ではない」

 

 ふと、先程まで沈黙していた黒髪の少女、二階堂ヒロがそう言う。

 

 「この国に災厄をもたらす危険因子はこの子の方だ」

 

 「はぁ~、あの、頼みますので悪者を受け入れてください。私も残業をしたくありませんので」

 

 もはやそんな言葉すら聞こえていないのだろうか。ヒロは迷う事なく前へ歩み出した。

 

 「この世界を正すことができるのは、私だけだ」

 

 「まずは…貴様だ!化け物!」

 

 そういいながら、ヒロは素早く手に取った火かき棒で看守に襲いかかり、何度も振り下ろす。

 

 「悪は死ね!死ね死ね死ね!」

 

 幾度となく振り下ろしたその手は返り血で染まっていた。頬についた血はまるでヒロの頭にある彼岸花のように咲いて見えていた。

 

 その看守に特殊な何かがなければ、既に死んでいたはずであった。しかし、看守はどれだけ攻撃されても、死んではいなかった。

 

 看守によって容易く振るわれた刃は、いとも容易くヒロの首を刎ねた。何が起こったのかも理解できていないヒロの首は、そのままエマのそばに転がり落ち、胴体は火かき棒を固く握りしめたまま倒れた。

 

 「キャアアアッ!」

 

 「うわ〜…死んじゃいましたね。掃除しなきゃ…ああでも、魔女はこれぐらいじゃ死なないので、彼女は魔女ではないと証明されたことになりますね。やれやれ…良かったですね」

 

 「…あ!あと何度もすみません。最後に、魔女になりつつある者は、抑えられない殺意や妄想に取り憑かれてしまいます。面倒なことに、囚人の間で殺人事件が起こるんですよ」

 

 「流石に、そんな危険人物とは一緒に生活できませんよねぇ…ですので殺人事件が起こり次第、【魔女裁判】を開廷します」

 

 「詳しくは魔女図鑑をご覧ください…では、私はこれで」

 

 そう言うと、ゴクチョーは通気口の中へと羽ばたいていった。先程まで自己紹介をしあった人物が殺された。そんな衝撃的な出来事に、皆一様に恐怖を隠せなかった。自身の権能がうまく機能しない事に焦りを感じながら、レグルス・コルニアスは久しく感じる頬に飛んできた血の感触に困惑していた。

 

 

 

 こうして、レグルス達の獄中生活が始まった

 

 

 

 

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