目が覚めたらアブソルだった件…いや、なんで!? 作:W297
『…う』
窓から差し込んできた朝日で俺は目を覚ました。
『朝…か』
窓越しにはエンジンシティの建物から出る煙や歯車が回る音が聞こえてくる。
『…ハロンとは全然違うな』
…流れ的に言えば、今日は多分エンジンスタジアムでジムチャレンジの手続きをしに行く。
ガラル地方の旅のメインが、ついに始まる。
『…できるのかな、俺』
俺はそう呟く。
バトルは野生とトレーナー、両方やってきた。
だが、ここからはバトルを仕事にしている人たちとの戦いだ。戦い方も少し違ってくるだろう。
ゲーム上だと、普通のトレーナーもジムもあまり変わりはない。
ただ、この世界はゲームじゃない。
自分のターンがない、技を組み合わせて攻撃してくることだって考えられる。
『…まあ、ユウリがやるって言うなら、やるしかないんだよな…』
俺たちはユウリのポケモンで、ユウリは俺たち3匹のトレーナーだ。
ユウリが「チャンピオンになりたい」って言うなら、俺たちはそうなるために努力する。…それだけだけのこと。
『…あ、白斗おはよー…』
そう思っていると眠い目を擦って穂乃花が目を覚ましてきた。
『おはよ、穂乃花。
疲れとかは大丈夫か?』
『うん。一晩寝たら大分楽になったよ。
…って、また何か考えてたの?』
『ああ、これからジム戦が始まるんだって思ってよ』
穂乃花は『そういうことね』と言いながら俺の横に座る。
『…でも、やるしかないじゃん。
ユウリのために…さ』
『ああ、俺はユウリの期待にこたえたい。
…お前もそうだろ?
特にお前は『ユウリに選んでもらった』ポケモンなんだからさ』
俺が笑みを浮かべながらそう穂乃花に話すと、穂乃花は『まあね』と自慢げに返してくる。
『…まだまだ弱いけど、いずれはこのチームのエースになってみせるよ私は。
同じチームだからって言っても、負けるつもりなんてないからね白斗』
表情はいつもの笑顔の穂乃花だが、その目の奥は燃えているように見えた。
…後々エースバーンになるのが分かってるやつは覚悟が違うな。
『ああ、期待してるよ穂乃花。…で』
俺が目線を合わせたのは、まだ眠っているもう一匹のポケモン。
『ぐがー…』
蒼真は丸くなって寝ており、起きる気配はなかった。
『…疲れてたんだろうな、蒼真』
『まあ序盤とはいえワイルドエリアで過ごしてたんだし…、ずっと気張ってたからこんなに安心して眠れてるの人間の時以来なんじゃない?』
穂乃花がそう言いながら頬をつつくが、蒼真が起きる気配はない。
『…うう、ごめんなさい…、もうここの木の実取らないから…』
そう寝言をつぶやく蒼真の足は、まるで空中を走るように動いていた。
『…うなされてるね』
『多分強いポケモンの縄張りでやらかしたんだろ。
…ユウリもまだ起きてねえし、のんびりしようか』
『そうだね』
うなされる蒼真を横目にしながら、俺と穂乃花はのんびりと駄弁っていた。
◇ ◇ ◇
「それじゃ、行こっか!」
『ヒバッ!』
『…ソル』
『リン!』
ユウリと蒼真も目を覚まし、ホテルを出た俺たち。
「…やっぱり、建物も高いし、人も多いな…」
ユウリはエンジンシティの建物や人を眺めながらそう呟いていく。
まあ昨日はワイルドエリアを抜けてくたくただっただろうし。
あまり周囲をみる余裕はなかったのだろう。
「…うん、人多いしボールに戻っておこうか」
まあ、仕方ねえな。万が一はぐれたりしたらまずいし。
見たら穂乃花は俺と同じ納得の表情だったが、蒼真は『え…?』と残念そうな表情だった。
…という訳でボールに戻された俺たち。
景色は見えなくなった。音と感覚で察するしかねえ。
「あ、ブティックだー!」
…ああ、そうだあったなブティック。
ユウリはそう言いながら店の中へと入っていく。
店内にBGMが流れる中、俺たちに聞いたことがある声が聞こえてきた。
「…あれ、ユウリじゃん!」
「あ、ソニアさん!」
…どうやらユウリはソニアと出会ったみたいだ。
「ちゃんとエンジンシティに辿り着けたみたいで良かったよ。
ワイルドエリアはどうだった?」
「強そうなポケモンもいましたけど、アブソルが「アレはヤバい」って感じで止めてくれて。
無事なんとかなりました!」
「へえ、やっぱそういうのは感じるんだね、君のアブソルは。
あれ、一匹増えた?」
…多分、ソニアはボールホルダーを見ているのだろう。
ユウリは「はい!」と返していく。
「ワイルドエリアで捕まえたんです。
…出ておいで、コリンク!」
「リンッ!」
どうやら、蒼真がボールから出されたみたいである。
「へえ、コリンクか…。またガラル地方じゃ珍しいポケモンだね」
「え、そうなんですか?」
「うん、確かヨロイ島ってところにはいるけど、本土じゃあまり見かけないポケモンかな」
…まあ、ユウリはそのあたり詳しくないけど、ソニアは研究者だからな…。
俺といい、個人的に気になるところはあるのだろう。
◇ ◇ ◇
…そして、それから小一時間。
ブティックで新しい服を買ったりした様子のユウリは店舗の外に出たみたいだ。
「…それでユウリ、なんでここに来たのか覚えてる?」
「もちろん、ジムチャレンジです!」
ユウリがそうソニアに返すとソニアは「そうだね」と返してくる。
「開会式が行われるのは、あのエンジンスタジアム。
スタジアムに向かうにはこの昇降機を使うんだ」
「エレベーターとか階段じゃないんですね…」
「まあ、エンジンシティの名物だからね。
試しに乗ってみよっか」
…あれか。エンジンシティの上段と下段を繋ぐアレ。
さっき本物遠目でみたけど、近くで見たかったな…。
俺がそう思っていると、上向きに強烈な力がかかる。
「…び、びっくりした…!」
そんなユウリの声が聞こえてくるが、ソニアは「初めてだと驚くよねー」と慣れた声だ。
「…で!この前の建物がエンジンスタジアム。
忘れずにスタジアムで受付を済ませておきなよ」
「は、はい!」
ユウリはそうソニアに返答していた。