目が覚めたらアブソルだった件…いや、なんで!? 作:W297
『…白斗ー?そろそろ起きなよー?』
俺の耳元でそんな声が聞こえてくる。
『ん…』
俺はそのまま体を伸ばす。
『…珍しいね、白斗が起きるの遅いのなんて』
穂乃花はそう俺に返してくる。
時計を見ると、いつもより2時間程度遅い起床時間だった。
『ユウリは蒼真と一緒に朝ごはん取りに行ったよ。
後で持ってきてくれるらしいから待っててね』
『あ、ああ…』
俺は昨日の夜のことを思い出す。
…ユウリから話された、白にぃという言葉。
いまだに俺の頭の中にこびりついている。
『また何か考え事?私で良いなら話してよ』
穂乃花はそうベッドに座って聞いてくるが、俺は『大丈夫だ』と返答する。
『…昨日なかなか寝付けなくてよ、その分起きるのが遅くなっただけだ』
俺がそう話すが、穂乃花は『…ごまかさないでよ』と話してくる。
『…大体白斗がそう話すときは何かしら抱えてるんだから。
言ってみて』
俺は苦笑いしながら『お前にはお見通しされてるってことか』と返す。
『…お前はこの世界で、俺よりはユウリと一緒にいるだろ?』
『まあ、そうだね。ユウリの初めてのポケモンは私だし』
『…お前から見てもよ、
あいつは愛奈に似ていると思わねえか?』
俺がそう聞くと、穂乃花が『やっぱり白斗もそう思ってたんだ』と返してくる。
『私も、初めて見たときに愛奈ちゃんに似てるって思った。
でも、似てる人なんて世の中には他にもいる。
ここがゲームの世界ならなおさら似てるだけの別人だって思ったよ。
…ただ、白斗がそう言うってことは、そういうことなの?』
俺は『まだ、確証を取れたわけじゃねえ』と続ける。
『ただ昨日の夜、アイツは『白にぃ』って話した。
どんな夢かは分からねえけど、その夢の中で人間時代の俺の姿が見えて、そう叫んだんじゃねえか…、そう思ったんだ』
『…でも、ユウリって自分が転生者だーとか言ったことないよね?』
穂乃花が話す通り、ユウリがゲーム知識を活かしているとか、相手が誰なのかとか…、そのような言葉は彼女の口から聞いたことがない。
『ああ、愛奈としての記憶が封じこめられているのか、それとも全くの別人なのか…。
…その2択なんだよ、多分』
『…もし、記憶が封じ込められているとしたら?』
『何かしらのトリガーが必要なんだと思う。
…例えば俺の言葉をユウリに伝えるとかさ』
『そんなの、無理じゃん!
私たちの言葉は人間には伝わらないんだよ!?』
穂乃花はそう俺に話してくるが、『だから俺も悔しいんだよ!』とベッドを叩く。
『聞けるなら聞きてえよ、俺は!
ユウリに、『お前は愛奈なんじゃねえか』って!
それが出来ないから…』
俺は涙を流しながらながらそう穂乃花に向けて叫ぶ。
『ご、ごめん白斗。一番つらいのは白斗だもんね…』
『いや、俺も感情的になっちまった。
ごめん穂乃花』
謝ってくる穂乃花に対して、俺もそう謝った後、『…だからよ』と続けていく。
『俺はユウリが愛奈であろうがなかろうが、ずっと傍にいるって決めたんだ。
…それが今の俺に出来る最大限なんだよ』
『そうだね、私たちにはそれしかできないな…』
穂乃花は俺の言葉にそう返してくる。
『穂乃花、これは俺たちだけの秘密にしておいてくれ。
蒼真にまでいらない心配をかけたくねえ』
『…そうだね。私たち2人だけの話にしよっか』
そう話していると、部屋のドアが開く音がする。
「あ、アブソル起きたんだ。おはよう!」
「ソル、アブソッ(ああ、おはよう)」
俺はユウリにそう返していく。表情を見たが、特に悩んではいない様子だった。
『白斗、穂乃花、朝ごはん貰って来たから一緒に食べようぜ?』
『ああ、いただくよ』
ユウリと俺たち3人は、そのまま朝食をとることにした。
◇ ◇ ◇
スボミーインをチェックアウトした俺たちは、エンジンスタジアムへと向かった。
「それでは、このユニフォームに着替えてきてください!」
ユウリはジムチャレンジ用のユニフォームを受け取る。
「これが、私の…!
分かりました!
それじゃ、ホップ、マサル、また後で!」
そう言って、ユウリは更衣室へと向かう。
「…ついに、始まるんだ…!」
俺たちのボールが机の上に置かれた後、着替えているユウリからそんな言葉が聞こえてくる。
そして、俺たちのボールがユウリの手に取られた。
「出てきて、3人とも!」
そう言って俺たちはボールの外へと出される。
ユウリを見ると、白いユニフォームに身を包んでおり、その背番号は『390』と書いていた。
「どう、これ?
私もこれで戦っていくんだよ?」
…背番号の意味はおそらく『サクラ』…とかかな。
「…3人とも、こんな服を着てるとはいえ、バトルをするのは私じゃなくて、あなた達ポケモン。
…あなた達が主役なんだから、お互いに頑張っていこうね!」
「…ソル(ああ)」
「ラビッ(うんっ)!」
「リン(おう)!」
俺たち3匹はそう鳴いた。
そして、俺たちはボールへと戻される。
その後、開会式が始まった。
ローズ委員長の声、そして、各ジムリーダーの紹介が終わり、ジムチャレンジャーの入場の番になる。
「それじゃ、行くぞ!
ユウリ!マサル!」
「ああ、行こうか。緊張するな…」
「うん、全員私たちを見てるんだ…!」
そう言いながらユウリはフィールドの中へと歩いていく。
…ボールの中にいても、歓声と期待の目が周囲から集まってきているのを感じる。
(チャンピオンになるなら、これ以上の歓声を浴びるんだ)
次のターフタウンは、おそらくそこまで注目度はないだろう。
歓声が増えてくるのはおそらく、再びここで勝利したとき。
(…変にユウリが意識し過ぎなければいいんだけど)
俺は歓声を浴びるユウリに対して、そう思っていた。