目が覚めたらアブソルだった件…いや、なんで!? 作:W297
「…弱い?ええ、言いましたよ。
先ほどのアブソルではなく、その弱いコリンクで挑もうとするあなたの考えは理解できません」
ビートはユウリに対してそう言ってくる。
…うわー、蒼真相当堪えるぞこれ…。
そんな中、ユウリの言葉が聞こえてくる。
「…確かにこの子は、アブソルに比べたら弱いかもしれない。
…でも、だからと言って君がこの子のことをバカにする理由にはならないよ」
「なぜです?弱いポケモンは弱い、ただそれだけのことです。
それとも、そのボロボロのポケモンで貴方は勝つつもりですか?」
ビートの言葉に、ユウリは「そうだね…」と返していく。
「…この子の目はまだあきらめていない。
なら私ができることは、このポケモンを信じて勝ちに行く。
…それが私のトレーナーとしての戦い方だよ」
「…無謀な戦い方だ。それは弱いポケモンをさらに弱くしてしまうやり方だと思いますがね。
ミブリム、この勝負を終わらせて、さっきのアブソルを引っ張り出しますよ!」
…チャームボイス!」
「ミィ…ブッ!」
…フェアリータイプの技だ。これを持ってるから俺にも対応できると踏んだのだろう。
「コリンク、…大丈夫!
君の力はこんなもんじゃない!
まだまだここから、出来るはずだよ!」
ユウリからは蒼真に対して、そう声がかかる。
『ユウリ…!』
蒼真の声が聞こえてくる。
…そうだ蒼真、お前はこんなところで諦めるような奴じゃねえってことは、俺と穂乃花が一番知ってる。
それにユウリもお前を信じてこの勝負を預けている。
…どんなに絶望的な状況でも諦めない、諦めの悪さ。
それがお前の持ち味だろ、黒川蒼真!
『…こんなところで、くたばるわけには…、行かねえんだよ…!』
そんな蒼真の声がボールの外から聞こえてきた。
…そして、そんな蒼真の思いに答えたのか、蒼真の体がボールの中にいてもわかるような光を放った。
(まさか、蒼真も…!?)
俺がそう思った瞬間、光は収まった。
そして、コリンクだったかわいい声は少し低く変わっていた。
「ルックッ!」
…ルクシオに進化した。それは蒼真の鳴き声を聞いただけで分かった。
◇ ◇ ◇
《ルクシオ、でんこうポケモン。コリンクの進化系。
敵に出会うと、100万ボルトの威力をもつツメを足からだして、戦いに備える》
「ルクシオ…、進化したんだね…!」
ユウリは図鑑を見ながら進化した蒼真に感嘆の声を上げる。
それに対し、ビートは再び狼狽えていた。
「し、進化したところで何が変わるというんです!
ミブリム、再びねんりき!」
「ルクシオ、振り切ってかみつく!」
「ルクッ(ああっ)!」
ユウリの声に、勢いづいた蒼真の声が帰ってくる。
相手との衝撃の音が聞こえてくる。
相性的に抜群のダメ―ジ、そして進化前と進化系。
その実力差は歴然だろう。
「ルクシオ、決めに行くよ!
スパーク!」
「ルク!」
そうユウリに蒼真が返答した後、衝撃音と共に電撃音がボールに聞こえてきた。
◇ ◇ ◇
「進化があんなタイミングで…、ありえない…。
…いいんじゃないですか、こちらも本気ではありませんし。
次回はこんなイレギュラーが起こることはないと思うので、本戦では僕が勝ちますよ」
そう吐き捨てたビートは、俺たちの前から去っていった。
『…にしても、お前まで進化するなんてな。
ボールの中からでも分かったよ』
『そうだよ、これで更に強くなれたね』
俺たちの言葉に蒼真は「まあな」と返してくる。
『正直、結構ヤバかったけどユウリが信じてくれたからさ。
なんとか勝つんだって思ったら進化してたよ』
…実際、ユウリが俺たちを信じてくれるっていうのは戦う側からしたらホントにありがたい。
ゲームで使ってるポケモン達も、もしかしたらこんな気持ちだったのかもしれない。
「ルクシオ、ちょっといいかな…?」
『ん、どうしたユウリ…?』
そこで蒼真は動きを止める。
『え、ユウリ…!?』
『あー、この目は…』
俺はこの目をよく知っている。
ユウリの目はギラギラと獲物を狙う目になっていた。
「良い毛並みしてるね、それじゃモフるよ!」
『ちょっ、ユウリ!?』
そう言ってユウリはルクシオに抱き着いた。
「…うん、アブソルみたいなふわふわはないけど、こっちはこっちでいい固さだ…」
『あ、あの…、ユウリ…!お願いだから、離れて…!?』
蒼真はそう赤面しながらバタつくが、ユウリが放す素振りはない。
「んー、まだ駄目だよ、ルクシオ。
あともう5分はモフらせてね!」
「ルクゥ(嘘だろ)!?」
そう蒼真が鳴くのを見て、俺は同情の目を向ける。
『…ようこそ、こちら側へ』
『行きたくなかったんだけど!?』
そんな中、ユウリはある言葉を口にする。
「後で、アブソルとも比較したいから、アブソルにもモフらせてもらおっと!」
『え…』
俺は一気に青ざめる。
蒼真との毛並みの比較…、つまりそれはいつもよりモフられ時間は長いという訳で…。
『…覚悟しておこう』
その後、ルクシオに満足したユウリは、俺にも抱き着いて来た。
いつもより時間が2倍ほど長かったというのはここだけの話である。