目が覚めたらアブソルだった件…いや、なんで!? 作:W297
「よし、勝てた!
勝負ありがとうね」
「ああ。君強いねー。
次のジムリーダーも倒せるんじゃない?」
「いやいや、実際やってみないと分からないよ」
そう話しているユウリとトレーナー。
4番道路に来ても引き続き野生ポケモン、トレーナーとのバトルを続けていた。
ターフタウンに近づき、若干人通りが多くなってきている。
やはりジムチャレンジはガラル地方においての一大イベントなのだろう。
「そういえば、君は知ってる?
イーブイを守るように動くロゼリアの話」
「え、何それ?」
「うん、最近この4番道路にね…」
そのトレーナーが話すことには、この4番道路にはとあるイーブイを守るように動くロゼリアがいるとのこと。
トレーナーたちがそのイーブイをゲットしようとするが、そのロゼリアによってボールは跳ね返され、ロゼリアをゲットしようにも、そのロゼリアが強くボールに入ってくれないとのこと。
「…へえ、そんな行動をするポケモンもいるんだ…」
ユウリはそう話すが、俺たちは若干疑問に思っていた。
『4番道路か、まあロゼリアはスボミーの進化系だし、イーブイも確率低いとはいえいるからおかしくはないけど…』
『ああ、同じ種族でもないってのに守るように動くって言うのがな…。
もしかしたら俺たちと同じ転生者かもしれねえ』
…まだロゼリアがスボミーを守るように動く…ならまだ分かる。
ただ、そのロゼリアが守っているのがイーブイ…、ここが引っかかる。
『…会ったら、一度聞いてみてもいいかもしれないな』
俺がそう2匹に話すと、2匹は首を縦に振った。
◇ ◇ ◇
「…にしても、いろんなポケモンがいるな…」
ユウリがそう話す通り、この4番道路は出現するポケモンの種類は多い。
「…そろそろ、またメンバー増やしてもいいかも」
ユウリはそう俺たち3匹の姿を見て話してくる。
…そんな中で。
「…あ、イーブイだ!」
ユウリはそう声を出す。
ユウリが話す通り、俺たちの目の前には草むらの中で「すぅ…、すぅ…」と寝息を立てているイーブイの姿があった。
「やっぱかわいいな、イーブイ…」
…まあ、確かにイーブイは可愛い。それは否定しない。
「あの首元…、モフモフしたら気持ち良いんだろうな…」
…おい、ユウリ。さすがに野生はやめておいた方が良いだろ…、って俺野生の頃にモフられてたわ。
「ちょ、ちょっとだけ…!」
ユウリはキョロキョロと周囲を確認した後、イーブイを起こさないように静かに近づいていく。
「それじゃ、失礼しまーす…」
ユウリはそう言いながら両手をイーブイに近づけていく。
…その時だった。
「…ロ、ゼッ!」
…ロゼリアのどくばりが、ユウリの目の前を通っていった。
『…ユウリ!?』
俺は急いでユウリの服にかみつき、後ろに引っ張る。
『…大丈夫!?どくになっていないよね、ユウリ!?』
「…う。うん。
あ、ありがとアブソル…。ラビフットとルクシオもごめんね、心配かけて…」
ユウリを守るように、俺と蒼真はユウリの前に立つ。
穂乃花もユウリの傍に立っていた。
「…まさか、この子が…」
イーブイを背にしながら、こちらをにらみつけてくるロゼリア。
ユウリもさっきの話のロゼリアだということに気付いたのだろう。
「…って、ロゼリア!イーブイもそうだけど、あなたたち怪我してるんじゃ…」
ロゼリアの手や足には多数の傷跡があった。イーブイの方も同様である。
「だ、大丈夫だから!一回2人ともポケモンセンターで治療してもらった方が…」
「ロゼ、ロゼローゼッ!」
ロゼリアは全くユウリの言葉を聞いていない。
まるで、「このイーブイには手を出させない…!」そう言ってるかのようだった。
「捕まえたりもしないから!このままだとあなたたち…」
ユウリがそう話していくが、ロゼリアは聞く耳を持たず威嚇したままである。
『…分かったかもしれねえ、アイツらの正体』
蒼真が俺にそう話しかけてくる。
『マジで?お前の知ってるやつか?』
そう俺が聞くと、蒼真は『お前も穂乃花も、知ってるはずだぜ』と返してくる。
『アイツ、多分だけど玲なんじゃねえか?』
『玲って…、花森玲さんのことか?』
…
…穂乃花に聞けば、数多くの女子生徒が、玲に守ってほしいと思っているとのこと。
『ああ、あの立ち姿…、玲にそっくりじゃねえか?』
『それじゃ、あっちのイーブイは…』
穂乃花がそう聞くと、蒼真は『あっちはまだ寝てるから薄い推測なんだけどよ』と続ける。
『おそらく、あっちのイーブイは新島祐希。
…そう考えたらこの守って守られる関係も納得いくんだよ』
…
まあを説明するとしたら、クラスのみんなから可愛がられる妹のような存在。
そして、基本的には花森さんと一緒にいる。
…身長差からは2人は仲の良い姉妹に見えるような関係だ。
『…確かに、それなら分かるけど…』
『…でも、それをどう伝える?
完全に警戒モードだぞ、あっちは』
穂乃花と俺がそう話していくと、蒼真は『俺がやる』と続けてくる。
『…2人には、俺が伝える。
俺たちだってことを伝えれば、2人とも分かってくれるはずだ』
蒼真はそう俺たちに話してきた。
「うう…、どうしたらわかってもらえるんだろ…」
2匹から警戒の視線を注がれているユウリ。
そんな中、蒼真がユウリに声をかける。
「ルク、ルクルク(ユウリ、俺に任せて)」
「え、ルクシオ…。あなたが話してくれるの…?」
「ルクッ(ああっ)!」
「…うん、それじゃお願いするよ。
頼んだよ、ルクシオ!」
ユウリは蒼真に向かってそう送り出す。
蒼真はいったん「ふうっ」と息を吐いた後、2匹に向けて話しかける。
『…2人とも、落ち着いてくれ!
俺たちはお前たちに危害を加えるつもりはない!』
『…信用できない。どうせあなたのトレーナーも、このイーブイが欲しいだけでしょ?
この子を無理矢理連れていくことは、私が許さないわ』
『…さっきのユウリの行動がそこのイーブイを捕まえようと見えたのなら謝るよ。
…ただ、お前ら怪我してるだろ?
まずはポケモンセンターかどこかで治してもらった方が…』
蒼真の言葉に、ロゼリアは『信用できないって言ってるでしょ!』と続ける。
『…ボールに捕まえられたら、そのトレーナーから逃げることは出来なくなる。
人間に私たちの人生を決められたくないの』
蒼真がそう話していくが、ロゼリアは警戒の姿勢を解かない。
『…仕方ねえ、これを言うのは気が引けるんだけど…』
蒼真は困ったように一呼吸おいてから、2匹に話していく。
『…中学の卒業式の後、みんなで打ち上げやっただろ?
その時にさ、お前「今まで3年間、色々と手伝ってくれてありがとうね」って俺に話してきたこと覚えてるか?』
『俺もさ、実際お前と関わることは多かったし、「こっちこそ」って返した』
『それで、その後に「高校に行ってもお互い頑張ろうね」ってお前は言ってきたよな?』
…その蒼真の言葉を聞いたロゼリアの顔が、急に赤くなっていた。
『ちょ、なんでアンタがその話知って…!?』
『そしたらよ、高校入ったらお前がいるんだよ。
お前、入学式で俺と顔合わせたとき、なんて言ってきたと思う?』
『…「あ…、えと…、また…、よろしく…」って。いつものお前の凛々しさはどこ…ってギブギブ!
分かった、分かったから!もう俺この話の続き言わないから離せ!』
蒼真がそう話していると、ロゼリアが赤くなった顔で蒼真の首を自身の蔓で絞めていた。
…っていうか、お前ら同じ中学だったのかよ。
「ルクシオ!?だ、大丈夫!?」
そうユウリは蒼真に声をかけるが、蒼真は『へ、へーきへーき…』と続ける。
『…それなら、さっさと自分の名前言いなさいよ、蒼真。
アンタの名前言ってくれたら、私もこんな恥ずかしい思いしないで済んだのに…』
ロゼリアは蒼真の名前を呼んで、首に巻いていた蔓を緩めていく。
『…お前が俺たちの話を聞かなかったんだろ!?
俺のことを思い出してもらうにはちょうど良かったんだよ、玲』
蒼真もロゼリアに対して、玲と呼ぶようになっていた。
『…そういえば、あそこの2匹って…』
『ああ、静原白斗と日野穂乃花。
俺の仲間だよ、でアイツが俺のトレーナーのユウリ』
そう話した蒼真だが、それを聞いてロゼリアは改めて顔を赤くする。
『…白斗君と穂乃花?』
『…ああ、あいつらもポケモンになってこの世界に来たんだってよ。
…ってだから首絞めるなって!?お前昔から変わらねえな!?』
『そっちこそ変わってないじゃない!っていうかなんで同じクラスの人がいるのにあのエピソード話したのよアンタは!?』
『そっちが聞く耳持たなかったからだろうが!?』
…蒼真はロゼリア…いや、玲さんに首を絞められながら、2人の元気な声が聞こえてくる。
『…帰ってきたね、この光景』
『ああ、分かってくれたみたいでよかったよ』
イーブイがその騒ぎで『何なの…?』と目を覚ます中で、俺と穂乃花は蒼真と玲さんの人間時代から続く喧嘩を眺めていた。