目が覚めたらアブソルだった件…いや、なんで!? 作:W297
「よし、それじゃ…!」
一通りジムバッジを眺め終えたユウリは、そう声をあげて鞄の中からブラシを取り出す。
『…はあ』
…ある意味俺の天敵でもあるブラシを見て、そうため息を吐く。
「…アブソル、おいで!」
ユウリは床に座って俺を受け入れる体勢を取る。
『白斗、呼ばれてるよ?』
『…行かなきゃダメか』
俺はそう覚悟を決める。
少し重い足取りで、俺はユウリへと向かって行く。
『ん、白斗どうしたの?』
『なんか、顔が曇ってるけど…』
祐希と玲がそう話して来るが、俺は『見てれば分かる』と端的に返答し、ユウリの膝に頭をポスンと乗せる。
(まあ、ブラッシングされるのは好きだし…)
「ありがと、アブソル。
それじゃはじめよっか!」
そう話したユウリは俺の毛にブラシは入れて来る。
「今日もお疲れ様、アブソル。
頑張ったね」
「アブソッ(まあな)…」
「ふふっ、いつものバトルの時の顔と全然違うね。
気持ち良いの?」
「ソルル(ああ)…」
ユウリのブラシが、バトルによって乱れていた俺の体毛を整えて行く。
正直、ブラッシングは文句ないし、心地よく感じる。
これに関して問題はない。
『なんか、白斗の顔緩んでない…?』
『うん、あのぶっきらぼうな白斗が…。
白斗もあんな顔するんだ…』
ユウリのブラッシングを受け、緩んだ俺の顔を見て玲と祐希がそう話して来る。
『…ブラッシングの時はあんな緩い顔するよ、白斗。
すごく気持ち良いんだよね、ユウリの手つき』
俺の顔が緩んでいる理由を、ブラッシングしてもらったことがある穂乃花が説明して行く。
…言い返したいが、穂乃花の言葉の通りだ。
2人に返す気力も、今の俺にはない…。
『…それじゃ、なんで白斗の顔はあんなに暗かったの?』
『あー、それは…』
祐希そう聞くが、穂乃花は何かに気づいた顔をしていた。
ユウリは「よし、終わり!」とブラシを置く。
俺の毛並みは1割増しで、ふわふわになっていた。
『それじゃ!勝利のモフモフタイム!
お疲れ様、アブソル!』
ユウリはそう言いながら俺の体に顔を埋める。
『だ、だからやめろって…!』
マジで、抱かれるのは恥ずかしいんだって…!
「うん、やっぱりこの感触だよー!
バタバタしないでよ、アブソル!」
『いや、するわ!』
そう屈託のない笑顔で俺を抱き締めてくるユウリに対して、俺は体をバタバタと動かしながらそう返す。
『…あれが嫌なんだって。
人間として何かを失ってる…とかどうとか』
『…ああ、そう言うことね…』
穂乃花の言葉に、玲は納得したように返して行く。
『…せーのッ!』
俺はなんとかユウリの手から抜け出し、ユウリから少し距離を取る。
「むー、まだまだ満足してないのに…」
ユウリはそう頬膨らませながら俺を見て来る。
そんな中、ユウリの目にはあるポケモンが入った。
…イーブイ、つまり祐希である。
「え、何その目…!?」
ユウリの爛々とした目を見て、祐希は少し後ずさる。
「そういえば、イーブイはまだブラッシングしてないよね…。
アブソルと同じくらい毛並み綺麗だよ?」
『え、あ、ありがと…』
祐希はそうユウリに返す中、ユウリは祐希の体をひょいっと持ち上げる。
『わ!?ちょっと持ち上げないで!?』
「イーブイもやってあげる!
大人しくしててね」
ユウリはそう言って祐希を膝の上に座らせる。
『祐希、大人しくしてろ。
ブラッシングは気持ち良いから…、ブラッシングは』
『今、ブラッシングはって言ったよね白斗!?』
祐希からそう声がかかる中、ユウリのブラシが祐希に入る。
『あ、これ気持ち良い…』
「イーブイも気持ちよさそうだね、しっかりやってあげるから」
「ブイ(うん)…」
そして、祐希の毛並みは俺と同じようにに綺麗になった。
「それじゃ、イーブイもモフらせてもらうよ!」
そう言ってユウリは祐希を抱きしめていく。
…だが、祐希の反応は違った。
『うん、くすぐったいけど…、悪くないかも!』
…なんだと!?
「イーブイはアブソルみたいに暴れないで良い子だね!
アブソルもこれぐらい大人しかったら良いんだけど」
いや、普段は静かにしてんだろ!?
ユウリが祐希の体に顔を埋める中、祐希が俺に告げてくる。
『白斗、これの何が嫌なの?』
『嘘だろ、お前!?』
俺は信じられないものを見る目で祐希を向く。
『抱かれるのはさすがに嫌だろ!?
人間としての何かを失ってるというか…』
『えー、別にいいじゃん!
ユウリも、悪意があってやってるわけじゃないんだからさ!』
『そういうことじゃねえだろ!?』
俺は祐希にそう言い返す。
「それじゃ、2人で一緒に!」
『しまっ…!?』
『うん、白斗も一緒に!』
ユウリの手が俺の体に伸び、俺は祐希と一緒にユウリに抱きかかえられる。
「うん、2人だともっと良い!
これからもたくさんやってあげるからね!」
「ソルル(はいはい)…」
「ブイ(うん)!」
ユウリの言葉に、俺と祐希は正反対の反応を返した。