目が覚めたらアブソルだった件…いや、なんで!? 作:W297
ターフタウンを出発し、5番道路を進んでいく俺たち。
次のジム戦に備え、トレーナー、そして野生ポケモンとのバトルを重ねていった。
…その中で。
「あれがナックルシティ…!」
橋の上から見えるナックルシティを見て、ユウリがそう呟く。
「いずれ戦ってたら、あそこで戦うことになるんだよね…」
ジムチャレンジ最後のスタジアム、ナックルスタジアム。
勝ち進めば、あそこでバトルすることになる。
『…行けるだろ、俺たちなら』
「…ん、アブソルなにか言ったの?」
俺の言葉にユウリがそう返してくるが、俺の言葉は伝わっていない。
…まあ、いいか。
そんな中、ユウリに声をかけてくる人物が1人。
「あ、ユウリ!」
元気なこの声…、ホップである。
「ホップ!」
ユウリもホップの姿を見て駆け寄っていく。
「ユウリ、お前もくさバッジを手に入れたんだな!」
「うん、なんとかね。
アブソルとラビフットが頑張ってくれたから…」
「そういえば、ジムミッションは大丈夫だったのか?
秘策があるって言ってたけど…」
「ああ、あれは…」
ユウリはそうあのひたすらウール―に翻弄されながら走りまくったジムミッションを思い出す。
「…使えなかったよ、私の秘策。
ホントに疲れた…」
「お、おう…」
ホップはユウリの疲れた目を見てそう返してくる。
「でも、くさバッジはゲットしたんだよな。
なら、ここでお互いバッジを持つ者同士、バトルしようぜ!」
「いいね、乗ったよ!」
…そういえば、ここでホップとのバトルだったな。
「…それじゃ、始めようか!」
そう言ってユウリは俺たちをいったんボールに戻す。
…ユウリはそう言っていつもの通り俺を出すだろう…そう思っていた。
「行ってこい、ウール―!」
「…出番だよ、イーブイ!」
「ぐめっ!」
「イーブイッ!」
…選ばれたのは、祐希だった。
(…え、俺じゃないのか、ユウリ…!?)
俺は若干ショックを受ける。
最初に出て場を荒らして流れを作る…、それが俺の役割だと覆っていたのだが。
「お、新しいポケモンだな!
今日はいつものアブソルじゃないのか?」
「うん。アブソルとラビフットは今日は使うつもりはないよ。
今まで頑張ってくれてたから負担掛かってたと思うし、他の子たちも強くしたいしね」
「なるほどな!いい心がけだぞ!」
…そういうことか。確かに最近でずっぱりだったな、俺と穂乃花は。
この世界は誰かがバトルすることで他のポケモン達に経験値が入るゲームの世界ではない。
他のポケモン達も戦っていかなければ強くなることはできない、まあ納得である。
(それでも、戦いたかったな…)
今まで、重要なバトルには必ず先頭として出てきた俺、それに対するプライドもあった。
ボールの外から聞こえてくるバトルの音…、今まではバトルの後に聞いて来たから疲れもあってあまりすんなり聞けていなかった。
今はこうしてはっきりと聞こえてくる。
ある意味、今まで経験したことがない感覚である。
「イーブイ、でんこうせっか!」
「ウール―、たいあたりで迎え撃て!」
「ブイッ!」
「ぐめっ!」
祐希とホップのウール―がぶつかり合う音がする。
「イーブイ、まだ行けるよね!」
「ブイッ…!」
ダメージを受け、若干弱った祐希の声が聞こえてくる。
…正直、祐希はまだそこまで強いポケモンではない。
ただ、『強くなりたい』という気持ちは5匹の中で一番強いと俺は思っている。
(…お前なら大丈夫。
必ず強くなれるさ、祐希)
俺はボールの中から、そう祐希にエールを送っていた。
◇ ◇ ◇
…それからもバトルは続いていく。
「アオガラス、ついばむだ!」
「ルクシオ、スパーク!」
蒼真の電撃の音がボール越しに聞こえてくる。
「あ、アオガラス!?」
「よし、よくやったねルクシオ!」
「ルクッ!」
蒼真の元気そうな声が聞こえてくる。
どうやらアオガラスを倒したみたいである。
「それじゃ最後のポケモンだ!
行ってこいバチンキー!」
「じゃあこっちも!
出番だよ、ロゼリア!」
…ただ、ボールの中で俺は拳を握っていた。
バトルに出たい。バトルで勝ちたい。俺はこのバトルの間、ずっとそう思っていた。
…ユウリは俺や穂乃花を信用していないわけではない。
むしろ、俺と穂乃花の強さを信用しているからこそ、このバトルには出さない。
俺や穂乃花が戦えば、きっとこの勝負は勝てる。
でも、それでは他のメンバーが強くなれない。
俺と穂乃花が強くなり続ける一方で、他の仲間たちが戦う経験を積めなくなる。それでは本末返答だ。
『…はあ』
俺はため息を吐き、こんな子供っぽいところがあったのかと改めて思う。
『…戦っていないからこそ、こんなことに気付けた…のかな』
戦いたくても戦えない、このもどかしい気持ち。
初めて味わうことが出来たかもしれない。
『…まあ、次は俺の出番も作ってくれよ、ユウリ』
「勝ったよ、ロゼリア!」というユウリの声が聞こえてくる中で、俺は静かにそう思っていた。