目が覚めたらアブソルだった件…いや、なんで!? 作:W297
『私のこと、覚えてる?』
ミロカロスは俺たちに向けてそう話してくる。
『いや、分からねえ…』
『うん、私も…』
そうミロカロスに話すと、彼女は『どうしたら思い出してくれるかな…』と呟く。
そしてミロカロスは『あの話したら分かるだろうけど…』と呟く。
『…ん、あの話ってなんだ?』
ミロカロスは俺がそう声をかけると、彼女は髪のように伸びているピンク色の鰭を人差し指を合わせるようにちょんちょんと合わせる。
『…いやー、あの話をしたら私のことは分かってくれると思うけど…。
白斗と穂乃花の2人から怒られる可能性が…』
その言葉を受けて、俺と穂乃花は顔を見合わせる。
『…なんだよ、それ。
一体お前は俺たちに何したって言うんだ?』
『白斗はともかく、私もって…。どんなことなの?』
俺と穂乃花がそう話すと、ミロカロスは『やっぱ言わないとだめか…』と落ち込む。
『あの…、特に白斗、怒らない…?』
『いや、内容によるだろ』
『…それじゃ、懺悔します!』
『だから、何のだよ!?』
俺がそうツッコむ中、ミロカロスは話してくる。
『アレはね、文化祭の前日だったかな…』
…ん、文化祭の前日…?
『それで、生徒会室で生徒会のメンバ―が集まって最後の作業をしてたの』
…うん、なんか思い出してきた。
…ものすごーく、嫌な記憶が。
『なんか、凄く頭が…』
『うん、私も…』
俺と穂乃花の頭が痛まりだす中、ミロカロスはそのまま話を続けていく。
『それでね、生徒会で各クラスや各クラブから集まった資料を纏めて、配布用のパンフレットを作ってたの』
『…もういい』
俺はそうミロカロスの話を止める。
『…え、白斗…?』
『うん、私ももういいよ…。
その結末、言わなくても分かるから…』
俺と穂乃花の脳裏には、あの地獄の日の光景が浮かんでいた。
◇ ◇ ◇
…あれは、文化祭前日の夕方5時ごろ。
先生方も何人か帰りだし、生徒も明日の準備をしていた数人が残っているぐらいの時間。
俺と穂乃花は生徒会室へやってきていた。
あの時、俺は生徒会副会長、穂乃花は書記。
…そして、俺たちに向けて正座しているのが生徒会長、
机の上には各教室の案内やタイムテーブル、模擬店の配置図などが積まれていた。
一応、資料はそれぞれまとめられているみたいだが…。
「なあ、未来。俺たちを呼んだ理由って…」
「…さっき、私が資料の印刷を頼まれて印刷したんだけど…」
「うん、やってたね。「任せてください!」って言ってたじゃん」
穂乃花がそう話すと、未来は「そうなんだけど…」と返してくる。
「…一応文化祭の関連のファイルって、去年のやつを参考にするため残しておいたじゃん?」
「ああ、残してたな…って」
俺はその言葉を聞いて嫌な予感がした。
「そこにさ、文化祭配布用(最終版)ってファイルがあって」
「うん、もう聞きたくないんだけど…」
穂乃花の顔から生気が無くなり始める中、未来は俺たちにとって絶望の言葉を告げる。
「間違えて、それを印刷しちゃった…」
未来はそう俺たちに告げてくる。
「…え、ホントじゃねえか!?
うっわ、全部去年度になってやがる!?」
俺はその資料を見て、その内容がすべて去年度のものになっていることを確認した。
「…それで、何部印刷したの?」
「え、えと…」
未来は人差し指をちょんちょんと合わせ、申し訳なさそうにする。
「…さっさと言え、未来。
隠すとこっちも対応できねえ」
俺がそう話すと未来は「ちょ、ちょっとだよ…」と告げる。
「ちょっと、ご、500部くらい…」
「「500!?」」
俺は想像していたよりも大きすぎる数字を聞いて、穂乃花と共にそう驚きの声を上げる。
「…で、でもちゃんと気づいたんだよ私!
これ、去年の奴だ!って」
「…参考に聞いておくけど、いつ気付いたの?」
「…えと、印刷した後に…」
「「遅いわ!」」
「ほんっとうにごめん!」
未来はそう手を合わせて土下座してくる。
「っていうか、なんで去年の奴を印刷した!?
フォルダをそもそも今年分と去年分で分けてたはずだろ!?」
「パソコンにショートカットがあって、それを使っちゃって…」
「それ紛らわしいからさっさと消しとけって言ったよな、俺は!」
「うん、消したんだよ!白斗に言われてからショートカットは!」
未来の説明に穂乃花が「じ、じゃあ…」と話してくる。
「じゃあ、なんでこんなことが起こったの!?」
「消したのが今年の方のショートカットだったみたいで…」
「なんでだよ!?」
俺は未来の説明にそうツッコみながら、改めてパソコンを開いていく。
「…う、うん、元データは消えてねえな。
これまで吹っ飛んでたらヤバかった」
「ホント?良かった…」
「「良くはねえ(ない)よ!?」
俺は急いで2人に指示を出す。
「未来!部数は500は少なくともいるんだよな!」
「う、うん!」
「穂乃花、今から今年分の奴1部印刷する!
内容が間違いないか確認取ったら、そのまま500部印刷かける!」
「りょーかい!」
「未来はその大量の書類、シュレッダーかけてくれ!
この後今年分が来る!」
「わ、分かった!」
そして、確認のため1部だけ印刷したものが届いた。
「…白斗、未来!ちょっとこれ見て!」
穂乃花が焦った表情で俺たちに資料を見せてくる。
「これ、なんだけどさ…」
穂乃花が見せてくれたのはタイムテーブルのページである。
「…確か、これってさ、準備的な都合で入れ替えになったって聞いたんだけど…」
「…って変更前じゃねえかよ!?
未来、お前あの時変更したって言ってたよな!?」
俺がそう未来に聞くと、未来は驚きの表情を見せる。
「え、保存出来てなかったの…!?」
「ほ、他にはないよね…!?」
「さ、探すぞ!」
そして、修正個所を探すこと1時間。
「未来、この書類順番逆だったよな!」
「そう!」
「「そう!」、じゃねえよ!?」
「未来!
そう言えば、明日のスピーチの原稿って…」
「あ、これからやる!」
「まだできてなかったの!?」
「未来、途中で放り出すんじゃねえ!
どこまでやったか分からなくなるから、せめて完成させてから移れ!」
「う、うん!」
そして、それからしばらくして。
「…えーと、まだやってるの…?」
明日の準備のため残っていた玲が、まだ電気がついたままの生徒会室の様子を見に来た。
「…これ、私も手伝った方が良いかな?」
玲は既に屍のように机に突っ伏した穂乃花と未来の姿を見てそう話してくる
「…助かる」
俺はそう言いながらて玲に書類の一部を渡す。
玲は「分かったわ」と言いながら椅子に座る。
「白斗君ですらその状況なら、ほっとけるわけないでしょ。
いつもなら『大丈夫』とか『心配いらない』とか言ってくるのに…。
未来がまたやらかしたの?」
「その通りだよ、全く…」
それからさらに1時間後、学校の門が施錠される直前。
「お、終わった…」
「な、なんとかね…」
「未来、2度とこんなことやるんじゃねえぞ…」
「…も、もちろんです…」
死屍累々の生徒会室で、俺たちはそう言葉を交わした。
◇ ◇ ◇
『…お前、未来だろ』
俺はミロカロスにそう告げる。
『うん、潮崎、未来、です…』
この申し訳ない時に指を合わせる癖とこの声。
これに当てはまる人物を、俺は1人しか知らない。
そしてなにより、あの地獄の事件を知っていること、確信材料には十分である。
『…本当に、未来なの…?』
穂乃花がそう聞くと、未来が「そうだよ、穂乃花」と告げる。
『…久しぶりだね、みんな』
この世界でも久々に会えた、正直に言うと嬉しい。
未来も同じように、ポケモンになってこの世界に転生していた。
その事実は嬉しいものだ…、ただ。
…それ以上の怒りの感情があふれてきていた。
『…未来!』
『…は、はい!』
『…そこに正座しろ』
『…え、私もう足ないんだけど…』
『いいから正座ァ!』
『は、はい!』
俺の厳しい口調に、未来はその場にとぐろを巻く。
『まずだな!俺はお前には何事もやる前にしっかり確認しろって言ってるよな!?』
『その通りです!』
『何回お前の「大丈夫だと思った」で俺と穂乃花が振り回されてると思ってんだ!』
『覚えてません!』
『正直に言うんじゃねえ!』
星霜学院高校生徒会室でのいつもの風景、生徒会副会長から生徒会長への説教が、バウタウンの海辺で始まった。