目が覚めたらアブソルだった件…いや、なんで!? 作:W297
『…っていうか、なんで文化祭前日なんていう時にあんなミス起こすんだよ、お前は!』
『おっしゃる通りです!』
『「大丈夫!」って言ったの誰だ!』
『私です!』
『「任せて!」って言ったの誰だ!』
『私です!』
『それで、最終的に俺たちに振ることになる元凶は誰だ!』
『私です!』
『それを分かってんならしっかりしろ!』
『ごめんなさぁい!』
…俺から未来への説教は続いていた。
…なんか、俺に怒られてる徐々に未来の体が小さくなっている気がする。
『ふふっ、久々に見たな…。
白斗のガチ説教…』
『ホント、未来は何回これを経験するのやら…』
穂乃花はそう懐かしみ、玲は頭を抱えながらも笑っていた。
まあ、ウチの生徒会発足当初からのいつもの光景である。2人には見慣れた光景だろう。
『穂乃花と玲!笑ってないで助けてよ!?』
『いや、だってアレは未来が全面的に悪いじゃない』
『ホントなら私だって白斗に加勢したいんだよ?
今回は白斗に任せてるんだからマシでしょ』
『っていうか、説教中に余所見すんじゃねえ!』
『はい、すみません!』
玲と穂乃花は未来に助け船を出すつもりはないようだ。
俺の言葉に、未来はそう頭を下げるしかなかった。
『なあ、祐希。ちょっといいか?』
『なに蒼真。私もちょっと聞きたいことあるけど…』
蒼真は祐希を呼び寄せた後、話を続けていく。
『俺たちの知ってる未来ってあんな奴じゃなかったよな…』
『うん、もっとこう…、みんなに頼られてる完璧な生徒会長っていうか…』
2人の印象ももっともである。
実際、普段の未来は凄かった。
『勉強も学年トップで、運動能力もトップクラスで』
『顔も良く、性格もいい。それでいてみんなを纏めるリーダーシップがある』
『実際、頼られてることも多かったし、先生たちの評価も良かったよ』
俺たち3人はそう話していく。実際ここに関しては俺も未来を認めている。
外向きの未来は、才色兼備で文武両道の完璧な生徒会長…、そう言える。
『…ただ』
『ただ?』
俺の言葉に祐希がそう聞いてくる。
『時々とんでもないミスをやらかすのが未来なんだよな…』
俺の言葉に穂乃花と玲が『うんうん』と頷いてくる。
『実際は、書類の順番間違えるのなんかザラにあって』
『うっ…』
『集合時間を間違えることもあったし』
『ううっ…』
『そして、最終的に自分で増やした仕事を俺たちに手伝わせる』
『ごめんなさい…!』
その時の未来はパーティの中で一番小さい玲や祐希以上に小さく見えた。
一番大きなポケモンのはずなのに。
そして、俺の説教が続いてる中、ユウリは…というと。
「アブソル、落ち着いて!
その子もう戦意ないから!
っていうかなんでそんなに怒ってるの!?」
…まあ、俺たちの裏側を知らなければ、この関係は分からないだろう。
俺たちの関係を知らなければ、野生のミロカロスになぜか吠えまくっているアブソルにしか見えない。
ユウリは俺を抑えてくるが、特に俺は気にしてなかった。
『…ふー、言いたいことは言い終わったよ。
穂乃花と玲は大丈夫か?』
俺がそう聞くと、2人は『大丈夫』という表情を見せる。
『うん、基本的に言いたいことは白斗が言ってたし…』
『私もそうね。それにこれ以上言ったら未来が耐えれないわ』
『りょーかい。
…それじゃ、説教は終わりだ未来。
頼むから俺を怒らせないでくれ…』
『う、うん…』
そう未来が俺に返した後、未来は『でもそうだね』と続けてくる。
『やっぱり、白斗と穂乃花だ』
『なにがだよ』
『こうやって、私に怒ってくれるってとこ』
未来はそう俺たちに話してくる。
『…完璧な人って言われてたから、多少の失敗があったとしても本気で叱ってくれる人って親以外じゃあまりいなくて…』
実際そうだ。未来が生徒会担当の先生以外に怒られている姿は見たことない。
『でも、白斗と穂乃花はちゃんと怒ってくれる。
ダメなことはダメって言ってくれる。
…それで、その後にどうするか一緒に考えてくれる。
2人は一番厳しくて、一番優しい存在なんだよ、私にとってね』
『それなら良かったよ』
『うん!』
そして未来は、『私ね』と続けていく。
『この世界で目覚めたとき、1人だったんだ。
海の底で目が覚めて、気づいたらこのミロカロスの体になってて。
周りには話せる人なんて誰もいない』
未来はそう涙を流す。
実際、未来ってすごい寂しがりだからな…。
知らない世界と環境の中で、自分一人きりって言うのはホント辛いだろう。
『…だから、みんなにあえてホントによかった…。
白斗の怖くて優しい説教も、2度と聞けないと思ってた…』
『…もうしたくは無いんだけどな』
俺はそう苦笑いしながら未来に話していく。
…そして、次の瞬間。
『白斗ーっ!』
「うわっ!?」
未来はそう言いながら俺に向かって飛びつき、体に巻き付いてくる。
『ちょっと、未来!
落ち着けって!』
『ようやく会えた!
会いたかった!ずっと会えないと思ってた!』
未来は俺の言葉など気にせず、俺に向かって叫んでくる。
『みんなにもあえて嬉しいんだよ!』
『分かった、分かったから!
1回離れ…』
ギュウウウ…という音と共に俺の体が締め付けられていく。
『やっばっ…、意識が…』
目の前が霞んでいく。これが戦闘不能ってやつか…?
『未来、お前力加減…』
『って白斗!?大丈夫なのその顔!?』
『会えてよかったよ、白斗!』
俺の意識はいったんそこで失った。
◇ ◇ ◇
???SIDE
白斗の体がダランと下にぶら下がった。
『ちょ、白斗!?
大丈夫なの!?
私の声聞こえてる!?』
穂乃花はガッチリと未来に締め付けられた白斗に向けてそう話すが、返事は無い。
『み、未来!早く解放してあげなさい!』
『これからずっと一緒だよ、ねえ!』
『だめだ、未来のやつ話聞こえてねえぞ!?』
玲と蒼真は未来を剥がそうとするが、久々に知っている人物に出会えた未来に声は届いていなかった。
『…ゆ、ユウリ!
このままじゃ、白斗が…!』
「え、えーと…!」
祐希はそうユウリに声をかけるが、ユウリも策を探していた。
ミロカロスは水タイプ、効果抜群なルクシオとロゼリアはいるが、ミロカロスが巻き付いているのはアブソルだ。
下手に攻撃すると彼に攻撃が当たってしまう可能性がある。
ただでさえ気絶しているポケモンに対して攻撃を与えるのは、たとえ相手が野生であってもリスクが高い行為である。
「…こうなったら!」
ユウリはバッグの中からダイブボールを取り出した。
ワイルドエリアにいたとき、珍しいボールだな…と思ってワットショップで買っておいたボールだった。
「お願い!捕まって、ミロカロス!」
ユウリの投げたボールは、まっすぐに未来に向けて飛んでいく。
ボールは未来にぶつかり、彼女は光となってボールの中に吸い込まれていく。
地面に落ちたダイブボールは、ゆっくりと3回動き、動きを止めた。
「は、入った…」
ユウリはその場にへたりこむ。
そして…。
『…ゲホゲホッ!』
未来から解放された白斗もなんとか目を覚ましたようである。
◇ ◇ ◇
『白斗、大丈夫なの…!?』
『なんとかな、頭は若干くらくらするけど…』
俺はユウリが手に持っていたダイブボールを見る。
『まさか』
…嫌な予感がする。
『みんな、ミロカロスゲットしたよ!』
俺は頭を抱える、やっぱりか。
『未来もユウリのポケモンになったんだね…』
『みたいだな…』
俺は大きくため息を吐く。
…だが、その口角は若干上がっていた。
『まあ、仲間が増えることは嬉しいんだけどよ』
俺がそう話すと、穂乃花も笑顔で返してくる。
『これで6体目、にぎやかになるね』
『騒がしくなる…じゃねえのか?』
『ふふっ、そうかもしれないね』
穂乃花は俺の言葉にそう笑って返してきた。