目が覚めたらアブソルだった件…いや、なんで!?   作:W297

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6話 ブラッシングと胸に残る不安

 バトルがあった日の夜。

 

 博士の家で晩ごはんを食べた後、家に帰ってきたユウリと俺と穂乃花。

 

「…アブソル、おいで」

 

 右手に櫛を持ったユウリが俺を招いていた。

 

「…ソル」

 

 そう答えた俺は、ユウリへと近づいていく。

 

 近づいていくと、ユウリは「ブラッシングしてあげる」と笑顔で言ってきた。

 

「野生だったのなら、いままでその髪といてもらったりしてなかったんでしょ?

 

 折角そんな良い毛並み持ってるのに、何もしないなんてもったいないよ」

 

 ユウリは「ほら、ここに頭乗せて」と膝を叩く。

 

 …うーん、別に髪を整えてもらうのは嬉しいんだけど、さすがに俺も人間のときは高校生男子だ。

 

 中学生くらいの女子の膝の上に顔を乗せるにはちょっと抵抗が…。

 

「…アブソル!頭ここ!

 

 はーやーく!」

 

 …って、お前が膝の上に俺を乗せたいだけじゃねえか!?

 

 …俺はちらっと穂乃花の方を見る。

 

 穂乃花も「あきらめて」という表情だ。

 

「アブソッ…(はいはい…)」

 

 …まあその本人のユウリが許可してるんだ。問題はないだろう。

 

 俺は覚悟を決めて、ユウリの膝の上に顔をのせる。

 

 …うん、人間のあたたかさとやわらかさだ。やっぱりこれは心地よい。

 

「…アブソル、野生だったのなら何もしてないんでしょ?ホントキレイだよ」

 

 俺は『ソルッ(ありがと)』と返す。そんなにきれいなのか…。

 

 …こっちの世界でそんなこと気にしたことなかった。

 

 その後もブラッシングは続き、「うん、これでよし!」というユウリの声が聞こえてきた。

 

 鏡を見ると、俺の髪はブラッシングしてもらう前より1割ほど嵩が増していた。

 

 うん、やっぱ身だしなみは綺麗な方が良いな。

 

『アブ、アブソッ(ユウリ、ありがとな)』

 

 俺がそうユウリに鳴くと、ユウリは「それじゃ…」と狙いを定めた目だった。

 

「…その毛並み、堪能させてねっ!」

 

「ソルッ(マジで)!?」

 

 そう言って両手で俺の体を掴んだユウリは、俺の体に顔をうずめる。

 

「あー…、やっぱブラッシングした方がモフ度も上がってる。

 

 これからもずっとやってあげるからね、アブソル!」

 

「ソル、ソルルッ(なんか、目が怖いんだけど)!?」

 

 俺は傍にいた穂乃花に声をかける。

 

『穂乃花、助けて!』

 

 そういうと穂乃花は『えー…』と言いながら近づいてくる。

 

『別にいいじゃん、かわいがられてないよりはさ』

 

『俺の尊厳がなくなっていきそうなんだけど!?』

 

 そう俺たちが会話してると、ユウリが「ヒバニーも来たの?」と目線を穂乃花に合わせる。

 

「ヒバニーも撫でられたいの?おいで」

 

 もがく俺を右手で抱きかかえたユウリは、左手で穂乃花を迎える態勢に入る。

 

 っていうか、こんだけ動いてんのにまったく抜け出せないんだけど…。

 

「ヒバッ(それじゃっ)!」

 

 穂乃花はそう鳴いて、ユウリに飛び込んでくる。

 

「わわっ!?」

 

 ちょうど穂乃花が飛び込んだのはユウリの顔のあたり。

 

 ユウリは衝撃を受けきれず、床に倒れてしまう。

 

『…あ、やっちゃったかも…』

 

『勢い付けすぎだ、穂乃花…』

 

 それによってようやく抜け出せた俺は、穂乃花に向けてそう呟く。

 

 だが、床に後ろから倒れたユウリは、「あははっ!」と笑っていた。

 

「もう、私のポケモンたちは可愛いんだから!

 

 2人合わせて、もう一回モフらせてっ!」

 

『はーい!』

 

『まだやんの!?』

 

 それから俺と穂乃花は、5分くらい抱き締められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…すう、すう…」

 

 月も上がり、俺のすぐ横ではユウリが寝息を立てている。

 

 目が覚めてしまった俺は、窓の近くへと歩いていく。

 

(…これから、どうなっていくんだろうな…。

 

 俺も、穂乃花も…)

 

 俺は月を見上げながら、そう物思いにふける。

 

 なんでか分からないけど、ポケモンとしてこの世界にやってきた俺と穂乃花。

 

 もしかしたら、他に元人間の転生者であるポケモンがいるかもしれない。

 

(今はまだなんとかなってるけど、バトルも激しくなるだろうし…。

 

 これからワイルドエリアにも行くし…)

 

 そう思っていると、ベッドから動く影が一つ。穂乃花である。

 

『…ん、白斗…?起きてたの…?』

 

『ああ、まあな。

 

 これから俺たちどうなっていくんだって思ってよ』

 

『まあ、気にしても仕方ないんじゃない?

 

 こうやってポケモンとして生まれて、ユウリのポケモンになった以上、やるべきことは決まってるんだし。

 

 バトルしたり、ユウリを手伝ったり、ね』

 

『まあ、そうだよな…』

 

 俺は穂乃花にそう返していくと、穂乃花は俺の横に歩いてきて、その場に座る。

 

『…人間の時から変わらないね、白斗の心配し過ぎる癖はさ』

 

 そう話してくる穂乃花に俺は『ああ』と返答する。

 

『…これから、他の転生したポケモンたちに出会うかもしれないし。

 

 それが本当に俺たちの周りの人間なのかもしれないし…。

 

 ただ、バトルするだけでも、見るべきところが多そうだ』

 

『そうだね、仲間になってくれるのかはユウリ次第だけど、できる限り知ってる子たちがいいな』

 

 そう二匹で色々と話していると、穂乃花が肩を俺の右前足に当ててくる。

 

『ねえ、私不安だったんだよ?

 

 こうやって気づいたらポケモンになっててさ』

 

 穂乃花は月を見上げて続けていく。

 

『メッソンとサルノリはそんな気配なかったし、こんな状況になってるの私だけか…って思ってた。

 

 …でも、同じ状況の白斗がいてくれた。

 

 こうやって、同じトレーナーのポケモンになれた。

 

 …それだけでも心強いよ』

 

 俺はそう話してくる穂乃花を向いて『俺もだよ』と続ける。 

 

『…まどろみの森の中に生まれて、これからどうしていくべきか分からなかった。

 

 でもユウリ達と出会って、こうやって穂乃花にも会えた。

 

 バトルして強くなっていくって言う目標も出来た。

 

 …不安は多いけど、楽しみな気持ちも多いかな』

 

『ふふっ、私も一緒だよ。その気持ちは』

 

 穂乃花はそう笑って返してくる。

 

『…改めてだけど、これからよろしくな。穂乃花(あいぼう)

 

『うん!お互い頑張っていこうね!』

 

 俺と穂乃花はそう拳を付き合わせた。

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