目が覚めたらアブソルだった件…いや、なんで!? 作:W297
「それじゃ出ておいで、コリンク!」
「リンッ!」
ユウリがそう言いながらボールを投げると、今捕まえたコリンクが目の前に現れる。
コリンクはあたりを見渡して状況を確認していた。
『…ったく、どういう状況なんだよこれ…』
そう呟くコリンクの声はユウリに聞こえなかったのか、ユウリは「これからよろしくね、コリンク!」としゃがみ込んで話して行く。
『リ、リン…!』
…なんとか言葉を出した表情に見える。
「それとコリンク、君の仲間のヒバニーとアブソル!
3人とも、仲良くしてね?」
「ソル、ル…」
「ヒ、バ…」
「リン…」
俺たち3匹は無理やりそう言葉を交わした。
◇ ◇ ◇
そして、俺たちはワイルドエリアを抜けてエンジンシティへと辿り着いた。
野生ポケモンたちとバトルしながらだったので、結構しんどかった。
朝にワイルドエリアに入ったはずだが、太陽は落ちかけており、その広さを感じる。
まあ、野宿とかにならなくて良かった。
…でも。
「こ、この階段登るの…!?」
ユウリはその階段の大きさに驚いていた。
確かにワイルドエリアを抜けた最後にこんな大階段はキツい…。
「アブソル、ヒバニーみたいに背中乗せてってよ…」
…うん、無茶言うな。
さすがにまだ人間を乗せることは無理である。
「ソルルッ」と首を横に振った俺は、階段を軽快に上がって行く。穂乃果は俺の背中に乗ったまま、コリンクも俺と同様だ。
「あ、待ってよ3人とも…!」
その姿を見て、ユウリは階段を上がってくる。
ユウリの『ポケモンってすごいな…』と言うつぶやきを聞きながら、俺たちはエンジンシティへと入って行った。
◇ ◇ ◇
エンジンシティのポケモンセンター併設のホテル。
『…ああ、ようやく建物の中で休める…』
ユウリによって綺麗に洗われたコリンクがそう言いながらポケモン用のベッドに倒れ込む。
…うん、間違いない。こいつは…。
ユウリはシャワーを浴びている。聞くなら今だ。
『…穂乃果、聞いてみるぞ』
『うん、聞くなら今だね』
俺と穂乃果はそう言葉を交わして、コリンクへと近づいていく。
『…コリンク、ちょっと色々と聞いてもいいか?』
『…おう、俺もお前らに聞きたいことあるんだよ』
コリンクはそう返してくれる。
『…単刀直入に言うぞ、
お前も『転生者』、だよな?』
俺がそう聞くと、コリンクは『やっぱりか』と返してきた。
『…ガラルにアブソルがいるのはおかしいと思ってたんだよ。
お前らも、転生者なんだな?』
『…うん、ってことはコリンクも…』
穂乃果がそう聞くと、コリンクは『ああ』と返答してくる。
『…俺は気づいたらコリンクになってて、それでいてワイルドエリアにいたんだ。
ったく、何回死にかけたか…』
コリンクは大きなため息を吐く。
『…それで、君の名前は…?』
穂乃果がそう聞くと、コリンクは『言っても分からないと思うけどな…』と言うが、彼は答えてくれた。
『俺の人間時代の名前は、
…一般的な男子高校生だよ』
へえ、黒川蒼真ねえ…。
一瞬、ホテルの部屋に静寂の時間が流れる。
…そして。
『『…蒼真!?』』
俺と穂乃果は同時にそう驚いた声を出す。
『…な、なんだよ、急に大きな声だしやがって…』
コリンクは俺たちの声にビビったみたいである。
『…だってよ、お前もこの世界に来ていたんだって思ってよ。
…なあ穂乃果?』
『うん、私たち以外にもこの世界に飛ばされている人いるんだなって思って。
白斗の仮説、当たってそうだね』
俺たちがそう話していると、コリンクが何かに気づいたみたいだった。
『…穂乃果?白斗?
お前らまさか…!』
『…アブソルにはなったけど…、静原白斗。
こっちの世界でも、会えて嬉しいよ、蒼真』
『それじゃ私も!今はヒバニーだけど、日野穂乃果!
久しぶりだね、蒼真!』
俺たちがそう話すと、コリンク…、いや蒼真は笑みを見せて、俺に抱きついてくる。
『白斗、穂乃果!
お前ら来てたのか…!』
『…でも蒼真、よく生きてたね。
ワイルドエリアに生まれたんでしょ?』
『ホントだな…、っていうか初めて会った時あんだけ汚れてたのって…』
俺たち2人がそう聞くと、蒼真は『四六時中気を抜けなかったんだよ…』とため息を吐きながら話してくる。
『…まだ俺とレベルが近そうなポケモンたちもいたけど、それでも強いポケモンはゴロゴロいるし。
プラスして、コリンクはガラルにいねえから同族もいないし。
誰もいなさそうなきのみの木があると思ったら苦くて食えたもんじゃなかったし…。
湖は近くにあったから水はなんとかなったけどよ…。
もう、二度と経験したくねえ…』
蒼真は俺たちに向けて疲れた目で話してくる。
『なんというか、お疲れ蒼真…」
『…そう言うお前らはどうなんだよ?』
『俺はまどろみの森。
まあ強いポケモンはいたけど、そこにさえいかなければ…って感じ』
『私は気づいたら何かの施設の中だったな…。
それでユウリに選んでもらって…』
そう俺と穂乃果が返すと、『なんで俺だけこんなハードモードなんだよ…』とため息を再び吐く。
『…それでよ、なんで出会った時あそこにいたんだ?』
『まあ、その前にビークインとミツハニーたちに追いかけられててよ…。
なんとか逃げ切れたけど、もうバテバテでさ。
それで草むらの中で休んでたら、見慣れない白い姿が見えてよ。
アブソルって、ガラルじゃカンムリ雪原しか出ねえはずだからよ、もしかしたら転生者じゃねえかって思ってさ。
草むらから出てみることにしたんだ』
『そしたら、ユウリに一目惚れされて、捕まった…と』
穂乃果がそう聞くと、蒼真は「まあな」と話してくる。
『ボールから出ようにも、もうそんな力なくってさ。
ボールの中で『もうなんでもいいわ…』ってなったんだよ』
『結果的にはお前らと一緒のトレーナーにゲットされたから良かったけどな』と蒼真は笑って話してくる。
『…蒼真、展開は思った流れとは違うけど、こうやって同じトレーナーのポケモンになったんだ。
お互いに競い合って、強くなって行こうぜ』
俺がそう話すと、蒼真は『そうだな』と続けてくる。
『…ボール投げられた時は何もわからなかったけど、そこから歩いているうちに落ち着いてよ。
旅はしたいとは思ってたし、ちょうどいいかなって思ったんだ。
これからよろしく頼むぜ』
『うん、こちらこそだよ!』
俺たちはそう言葉を交わしていった。