「凄まじいな。あれが前No.1ヒーローの孫か」
モニターで試験の様子を眺めていた教師が呟いた。画面では仮想ヴィランを取り込んで無双しながらも他の受験生を助ける扱吸の姿が映し出されている。
個性『吸収』 作り出したピンクの肉塊に包んだ対象を極小サイズにして体内に格納、一時的に取り込んだ物の特徴を取り入れる。
「ビッグ3の天喰に似た個性か。こっちは体から出さない限り何時でも出せるみたいだが……それよりも注目すべきなのは受け継いだ方の個性だ」
入試にあたって個性の申請を受け付けたが、彼の申請に特異な追記があった。
祖父であるミスターサタンの個性であるブゥさんを吸収しています、と。
「空を飛ぶのも回復も0Pヴィランをケーキに変えたのもブゥの力だろ? マジで前の世代の個性かよ……」
本来個性は代を重ねる毎に複雑で強くなって行くが、不動のNo.1のオールマイトの前任者だったミスターサタンの個性である『魔人』はあまりにも特異だった。
彼自身が当時はまだ衰退してなかった世界的な格闘大会を連覇した武闘家であり、自立思考で動く個性、ブゥと呼ばれていた存在と共に多くの悪党を倒して来た。
「自立思考で独立しているからこそ可能だった継承か。本人も相当鍛え上げているみたいですが、あの技はミスターサタンの技で良いんですか?」
話を振られたのはオールマイト。何故なら彼は高校入学までサタン道場に通っていたからだ。
話を振られた彼は腕を組んで懐かしみながら頷いていた。
「師範の技は派手な物が多くてね。それでも割と理に適っていたり強力な物が多かった。あの巨大ロボを倒したのは衝撃が後から内部から発生するって技で……」
「そんな技をどうやって?」
「さあ? 私は身に付けられなかったし、本人も原理は分かってなかったよ」
その辺も師範らしいと笑うオールマイトだが、訊ねた相澤は呆れ顔だ。
「確か爺さんが死んだ後は士傑の教頭に引き取られたんでしたっけ? その割には派手好きなのを爺さんから引き継いだままみたいだ。校長、あいつは俺が引き受けます」
「うん。相澤君には咄嗟に止めないと、危険なタイプの個性の子を任せることにしているからね」
撃破ポイント 80
「ところであれだけの実力なのに、どうして推薦組じゃなかったんですかね?」
「推薦を出しているような個性教育をしている中学校よりも、自分の管理下で鍛えた方が強くなれるってピッコロ君の考えだよ」
「あの人らしいなぁ。師範のご友人だったけれど、自分の指導能力に凄い自信があったからね」
こうして試験の間も教師達の会話は続く。相澤からは爆豪と知り合いで、最終的に協力した事から所属している中学校以外にも別グループにする条件を決めた方が良いだろうと提案がされた。
「それにしても懐かしいなぁ。うちの両親が亡くなって爺ちゃんの所に引き取られたのが小学3年生になる少し前だったよね、二位のかっちゃん」
『テメェふざけた呼び方してるとぶっ殺すぞ!! 入学したら速攻で抜き殺してやるから覚悟しやがれ!!』
そして、合格通知があった日の夜、久しぶりに幼馴染みに電話した彼は思いっきり煽っていた。
自分が2位だと聞いていた克己は1位は既にわかっているとばかりの態度である。
「競い合う相手が居るって最高だね。そうそう、出久君も受けてたけれど、実は発動条件が難しいだけで個性があったの?」
『あぁん? そんなわけあるか。無個性のデクのまんまだわ!』
「ふーん。案外、誰かから個性を貰ってたりしてね。爺ちゃんが一度だけオールフォーワンって言葉を口にしたんだ。都市伝説に出て来る個性を奪ったりあげたりできる個性」
「んなクソみたいな作り話信じてんじゃねーよ。デクはただの記念受験だ。俺達と同じステージに立てるわけがねぇ』
「まぁ俺もある意味他人の個性を使える個性だから、突然変異で足の小指がそのままに人の個性を奪う個性を出久君が持っていても不思議じゃないよ」
『摩訶不思議アドベンチャーだわ、馬鹿』
話がつまらないとばかりに、電話がブツっと消える中、お風呂からピンク色の肌をしたふとっちょが出てきた。
「お風呂のお湯抜いといたぞー」
「ありがとう、ブゥさん」
吸収されはしたものの、別段外に出る事に問題がないブゥであった。
漫画を読んだり、お風呂に入ったり、甘いものを食べたりと好きに過ごしているのだ。
「いよいよ僕も高校生か。爺ちゃんが通っていた傑物学園のほうも少しは興味があったけれど、雄英高校の方がトレーニング施設もしっかりしてるからね」
カーテンを開けて、窓の外を見れば歩いて数分の距離に通う予定の学校がある。
これで、朝早くと放課後にトレーニングルームをギリギリまで使っていられると彼は張り切っていた。
「じゃあ、今日はもう寝るよ」
彼がお休みと言って眠るとブゥの体は、ピンクの煙になって彼の体に染み込んでいった。
「まさか本当に入学するなんて。仮にも日本最高峰、インチキとか、そんなのが通じるはずがない」
「あのヤロー、ずっと隠して馬鹿にしていたか、それとも本当にテメェが言っていた戯言が……」
入学初日、入試の日に出会った2人と話をする出久の姿を見ながら扱吸と克己は幼馴染みであり、無個性だと馬鹿にされていた出久の姿に唖然としていた。
「あの飯田って真面目そうな彼と女子、どうやら試験で出久君の姿を見てるようだから、試しに聞いてみようか。それと……不審人物がいるから先生呼ぼうか」
2人の視線の先には、寝袋にくるまった薄汚い感じの男性の姿。
なんとなくわかってはいるものの、なんとなく認めたくないので、それは口に出さない。
「不審人物じゃない。お前らの担任教師だ」
「思い出した。イレイザーヘッド。個性『抹消』のアングラ系ヒーローだ」
「知ってるなら早く思い出せ。それと急いで体操服に着替えてグラウンドに集合だ」
どうやら入学初日から入学式を吹っ飛ばして、他のイベントが入るらしい。
「俺、ワクワクして来たぞ」
「知るかボケ死ね。デクの野郎、一体どうやって……」
ずっと石ころだと思っていた相手が自分と同じステージに立とうとしていることに怒りと絶対に認めないが焦りを感じ始めている克己。
そして相澤による個性把握テストが開始された。