さて、俺は授業に対しては真面目な生徒だ。だからヴィラン役に徹する。
「大丈夫か、ヒーロー? 下手に攻撃したら地面に落ちてドカンだぞ」
「ちっ! 卑怯な真似を選ぶな」
「生憎犯罪者だ。特に核爆弾を奪って市街地に持ち込むなんて極刑かタルタロスの無期懲役もあり得るんだ。その辺のチンピラと一緒にすんな」
核爆弾のハリボテを空中に浮かし、俺も空中に浮いて轟と相対する。
それは立てこもった犯罪者がアナグマをいつまでも続けるとは限らない。
なので、今回のはセーフだ。因みに片方を捕まえたり、爆弾を攻撃するとか言う人質を取るのは駄目だと試合開始前に確認済みだ。
対空の方法が攻撃か氷で道を作るだけの轟は此処で手詰まり。
まあ、これは流石にオールマイトが決めた設定が悪かった、としか。凄い凶悪犯だからな。
そして……うん、そうなるよな。
かっちゃんだが出久を圧倒だ。癖でやってしまう右の大振りの攻撃。それを読まれているのを読んでいて、掴まれる寸前に、爆破によって後ろに回避。
驚いて視線を向けたところに閃光と音で動きを止め、爆破を叩きつける。
ヒーロー側の勝利条件が核爆弾に触るか確保テープを巻きつける事だが、かっちゃんはそれを許さない。
「どうした! 貰いもんの力はその程度かよ!」
「え?」
そして、思わず出してしまったであろう言葉に出久君は反応してしまう。
誰がどう見ても、なんでそれを知っているの? と驚いた顔だ。
かっちゃんの顔が一瞬曇り、両手をすぐに上げる。
「緑谷!」
「おっと、させない」
轟君が助けに行こうとするけれど、俺に背中を向けるなんて許さない。手からエネルギー弾を出して足止め、核爆弾を浮かしたまま接近した。
「流石に汗が出ないほどに周囲を冷やされたらかっちゃんも少しは反撃を受けるかもしれないからね」
こんな派手な事をする以上は自己顕示欲の塊か、思想犯。多少の非合理的な判断だってするだろう。
このまま浮いて攻撃した方が勝利は確実だが、俺は真面目だからヴィランになりきる。
至近距離から放たれた炎を右の拳圧で吹っ飛ばし、左アッパーを顎に叩き付ければ轟は床に倒れて気を失った。
そして向こうを見れば個性を使う構えを見せた出久の足元を狭めた爆破で撃ち抜いて体勢を崩し、真上からの爆破で気絶させた。
『阿久間・爆豪ペア勝利!』
まあ、順当な所では有るんだけれど、確定しちゃったか。
かっちゃんとか絶対何かしても自分が止めるって感じに覚悟ガン決まった顔してるしさ……。
「あれが入試一位二位ペアの実力か。どっちも凄まじい」
「条件が悪かったけれど、推薦トップの轟さえ圧倒されてんじゃん」
音声は流れず映像だけだったものの一戦目の映像を見て騒ぐA組。
一方、シチュエーションを間違えたなと、核爆弾を人質に取った姿を見ながら思いつつオールマイトは冷や汗をダラダラ流す。
自分の後継者に向けられた貰い物という言葉。絶対に秘密のはずのOFAについての情報が漏れたかと焦っていた。
(師範には高校入学まで無個性だった事は知られているけれど、それで何か察したのか!?)
サタンには遅れて現れた個性だったと誤魔化したが、多分何かあると思われていたのだろう。
そしてサタンから孫に。孫からその友人に情報が伝わってしまった。
(これは二人にも伝えねばならない……のか?)
だが、確証はまだ存在しない。それで情報を明かすほど気楽に話せる内容ではないのだ。
緑谷少年には秘密を漏らさないように改めて注意しておかないと、と心に誓うオールマイト。
実際は、都市伝説レベルで語られるオールフォーワン、宿敵と関わりがあるのではないかと疑われているのだが、勘違いが連鎖していた。
因みに道場主としてサタンとブウの間であった会話だが……。
「ブウさん、門下生の個性とかの個人情報は喋ったら駄目ですからね」
「わかった。はなさないぞ」
だからサタンの孫にさえブウは話さない。オールマイトが無個性として入門して来た事を。
「オラァアアアアッ! 死に晒せぇえええええ!!」
「ヒーロー候補としてはどうかと思うっすけれど、爆豪気合い入ってるっすね」
ブウさんの体内の空間に響く爆音。図書室で個性のトレーニング理論の本を読んだかっちゃんによる、回復前提の全力爆破。
今までは爆音のせいで出来なかった全力使用が此処なら出来るからと行っているが、その表情には鬼気迫る物があった。
「何かあった時に絶対に自分が止めなくちゃならない相手が居るんだよ、かっちゃんには」
授業の後、呼び止められて宣戦布告されたと聞いている。
今は扱えていない貰い物の力だけれど、絶対に使いこなして勝つんだと。
貰い物の個性で疑惑は確定。でも俺は出久の中身は変わっていないみたいだから、相手が悪者だって知らない可能性を口にしたが、それでもかっちゃんは今の反応だ。
「関係無ぇ。裏社会の支配者が個性だけやって放置とか有り得ねえだろうが。……デクが何しようが俺が止める。テメェは周りに余計なこと言うんじゃねえぞ」
自分ので責任とでも思っているのかな? まあ、俺も友人の今後が気になるし夢を掴むチャンスを得た幼馴染を邪魔したくはない。
だから今回の一件を口にはしないけれど、俺も動くべき時には動くだけだ。
「よし! 乱戦やろう、乱戦」
俺達が今やるべきは少しでも強くなる事だけだな、うん!
「今日のヒーロー基礎学は俺と他二名による救助訓練を行う」
救助訓練か。俺の場合は体の形変えて狭い所に潜り込んだり物を浮かせたり回復したりとかが役割だよな。
そして移動の為にバスに乗る中、話題は出久の個性がオールマイトに似ているって話から他の皆の個性に移った。
「やっぱり派手さなら轟と爆豪と阿久間の三人だよな。阿久間とか特にやれる事多いし、爺さんが前のNo.1ヒーローだったんだろ?」
「それで注目は浴びるけれど、比較もされやすいからね。轟も将来エンデヴァーさんやサイドキックしてるお兄さんとの比較があるんじゃないの?」
「関係無ぇ。兄貴は勿論、糞親父も追い越すだけだ」
どうも父親との確執有りって所だな。家庭とヒーローの両立は難しいって所か。
「エンデヴァーは市民への態度でアンチが多いけれど、爆豪もやべえんじゃねえの? ドブ川煮詰めた性格だし」
「アンチなんざ関係有るか。実力と結果で認めさせりゃ良いだけだ。ヒーローは芸能人じゃねえんだぞ」
此処で怒鳴ったりする事ないのが覚悟決まってる証だよな。出久なんてそんな姿見て唖然としているし。
そして到着したのがUSJルーム。宇宙服姿の十三号先生が待っていてオールマイトが遅れている中、離れた場所にモヤが現れる。
「居ないじゃねえか、オールマイト。生徒を殺せば出て来るかな?」
全身に手をくっつけた悪意の塊が此方を見ていた。