チャンピオンの後継者   作:ケツアゴ

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ワープって敵が持ってて良い能力じゃねえよな

「しかし今年は豊作だって試験の時に話したけれど特にこの四人が凄まじいよな」

 

 職員室での雑談でプレゼントマイクが話題に出したのは吸扱、爆豪、夜嵐、轟の四名だ。

 

「その中で轟は自宅でやっているみたいだが、他の三名も頻繁に訓練施設を借りている他、互いに高め合っているみたいだしな」

 

 ヒーロー基礎学といった実技や個性把握テストでも抜きんでいる四人だが、特に組んでいる三名の成長曲線が凄まじい。

 

 授業の様子や監督した時に見た放課後の訓練からして格段に成長しているのだ。

 

「阿久間のコネで何度か知り合いのヒーローに指導して貰ったみたいだが、やっぱり回復だよな」

 

 疲労も負傷も癒してしまう規格外。ブウと結び付いた吸扱の個性因子が成長途中な事もあるが、全盛期のミスターサタンと一緒の時は病気で見えない目や欠損すら治せたのだから、今後の成長でそのレベルに達する可能性もある。

 

「でも回復があるからって無茶をし過ぎるのは問題よね」

 

 それは合理性を重視する相澤も悩んでいる事だ。訓練を手を抜いて行えとも言えず、かと言って放置も出来ない。

 

「あっ、オールマイト漸く来たわね。随分と事件を解決したみたいだけれど」

 

 そして遅れて来たオールマイトが校舎へと向かって行く。

 このままだと相澤に合理的じゃないと叱られる姿が頭に浮かんだ。

 

 

 

 

「全員一塊になって動くな!」

 

 俺達を庇う様に前に出る相澤先生。未だ状況を飲み込めないのがチラホラと。

 

 俺は直ぐに襲撃だって分かったが、それよりも厄介な事と不可解な事が。

 

 ブウさんを取り込んだ事で体内エネルギーの放出と自己強化が行える俺だが、故に靄みたいな奴と脳味噌丸出しの奴が妙だと気付く。

 

「……どうした?」

 

 何かあれば即座に動ける様に構えながら俺の様子気になったらしい。

 

「ワープ元らしいのと脳味噌丸出し、生きている人間特有の生命力が感じられない。まるで死体が動いているみたいだ」

 

 気になる事だが、今は追求する時じゃない。警報は鳴らず、通信も妨害されているらしい。

 何よりも相手はオールマイトが居る前提で来ているのは明らか。

 

 この前のマスゴミの騒ぎの時にカリキュラムを手に入れたか、もしくは……。

 

 出久の方を見れば焦っている様子だが、襲撃を知っていたって事は無さそうだが、一応俺は左手の指を幾つか切り落として袖の中に隠していた。

 

 

「生徒達は任せたぞ、十三号!」

 

 相澤先生が敵に向かって行く中、十三号先生の先導で俺達は避難しようとして靄みたいな奴が背後に現れた。

 

 

 

「我々はヴィラン連合。この度此方に入らせて頂いたのは平和の象徴であるオールマイトに息絶えて頂く為。その前に……」

 

 げ!? 何人か霧に包まれて何処かに消えた。こうなったらブウさんの出番……あれ? 

 

 ブウさんに呼び掛けても返事が無い。これは一日に三十分だけ訪れる睡眠時間!? こんな時に来るなんて……。

 

「しかしここに居ないと言う事は何か予定に変更があった模様ですね」

 

 

 やっぱりこいつの能力はワープか。十三号先生が構えるが、切島とかっちゃんが前に出て……うん? えっ目配せ?

 

「テメェが此処で俺達にやられる事は想定してなかったみたいだなあ!」

 

 悪の抑止力となった突き出した腕に相手の意識が向けられるその瞬間、閃光弾《スタングレネード》が炸裂した。

 

 かっちゃんの背中で後方には光が届かず、切島と相手のみが目を眩まされ、かっちゃんは切島の熊熊なの襟首を掴むと後方へと跳んだ。

 

 ヒュー。かっちゃんが囮を選ぶなんてね。これで相手の動きが止まり、十三号先生の個性によって広がった靄が指先のブラックホールと吸われていく。

 

 これで足止めオッケー。そして……。

 

「これは厄介……なぁ!?」

 

 先ほど切り離した指、それが膨らんで広がって靄のヴィランを包み込んだ。

 モゴモゴと蠢くも、それは収縮して、俺の体内に収まった。

 

「移動手段ゲット。……っても妙な感覚だ。肉体が元々生まれ持った個性じゃない?」

 

 ワープゲートらしき靄が小さくは出せるが、人間を運べる程じゃ無いし、それよりも……。

 

「こっちの方が扱い易いな……」

 

 出したのは靄じゃなくって雲? みたいな感じだ。俺の体も黒い霧じゃなくって白い雲みたいな物に包まれてるし。

 

「個性が二つ? いや、変質した感じか。でも、これで……」

 

 邪魔者は居ないし、脱出……。

 

 

 

 

『本当に厄介だなぁ。流石はチャンピオンの孫か』

 

 声が響いた。有象無象のヴィランの一人。その口から泥が溢れ出す。それと同時に思わず身構えてしまう程の威圧感。

 

 おいおい、チンピラの背後に大物が居たみたいだな、おい。

 

 先生達もその威圧感を感じ、チンピラ連中が固まる中、全身手だらけの男が叫んだ。

 

「何の用だよ、先生!? 今回は俺に任せてくれるって話だっただろ! 糞っ! 糞糞糞! 黒霧が奪われて全部台無しだ!」

 

『落ち着くんだ、弔。今回は僕も想定が甘かった。此処は君だけでも帰るんだ』

 

「仕方無ぇ。だが、その前に……暴れ続けろ、脳無!」

 

 チンピラの口から更に出た泥が手だらけの男を飲み込む瞬間、叫びと共に脳無と呼ばれた奴が動き出した。

 

 文字通りの暴走。手近な所にいたヴィランを一撃で叩き潰し、逃げ出した奴の前に回り込んで蹴り飛ばせば天井へと向かって行く。

 

「おい、吸扱。あの化け物取り込めるか?」

 

「ワープゲート一人でキャパオーバー。こっちはこっちで逃す訳にはいかないからね」

 

 ロボットだけなら良いが、個性因子の影響なのか人間を取り込める上限は決まっている。

 相澤先生と合流しつつ、黒霧? を個性封じた状態にして、あのパワーの脳無の動きを妨害して吸収か。

 

 少しばかり厄介だな……。

 

 理性も無く暴れているだけか、今はこっちに来ないけれど、飛ばされた奴がUFJ内に居た場合、戻って来たり脳無が向かえば危ない。

 

 だから相澤先生は捕縛布を巻き付けるけれど、簡単に引き千切られた。

 

「おいおい、どんなパワーだよ」

 

 オールマイトを殺しに来たって言ってたが、あれはオールマイト級のパワーを素で持ってんのか!?

 

 飯田は無事に脱出して、これで救援は呼べる。だがこのあの調子で暴れてるのを相澤先生と十三号先生だけで何とかなるのか?

 

「君達は避難を……」

 

 脳無の視線が水難災害ゾーンに向く。遠目に見えるのは水柱。

 暴れ続けるという命令のターゲットを見定めたらしい。

 

「先生! これに!」

 

 さっき吸収したばかりだが個性は使える。乗れる雲を作り出して十三号先生を乗せると俺の飛行も合わせて加速する。

 

 脳無が向こうからやって来た出久達に向かって腕を振り上げた瞬間、間一髪ブラックホールでの妨害が間に合ったけれど……相澤先生が何故か呆然としているんだが。

 

 

 

 白雲って誰だろう?

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