俺たちの挑戦は、まだ終わっていなかった。
点差は開いている。
相手は全国屈指の強豪で、俺たちとは明らかに実力が違う。
それでもここで諦めてしまえば何も残らない。
せっかく掴んだチャンスを自分から手放すつもりはなかった。
「まだだ」
俺はボールを見つめながら、もう一度前を向いた。
「まだ終わってない!」
その声に、少林たちが顔を上げる。
さっきまで俯いていた壁山も、拳を握りしめていた。
「そうっす……俺たちはまだ負けてないっす!」
「そうでヤンス! 最後までやってみるでヤンス!」
「うん! まだ諦めるのは早いよ!」
少林と宍戸も頷く。
俺たちはもう一度、フィールドへと視線を向けた。
だけど問題はどうやって点を取るかだった。
これまで何度仕掛けても飛鷹の守備を突破することができなかった。
正面から突破しようとしてもあの「真空魔」に止められてしまう。
なら同じことを繰り返しても意味がない。
俺自身が何かを変えなければならない。
そのとき、ふと頭の中に浮かんだ。
俺にも武器が必要だ。
「俺も、必殺技を使う」
口にした瞬間、自分でも驚いた。
これまで何度も練習してきた。
頭の中でイメージして何度もボールを蹴ってきた。
けれど実戦で成功させたことは一度もない。
それでも今はやるしかない。
俺はボールを受け取ると、一気に前へ走り出した。
「来るぞ!」
飛鷹がこちらへ向かってくる。
その動きには一切の迷いがない。
俺は右足を大きく引いた。
「イナズマ……スピア!」
蹴り出したボールが、鋭い回転を描きながら飛んでいく。
雷のような光をまとったボールが、まるで槍のようにゴールへ向かって突き進んだ。
「真空魔!」
飛鷹が腕を振り抜く。
ボールの前に強烈な風が巻き起こり、イナズマスピアの軌道が大きく逸らされる。
ボールはゴールの横を抜け、そのままタッチラインの外へ転がっていった。
「くっ……!」
やっぱり、まだ届かない。
俺は悔しさを噛み締めながら、それでも顔を上げた。
今のシュートで分かったことがある。
イナズマスピアは通用しない技じゃない。
ただ俺一人の力では飛鷹を突破できないだけだ。
だったらみんなの力を借りればいい。
「みんな、聞いてくれ!」
俺はすぐに仲間を集めた。
「少林は飛鷹さんを引きつけてくれ。宍戸はその隙を作って、栗松は一気に前へ出る。壁山はゴールを守りながら、ボールを奪ったらすぐに前へ送ってくれ!」
「分かった!」
「任せるでヤンス!」
「やってみるっす!」
四人が力強く頷く。
俺はもう一度、前を向いた。
「そして最後は、俺が決める」
作戦は単純だった。
全員で少しずつ相手の守備を崩し、その一瞬に俺がシュートを撃つ。
再び試合が始まる。
相手からボールを奪った壁山がすぐさま前へ蹴り出した。
「行くっす!」
ボールは栗松へ渡る。
「ダッシュアクセル!」
栗松が一気に駆け上がる。
雷門の選手が追いかけるが、栗松は必死に走り続けた。
「少林!」
「任せて!」
栗松からボールを受け取った少林が、相手の前へ飛び出す。
「竜巻旋風!」
身体を回転させながら、相手の動きを崩していく。
そこへ宍戸が走り込んだ。
「フェイクボール!」
ボールが一瞬だけ別方向へ動き、相手の視線がそちらへ向く。
その瞬間だった。
俺は走り出していた。
「今だ!」
少林がボールを俺へ送る。
前方には飛鷹がいる。
さっきと同じだ。
だけど今度は違う。
俺一人じゃない。
みんなが作ってくれたこの一瞬がある。
「行くぞ!」
俺はボールを強く蹴り出した。
「イナズマスピア!」
雷光をまとったボールが一直線に飛んでいく。
飛鷹が反応し、すぐに「真空魔」を繰り出した。
「真空魔!」
強烈な風がイナズマスピアへ襲いかかる。
だが、今度は止まらなかった。
ボールは風を切り裂きながら、さらに前へ進んでいく。
「何っ……!」
飛鷹の目が見開かれる。
イナズマスピアは「真空魔」を突破し、そのままゴールへ向かって突き進んだ。
残るのは、ただ一人。
ゴールを守る円堂だった。
「来い!」
円堂が構える。
俺のシュートが円堂へ迫る。
「マジン・ザ・ハンド!」
円堂の背後から巨大な手が現れ、迫り来るイナズマスピアを正面から受け止めた。
「ぐっ……!」
巨大な手とイナズマスピアが激しくぶつかり合う。
だが、最後に押し切ったのは円堂だった。
俺のシュートはマジン・ザ・ハンドによって完全に止められる。
その直後、試合終了を告げるホイッスルがグラウンドに響き渡った。
ピィィィィッ!
「試合終了!」
俺はその場に立ち尽くしながら、ゆっくりと息を吐いた。
負けた。
結局、最後までゴールを奪うことはできなかった。
それでも不思議と悔しさだけではなかった。
俺たちは何もできなかったわけじゃない。
最初は一方的に押し込まれていた。
けれど最後には全員で作戦を考え、力を合わせて飛鷹の「真空魔」を突破し、円堂のところまでボールを運ぶことができた。
そして何より俺には「イナズマスピア」という武器がある。
「……次は、絶対に止めさせない」
俺がそう呟くと、円堂がこちらへ歩いてきた。
「いいシュートだったぞ!」
「……ありがとう」
「でも、まだまだ強くなれる!」
円堂は笑いながら拳を突き出した。
「次にやるときは、もっとすごいシュートを撃ってこいよ!」
俺はその拳を見つめ、それから自分の拳を軽くぶつけた。
「ああ。次は絶対に決める」
こうして、俺たち五人の入部選考試合は終わった。
結果は敗北。
だけどこの試合で俺たちは、自分たちのサッカーを見つけることができた。
そして俺自身もこれから戦っていくための最初の武器を手に入れた。
――イナズマスピア。
この技をもっと強くする。
そう心に決めながら俺は雷門中サッカー部のグラウンドを見つめていた。
主人公設定
名前 光井紫電
本人は気づいていないが名前の通り、光や電気の技を習得しやすい
風属性 MF