「おお、ゆうしゃよ!しんでしまうとはなさけな、、くない!?」~俺にしか使えない伝説の禁術【死者蘇生】と俺しか使わない非道の禁術【自爆】を使って禁忌の刻印を持ちし勇者が無双する。 作:石尾ニシン
「此度の十六魔天ヴァリウス撃破見事であった。辺境の出身にもかかわらず、生い立ちをものともせず淡々と責務を果たすその姿勢まことに大儀である。」
目の前の赤い色のローブに値の張りそうな革でできたコートを着込む王冠をつけた丸々と太った肉塊が俺の行動をほめたたえる。この肉塊の名前は何だっただろうか?まあどうでもいいか。
それにしても、辺境の出身生い立ちをものともせず?思ってもいない事をよくもまあここまでつらつらと語れるものだ、否騙れるものだと俺は逆に感心してしまう。最初に俺を見た時の家畜でも見るかのようなお前の目を俺は一生忘れることはない。
しかし俺は自分自身の中にある勇者のような物の皮をかぶり目の前の肉塊に返答する。
「私のような凡愚に対しありがたきお言葉、、、陛下のようなお方にそのようなお言葉をもらうために私は勇者になったのやもしれません。誠に感動しています。」
よくもまあこんな嘘を言えるものだと俺自身が自分に感動している。そういう意味では嘘ではないのかもしれない。
「お前のような武人は我が国の誇りだ」
埃かこの俺に相応しいな。武人ね、、、
「は!」
ゆったりと立ち上がった俺は、赤と金色で驕奢に飾り付けられた王室を後にする。王室の大きな扉が閉まる。
その裏側にいたのは俺の雇い主、否この言葉では足りない。俺の飼い主である大賢者ガリレイ・アナスタシアだった。彼女はその豊満な胸と藍色のインナーカラーが入った黒髪を揺らしながらにこりとした笑顔で俺の事を見つめる。
「名演技だったよ、君には助演男優賞をあげたいくらいさ。私の可愛い可愛い勇者様。」
廊下を歩きながらアナスタシアは俺に向かって話しかける。
「俺は、、、」
「僕は!」
アナスタシアが俺の言葉を遮る。
「俺は、、、」
「僕ちゃんは!」
またも遮る。逆にそれは礼を掻いているだろうと思ったがツッコまないでおいた。
「僕は」
アナスタシアの顔を見つめる笑っている。どうやら満足そうだ。面倒な人だなと思う。これでも一応恩人なのだが、、、
「主演男優賞じゃないんですね?」
「プークスクス、そんななりの奴が主人公の話見たことないって!」
そういって彼女は俺に刻まれた黒色の鎖を模したタトウーのような禁術の刻印を見て笑う。ムカつく。
少し歩くと、王宮内の中庭に出た。今日は中秋の名月という事もあり月の光が俺にとっては眩しいくらいだ。そこにある白色のベンチに俺たちは腰を掛ける。
「それで~?どうすんの?」
アナスタシアさんはゆったりと俺に語り掛ける。
「どうするって何をっすか?」
「ラルフ君はさ、一応勇者なんでしょ、魔王倒しに行くの?」
「まあそうっすね、たぶん倒しに行くんじゃないっすか」
自分で言っていると妙に他人事のようで実感がわかない。百年以上続く人魔大戦においていまだ傷一つついていないとされる現代最強、生きる伝説。魔王ユリウス。そんなものを倒そうとするなどあの頃の俺が聞けば卒倒してしまうような戯言だ。
「あっそ」
この人はこの人で軽いなと思ってしまう。自分の奴隷の事を少しは心配しろと突っ込みたくなってしまう。
「じゃあこれから魔王を倒す旅に出るってこと?」
「まあ、はい」
「それならその旅路の中で立ち寄ってほしい場所があるんだけどさ、、、」
「はあ?」
嫌な予感がする。この人がこういう事を言ってくる場合大抵がろくなことではない。
「雪の町スノーメイルの氷の女王って知ってる?」
「まあ噂程度には、、、」
15年ほど前に一夜にして雪の町スノーメイルをその町に住む約200人とともに氷漬けにしたとされる妖精族と人間族のハーフ。いわゆる俺と同じ禁忌と呼ばれている女。しかし彼女が何かそれ以外の厄災を起こした便りを俺は聞いたことがない。なんで今その話になるんだ?
「じゃあ話が速いや、その町ちょうど魔王城の方向にあるし通り道だから、スノーメイルによってその子と会って来てよ!」
「は?なんで僕が」
「魔王を倒すのなら仲間だって必要でしょ!それにラルフ君友達少ないじゃん、同じ禁忌なら友達になれるかもよ!」
「まさかその氷の禁忌を仲間にして来いと?」
アナスタシアのめちゃくちゃな発言に俺は困惑していた。毎度のことながら何なんだこの人は、、、
「そうそう、それに、、、」
「それに?」
「これは女の勘なんだけれどね、、、もしかしたら彼女が禁忌と呼ばれている理由は君に近いものなのかもしれない。そう考えたら少し興が湧かないかい?」
俺は少し考えこむように俯く。そんな俺の耳元にアナスタシアは自身の口元を寄せ、ぺろりと俺の耳たぶを舐めゆったりと血が出ない程度にかみつく。ゾワリという感触が俺の耳から体全体に広がる。
「じゃあこれは命令だ。あの日以来君は私の物でしょ、それ以外に何か理由がいる?」
そういったアナスタシアは笑顔だった。
「最悪だ」
俺は独り言ちるみたいに言った。
「あとあの話は考えてくれた?」
「今のところは別に、、、」
「そう、せっかく通り道なのに、、、」
そういって立ち去るアナスタシアさんの背中が少し寂しく見えたのは気のせいかもしれない。否、気のせいだと俺は決めた。