「おお、ゆうしゃよ!しんでしまうとはなさけな、、くない!?」~俺にしか使えない伝説の禁術【死者蘇生】と俺しか使わない非道の禁術【自爆】を使って禁忌の刻印を持ちし勇者が無双する。 作:石尾ニシン
雪の町スノーメイルは王都から馬を使わずとも約3日ほどでつく。この街の石レンガを基調として造られた路次や家屋が初夏に差し掛かろかという太陽の光を反射して煌めている。否、普通石レンガは太陽の光で煌めいたりはしない。
「氷の女王か、、、」
俺はガラス張りのようになったスノーメイルの町を眺めながら独り言ちる。
スノーメイルの近辺は確かに積雪の多い地域として有名だが、今の季節は初夏。おそらく気温も20度を超えている。にもかかわらずこの街を覆い尽くした氷は解けることを知らない。
「存外楽しめそうだな、、、」
俺はにやりと笑った。
「光の導きを素に汝に魔導の行く末を示し給え」
俺は魔力探知の呪文を唱えた。すると、ひときわ大きな魔力反応がこの街にあることが分かる。否一つだけとも言えた。どんなに惰弱であってもどんなに脆弱であっても生きている生物には皆等しく魔力反応はあるはずだから、一つしかないという事はおそらく、、、
◇◇◇
町民二百人ほどだった町にしては少し豪奢な二階建ての屋敷の前に俺は来ていた。ダークオークとこの街に無理やり合わせるかのような石レンガで作られたその家が妙にミスマッチで少し気持ちの悪い家だなと感じた。気持ちが悪いのは外見だけではない。途方もなく冷たい過冷却気味の魔力が俺の魔力探知の肌感覚に突き刺さる。
「俺の魔力探知から隠れる気もないのか?というよりかは、、、隠れるすべを知らんのか?雑だな」
俺はその突き刺すような魔力に関してそのような感情を抱いた。
氷に包まれた玄関の驕奢な黒色の木製のドアを俺はノックも呼びかけもせずに蹴破る。
「パリん」
木を蹴ったとは思えない音が鳴る。
「ガサゴソガサゴソ」
俺が屋敷の中に入っていくと、何かがうごめくような音が二階から聞こえる。肌を劈く氷のような魔力反応を頼りに俺はその音の鳴る方へと向かう。
そこには少しも古びてはいない、凍り付いた玄関と同じような扉があった。その奥から声が聞こえる。か細い声だ。
「入ってきちゃダメ!絶対に入ってきてはダメ」
それは今にも溶けてしまう薄氷のような女の声だった。
俺はそんな女の声を無視してそのドアを蹴破る。そこにいたのはプルプルと小動物のように震える一人の少女と二つの人のような物がすっぽりと入った氷だ。齢は俺と同じくらいだろうか?自身で踏みつけにできるほど伸ばした白色の雪のような髪の毛と白のワンピースを着たその少女はぱっと見はいたって普通だ。
しかしおかしなところが二つあった。一つは目隠しをしている。目隠しといっても本格的な物ではなくありつけの布をそのまま目に巻いたような粗末なもの。俺からすれば、目隠しをしているというよりかは目を不躾に隠しているという印象だ。そして、、、
「禁忌の魔術刻印、、、その氷晶の象りは、、、この街を氷漬けにしたのはお前か?」
氷晶の魔術刻印。その少女にあったのは禁忌とされている魔術技術である魔術刻印。氷の結晶のような形をした青色のタトウーが彼女の白絹のような肌には刻まれている。
「あなたはまた私を殺しに来たの?」
その少女はひどくおびえている。あの魔力反応から鑑みてもこいつはおそらくかなり強い。にもかかわらず怯えている。それは俺に怯えているわけではないことはわかった。自分の力に怯えているのだ。この少女は自身の強さを憂いているのだ。目隠しをしている理由に関しても今の反応を見て何となく察しがついた。
「殺しに来たと言ったらどうする?」
俺は強い口調を崩さずに聞いた。
「それは、、、あなたも凍ってしまう、、、」
何かにおびえるみたいに、何か冷たいものでも浴びせられたみたいに少女は言葉を発しながらガクガクと震えている。
「お前は嘘をついているな、、、否隠していると言ったほうが近いか?そんなに人の目を気にしたところでお前は何も隠せてなどいないさ」
「それってどういう?」
俺は彼女の後ろにある、二つの人型の氷にゆったりと近づく。よくよく見るとその一つは妖精族。その一つは人間の男だった。前情報の通り、こいつらはおそらくこいつの、、、
「こいつらはもう死んでいるぞ。断じて凍っているだけではない、、、」
「え!?」
その少女は震えを止め、俺の事を見上げる。
「何を言っているの?私のパパとママ。死んでないよ、、、だってそんなに綺麗に残っているじゃない?」
「綺麗に残ってはいる。だがこの鮮紅色の死斑。まあ分かりやすく言うとこの赤色の斑点を見てみろ、、、これは人間が凍死したときにできる物だ。」
俺はその少女がパパと呼んだ遺体の赤い部分を指さして言った。
「そんなの嘘だよ、、、嘘つかないでよ、、、」
錯乱したようにその少女は慌てふためく。キンキンという声が氷で包まれた部屋に響く。
「嘘ではないさ、、、お前も薄々わかっていたことだろう?15年も前に凍らせた人間が生きているはずがないと、、、」
俺は死刑宣告でもするみたいに、その少女に向かって言い放った。
「嘘だ、、、嘘だよ!!!」
「嘘じゃないさ俺は凍死した経験もある。」
「え?本当に何言ってるの?あなた」
そういった俺はゆったりとその少女に近づいていく。
「やめてこないで、じゃないとあなたまでも、、、」
自分がこの街の人間を皆殺しにしたことを、やはりわかっているのではないかと言いそうになったがこれ以上錯乱されても面倒なので、無視してその少女に近づいた。
その少女の顔に手を近づける。少し暴れているが、魔力はともかくその少女の力は大したことがなかった。
「やめて何するの?本当にやめて!」
その少女は悲痛に叫んだ。しかし俺はその少女の目隠しをゆったりとはがす。
その瞬間、俺の顔面とその少女の雪解け水のような水色の瞳がかち合う。すると一瞬で俺の顔面が凍り付く。脳も眼球も鼻も口もそのすべてが凍り付く。そして、、、
「ポトリ、、、」
頭部だけが一瞬で凍り付いたために俺の顔はまるで首から滑り落ちるように体と切り離されていく。血がゆったりと俺の首元から流れ落ちる。
「ハ!」
「キャーッ!!!!!」
その少女はヒステリックに彼女の小さな体からは信じられないほどの大声を上げた。
彼女が叫び終えた後、俺の体の禁術「死者蘇生」の鎖のような魔術刻印が緑色に光り始める。すると俺の切り離された体はゆったりと逆再生でもされるみたいに戻っていく。
顔が戻った俺は首の骨をぽきぽきと鳴らした。その少女は相も変わらずそんな俺を見ないようにしながら怯えている。
「お前がやったのはこれと同じことだ。」
震えている少女は、ゆったりと絞り出すように声を出す。
「なんで?」
「んあ?」
「なんであなたは生きているの?」
「俺を凍死させたくらいで俺に勝った気になるな、お前の物差しで俺を図るな。俺はお前の脆弱な両親とは違う。」
「別に勝ったとか負けたとじゃないじゃん、、、」
怯える少女を見て、俺はゆったりと息を吸った。
「確かスノーメイルが氷漬けになったのは15年前だな?」
「は、はい、、、」
その時から、氷の女王による被害報告はない。
「お前はそのとき何歳だ?」
「4歳です」
どうやら俺より年上らしい、あまり関係はないが、、、
「お前に殺意はあったのか?」
「あるわけありません、、、」
俺はその少女の両親を見つめながら言った。
「ならば勘違いするな、その両親が死んだのはお前が悪いんじゃない、お前の両親が弱かっただけの話だ。強いお前に適合しなかっただけだ。環境変化についていけなかった絶滅動物と同じ。お前に悪意がないのなら、お前は自然と同じようなものだろう。お前は自然の摂理だ。それを自分が殺したから自分が悪いなど思い上がりも甚だしい。恥を知れ。」
そのように俺に言われた、少女はいつの間にか目隠しをつけなおしている。その少女を見つめていると、目元から飴玉のような氷の雫が二粒ほど床に落ちた。
「なぜ啼くのだ?」
俺は不躾にそう聞いた。
「だってあなたがあまりに、、、」
その少女は何かを言いたそうにしているが何も言ってこない。