キヴォトスの終末装置ってマジですか!? 作:とっとこ馬鹿野郎ッ!!
ここからが本番―――――――
『そ、そんな……どういうこと!? 答えてよ! オベロン!!』
通信越しに、ユウカがオベロンに話しかける。
その声は、悲鳴のように、泣き声のように、震えていた。
「ん、この声は……ユウカか。ごめんね、ユウカ。騙すつもりなんてなかったんだ。本当に済まない。もし、君が止めてほしいと言うなら、全て無かったことにするとも!」
『え? え? お、オベロン? 本当に? ………え?』
「………私の生徒を、騙さないでくれないかな」
「というと?」
「大嘘つきのオベロンだから」
「………くくっ…………は、ハハハハハ!! そうだね、その通りだ!!」
手を叩いて、彼は嗤う。
「分かっているじゃないか、嬉しいよ。先生……確かに俺は嘘つきだ。何ひとつ、真実を語らなかった! でも、大真面目ではあった! 真剣に、キヴォトスを滅すために働いた。
何より――――君を、先生を誰よりも信じ、頼りにした」
さっきの大笑いとは一転し、真剣な口調で彼は語る。
「というのもね。普通、キヴォトスを滅ぼせ、なんて言われても途方に暮れるだろう?
俺もそうだったんだ。しかも、最初は手元に何も無いところからのスタートだったし。
現代社会で、戸籍ナシ、家もナシ、ついでに職もナシで一文無し。
そんなとこから一発逆転、なんて……どこの成功者の伝記だよって話さ」
まるで世間話でもするように、彼は楽しそうに話を続けた。
「キヴォトスを滅ぼすには、あらゆるものが必要だった。
あらゆる欲望が、あらゆる破滅の因子が。いつだってぶっつけ本番。苦労したよ。
そして、シャーレで君を見た瞬間、確信した。
コイツは本物のバカだ。最高の役者だ。必ずや、俺の期待に答えてくれる!
何もかもを綺麗に終わらせてくれる、最悪にして最高の観客だと、心の底から信じたのさ!」
「………どうして、そんなにもキヴォトスを滅ぼしたいの?」
「え? そんなの、気持ち悪いからに決まってるでしょ。君も、台所にゴキブリが現れたら、迷わずに殺すだろう? それと同じさ。…………ま、俺は目に映るもの全てが気持ち悪いんだけどね」
自嘲するように、彼はそう言った。
生徒たちは、余りの衝撃に、固まったままだ。
誰も、目の前の現実を受け止め切れていない。
「さて、話はお終い。君たちもしっかり殺しておかないとね」
『!! 退避……退避してください!! 先生!!』
リンの声が聞こえる。
でも、もう遅い。
奈落の虫が、世界の終わりの象徴が、落ちてくる。
「夜のとばり、朝のひばり………腐るような、夢の終わり。黄昏を喰らえ!」
そんな、オベロンの台詞と共に、私の意識は――――暗い、闇の底へと、堕ちていった。
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そして私は、夢を見る。
生まれた時、僕は呼吸すら出来なかった。
キヴォトスの何処かにある秋の森。
忘れられた神秘、行き場のない神秘、迫害された神秘が寄り集まって――――――――
為す術なく死んでいく、秋の森。
もうこれ以上に行き場はなく、忘れられたまま朽ち果てていく者の群れ。
そのただ中で、蛹は発生した。
蛹は生徒たちと似た姿をしていたが、実際は生徒などではなく、キヴォトスの先住民たちの怨念が生み出した終末装置だ。
『加害者のくせに、滅ぼした者たちすら忘れて、青春を過ごすものたちが許せない!』
『この世界に生きるもの全て、この世界のすべての神秘を滅ぼしたい!』
そんな、呪いと怨念にまみれた『生物への嫌悪感』という吐瀉物から生まれた、一匹の虫。
でも、吐瀉物から生まれた蛆のため、その誕生は凄惨なものだった。
そんな蛹が憐れに見え、またとてもキレイなので、自分たちの王様だと思ったのだろう。
秋の森の神秘たちは蛹のまわりに集まって、蛹がひとりで立ち上がるまで見守った。
「ハァーー………気持ち悪かった」
立ち上がったソレは、もう蛹ではない。
秋の森の神秘たちが待ち望んだ、御伽噺の理想の王様。
有名で天才でちょっとだけ性質が悪い作家の書いた、妖精王の姿で生まれたのだ。
オベロンという神秘は、忘れられた神々の神性のひとつ。
嘘で出来た大嘘つき。
だから、言うことすべて、やることすべてが捻じ曲がる。
愛している、は愛していない。
愛していない、は好きでもない。
それがオベロンの特性なのだ。
そういう形で生まれたのだから、本人にもどうしようもない。
妖精王はそうして誕生した。
キヴォトスのことを何も知らなかった彼は、念入りにキヴォトスのことを調べる。
この世界に蔓延る、あらゆる滅びの因子を利用するために。
生まれた時、俺は呼吸すら出来なかった。
指先ひとつ満足に生きていなかった。
全身が腐りきった、蛹の流体にすぎなかった。
その中で――――――――
ゴミ同然の虫どもが蠢く海が、俺に見える世界だった。
名もなき神の断末魔からオベロンは生まれた。
オベロンはキヴォトスのあらゆる生き物を愛していない。
キヴォトスを滅ぼす、という大仰な責務も、
「それ、俺がしなくちゃいけないの?」と腐っている。
「そうは言っても、生まれたからにはやるしかない。………ああ、まだ体が動かない…………
呼吸をするだけで死にそうになる。指先を動かすだけで飛びそうになる。なにより――――――」
「生きているだけで、吐き気がする」
蛹であるオベロンは、目を閉じる機能がなかった。
だから、彼らから目を逸らすことが出来なかった。
うじゃうじゃ。うじゃうじゃ。うじゃうじゃと。
半年の間、オベロンは彼らを見続けた。
オベロンはドロドロの汚濁の中から生まれた。
蛹の中もドロドロに溶けた流体である。
目に見えていたものも、ドロドロの光景だった。
流れものの弱者が、何の展望もなく希望に縋る光景は気持ち悪い。
他人に騙され続けて痩せ細った弱者に頼りにされるのは気持ち悪い。
ウジャウジャと蠢くだけのものに王様扱いされるのも気持ち悪い。
なにより、そんなものにたかられる、最底辺の自分が気持ち悪い。
蟻にたかられる蝶の死骸と同じ。ゴミ捨て場の底に起きた、この世の底辺の出来事。
――――――と、俺のそんな経緯はともかくとして。
さぁ、とっとと目を覚ませよ先生。
大人の責任ってやつを、見せてくれんだろう?
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唐突に、目が覚める。
ほんの少しのうたた寝から目覚めたような、十時間以上の眠りから目覚めたような、どちらともとれない不思議な感覚。
周囲は暗い、何処までも果てのない闇に包まれている。
鈍った思考が覚醒し、生徒たちを探す。
「あ? 起きたの? 運が悪いね……このまま眠っていた方が楽だったのに。
あ、それとも二度寝するかい? 好きだろう? 二度寝」
「………オベロン」
「なんだい?」
「皆は?」
「殺したよ」
あっけらかんと、そう言い放つ。
「キヴォトス人っていっても、眠っているなら殺すのは簡単さ。―――――こうして、首に指をかけて……ゆっくりと締め付けるだけでいい」
私の首に指をあてながら、オベロンは話す。
心が怒りで支配される。
――――――――大人のカードを使う。
「おっと、それは止めた方がいい。これ、分かるだろう?」
大人のカードを使用する直前、オベロンが取り出したものに目を奪われる。
それは、今私が手に持っているものと同じ――――――――否
「それは、プレナパテスの…………」
「その通り! あちらの世界の先生が持っていたものさ。それを拝借した。返すつもりもなければ、返す相手ももういないけどね。これは使用者の
大人のカードを使っても、オベロンのものに打ち消されるだろう。
大人のカードでは、この状況を覆すことは出来ない。
「ああ、そうだ。外の様子を見るかい? 君も気になるだろう?
―――――――世界の終わる様」
パチン、と指を鳴らすとホログラムのようなものが浮かんでくる。
そこに映っていたのは――――――――
「なに……これ…………?」
「言っただろう? 世界の終わりさ」
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先生が目覚めるよりも、少し前。
オペレーター室は、混乱に包まれていた。
「どういうことですか!? なんで、オベロンさんが!?」
「先生! 先生!?」
「通信途絶、映像も切れました」
「先生は!? 先生は無事なんですか!?」
そして、砂漠周辺。
集まったゲヘナとトリニティの生徒たちも――――――。
「な、何で……オベロンが………」
「ねぇ、ナギちゃん………嘘だよね? オベロンが、元凶なんて。嘘、なんだよね?」
「………分かり、ません。オベロンさんが、セイアさんを………?」
―――――――だが、絶望しない者もいる。
「絶望している場合ですか? 私たちは、後方支援を……即ち、先生たちの背中を任せられた身。
そんな私たちが手を止めて、どうするのです?」
ヒマリが、オペレーターたちを鼓舞する。
「狼狽えている場合か!? ゲヘナの風紀委員とは、そんなに貧弱なものだったか!?
トリニティの鳥頭共も、顔を下げていていいのか!? そもそも、通信で聞こえた声が本当にオベロン本人のものかも分からんだろうが!? さっさと立ち上がれ、馬鹿共がァ!!!」
マコトが、二校の生徒たちを激励する。
まだ、絶望するには早いのだと。
先生を助けるのは、キヴォトスを守るのは、自分たちしかいないのだと。
――――――――だが現実は非情に、事態は更なる悪化を迎える。
「な!? さらに、高エネルギー反応を確認!!」
「ドローンによる偵察を指示してください。カメラ映像で確認を…………」
映像が映し出される。
砂漠に広がる、無数の異形。
黒く、不定形な怪物。
本能が恐怖する、理性が嫌悪する、その呪いの群れを……オベロンはこう呼称する―――――
――――――――「モース」と。
「これは………一体!?………いえ、反応した三つのエネルギーは…………!?」
映像に姿を晒す、三体の怪物。
遥か遠き妖精國、それを滅ぼす厄災の因子。
黒く強大なる獣。赤雷を迸らせる、巨大な狗。
無数の
生徒たちの殲滅を掲げて。
遠き世界の、誇り高き騎士の姿は、遥かな過去。
偽りたる彼女は最早、全てを喰らう一匹の獣。
獣の厄災
速い、疾い、鋼鉄の龍。
空を舞い、炎をまき散らし、あらゆるものを焼き払う。
青春の焼却を掲げて。
遠き世界の、美しい騎士の姿は、遥かな過去。
偽りたる彼女は最早、全てを焼く恐ろしき炎。
炎の厄災
大きく、巨きく、恐ろしい呪いの塊。
夥しい白い獣毛で覆われた、山のような巨体は呪いを放つ。
世界の終焉を掲げて。
遠き世界の、心優しき騎士の姿は、遥かな過去。
偽りたる彼女は最早、全てを殺す悍ましき呪い。
呪いの厄災
「これ…………は…………」
絶句する。本能が理解する……こんなものに勝てるはずが無いのだと。
自分たちに残された道は、ただ滅びが完遂されるまで、呆然と立ち尽くすのみなのだと。
―――――――だが、それでも。
「いえ、まだ…………!!」
――――――――まだだ、と叫ぶ誰かがいる。
「諦めてはいけません!!」
「でも、これは………もう」
「私が必ず、突破口を作り出します!!
――――――この、超天才病弱美少女ハッカーに不可能はありません!!」
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私が見たものは、世界の終わりなどでは無かった。
「あれ、まだ抗ってる。意味なんてないのに………健気なことだ」
砂漠を覆いつくす怪物と戦う生徒たち。
自分よりも遥かに大きい化け物に立ち向かう生徒たち。
必死に、必死に、明日を目指す生徒たち。
――――――ああ、なんて誇らしい。
状況は絶望的。
それでも諦めない、彼女たちの姿に………私は胸をうたれていた。
「………私も、負けていられないね」
私の心に火がついた。
――――――――第二章「少女たちよ、希望を唄え」開幕。
ここからは、反撃の時間だよ! オベロン!!
先生の性別どちらがいいですか?(プレ先は女性で決定済み)
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男
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女
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興味ないね(どちらでも良し)