【読切】ポケットモンスター 白夜・極夜   作:amorphous

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拙稿ですがよろしくお願いします。長くなり一つにまとめられなかったので前後編で分けました。


〜後編〜

 タカヤとシャンバルによる代表戦は1勝1敗の互角の闘いになっていた。

 しかし、三戦目。ここで大きく勝負の流れが動くことになる。

 

「次はフライゴン、頼んだ」

「マルマイン、やるネ!」

 

 タカヤはフライゴンを出し、シャンバルはマルマインを出した。両者のポケモンは真剣な眼差しで向かい合う。

 このバトルは一戦、一戦、ポケモンを変えて行われるので相手が次にどんなポケモンを出してくるのかおおよその勘に頼るしかない。それがこの地方の公式戦ルールの見どころであり、厄介なところだ。

 二戦目のシャンバルのように事前にフィールドに技を仕込んでいればある程度、相手の出方を予想することは可能だ。

 しかし、今回のように偶然起こってしまう事故もある。

 

(読み間違えたアル。……ま、さして問題はないネ)

 

 でんきタイプのマルマインはじめんタイプを持っているフライゴンとは相性が悪い。

 しかしシャンバルは平常心を保つ。ポーカーフェイスを崩してはみすみす相手にこちらが不利だということを教えているようなものだ。

 幸いマルマインのすばやさは一級品だ。フライゴンより早く手を打てる。

 

『三戦目、バトル開始です‼︎』

 

 ここでシャンバルはマルマインのすばやさを生かして己の弱点を無くす戦法に出た。

 フライゴンのタイプ一致のじめん技をくらえばマルマインは一発KOもありえる。それを防ぐ。

 

「フライゴンっ。“じしん”だッッ‼︎」

「マルマイン! “でんじふゆう”!」

 

 フライゴンが全身を使って地面に衝撃波を発生させた。地面が揺れて大きなエネルギーとなって相手に襲いかかる。

 しかしマルマインは自身を浮かせることで“じしん”攻撃から回避した。

 

「うおっと‼︎ じめん対策に覚えさせていたのかよッ。うっすらそう思ったがやっぱそうきたかぁ……!」

「ポケモンの交代が出来ないルール上、苦手なタイプの対策をするのは当然のことネ」

 

『さすがシャンバル選手‼︎ でんきタイプであるマルマインが宙に浮くことで苦手なじめん技を回避しました!』

 

 これでマルマインへは抜群技は効かなくなり等倍ダメージを与えるしかない。となると、フライゴンは必然的にドラゴン技の攻撃一択になってしまうだろう。

 

「マルマイン‼︎ フライゴンを追い詰めるヨ。“ギガインパクト”‼︎」

 

 突然マルマイルが光のオーラを纏い始めた。そしてフライゴンへ猛スピードでアタックする。

 

「フライゴン!!?」

 

 胴体に攻撃を受けてフライゴンはタカヤの後方にある壁まで吹っ飛ばされて激突した。

 タカヤはモニターを見た。フライゴンの体力ゲージは黄色になっている。まだ“ひんし”ではない。

 

「まだいけるな、よし‼︎」

 

 タカヤはフライゴンにガッツポーズでエールを贈る。フライゴンも心なしか笑い返してくれているように見えた。

 

「“ドラゴンクロー”‼︎」

 

 フライゴンは右腕にオーラを宿しマルマインの顔面を殴り飛ばす。

 マルマインは見た目通りボールのように転がっていくが、すぐにバランスを整えて静止する。

 

『タイプ相性ではタカヤ選手の有利に見えたフライゴンVSマルマインの三戦目。しかし蓋を開けてみれば波乱の展開が待っていました。ここでマルマインが攻め勝つのか、それともフライゴンが逆転するのか⁉︎』

 

 マルマインのHPはまだ緑色。対するフライゴンは余裕のある黄色といったところだ。

 

「マルマインの“ギガインパクト”を受けてその程度のダメージは流石ネ。でもこれで終わりヨ」

「……ハハッ」

 

 たとえタイプ不一致であろうと“ギガインパクト”の破壊力は凄まじいものだった。

 しかしタカヤは勝ちを確信しているシャンバルを笑った。

 

「マルマインは反動で次のターン動けないんだぜ? 勝ちを確信するのは早いんじゃねぇか?」

「……? このターンで突破口が?」

「だってよ……。フライゴンにはまだこの技がある‼︎ “りゅうのまい”!!!」

 

 掛け声と共にフライゴンは羽を高速にはためかせてマルマインの頭上をとる。そして身体の正中線を軸に回転しながら舞い踊る。

 

『うお〜っと⁉︎ なんとも美しい“りゅうのまい”だ‼︎ その姿は海流に揺蕩(たゆた)いながら泳ぐ人魚が如く!!!』

 

 “りゅうのまい”でこうげきとすばやさを上昇させたフライゴン。これでマルマインのすばやさを上回った。

 

「終わりだ! “ドラゴンクロー”‼︎」

 

 マルマインが“ギガインパクト”を繰り出す前にフライゴンの一撃が脳天目掛けて振り下ろされた。マルマインはその球体が凹み、そのまま地面にめり込んで“ひんし”となった。

 

『マルマイン戦闘不能‼︎ フライゴンの勝ち〜〜!!!』

 

 タカヤが2勝目を挙げてガッツポーズで喜ぶ。しかしマルマインの行動はまだ終わっていなかった。

 

「最期の華を飾るネ、マルマイン」

 

 戦闘不能になった筈のマルマインから眩い光が発せられる。次の瞬間、その身体が爆発してフライゴンを巻き込んだ。

 

「なにっ……⁉︎ “ゆうばく”!!? フライゴンッ‼︎」

 

 マルマインの特性は“ゆうばく”だった。物理攻撃を行ったフライゴンはその爆発に巻き込まれてしまった。

 フライゴンはタカヤの足元まで吹っ飛ばされ、地面に横たわる。

 

「フライゴン、しっかり!!!」

 

 タカヤの必死の呼びかけにより、フライゴンはゆっくりと身体を起こしていく。

 

「チッ。戦闘不能にはならなかったのカ。惜しかったネ」

「ふぃー。“ひんし”になってなお、油断ならねぇな」

 

 HPゲージは赤色のミリ単位だった。タイプ相性を覆そうと奮闘したマルマインと競り勝ったフライゴンの両方へ観客たちは惜しまない拍手を贈った。

 

『今度こそフライゴンの勝利〜〜‼︎ さあタカヤ選手はこれであと1勝すれば試合終了です。シャンバル選手はあとがない‼︎ さあ四戦目、ポケモンをどうぞ!!!』

 

 これでラストになるか。それともシャンバルが追い付き五戦目にいくのか。

 タカヤは今度はモンスターボールを投げてポケモンを場に出した。

 

「ゆけっ! ラグラージ!!!」

「頼むネ、サザンドラ!」

 

 向かい合うラグラージとサザンドラ。タイプ相性はどちらにも有利不利はない。

 

「サザンドラ、“りゅうのはどう”」

 

 シャンバルの命令により、サザンドラの頭、右手、左手の三つの部位から“りゅうのはどう”を繰り出した。それらはすべてラグラージの頭、左肩、右肩に命中し、大きく仰け反る。

 

『“りゅうのはどう”が決まった〜! だがラグラージ、致命的なダメージには至っていないかあ〜!?』

 

 サザンドラの攻撃は確かに強力だ。しかしラグラージもまた生半可な育て方をされていない。

 

「ラグラージ、“アームハンマー”‼︎」

 

 両腕を硬化させて両手を組んだ状態で上方から振り下ろし、サザンドラの頭を殴り付けて地に落とす。

 

『“アームハンマー”が炸裂〜〜‼︎ こうかはばつぐんだ〜〜!!!』

 

 あくタイプを持つサザンドラにとっては強烈な一撃となった。地表では砂煙が舞う。

 その煙の中、羽を広げてサザンドラは姿を見せる。まだまだやる気だ。

 

「サザンドラまだいけるネ? “あくのはどう”‼︎」

 

 今度はサザンドラの攻撃。ラグラージに向けてまた三方向からの“あくのはどう”を放つ。

 

「ラグラージ!?」

 

 攻撃を食らったラグラージは膝をつく。しかし何とか耐えていた。

 タカヤの頬を汗が伝う。それを右手で拭って笑顔を見せた。

 

「シャンバル。力と力が衝突したこのバトル。楽しかったぜ。だがこれで終わりだ。唸れラグラージ!!!」

 

 会場内にラグラージの怒号が響き渡る。その声量に耳を塞ぎ目を瞑る者もいた。

 

『うおああああああああああああ〜〜〜‼︎ ラグラージの叫び声が辺りを震撼させていくぅうううううう!!!』

 

 空間が歪むような激しい振動。それが数秒間続いていた。そして叫び声をあげていたラグラージは静かに両手を地面に付けて四つん這いの体勢になる。

 

「“あくのはどう”を耐え切ったその瞬間、勝負は着いたんだ。決めるぜラグラージ! “ゆきなだれ”!!!」

 

 地鳴りが聞こえる。先程のラグラージの怒号で大地が震わされ、“ゆきなだれ”が発生したのだ。

 容赦の無い多量の雪崩がサザンドラを巻き込んでいく。

 

『これは強烈!!! しかもこうかはばつぐんだ〜〜〜!!!』

 

 シャンバルはモンスターボールを取り出して前に掲げた。

 

「……。敗けたネ。まさか“ゆきなだれ”を覚えさせていたとハ」

 

 モニターに表示されているサザンドラのHPゲージは黒一色。つまり勝負は決した。

 ボールの赤い光が雪に半分埋もれているサザンドラを包み込んでいく。

 

「ハハッ。1年前はパルデア地方にいてな。そこじゃあラグラージは“こおりタイプ”になれたんだ。そん時にいろいろと、な」

「言ってるのそこじゃないネ。後攻の技を覚えさせていることヨ」

「俺のラグラージなら例えタイプ一致の草技でも一撃は耐える自信があったから、なっ!」

 

 “ゆきなだれ”という技は相手から攻撃を受けていれば威力が上がる技だが必ず後発になる。草タイプの対策としてリスクが高すぎる。

 しかしタカヤはラグラージの耐久力に絶大な信頼を置いていた。

 

「ま、確かに次からは“れいとうパンチ”に変えた方がいいかもなっ」

 

 タカヤはモンスターボールを取り出してラグラージを戻した。

 

『……はっ! 失礼しました。サザンドラ戦闘不能、ラグラージの勝ち! よって今回の代表戦の勝者は、“イルミネシティ”のタカヤ〜〜〜!!!』

 

 司会者の言葉のあとに、観客から盛大に拍手と歓声の嵐が巻き起こった。

 

 

 ――バトルを全て観戦したビャクヤとキョクヨもまた大いに盛り上がっていた。

 

「すげぇ! すげぇすげぇすげぇぜ!」

 

 バトルとしては3勝1敗でタカヤが勝ったが、2勝2敗になってもおかしくないくらい激戦の応酬だった。

 

「あー! オレも早くポケモン貰って旅に出てぇぜ! な、ピカチュウ!」

 

 ポケットからモンスターボールを取り出して、その中にいるピカチュウに話しかける。

 

「フフッ。アタシも、家のことは大分落ち着いて来たから旅に出てみたいわね!」

「じゃあさ! お互い、博士に頼んどいたポケモンが届いたら旅に出ようぜ!」

「ええっ!」

 

 二人は指切りをする。近い未来、大切な仲間と一緒にルミナス地方とノックス地方を旅しようと。そしてポケモンリーグで優勝することを。

 

「そしてオレは――」

「そしてアタシは――」

 

 結んでいた小指を離して今度は気合を込めて固い握手を交わした。

 

「「チャンピオンを、超える!!!」」

 

 この二人の姉弟の旅はまだ始まらない。やっと今、スタート地点に立ったのだ――。

 

 




この話はここで終わりです。
ここまで見てくださってありがとうございました。

評判が良ければ連載も考えようかと存じます。
それではみなさん、またどこかで。




【設定資料】
・公式戦ルール:この地方では現実のスポーツの団体戦のようにチームでそれぞれ1回ずつのバトルを行っていく。しかし、非公式戦では他の地方のように入れ替え戦や勝ち抜き戦も行うことがある。公式戦ルールとしては主に以下のとおり。

①お互いにポケモンを同時に出す。故に場に出るまでお互いのポケモンは分からない。

②一戦目勝っても二戦目への続行はなく、出番は終わり。しかしバリアや天候は何もしなければ効力が切れるまでフィールドに残り続ける。

③道具を持たせるのは可能。またトレーナーによる回復道具の使用は一回まで。

④同種族のポケモンの二体以上の使用は禁止。しかし手持ちにいる状態でフォルムチェンジしている場合(ヒートロトムとウォッシュロトムなど)や、リージョンフォーム(キュウコンとアローラキュウコンなど)は同種扱いにはならない。

⑤伝説・幻のポケモンの使用は可能。しかし強すぎるため2体分として扱われ、使用ポケモンの枠を二つ使う。(3体戦の場合、1体目レックウザ、2体目不戦敗、3体目ピカチュウなど)

⑥自爆技や反動ダメージで両者共に戦闘不能の場合は引き分けとする。そして2勝2敗1引き分けの場合、6体目のバトルに移行する。(3体戦なら1勝1敗1引き分けで4体目)
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