ポケットモンスター Agent PLATINUM   作:ミノワ

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エージェントっぽいってどんなだろう?と思って書いたのがこの話でした。リーダーより振り分けられる任務をもとに各地を移動する、いわば直行直帰です。だからこそ、報連相はしっかりしましょうねというお話。




第四話【報告】

セーフハウスへ戻るなり、ライルは任務で汚れたジャケットを脱ぎ捨てた。適当な椅子に腰を掛け、遅めの食事(パスタ)を口に運ぶ。

 

 そこへ、デバイスが青い光を放ち、ダイゴからの着信を告げた。

 

 画面越しに映し出されるリーダー。映像から見るに、まだ本部で働いているようだ。

 

「やあ、お疲れ様。今、大丈夫かな?」

 

 ライルは口に入れていたパスタを慌てて飲み込み、端末をサイドテーブルに立てかける。

 

「——すみません、さっき帰って来て。今、片付けます!」

「構わないよ、そのままで。……で、首尾はどうだい?」

 

 ライルは慣れた手つきで端末を操作し、地図上に点滅しているデータを確認した。

 

「はい。本部からの報告の通り、あの付近には相当数のエネルギー体が現れてますね。何の役に立つのか、まだ詳細は分かりませんが……。あれ、一体何なんです?」

 

 ダイゴは少し表情を引き締める。

 

「わからない。判明しているのは、各地方でも同じ現象が確認され始めているということだ。本件は不確実性が多く、難易度が高い。——だが、君なら対応できると思ってね」

 

 ライルは少し呆れたような顔をして、肩をすくめる。

 

「上の人たちでもできるでしょ! でもま、ダイゴさんにそう言われるのは、悪い気しませんけど」

 

 ライルがエージェントになってから数ヶ月。その間に、この上司との仲は、ただの憧れではなく、信頼と親密さに変わっているようだ。

 

「ハハッ、素直だな。……それで、何か特筆すべきことはあったかい?」

 

 その質問にライルは、森の中での戦闘を思い出し、眉を顰める。

 

「……そういえば、襲撃を受けました」

「何だって?」

 

 ダイゴの表情が一瞬鋭くなったのが、画面越しにもはっきり分かった。

 

「ええ。ルガルガンを連れた女性トレーナーです。かなり苛烈な攻め方をするタイプでした」

「……指定組織の人間か?」

「どうでしょうか。誰かの指示を聞くようなやつには見えなかったけど……。なんていうか、剥き出しの刃物って感じでしたね」

 

 ライルは、少女やポケモン達から放たれていた並々ならぬプレッシャーを思い出す。

 

「そうか。しかし、うまく対応したんだろう?」

「まあ、なんとか『流れ』に乗れたので」

「君は謙虚だね」

「いや、実際大したモンでした。それにあいつは多分、まだ手札を残してる。今後も現れるなら、警戒が必要です」

「わかった。そのトレーナーの特徴を、分かっている範囲で教えてくれ。『PLATINUM』のデータベースと照合するよう、事務局にも指示を出しておく」

「お願いします。詳細は後で報告書にまとめて送ります」

「ああ、頼むよ。急がなくていいからね。——では食事の続きをどうぞ。若きエース」

 

 通信が終了し、デバイスの画面に暗がりが戻る。

 

「……『エース』か。ウチにはまだまだ上がいるだろうに。おだてんのが上手いよな、あの人」

 

 ライルは再びフォークを手にし、冷めかけたパスタを一気にかき込んだ。

 

        ◇ ◇ ◇

 

 通信による報告を終え、宿泊先の浴場で戦いの汗を流したライル。

 

 鏡に映る自分の体には、過酷な局地任務を物語る細かな傷がいくつもある。

 

(……また傷、増えたな)

 

 彼は手早く着替え、セーフハウスの屋上へと向かう。夜風が心地よく吹き、今回の任務に同行していた仲間達が思い思いに休息を取る。

 

 ガブリアスは満腹なのか既にいびきをかいて寝転がっている。ラムパルドもその巨体を休め、グレイシアはライルのすぐ側で丸まり、眠りについていた。

 

 ウォーグルも羽を休め、いまは周囲への警戒を解いている。

 

 唯一、ルカリオだけがライルの隣で腕を組み、波導で彼に話しかける。

 

(その毎度の報告書、ご苦労なものだ)

「仕方ないだろ、仕事なんだから。お前らのメシ代だよ!」

 

 相変わらずの軽口。彼とルカリオとは、最も古くからの付き合いだ。報告書をまとめ上げる中、今日の出来事を再び思い返すライル。

 

「今日の森のあいつ、すげえ圧だったよな?」

 

 ライルは、その感覚を信頼する相棒に意見を求めた。

 

(ああ。今までオレたちが戦ってきた、特に強い奴らと同じ匂いがした)

「だよな。しかもいきなり仕掛けてくるなんて、戦闘狂じゃん」

 

 ライルは目を細める。

 

「何が目的だったんだ?今もこの辺にいんのか? 」

 

 ルカリオは肩をすくめる。

 

「……明日からは街にも調査に出るんだ。また遭遇する可能性もある。警戒しとかなきゃな」

 

 ライルの頭は既に、明日の調査のことを考えていた。

 

 ——しかし

 

「でもまあ、綺麗な顔してたよな」

 

 気の知れた相棒だけに見せる、ふと零れた本音。ルカリオは呆れたように視線をこちらへ向けた。

 

(またヒカリが怒るぞ)

 

 かつてシンオウの各地を共に旅した、大切な仲間の名前。予想外の角度からのツッコミに、一瞬言葉が詰まる。

 

「……なんでだよ。あいつは関係ないだろ」

 

 誤魔化すように空を見上げるライル。

 

「まあいいや。明日も頼むぜ」

 

 ルカリオも短く鼻を鳴らし、同じく視線を夜空へと移した。

 

 激闘を終えた夜は、静かに、そして次の任務の予感と共に更けていく。

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