ポケモン LEGENDS プラチナム   作:ミノワ

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第七十九話【絶対王者】

 

 

 中央広場。

 長きにわたって保たれていた戦場の均衡が、ついに綻びを見せ始めていた。

 

 

 レジギガス。

 レジアイス、レジスチル、レジロック。

 彼らは、異常な力を発揮しながらも、流し込まれるエネルギーに振り回され始めていた。繰り出す技の精度も明らかに低下している。

 

 その時、アデクが号令をかける。

 

「今じゃ!!」

 

 それにレジアイスらを相手取っていたデンジ、アスナ、スズナが答える。

 だが三人とポケモンたちもまた、限界を迎えていた。レントラー、バクーダ、マニューラは、既に戦闘不能。

 

 しかし。

 

「一気に行くぞ……! エレキブル!」

「もう少しだけ頑張って! バシャーモ!!」

「最後の一撃だよ、ユキノオー!!」

 

 三人の号令。

 残されたエレキブル、バシャーモ、ユキノオーは最後の力を振り絞る。

 

 レジスチルへ、渾身の『10まんボルト』。

 レジアイスへ、灼熱の『だいもんじ』。

 そしてレジロックへ、全体重を乗せた『ウッドハンマー』が叩き込まれる。

 

 ——ドガァァァン!!!

 

 三体の巨体が、同時に揺らいだ。

 それでもなお反撃しようと腕を上げるが、もはや叶わない。

 肉体を縛り付けていた鎖が、次々と砕け散る。背後に空間の裂け目が開き、三体の眷属は光に包まれながら、現実世界へと押し戻されていった。

 

 それを見届けた直後。

 エレキブル、バシャーモ、ユキノオーも、力を使い果たして膝をつく。

 

「エレキブル!」

「バシャーモ!」

「ユキノオー!」

 

 三人は駆け寄り、それぞれの相棒を支えようとした。だが、デンジとアスナもまた、これまで前線と幹部を抑え続けた疲労に足を取られ、その場にしゃがみ込む。

 

 

 

 その傍ら。

 アデク、エンテイ、ライコウとレジギガスの戦い。

 クリムガンとシュバルゴは、既に戦闘不能。

 残されたウルガモスとバッフロンも満身創痍だったが、それでも大陸の王者を見据えている。

 

「これで決めるぞ! ウルガモス! バッフロン!」

 

 アデクの豪快な号令。

 バッフロンが最後の力で大地を蹴り、渾身の『ギガインパクト』を叩き込む。

 レジギガスの巨体が、大きく仰け反った。

 続けて、ウルガモスの『オーバーヒート』。

 灼熱の炎が装甲を包み込み、その巨体を赤熱させる。

 

 そして、その隙を逃さず。

 エンテイの『せいなるほのお』。

 ライコウの『かみなり』。

 

 二体の神獣が放った必殺の一撃が、レジギガスへ同時に炸裂した。

 

 ——ドォォォォン!!!

 

 大地を震わせる咆哮。

 レジギガスはなおも踏み止まろうとした。

 しかし、ついに片膝が地面へ落ちる。

 直後、その巨体を縛っていた鎖が砕け散った。背後に開いた裂け目へ、光に包まれた大陸の王者が、ゆっくりと還っていった。

 

 

 

 

 そして、同じ頃。

 ヒードランの放つ獄炎を掻い潜り、カゲツのシザリガーが一気に懐へ飛び込んでいた。

 

「シザリガー! 『クラブハンマー』!!」

 

 水を纏った巨大な鋏が、ヒードランの顔面を打ち抜く。

 巨体が揺らいだ、その頭上。

 

「スワンナ! 『ハイドロポンプ』!!」

 

 フウロの号令と共に、激流が叩きつけられた。

 炎と蒸気が広場を覆い尽くす。

 やがて、その奥から鎖の砕ける音が響き、ヒードランの巨体も現実世界へと押し戻されていった。

 カゲツとフウロは休む間もなく、広場を見渡した。

 

 その視線の先。

 天狼隊の兵団員たちと、残り僅かな反転ポケモンが、崩れかけた戦線を力ずくで維持している。

 マキシ、テッセン、ナギは、ギャラドス、ジバコイル、チルタリスを前線へ立たせ、押し寄せる敵を食い止めるだけで精一杯だった。

 

「まだ終わってねえな!」

「了解!」

 

 カゲツとフウロは、シザリガーとスワンナを連れ、共にその戦線へ駆け出した。

 

 

 

 

 そして広場の一角。

 ゲンジとリン。

 

 ガライが前線へ残していったジャラランガとガチゴラスは、ゲンジの二体のフライゴンを相手に、最後まで激しく抵抗していた。

 

 リンも代わりに指示を送り、どうにか戦線を維持する。しかし、主人を欠いた二体と、長年ゲンジと戦ってきた竜たち。

 その連携の差は、死闘の終盤で決定的なものとなった。

 二体のフライゴンによる挟撃を受け、ジャラランガとガチゴラスが、相次いで地へ伏す。

 

「クソッ! あの教祖どもが余計なことをしなければ! 本当、嫌になるわ!!」

 

 リンは最後まで憎まれ口を叩く。

 だが、残されたメガアブソルも限界だった。

 ゲンジは、その姿を静かに見据える。

 

「ボーマンダ。——『ドラゴンクロー』!」

 

 ボーマンダが一気に距離を詰める。

 

 最後の抵抗に振るわれたメガアブソルの爪を掻い潜り、渾身の一撃を叩き込んだ。

 

 ——ドガァン!!

 

 メガシンカが解ける。

 アブソルはリンの足元へ倒れ込み、それきり動かなかった。

 

「ぐっ………!」

 

 ゲンジがその場に膝をつく。

 ボーマンダと二体のフライゴンがその体を支える。

 ゲンジは、決戦直前に負ったケガを押して参戦していた。

 

 その直後。

 広場の中央から、凄まじい衝撃が吹き荒れた。ボーマンダは即座にゲンジの前へ立ち、その身で主を庇う。

 

 その視線の先にいたのは——ムクロ。

 シロナと中央で戦っている、かつてゲンジを破った男。

 ボーマンダが低く唸る。

 今すぐにでも飛び出し、その借りを返そうとしている。

 

 しかし。

 

「よせ」

 

 ゲンジの静かな声が、彼らを制した。

 

「信じよう。我々の雪辱は、シロナが果たしてくれる」

 

 

        ◇ ◇ ◇

 

 

 広場の中央では、なおも凄まじい激闘が続いていた。

 

 天狼隊幹部、ムクロ。

 プラチナムのリーダーであり、チャンピオン——シロナ。

 

 二人の決戦。

 シロナの傍らには——『メガガブリアス』。

 

 強固に発達した顎。

 より巨大な鎌へ変貌した両腕のヒレ。

 その全身から放たれる威圧感は、まさに王者の風格そのものであった。

 

 対峙するのは、ムクロの絶対的な相棒——メガセグレイブ。

 

 二体の巨竜は、互いの爪と刃を激しく打ち合わせ、一歩も退かぬ攻防を繰り広げていた。

 

 

 

 

 そして、その傍ら。

 ミロカロス、ソウブレイズ。

 メガヘルガー、メガハッサム。

 こちらでも二対二の激戦が続いていた。

 

 メガヘルガーが咆哮を上げ、上空に向かってエネルギーを解き放つ。現れたのは、簡易的な太陽。

 

 ——『にほんばれ』。

 

 その光を浴びたメガヘルガーの全身から、灼熱のエネルギーが噴き上がる。

 

 ——『サンパワー』。

 特殊攻撃を大幅に強化する特性。

 そして代償は、その体力。

 

「いいの? それで」

 

 シロナが静かに問いかける。

 

「ああ。お前は時間稼ぎなどしないんだろ?」

「面白いわね」

 

 シロナの口元に、僅かな笑みが浮かんだ。

 

「ヘルガー! 『ソーラービーム』!」

 

 メガヘルガーの口元へ、太陽の光が一瞬で収束する。晴天のもとでは、力を溜める時間さえ必要ない。

 

「ソウブレイズ!」

 

 シロナの声に、蒼炎の剣士が前へ出た。

 両腕の刃へ陽光を集め、こちらも一瞬で振り抜く。

 

 ——『ソーラーブレード』。

 太陽の光を纏った刃が、迫る光線を真正面から切り裂いた。

 

 

 その直後。

 メガハッサムが地面を蹴り、ソウブレイズの死角へ飛び込む。

 

「『バレットパンチ』!」

 

 鋼鉄の拳が、凄まじい速度で迫る。

 しかし、シロナは慌てない。

 

「ミロカロス! 『ウェザーボール』!」

 

 光球が、横合いからメガハッサムへ迫る。

 

「チッ!そういうことかよ、『まもる』だ!」

 

 メガハッサムは即座に拳を引き、防壁を展開。そこへ『炎』の『ウェザーボール』が炸裂する。

 爆炎に押し戻されながらも、メガハッサムは防ぎ切り、二体から距離を取った。

 

「だから、いいの? って言ったのよ!」

「構わねえよ!」

 

 広場に、僅かな間が訪れる。

 互いに次の一手を窺う、ほんの数秒。

 先に動いたのは、ムクロ。

 

「ハッサム! 『つるぎのまい』!」

 

 メガハッサムが二本の鋏を振るい、己の攻撃力をさらに引き上げていく。

 対するシロナも、同時に指示を放った。

 

「もう一度、『ウェザーボール』!」

 

 ヘルガーが相殺しようと構える。

 

「同じ手が通じると思うな!」

 

 だが、放たれた炎の光球が向かった先は、メガハッサムではなかった。

 

 その軌道上に立っていたのは——ソウブレイズ。

 

 炎の『ウェザーボール』が、ソウブレイズの身体を直撃する。しかし、逆に炎を吸収し、全身から立ち上る蒼炎が、一段と激しさを増した。

 

「『もらいび』か……!」

 

 ムクロとシロナの視線が交差する。

 

「ソウブレイズ!」

「ヘルガー!」

 

 ソウブレイズとメガヘルガーが、同時に前へ飛び出した。

 

「『むねんのつるぎ』!」

「『かえんほうしゃ』!!」

 

 炎を纏った刃と、サンパワーによって増幅された灼熱の奔流。二つの炎が真正面から激突する。

 

 ——ゴォォォォッ!!

 

 猛烈な熱波が周囲に広がる。

 巻き上がった爆煙が、互いの姿を覆い隠す。

 その煙を切り裂き、メガハッサムが現れた。

 

 ——『つじぎり』。

 

 しかし、ソウブレイズが間一髪で反応。

 

 再び——『むねんのつるぎ』。

 

 鋏と剣のぶつかり合いに、火花が散る。

 

「ヘルガー! 『シャドーボール』!」

 

 メガヘルガーがその隙を狙い、ソウブレイズへ漆黒の球体を放つ。

 

「ミロカロス! 『れいとうビーム』!」

 

 凍てつく光線が横から突き刺さり、シャドーボールを空中で撃ち抜いた。

 

 

 その向こうで、メガハッサムの視線がミロカロスを捉える。

 

 同じ瞬間。

 シロナとミロカロスの視線が交わった。

 互いに頷き、ミロカロスの全身を、淡い光が包み込む。

 

 ——『じこさいせい』。

 

「ハッサム!いけ!」

 

 メガハッサムがソウブレイズとの間合いを切り、ミロカロスへ一直線に飛び出した。

 『つるぎのまい』によって強化された——『バレットパンチ』で距離を詰める。

 

 しかし、ミロカロスは避けない。

 鋼鉄の拳が、その美しい巨体へ真正面から叩き込まれた。

 

 ——ドガァン!!

 

 衝撃に全身が大きく揺らぐ。

 それを見たムクロが叫んだ。

 

「そのまま仕留めろ!!」

 

 メガハッサムが間髪入れず、二撃目の『シザークロス』を繰り出そうと、踏み込んだ。

 

 

 しかしその瞬間。

 ミロカロスはその勢いを利用し、長い身体を大きくくねらせ、メガハッサムへ巻きつけた。

 

「なに!?」

 

 シロナが鋭く腕を振るう。

 

「ソウブレイズ!」

 

 蒼炎の剣士は、既に走り出していた。

 全身に炎を纏い、拘束されたメガハッサムへ。その直前でミロカロスは体を離す。

 

 ——『ニトロチャージ』。

 灼熱の一撃が、メガハッサムの胴体へ叩き込まれた。

 

 ——ドガァァン!!

 

 鋼鉄の巨体が吹き飛ぶ。

 地面を転がり——戦闘不能。

 反転エネルギーによって維持されていたメガシンカが解け、ハッサムはそのまま動かなくなった。

 

 だが、ムクロも僅かな隙を逃さない。

 

「ヘルガー! 『ソーラービーム』!!」

 

 メガヘルガーの口元へ、再び陽光が収束する。狙いは、ミロカロス。

 

「ミロカロス! 『れいとうビーム』!」

 

 ミロカロスも即座に光線を放つ。

 二つの光が正面から激突した。

 しかし、押し勝ったのはメガヘルガー。

 晴天と『サンパワー』によって増幅された『ソーラービーム』が、『れいとうビーム』を突き破る。

 

 ——ズドォォン!!

 

 眩い光がミロカロスを呑み込んだ。

 爆煙の中から、その長い身体が力なく倒れ込む。

 

 完全な戦闘不能。

 

 だが、ソーラービームを撃ち切ったメガヘルガーもまた、大きく肩を上下させていた。

 

 しかしその合間に、双剣士は走っていた。

 それを視界に捉えたムクロが叫ぶ。

 

「ヘルガー、まだだ! 『あくのはど——』」

 

 その時。

 メガヘルガーの身体が大きく揺らいだ。

 

「なに!?」

 

 晴天による『サンパワー』。

 反転エネルギーによる、強引なメガシンカ。

 度重なる大技。

 それらの負荷が、ついに限界へ達していた。

 

 そして、先ほどの『ニトロチャージ』によって速度を上げたソウブレイズが、既に眼前まで迫っている。

 メガヘルガーは最後の力を振り絞り、口元へ漆黒の波動を集めようとする。

 しかし、僅かに遅かった。

 

「ソウブレイズ——『インファイト』!!」

 

 ソウブレイズが懐へ潜り込み、猛烈な連撃を叩き込んだ。

 

 ——ドガガガガッ!!

 

 最後の一撃が、メガヘルガーの身体を大きく打ち上げる。地面へ叩きつけられると同時に、そのメガシンカが解けた。

 

 ヘルガーもまた、戦闘不能。

 

「…………」

 

 ムクロは倒れたハッサムとヘルガーを、それぞれボールへ戻した。

 一方のソウブレイズも、既に限界だった。

 傷ついた身体を支えるように、片方の刃を地面へ突き立てる。

 シロナはソウブレイズとミロカロスへ、静かにボールを向けた。

 

「よくやったわ。あとは、あの子に任せて」

 

 光が二体をボールへ戻す。

 

 

 

 

 そして、中央。

 そこでは今なお、二体の巨竜が激しく爪を交えていた。

 

 メガガブリアス。

 メガセグレイブ。

 最後の決着は、互いの絶対的な相棒へと託された。

 

 メガセグレイブが腕を振るう。

 無数の氷塊が、弾丸のように放たれた。

 

 ——『こおりのつぶて』。

 

「ガブリアス! 『スケイルショット』!」

 

 メガガブリアスの全身から、鋭い鱗が一斉に射出される。

 氷と鱗が空中で激突し、細かな破片となって広場へ降り注いだ。

 

 その中を二体の巨竜が突き進む。

 メガガブリアスが一歩出る。

 『スケイルショット』によって、その速度はさらに増している。

 

 鎌と巨剣がぶつかり、激しい火花が散った。

 

「ガブリアス! 『ドラゴンクロー』!」

「セグレイブ! 『こおりのキバ』だ!」

 

 龍の力を纏った巨大な鎌と、冷気に覆われた牙が激突する。

 

 ——ガキィィン!!

 

 凄まじい力のぶつかり合い。

 メガガブリアスが鎌を振り抜く。

 しかし、メガセグレイブがそれを力ずくで押し戻す。純粋な膂力では、メガセグレイブが僅かに上回る。

 それに対しガブリアスは、流れるような動きで対抗する。

 

 

 だが。

 シロナとガブリアスの、指示と動きの呼吸には、『僅かなズレ』が生じていた。

 より巨大になった両腕。

 変化した重心と間合い。

 それにより、動作速度も変わっている。

 

 メガシンカによって得た力は破壊的だったが、それは二人にとって初めて扱う姿。

 これまでと同じ感覚で出した指示が、ほんの僅かに早い。

 

 その小さなズレを、ムクロは見逃さない。

 

「セグレイブ! 一気に押し切れ!!」

 

 メガセグレイブの猛攻が、さらに激しさを増す。巨剣が空を薙ぐたび、メガガブリアスの身体に新たな傷が刻まれていった。

 

 シロナの脳裏に、一瞬の焦燥が走る。

 

 ——このままでは……。

 

 

 その時。

 メガガブリアスと視線が交わった。

 

「……!」

 

 その瞳に、迷いはなかった。

 ただ、長年共に戦ってきた主人を信じ、次の指示を待っている。

 

 シロナは小さく息を吐き、笑った。

 メガガブリアスも、それに応える。

 

「大丈夫。私も——あなたを信じてる!!」

「ガァァアアアア!!」

 

 ムクロ、そしてメガセグレイブも吠えた。

 

「セグレイブ! 打ち勝て!!」

「グォォォオオオ!!」

 

 二体の巨竜が走り出す。

 同時に全身へ龍の力を纏い、真正面から激突する。

 

 ——『げきりん』。

 

 鎌と爪。

 牙と巨剣。

 

 互いのすべてをぶつけ合う、最後の連撃。

 

 初めは、メガガブリアスが押されていた。

 だが、攻防を重ねるたび、その動きが変わっていく。

 

「左!」

 

 メガガブリアスが身を沈め、巨剣をかわす。

 

「踏み込んで!」

 

 間髪入れずに懐へ入り、鎌を振り抜く。

 シロナの声と、ガブリアスの動き。

 徐々に、合っていく。

 

 僅かに生じていたズレが消え始め、二人の呼吸が、一つになっていく。

 

 そして、メガガブリアスの一撃を受け、メガセグレイブの巨体が後方へ押し戻された。

 

 その背中が、大きく開く。

 

 ——いける!!

 

 メガガブリアスが勝負を決めるべく、踏み込んだ。

 

 

 

 その時。

 ムクロの口元が吊り上がる。

 

「かかったな!!」

 

 それは、メガセグレイブが作り出した偽りの隙だった。巨体を反転させ、背に備わる巨大な剣を正面へ向ける。

 

「いけ!!!」

 

 そして、自らの身体ごと弾丸と化した。

 

 ——『きょけんとつげき』。

 

「ガブリアス!!!」

 

 メガセグレイブの巨体が、凄まじい勢いでメガガブリアスへ激突する。

 そのまま二体は広場を横切り、背後の壁へ。

 

 ——ドゴォォォン!!

 

 轟音と共に壁が砕け、濃い煙が周囲を覆い尽くした。

 

 静寂が訪れる。

 やがて煙が晴れていく。

 ムクロが、目を凝らした。

 

 

 

 

 その視界の先。

 壁には、巨大な剣が深々と突き刺さっていた。

 

 

 メガガブリアスは——無事だった。

 

「なに……!?」

 

 メガガブリアスは両腕の鎌を交差させ、突き出された巨剣を受け止めていた。

 ただ防いだのではない。

 腰を据え、鎌の傾斜に沿って巨剣を滑らせ、そのまま背後の壁へ突き刺させたのだ。

 

 メガセグレイブの動きが、完全に止まる。

 

「今よ!!」

 

 メガガブリアスが力強く足を振り上げた。

 蹴り飛ばされたメガセグレイブの巨剣が、壁から引き抜かれ、その体が宙へ投げ出される。

 

 

 その瞬間。

 メガガブリアスが、大地を蹴った。

 

 全身に龍の力を纏い、弾き飛ばされた巨竜へ一直線に突進する。

 

 ——『ドラゴンダイブ』。

 

 その一撃が、無防備となったメガセグレイブを確実に捉えた。

 

 ——ドガァァァン!!!

 

 凄まじい衝撃が、中央広場を駆け抜ける。

 そして、爆煙の向こう。

 

 メガセグレイブの巨体が地に伏し、そのメガシンカが解けていく。

 ムクロは、その場を動くことができなかった。

 

 

 その決着に呼応するように、広場の一角でも最後の鎖が砕け散った。

 カゲツとフウロの加勢を受けたマキシたちは、残された反転ポケモンを解放し、天狼隊の兵団員たちを制圧していく。

 やがて、広場から戦闘音が消えた。

 

 そして。

 

「よくやったわ」

 

 その落ち着いた声の隣へ。

 メガガブリアスが歩いていく。

 

 中央広場の天王山。

 最後まで立っていたのは——シロナとメガガブリアスだった。

 

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