好感度が反転したヤンデレ達の記憶が戻ったが、壊れてしまった関係値が元に戻ることはありません 作:かにくい3
「…ロア、あまり無理をしない方がいい。ある程度は直したとはいえ無理をすれば悪化してしまうぞ。ゆっくり時間をかけて直せばいいじゃないか。それに医者も無理をしてはいけないと言っていたよ」
「大丈夫だよ、クロエ。無理なんかしてないから」
体を起き上がらせ、何とか自分の足で立つことに成功する。まぁ、クロエに支えてもらわないと厳しいものだけれど。
腕がないというのはどうにも不便で平衡感覚が取りずらい。クロエに支えてもらっていた手を放してもらい自分一人で立つ。
クロエは終始心配そうな顔を浮かべて僕の方を見ている。
今朝、目を覚まし部屋で朝食を取ってから僕は早速リハビリを開始することにした。
これ以上クロエ家に迷惑を掛けられないという事が第一だが..............流石にこの年でトイレをするときにメイドさん、クロエに介助してもらうのは恥ずかしすぎた。
メイドさんもクロエも何も気にしてはいないとは思うけれど、何とも言えない絶妙な空気になるし僕も恥ずかしいので早く元のようにとまではいかないもののトイレに行けるくらいには歩けるようになりたい。
クロエに「大丈夫だから」と言って笑い、一歩を踏み出す。意外と歩けるな、なんてのんきなことを考えていた矢先、体が言うことを聞かず思い切り顔からこけてしまいそうになる。
「ロアッ!!」
クロエが僕のことを支えてどうにか倒れはしなかったが..............
「ロア、言ったよね?」
「..............はい」
クロエはあからさまに、誰が見ても怒っていた。
「私はロアに傷ついて欲しくないんだ」
「はい」
「誰だってそうだろう?友達が傷ついているの何て見たくない。無理をせず、一歩一歩頑張っていこう?焦らずにね」
「..............はい」
何も言い返すことなんかできずに、僕は粛々とクロエの言葉を受け入れるしかない。傍から見れば出来の悪い弟とそれを窘める兄にしか見えないだろう。
「.............はぁ。どうせ君の事だ。これだけ焦っていることを見るに私に迷惑を掛けすぎているとかそう思っているんだろう?」
「それは.............」
僕が思っていたことをぴしゃりと言い当てられてしまい思わず言葉に詰まってしまう。
「やっぱりね。だから、君は気にしなくていいんだ。私がしたくてしているんだから。困ったときはお互い様、だろう?」
「う、うん」
クロエはそう笑顔で言って僕を見つめてきた。
本当に、この親友には敵いそうにない。
クロエの手助けもあり何とか立ち上がってもう一度次はゆっくりクロエと一緒に踏み出す。
その後、ゆっくり二人で歩き広い部屋を一周したところでクロエにストップをかけられた。
「今日はもうこれで終わり」
「えー」
「あんな重傷を負って昨日目覚めたばかりなんだ。これ以上動くのは禁止。これは私との約束だ。いいね、ロア?」
「は、はーい」
クロエが笑顔ながらも有無を言わさない雰囲気を醸し出していたので、大人しく頷く。
「..........私は稽古があるからここから離れるけれど勝手に歩こうとか、無理に動こうとしたら」
「う、うん」
クロエは再度、部屋を出る前にじぃっと見つめそう言ってから部屋の外へと出て行った。
当然、クロエの言葉を無視できるはずもなく(無視したらお説教何時間コースかも分からない為)僕はおとなしくやわらかいベッドへと身を委ねることにした。
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僕が目覚めてから、早くも二週間ほど経とうとしており、最初は動くことさえ辛かったこの体もかなり回復して今では普通に歩ける程度には回復している。
クロエや、この家のメイドさんたちの真摯な介護、それとお見舞いに来てくれる彼女たちのおかげもあると言えるだろう。
ミアと言えば、謝りに来た日の次の日から早速お見舞いに来て僕の周りの世話をしてくれていたり、回復魔法をかけてくれたりしていた。僕が何かしようとする度に、ミアが先回りしてしてしまうため僕が自分ですることと言えばトイレくらいなものだろう。何から何までされて申し訳なくなり、自分で食事をしようとすると
「ご、ごめんね、ロア。わ、私にお世話なんてされたくないよね?ごめんなさい、調子に乗ってしまいました。ごめんね、すぐ消えるから、ね?こ、これで許して?最後までロアの邪魔してごめんね?」
とそう言って喉に果物ナイフを当てようとしたものだからすぐに止めて、ミアに世話をしてもらうことにしている。きっとあの時、僕が止めなければミアはあのまま死んでいただろう。それほど、彼女の眼は本気だった。
リリアやエリー、アリアはどうかというと彼女達も同じように過剰なほどお世話をしたがるし、拒否をしてしまえば狂ったように謝りだして泣いてしまう。
中でも一番ひどかったのはアリアだった。
それは、トイレのお世話を拒否したことが原因だった。殺されかけてしまったとはいえ元はかなり仲が良く、そして異性の美人ともなればそれはもうクロエ以上に恥ずかしかった。
そのため、当然のように拒否をしたのだが……彼女は僕が拒否をした瞬間自分の目に指をぶっ刺したのだ。僕は何が起こったのか理解できなかったが、もう片方の目へ指を向けようとしたところでアリアを手をつかみ、アリアを止めた。
「……止めないでください、ロア様。私はロア様に迷惑ばかりをかける塵のような人間なのです。ロア様がしてほしいこともわからず、邪魔をしてばかり。ロア様の一挙手一投足見逃さないためにこの目はあるはずなのに、そんなこともできないようなら、こんな目はいらないのです」
そう片目から血を流しながらそういうアリアの表情は抜け落ち、ただそこにあるのは能面のような顔だけだった。
僕が懇切丁寧にアリアを説得し、何とか理解を得ることができその場は収まり、彼女も自身の目を回復させて元に戻ったがまたいつ彼女があの状態になってしまうかわからない。
アリア、ミア、だけでなくリリアも「ご、ごめんね、頼りないお姉ちゃんで。お姉ちゃん失格だね。もう、死んだほうがいいよね?こんなダメな人間」と言って窓から飛び降りようとするし、エリーには学校の授業を教えてもらっているが、彼女が天才なため凡人の俺が躓くところを理解できず説明に困ってしまい「私、せっかくロアに機会もらったのにそれすら生かせない。私、何のために、生きてるの?分からない」そう言って、徐に自分へと魔法を発動させようとしたり。
その度に彼女たちを宥めていれば、流石に彼女たちが僕を罠にはめて殺そうとしているんじゃないかっていう疑惑もなくなってくる。彼女たちがあそこまで僕のお世話をしようとしたり、あんな状態になってしまうのは僕に許してもらおうと心から思っているからだろうから。
…まぁ、その度に彼女たちを止めるのは苦労するけれど。
そんなこんなで来週から僕は学園に復帰することができるようになった。
一重にアリアの回復魔法と、クロエの介護のおかげである。