好感度が反転したヤンデレ達の記憶が戻ったが、壊れてしまった関係値が元に戻ることはありません   作:かにくい3

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登校

「…ロア、まだやはり家の中にいた方が良いんじゃないか?そんなに急ぐことないだろう。彼女たちが頻繁に回復魔法を掛けてくれたおかげでほとんど治ったとはいえ、まだ完全には治った訳じゃないんだ。前にも言ったことがあるように私はロアが家にいて邪魔だ、迷惑だなんて思っていない」

「…大丈夫だよ、クロエ。心配のしすぎだよ」

 

 クロエはしきりに心配そうにこちらを見つめてそう言ってくる。昨日から何度目だろうか?学校へと行く時間に近くなればなるほど僕にこういってくる回数が増えているような気がする。

 

 心配してくれるのは嬉しいけれど、心配されすぎるのは逆に申し訳なくなってくる。昨日の夜なんて目に涙を浮かべていたからね。王子なんて呼ばれている程格好いいクロエを泣かせるのは後にも先にも僕だけかもしれない。

 

 クロエに必死なお願いをされ、僕だって折れてしまおうかと思ったことは一度や二度じゃ無い。

 

「ほら、それにエリーに学校の授業について一通り教えてもらっているじゃないか。下手な講師よりよっぽどエリーに教えてもらっていたほうが良いだろうし。そうだな........あと一か月くらいはいかなくてもいいんじゃないか?」

「........それでもダメ」

 

 多分、ここでクロエの要求にこたえてしまったらズルズルとずっとこのままいかなくなってしまうような気がするから。

 

「........はぁ、ロアは本当に強情だな。仕方がない。でも、何かあったらすぐに言う事。極力ロアと一緒にいることにはするけれどね」

「ありがとう、クロエ」

 

 クロエが溜息を吐き、本当に仕方がなさそうにそう言って了承してくれた。

 

「それと、分かっていると思うけれど彼女たちが治ったからと言って、他の人が元に戻った限らないし、それに........」

「........うん、分かってる」

 

 彼女たちがおかしくなってしまう前から僕の事を嫌っている、恨んでいる、羨んでいる人は一定数いた。成績優秀でそれもとんでもない美人の彼女たちとこんな平民である僕が親しくさせてもらっているのだ。男共や彼女たちに取り入ろうとしている貴族からの僕の事が妬ましいという視線は数え切れないほどあった。

 

 それが、彼女たちがおかしくなってしまい僕を傷つけるようになってから、男共、そして貴族共は便乗するようにして僕の事を痛めつけた。

 

 まぁ、でも一部だけで他の人たちはおかしくなってしまう前は僕に優しくしてくれてはいたけれど。

 

「それじゃあ、行くとするか」

「うん」

 

 僕たちは制服に身を包み、屋敷を出て学校へと向かうことにした。

 行の馬車の中、クロエが思い出したように話をし始める。

 

「……そういえば今日から第二王女様が留学から帰ってくるみたいだよ」

「え、ほんとに?」

 

 第二王女 リリエラ メアリー。

 

 リリエラと僕は、彼女達と同じように仲が良かった。

 

 庶民の男である僕にも優しくしてくれるような王女様で、気品あふれる素晴らしい人格の持ち主であり、学校での人気も高かった。

 

 そんな彼女も彼女達と同じように僕を虐めぬいた……わけではなく、 僕が虐められ始めた数日前に彼女はこの国から出て遠く離れた島国へと留学していた。

 

 だから、彼女に虐められた記憶もないし、僕が虐められて酷いことをされていたことすら知らないだろう。

 

「久しぶりに、リリエラさんに会えるね」

「そう、だね」

 

 クロエは若干、言葉に詰まりながらそう答える。

 

「もしかして、リリエラさんも僕の事嫌いになってるかもって心配してくれてるの?」

「……え?あ、あぁ。そうだよ。もしものことがあったらいけないからね」

 

 クロエの優しさにほっこりしていると、いつの間にか学園に着いていた

 

 馬車を降りて直ぐ、クロエは僕の隣に来た。

 

「クロエ、前にも言ったけれど少し恥ずかしいから普通にしてくれないかな....?」

「....普通にしているよ。ただ、少しだけ警戒しているだけで」

 

 クロエは護衛のようにぴったりくっつき周りを睨みつけながら、歩く。

 

 彼女たちが元に戻る前....つまり、彼女たちが僕の事を酷く嫌い虐めていた時はこれ以上に僕にくっついていたが、今は彼女たちが元に戻ったし僕の精神状態もあの時より良くなっているので少しだけ恥ずかしい。

 

「でも、クロエ。周りの僕を見る視線が前とは明らかに違うよ?」

「....ロア、それでも私は心配なんだ。ロアを欺こうとしているんじゃないかって」

 

 僕は改めて周りを見渡す。

 

 前までは僕の事を明らかに嫌っている視線を向けていたが、今日は打って変わって痛々しい視線を向ける人が多いような気がする。

 

 まあ、一部の貴族、僕をかなり前から嫌っていたものからは依然として忌み嫌った視線を向けられているが。

 

「お、おはよう、ロア」

「おはよう、ミア」

 

 声を掛けられたので、振り返ってみるとミアが此方を窺うように挨拶をしてきたので、出来るだけ普通に返す。

 

 あの謝罪の日から、お見舞いなど会う日はあったもののやはり彼女たちの罪悪感はいつまでたっても消えないようで、いつも窺うように僕へと迷惑をかけないようにと思っていることがひしひしと伝わってくる。

 

「あ、あの....ね?その....私も一緒も教室に行っていいかな?」

「あー......」

 

 ミアの事を信用していないわけではないし、周りの反応を見るに大丈夫だとは思うけれど以前から僕の事を嫌っていた貴族たちに裏切りだ、なんだとミアが責められてしまわないかが心配で答えに詰まる。

 

 だが、その僕の反応が間違っていたらしい。

 

「ご、ごめんね。わ、私なんかと一緒に登校なんてしたくなかったよね。ごめんなさい。こんな簡単なことにも気づかないなんて。厚かましいよね、こんな幼馴染いない方がいいよね?」

 

 ミアはぼろぼろと涙を流し、顔をぐしゃぐしゃに歪めてカバンからごそごそと何かを取り出そうとしたところで慌てて止めに入る。

 

「違うんだ、ミア。ミアと登校したくないなんて思っていないよ。ただ、ミアの事が心配だっただけだから」

「....そう、なの?」

 

 ミアの誤解を解くため、僕が考えていたことを偽りなく話すことによって何とか誤解は解けたみたいだ。

 

「ご、ごめんね。早とちりしちゃって。それと心配してくれてありがとう」

「わかってくれたなら良かった」

「でもね、ロア」

「どうしたの?」

 

 涙を拭き、こちらをミアはじっと見つめる。

 

「大丈夫だよ、もしあんな奴らが私に何かしようとしても消すだけ、だから。それにもしロアに何かしようとしたら....アハハ」

 

 ミアはにっこりと笑い虚ろな何を考えているのかわからないような瞳でボソッとそう呟いた。

 

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