私は目を奪われていた。
ただの高校生の作った安っぽい劇だと甘く見ていた。
ただの一アニメだと勘違いしていた。
「問おう」
金髪のカツラを被った女子生徒が可愛く、威厳のこもった声で目の前に座り込んでいるボサボサとした赤髪の少年に問う
「貴方が、私のマスターか?」
私は、その日、
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夏の日差しが照りつけてくる今日この頃、私は普段は訪れない地域の大ホールへと向かっていた。
(あっついなぁ……)
ファンディーファンの風力を全開にして暑さを和らごうとするが、より強く熱風が吹きつけてくるだけであった。せっかくの化粧が汗で落ちてこないように顔に集中して風を当てる
なぜ私がわざわざこんな暑い中、大ホールに移動しているのには勿論の理由がある。
(んーー!今日から学校祭!楽しみだなぁ!)
今日は彼女……
彼女の通う高校では学校祭が3日に分けて行われる。初日は劇やミュージカル、ダンスや文学部の発表などが行われる。彼女は運動部であるため今回は出番という出番はないが、友達が何人も活躍するということでとてもワクワクしているのだ。
彼女は大ホールに着くとさっさとホール内に入って寒いくらいクーラーついた空間に癒されながら、学校祭のしおりに書かれている自身のクラスの席に座る
氷雨はおもむろに手に持っていたしおりを開き今日のスケジュールを確認する。
オープニング
↓
邦楽部発表
↓
弦学部発表
↓
吹奏楽部によるミュージカル
↓
幕間
↓
昼休み
↓
学校祭企画
↓
幕間
↓
3年生による劇 fate/stay night (unlimited blade
works)
……ナンダコノゲキ? Fate?何それ?
ウチの学校祭初日のフィナーレを飾る先輩達の劇なのだが*1、いつもはディズニーとかフィクサーとかの有名どころの劇をするのだが今回はそれとは違うようだ。
Fate……?聞いたことないなぁ?
携帯で調べてみると、Fate というのは日本のアニメらしい。一応一定の層には人気があるらしいが、私は聞いたことがない。
心配だ……と私がうむうむと唸っていると急に後ろから誰かがガバッと抱きつてきた。
「うわっ……って遥か、びっくりさせないでよ」
「ごめんごめん。ひさっちが可愛いからつい……」
私に抱きついているのは
彼女は私をひさっちと呼ぶのは彼女と私が親友であるからだ
「何に悩んでたの?」
「3年生の劇が聞いたことがない物語だったから心配になってたの」
「あぁ、このFateってやつ?」
「うん。そう。いつもはもっと有名どころじゃん?」
「確かにねー」
彼女はうんうんと頷いて同意を示してくれる。彼女もこの作品を知らないようだ。
周りを見渡すと、他の友だちもこちらと同じような反応を示しているようだ。
うちの高校は自分で言うのはなんだが、まあまあの進学校であり、他と比べてアニメが好きな生徒が少ない。そのためこういうのを出されるとなんか微妙な空気になってしまう。
こういうのもなんだが、オタクがはっちゃけて気まずくなったような、そういう雰囲気である
私たちは心配を抱えながら、会場のライトが消えていくのを見守った
………………
「いよいよ最後の演目となりました!毎年恒例、高校三年生による劇が始まります!」
「今回はどのような物語なのでしょうか?」
「今年は今までとは一味……いや二味も違いますよ!今回はいつものディズニーなどの映画作品からではなく、この学校初のアニメを主題とした劇なんですね」
「そうなんですか。ですがどんなアニメなんです?それに皆さんの反応を見るに、あまりアニメを知らない人も多い様子ですよ?」
「皆様安心してください、難しいところでは要所要所に私たちが解説を挟んでいきますので。」
「では安心ですね。」
「もうしばらくで始まるので、皆さん静かにしてお待ちください」
司会がいよいよ最後の出し物の紹介を始める。
今この会場は前回の幕間による音楽パフォーマンスで最高潮とも言える盛り上がりを見せている。そんな中で始まる、原作をほぼ全員が知らない劇をしてしまったら……雰囲気が終わってしまわないか?
「いよいよ
「あはは、そうだね。けどそれよりも心配が強いかな。大丈夫かな?」
「でもなんか聞いたところによると、リハーサルでは大盛り上がりだったらしいよ。」
「へー。なら安心……なのかな?」
遥が私を楽しませようと話しかけてくれる。こういうさり気なく心配してくれるところが彼女のいいところだ。
うん。何事も楽しまなきゃさんだしね。どんな劇でも楽しんでやる!
会場に何か機械音がなり正面ステージにかけられた大きな暗幕が巻き取られていく。いよいよ始まるようだ。
『俺の視界一杯に地獄が広がっていた。
天高く、ビルに絡みつくように登る火炎。
耳に残るのは苦悶や絶望の声』
眼の前のスクリーンに、燃え盛る街が投影される。
私はというと、こんな絶望的な始まりでいいのかと驚愕していた。なんてったってこれは学校祭の出し物。こんな暗い雰囲気の劇がよく通ったなと思った
すると一人の赤髪の少年が、ふらふらとおぼつかない様子でステージに出てくる、いつの間にかステージには瓦礫を模した作り物が置かれていて、ステージのスクーリンと合わせてまるでステージ上だけ地獄になったようなそんな錯覚を覚えるほどだった
彼の周りにはたくさんの助けを求める人で溢れていた。皆蹲ったり横になっていて動けずに悲鳴を上げており、ここで唯一立っていられる少年に必死に助けを求めている
そんな声を、助けを求める手を少年は振り払い、ただ生きるために、この場所から逃げるために歩みを止めない。
そんな彼を誰が貶せるだろうか。自分がこのような立場になったときどのように対応するのだろうか。自分なら……逃げてしまうかもしれない
彼がステージ端あたりでバタリと倒れ込む、力尽きてしまったようで少しも動けていない。
『どうして自分は生きていられるのだろう。
皆を助けられなかった自分が。』
多分、運がよかっただけなのだろう。だが助けられなかった絶望で少年の声はひどく悲しみと自身への失望に押しつけられているように感じた。
『でもここまでだ。
もう息をするだけでも苦しい。
喉が煙や埃で汚れ呼吸するたびに痛い。
身体の感覚も徐々に失っていく感じがする。』
会場はしんと静まり返っている。誰しも、少年の生死を息を呑んで見守っている。
彼はふと手を伸ばした
そこに太陽は、光がなく、ただ黒い雲が広がっていくだけ。
その手が落ちる______________________
その瞬間、一人の黒いコートに体を包んだ男が走り、少年の手を取った。
その男は少年がまだ生きていることを確認するとその体を抱き上げる
「生きていてよかったッ………生きてくれていたッ………」
その声……恐らく自身の知らない先生が演じているだろう男は涙ぐんだ声で少年に話しかけている。
不思議なことだ。
泣きたいのは涙すら乾いてしまった少年のはずなのに、なぜか助け出したほうが涙し、少年に感謝している。
黒コートの男は少年を抱き上げ去っていく。
証明は暗くなっていって何も見えなくなる。暗闇の中瓦礫などの小道具を片付けているのだろう。
次に明るくなるときには赤髪の少年……恐らく先程死にかけていた少年が茶色のブレザーをきて学校に登校している。周りの人々は厚着しており、恐らく季節は冬なのだろうか?彼は友達に囲まれており楽しく投稿しているようだ
『あの大火災から10年、俺は今高校二年生になっている。ここは冬木市の私立穂群原学園。俺の通っている学校だ。』
「おはよう衛宮!」
「おう、おはよう」
「いや〜今日も寒いなぁ」
「もう2月だしもうそろそろ暖かくなっていくだろ」
如何にも男らしい……いや男の子のことなんて全然わからないので*2合ってるかわかんないけど、まあそれっぽい感じの会話だ。彼らは学校に入り、自分たちのクラスへと移動する
その後何もなく学校が終わり、衛宮と呼ばれた少年は下校しようとするが、教師にプリントを運ぶように頼まれたため彼はまだ早い時間なのにすっかり暗くなった校内を一人歩く。
……おかしいな。いくらこれが劇だとはいえ、人っ子ひとりいないのはおかしい。まだ下校時間になってすぐだ。というか教師もいない。
少しこの先の展開が不安になってきた。会場に響くBGMもどこか不安を煽るようなものに変わっていく。
『何か外が騒がしい……?何かが打ち合っているような音がする』
まるで金属がぶつかっているような大きな音が聞こえる。それに規則性はなく、なにか工事をしているのでは無いことがわかる
グラウンドを見るため窓を覗く。
そこには、
青いタイツを着て赤い槍を振るう男と赤い外套を纏った、白髪で浅黒い肌の男がその手に持った二振りの短剣をものすごい速度で打ち合っていた。
……うーん。話が急に変わったな!?アレ?学校生活ものじゃないの?