ヨキが静かに口を開く。
「仲間へ加わっていただきたいと。」
「考えている方がいます。」
マスタングが問う。
「誰だ。」
「エドワード君達のお父上。」
「ヴァン・ホーエンハイムという。」
「錬金術師です。」
皆が顔を見合わせる。
ヨキは続けた。
「彼の正体は。」
「古代文明クセルクセスの民。」
「その唯一の生き残りです。」
「そして。」
「ヴァン・ホーエンハイムという人物の姿をした。」
「賢者の石そのもの。」
「お父様の策略によって。」
「五十三万六千三百二十九人分の魂を宿した。」
「賢者の石となった存在です。」
部屋が静まり返る。
誰一人として言葉を発さない。
「初めて聞いたわ。」
「姉貴、俺もだ。」
グリードも肩を竦めた。
マスタングも小さく息を吐く。
「……にわかには信じ難いな。」
「仰る通りです。」
ヨキは静かに頷く。
「私自身。」
「真理からこの話を聞いた時は。」
「耳を疑いました。」
「ですが。」
「彼のおおよその居場所は分かっています。」
「会いに行かない訳にはいきません。」
マスタングが腕を組む。
「理由は何だ。」
「グラトニー。」
「プライド。」
「それらへの対処です。」
「錬金術の力なくしては。」
「攻略は難しいでしょう。」
「では中尉。」
「現時点での優先順位は。」
「ホーエンハイムとの接触が第一ということか。」
「はい。」
「そう考えています。」
「次点では。」
「スロウスの掘り進める国家錬成陣。」
「その阻止です。」
「ですが。」
「その為には。」
「影を操るプライド。」
「セリム・ブラッドレイを。」
「先に止めなければなりません。」
「地下坑道で遭遇した場合。」
「対応は困難でしょうから。」
「なるほど。」
マスタングが頷く。
「合理的だ。」
「その通りですね。」
リザも静かに同意した。
ヨキは続ける。
「幸い。」
「エンヴィーが変身能力で近付いてきても。」
「私には分かります。」
「私達の隊には。」
「影響はありません。」
「……変身能力か。」
マスタングが苦く笑う。
「我々には最悪の能力だ。」
「策略を巡らせるには。」
「これ以上ない。」
「大佐。」
リザが声を掛ける。
「ああ。」
「分かっている。」
「味方を証明する方法を。」
「考えなければならんな。」
少しの沈黙。
「中尉。」
「現状。」
「軍内の協力者は。」
「誰だ。」
「マスタング大佐。」
「リザ中尉。」
「ヒューズ中佐。」
「それと。」
「全貌は話しておりませんが。」
「アームストロング少佐も。」
「協力してくださるかと。」
「妥当な人選だ。」
マスタングは頷く。
「信頼できる。」
「中尉。」
「今後の軍側の協力者については。」
「私に任せてもらう。」
「報告は。」
「私へ一本化してくれ。」
「承知しました。」
ヨキは一礼する。
そして。
少しだけ表情を引き締めた。
「それと。」
「懸念事項ですが。」
「スカーと遭遇した場合。」
「排除する方向で進めます。」
「……。」
「本意ではありません。」
「ですが。」
「身体を取り戻した後の。」
「エドワード君を。」
「狙う可能性があります。」
「彼は国家錬金術師でしたので。」
マスタングは静かに答えた。
「それでいい。」
「褐色の肌。」
「赤い瞳。」
「イシュヴァール人であることは。」
「間違いないだろう。」
「アメストリスが。」
「彼らへしたことを。」
「棚へ上げるつもりはない。」
「だが。」
「懐柔は不可能だ。」
「私も。」
「そう思います。」
ヨキが目を伏せる。
「彼らと。」
「アメストリス人の間にできた溝を。」
「埋めることは。」
「容易ではありません。」
再び部屋が静かになる。
「もう一つ。」
ヨキが続けた。
「中央刑務所へ。」
「収監されている。」
「国家錬金術師も。」
「警戒しています。」
「国家錬金術師?」
「誰だ。」
「ゾルフ・J・キンブリー。」
「紅蓮の錬金術師です。」
リザの目が鋭く細められる。
マスタングは手で額を押さえ。
天井を仰いだ。
「……奴か。」
「確かにな。」
「奴なら。」
「喜んで。」
「ホムンクルスへ手を貸す。」
「仰る通りです。」
ヨキは頷く。
「早めに対応したいと思っています。」
「ですが。」
「中央にいる以上。」
「戦力を整えてからになるでしょう。」
「私も。」
「今は手を出せんな。」
「服役中の囚人を動かすのは。」
「目立ち過ぎる。」
「同意します。」
リザも静かに頷いた。
(……。)
(話が進んでいく。)
(誰も感情では動いていない。)
(皆。)
(勝つためだけに。)
(必要なことを選んでいる。)
その後も。
夜更けまで。
話し合いは続いた。
◇
夜も更けた頃。
マスタングが静かに口を開く。
「では。」
「中尉。」
「我々の役割を確認しよう。」