ヨキですが、静かに生きたいだけなんです。   作:千遇万歩

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第三章 ホーエンハイム

 

 ヨキが静かに口を開く。

 

「仲間へ加わっていただきたいと。」

 

「考えている方がいます。」

 

 マスタングが問う。

 

「誰だ。」

 

「エドワード君達のお父上。」

 

「ヴァン・ホーエンハイムという。」

 

「錬金術師です。」

 

 皆が顔を見合わせる。

 

 ヨキは続けた。

 

「彼の正体は。」

 

「古代文明クセルクセスの民。」

 

「その唯一の生き残りです。」

 

「そして。」

 

「ヴァン・ホーエンハイムという人物の姿をした。」

 

「賢者の石そのもの。」

 

「お父様の策略によって。」

 

「五十三万六千三百二十九人分の魂を宿した。」

 

「賢者の石となった存在です。」

 

 部屋が静まり返る。

 

 誰一人として言葉を発さない。

 

「初めて聞いたわ。」

 

「姉貴、俺もだ。」

 

 グリードも肩を竦めた。

 

 マスタングも小さく息を吐く。

 

「……にわかには信じ難いな。」

 

「仰る通りです。」

 

 ヨキは静かに頷く。

 

「私自身。」

 

「真理からこの話を聞いた時は。」

 

「耳を疑いました。」

 

「ですが。」

 

「彼のおおよその居場所は分かっています。」

 

「会いに行かない訳にはいきません。」

 

 マスタングが腕を組む。

 

「理由は何だ。」

 

「グラトニー。」

 

「プライド。」

 

「それらへの対処です。」

 

「錬金術の力なくしては。」

 

「攻略は難しいでしょう。」

 

「では中尉。」

 

「現時点での優先順位は。」

 

「ホーエンハイムとの接触が第一ということか。」

 

「はい。」

 

「そう考えています。」

 

「次点では。」

 

「スロウスの掘り進める国家錬成陣。」

 

「その阻止です。」

 

「ですが。」

 

「その為には。」

 

「影を操るプライド。」

 

「セリム・ブラッドレイを。」

 

「先に止めなければなりません。」

 

「地下坑道で遭遇した場合。」

 

「対応は困難でしょうから。」

 

「なるほど。」

 

 マスタングが頷く。

 

「合理的だ。」

 

「その通りですね。」

 

 リザも静かに同意した。

 

 ヨキは続ける。

 

「幸い。」

 

「エンヴィーが変身能力で近付いてきても。」

 

「私には分かります。」

 

「私達の隊には。」

 

「影響はありません。」

 

「……変身能力か。」

 

 マスタングが苦く笑う。

 

「我々には最悪の能力だ。」

 

「策略を巡らせるには。」

 

「これ以上ない。」

 

「大佐。」

 

 リザが声を掛ける。

 

「ああ。」

 

「分かっている。」

 

「味方を証明する方法を。」

 

「考えなければならんな。」

 

 少しの沈黙。

 

「中尉。」

 

「現状。」

 

「軍内の協力者は。」

 

「誰だ。」

 

「マスタング大佐。」

 

「リザ中尉。」

 

「ヒューズ中佐。」

 

「それと。」

 

「全貌は話しておりませんが。」

 

「アームストロング少佐も。」

 

「協力してくださるかと。」

 

「妥当な人選だ。」

 

 マスタングは頷く。

 

「信頼できる。」

 

「中尉。」

 

「今後の軍側の協力者については。」

 

「私に任せてもらう。」

 

「報告は。」

 

「私へ一本化してくれ。」

 

「承知しました。」

 

 ヨキは一礼する。

 

 そして。

 

 少しだけ表情を引き締めた。

 

「それと。」

 

「懸念事項ですが。」

 

「スカーと遭遇した場合。」

 

「排除する方向で進めます。」

 

「……。」

 

「本意ではありません。」

 

「ですが。」

 

「身体を取り戻した後の。」

 

「エドワード君を。」

 

「狙う可能性があります。」

 

「彼は国家錬金術師でしたので。」

 

 マスタングは静かに答えた。

 

「それでいい。」

 

「褐色の肌。」

 

「赤い瞳。」

 

「イシュヴァール人であることは。」

 

「間違いないだろう。」

 

「アメストリスが。」

 

「彼らへしたことを。」

 

「棚へ上げるつもりはない。」

 

「だが。」

 

「懐柔は不可能だ。」

 

「私も。」

 

「そう思います。」

 

 ヨキが目を伏せる。

 

「彼らと。」

 

「アメストリス人の間にできた溝を。」

 

「埋めることは。」

 

「容易ではありません。」

 

 再び部屋が静かになる。

 

「もう一つ。」

 

 ヨキが続けた。

 

「中央刑務所へ。」

 

「収監されている。」

 

「国家錬金術師も。」

 

「警戒しています。」

 

「国家錬金術師?」

 

「誰だ。」

 

「ゾルフ・J・キンブリー。」

 

「紅蓮の錬金術師です。」

 

 リザの目が鋭く細められる。

 

 マスタングは手で額を押さえ。

 

 天井を仰いだ。

 

「……奴か。」

 

「確かにな。」

 

「奴なら。」

 

「喜んで。」

 

「ホムンクルスへ手を貸す。」

 

「仰る通りです。」

 

 ヨキは頷く。

 

「早めに対応したいと思っています。」

 

「ですが。」

 

「中央にいる以上。」

 

「戦力を整えてからになるでしょう。」

 

「私も。」

 

「今は手を出せんな。」

 

「服役中の囚人を動かすのは。」

 

「目立ち過ぎる。」

 

「同意します。」

 

リザも静かに頷いた。

 

(……。)

 

(話が進んでいく。)

 

(誰も感情では動いていない。)

 

(皆。)

 

(勝つためだけに。)

 

(必要なことを選んでいる。)

 

その後も。

 

 夜更けまで。

 

 話し合いは続いた。

 

◇

 

 夜も更けた頃。

 

 マスタングが静かに口を開く。

 

「では。」

 

「中尉。」

 

「我々の役割を確認しよう。」

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