ヨキですが、静かに生きたいだけなんです。   作:千遇万歩

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第四章 役割

 

 マスタングが皆を見渡す。

 

「では。」

 

「中尉。」

 

「我々の役割を確認しよう。」

 

 ヨキが頷く。

 

「私達は。」

 

「ホーエンハイム氏との接触を。」

 

「最優先に行動します。」

 

「その後は。」

 

「国家錬成陣の阻止。」

 

「プライドとスロウスへの対応です。」

 

「また。」

 

「途中で遭遇した。」

 

「ホムンクルス。」

 

「そして。」

 

「スカーについても。」

 

「状況に応じて対応します。」

 

 兄弟が静かに頷く。

 

 私もそれに続いた。

 

「うむ。」

 

「それでいい。」

 

 マスタングが頷く。

 

「我々は。」

 

「軍内部の協力者を増やす。」

 

「それと同時に。」

 

「政情を安定させるための布石を打つ。」

 

 静かな声だった。

 

 だが。

 

 その言葉には重みがあった。

 

「アメストリスは軍事国家だ。」

 

「上層部を一掃したとしても。」

 

「その後の統治が乱れれば。」

 

「他国は必ず動く。」

 

「侵略。」

 

「あるいは外交。」

 

「いずれにせよ。」

 

「隙は見せられん。」

 

「私も。」

 

「同感です。」

 

 ヨキが頷く。

 

「戦いに勝っても。」

 

「国が立ち行かなくなっては。」

 

「意味がありません。」

 

 マスタングは小さく笑う。

 

「話が早くて助かる。」

 

 ヨキの視線が。

 

 グリードへ向けられる。

 

「グリードさんは。」

 

「どうされますか。」

 

 グリードは酒瓶を机へ置く。

 

 豪快に笑った。

 

「ガハハ。」

 

「聞いてくれてありがとよ。」

 

「本当なら。」

 

「俺も一緒に暴れたいところだ。」

 

「だが。」

 

「部下がやられてる以上。」

 

「すぐには動けねぇ。」

 

 少しだけ。

 

 表情が柔らかくなる。

 

「強欲な俺にとっちゃ。」

 

「あいつらも。」

 

「大事なものだからな。」

 

 酒瓶を持ち直す。

 

「代わりと言っちゃ何だが。」

 

「お前達の裏方は引き受ける。」

 

「各地に俺の仲間がいる。」

 

「隠れ家。」

 

「物資。」

 

「情報。」 

 

「全部用意してやる。」 

 

「ありがとうございます。」

 

 ヨキが頭を下げる。

 

「助かります。」

 

「かまわねえよ。」

 

 その時だった。

 

 キィ……

 

 閉ざされていた扉がゆっくり開く。

 

 入ってきたのは。

 

 シグだった。

 

「ん。」

 

「話し中だったか。」

 

「いえ。」

 

「大方まとまりました。」

 

「そうか。」

 

 シグは黙る。

 

 何かを考えるように。

 

 ゆっくりと言葉を選ぶ。

 

「イズミと。」

 

「あいつらは。」

 

「まだ話してる。」

 

「だが。」 

 

「お前さんの言ったことは。」

 

「のんでくれそうだ。」

 

 ヨキが静かに頭を下げた。

 

「それは。」

 

「良かった。」

 

「イズミさんと。」

 

「シグさんがいなければ。」

 

「こうはならなかったと思います。」

 

「ありがとうございます。」

 

 シグは照れ臭そうに頭を掻く。

 

「礼なんざ。」

 

「いい。」

 

 そこへ。

 

 マスタングが口を開いた。

 

「それでは。」

 

「身体が戻った暁には。」

 

「私へ連絡を下さい。」

 

「然るべき時に。」

 

「国家錬金術師。」

 

「除名の手続きを行います。」

 

「もう。」

 

「軍の狗である必要はありません。」

 

 手早くリザが一枚の紙を差し出す。

 

「こちらへ。」

 

「連絡を。」

 

 シグは静かに受け取った。

 

「……ありがとう。」

 

 その様子を見ていたグリードが笑う。

 

「それなら。」

 

「俺の連絡先も渡しとくぜ。」

 

「遠慮なく使ってくれ。」

 

「伝言がありゃ。」

 

「俺から姉貴達に伝えておくぜ。」

 

「ああ。」

 

「わかった。」

 

「あと。」

 

「電話を貸してくれ。」

 

「部下を迎えによこす。」

 

「好きに使ってくれ。」

 

 シグが店の奥を指差した。

 

◇

 

 夜風が頬を撫でる。

 

 迎えの車が。

 

 静かに店の前へ停まった。

 

「来たか。」

 

 グリードが笑う。

 

 私達は車へ向かう。

 

 マスタング達も静かに向かう。

 

「中尉。」

 

「では。」

 

「またな。」

 

 マスタングとヨキの視線が交わる。

 

「ええ。」

 

「大佐も。」

 

「お気を付けて。」

 

 グリードが私の方に来る。

 

「姉貴。」

 

「車は俺の隠れ家に行くよう伝えている。」

 

「何か足りないものがあったら言ってくれ。」

 

「……ありがとう。」

 

「あなたも気を付けて。」

 

 グリードが笑う。

 

「ガハハ。」

 

「こんなことになるなんて。」

 

「思いもしなかったが。」

 

「俺は満足してるぜ。」

 

 店の前には。

 

 グリードと。

 

 シグ。

 

 二人が並んで立っていた。

 

 車は動き始める。

 

 それぞれの。

 

 進む道は違う。

 

 けれど。

 

 目指す先は。

 

 一つだった。

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